もう一つのギルド   作:mshr

13 / 102
第2章4話 街に出てみたら…

朝食の後、変装して、HPやMPの偽装もして(するようにきつく言われた)街に出たら、昨日キュアイーリムを倒したのが良かったのだろう、思いのほかにぎわっていた。

 

親衛隊の内、オックスとハサンは外部調査に出ていていないが、現在のエルグリラに私を暗殺してくるような勢力はいないだろうから問題はないだろう。

 

昨日キュアイーリムを倒したためかかなり賑わっていたが、一言で言ってカオスだった。

 

市民は身長1Mの小人から身長3Mの巨人迄いるのだ。

 

空を飛ぶバードマンかハーピーらしき人にパワードスーツのシステムを組み込んだ自動人形(オートマトン)が向かって言っているのも見えた。

 

「なんだあれ」

 

「飛行禁止区域に接近しているので警告に行ったようですね」

 

そうなのか?

 

そもそもユグドラシル時代は全域で飛行禁止だった筈だが。

 

飛行可能なら城壁の意味が無いような?

 

「飛行可能なエリアがあったのか?」

 

「第5区は可能ですね。

飛行可能な種族の人の人気エリアです。

許可証の携帯も必須です。」

 

そう言えば、そう言う設定もしていたな。

 

巨人用の居住区画やら、小人用の居住区画なんかも設定したよな。

 

確か、最大種族は人間種の人属で、人口の1/4だったか…隣がスレイン法国って大丈夫なのか?

 

エルフ(♂)とオーク(♀)のカップルが子供(オーク)を挟んで歩いている時は中々に衝撃だった。

 

他にも異種族カップルは見かけたけれどもこれは特に…

 

それにしても異種族交配で苦戦していたデミウルゴスが見たら卒倒するのではないか?

 

「異種族の夫婦も意外と多いのだな?」

 

 

「珍しいでしょうか?

そう言えばエルグリラ以外では見かけた記憶がありませんね。

普通は子供ができないと聞いていますし。」

 

そう話したエレアを見返した。

 

「エルグリラではなぜ生まれるのだ。」

 

「教会でシルト様に祈ると生まれるようになりますよ。」

 

確かに異種交配魔法は持っているけれども、住民にかけまくった記憶はないのだが。

 

祈るだけで大丈夫ってそんな馬鹿な。

 

「教会に行ってみよう。

それにしても私に祈るのか?」

 

「至高にして偉大なる方々こそ神ですよね?」

 

普通に返されてしまった。

 

六大神教ってこうしてできたって事か?

 

信仰系魔法詠唱者の彼女は私(またはガルト)に祈って魔法を使っていると言う事か…そんな馬鹿な。

 

そういえば、アンネも私の事を神とか言っていたよな…

 

教会、ユグドラシル時代には単に死亡時の復活ポイントだった訳だが、に付いた。

 

妖精のシスターが掃除をしている教会に入ると、真正面にスタッフ・オブ・ミレニアム(偽)が見えた。

 

モモンガさんも普段はスタッフ・オブ・アインズ・ウル・ゴーンのレプリカをもっていた筈だけれども、千年王国(ミレニアム)でもレプリカは製作された、かなりの数が。

 

クリエイトツールで外観や名前を好き勝手出来たから見た目だけ同じものはいくらでも作れた訳ではあるが、それにしてもと言う数を作った奴がいる。

 

ヴァルカンの奴である。

 

レプリカを作る理由は解るが、100本以上も作るのか?と言いたかった。

 

私のアイテムボックスにも数十本入っていて、場合によっては戦闘中に持ち換えて戦っていた。

 

上位アイテム鑑定でスタッフ・オブ・ミレニアム(偽)を見ると、装備する事で異種交配魔法が使えると出た…これか!

 

本物が大災厄(グランドカタストロフ)を使えるようになることを目指して作られた事に真似て、偽物も装備する事で何かしらの魔法が使えるようになっていた。

 

戦闘中に持ち替えて使っていた理由もそこにある訳だが…誰がこの偽物をここに置いたのだ。

 

「私に祈ってではなくて、あれを使ってだよね。」

 

「あれは、ギルド武器を模した神器ですので、シルト様のご加護です。」

 

私が居なくなって何百年後に子宝の神になっていそうだ。

 

「誰がここに置いたのだ」

 

「ガルト様が奉納されました。」

 

あいつは異種族凌辱物が好みだったっけ…こうしてみるとギルドメンバーって変態だらけだな。

 

良かったな、お望みのオークとエルフの組み合わせができたぞ…性別が逆だが。

 

私か?私は人形愛好家(ドールマスター)なるニックネームをつけられていたぞ。

 

アンネを常時パーティーに入れていたことからついたあだ名であって、人形性癖ではないからな。

 

本当だぞ。

 

「元凶は解った。

あいつなら、分かってここに置いたのだろうな。」

 

「ガルト様とシルト様のご加護で愛し合っているのに種族の壁で結ばれないことが無くなりました。」

 

小人(ハーフリング)とミノタウロスのカップルも見かけたが、LGBTQどころの騒ぎではないような?

 

一応、同性生殖の魔法も所持しているけれども、この魔法のスタッフ・オブ・ミレニアム(偽)が無いことを願う…無いよね。

 

「神である至高の御方に対して元凶とかあいつとはあまりにも不敬。

何故このような者が…申し訳ございません。」

 

NPC特有のギルドメンバーを探知する能力で私に気が付いたのだろう。

 

妖精のようなシスターではなく、妖精の神母が現れて平伏した。

 

神母は誤字ではなく設定文でそうなっていた…意味が分からない。

 

多分、彼女はスペック的にはナザリックのペストーニャと同じくらいと思われる。

 

ちゃんとお金を払うと回復してくれる仕様だったので資金稼ぎには有効だったが。

 

「イオランセ、お忍びだから気にするな。

寧ろ平伏はやめてくれ」

 

正直、周りの視線が痛いと言うか薄々誰だかばれている気がする。

 

ギルドメンバーの軽口をたたいて、領域守護者が平伏するって状況的に私しか有り得ないよな。

 

教会にいた人達が一斉に私にお祈りを始めてしまった…どうしたら良いのだろう?

 

しょうがないから、しゃがみ込んで一人ずつに声をかけていったら、泣き出す人や気を失う人やら失禁する人が出てきてしまった。

 

「今日はお忍びで街の様子を見に来ただけだから気にせず普段通りに過ごしてくださいね。」

 

と言い残して教会を後にした。

 

「私はそんなに恐ろしいのか?ちょっとショックだ。」

 

「主殿、そう言う訳ではないと思うのだが。」

 

クスタフに慰められた。

 

女性陣は、今更何を言っていると言わんばかりの顔でこちらを見ているし…

 

山を丸ごと破壊するような人は確かに恐ろしいけどさ。

 

気を取り直して、屋台で買い食いをすることにした。

 

「おっちゃん、一本いくら。」

 

串焼きの肉を買うために金額を聞いた。

 

「一本、金貨三枚だ。一人二本までだよ。」

 

聞き間違えだろうか?

 

よく考えたらユグドラシルに金貨以外の通貨はなかったよな…マジか。

 

「四本お願いする。」

 

私はアイテムボックスから金貨十二枚を取り出した。

 

アンネは…翼を隠しているから人属に見えるだろう…きっと。

 

「あいよ。」

 

金貨十二枚と、謎肉の串焼き四本が交換された。

 

聞き間違えではなかったらしい。

 

交易をおこなう前に通貨を改定しないとだめだな。

 

しかし金貨と銅貨の交換って応じる人はいるのか?

 

それくらいの感覚の差だよな。

 

皆に串焼きを渡しながら

 

「しかし、なんで一人二本なのだ」

 

「食糧不足の懸念で通達が出ていますから。」

 

もう始まっているのか。

 

「主殿、肉はまだましだぞ。

酒はもっとひどい。

市の指定した労務との交換のチケットなしでは買えなくなっているぞ」

 

「穀物が一番不足しているのだっけ?

酒は穀物を大量に消費するからな。

ところで、何で知っているのだ。」

 

「エルグリラ市民ですからステラさんからの伝達で通達がありました。

掲示板にも書いてありますよ。」

 

「エルグリラ市民なのか?」

 

「吾輩と、エレア殿は都市部に住居がありますからな。」

 

「アンネ隊長はどうなのです?」

 

「一応ありますが、殆ど帰っていませんね。」

 

元々は、エレアはガルトのクスタフはガンダルフの傭兵NPCだった訳だけれども、アンネも含めてエルグリラ攻略にも参加しているのだよね。

 

それ以前は何処に住んでいたことになっているのだろう?

 

順当に考えて運営の町だろうな。

 

しかし、彼らの寝室はどうなっているのだろうと思っていたら、街に部屋があったのか…ひょっとしてオーバーロードのオックスも街に部屋があるのか?

 

色々とシュールだ。

 

異形種のプレイヤーも街に来ていた訳だからおかしくはないけれどもさ。

 

「すまなかったな、アンネが家に帰れないのは私のせいだろう?」

 

「何故、謝られているのでしょうか?

シルト様にそれだけ必要とされていた訳ですので寧ろ光栄なことです。」

 

「そうです、私も家に帰れないよう精進いたします。」

 

「吾輩も、家に帰る事が出来ない位、主様に必要とされたいですな。」

 

「お前たちは人間種だろうが、ちゃんと休め。」

 

モモンガさんもNPCが休もうとしなくて困っていたよな…どこも同じか。

 

「ところで私には伝達が来ていないのだが。」

 

ぎょっとした顔で

 

「シルト様に伝達とは、あり得ないと思うのだが。

逆ならば兎も角。」

 

「あの魔法は相手の状況を無視して一方的に言葉を届ける魔法ですよ。

シルト様に使える訳が無いでしょう。」

 

「伝言ですら緊急性が無ければ恐れ多いことです。

アポを取ってお伺いをして顔を出してお伝えするものです。」

 

「そ、そうか。」

 

一斉に反論を貰ってしまった。

 

何だか仲間外れにされている気分なのだが。

 

ふと、失われた三体の自身の傭兵NPCの事を思い出した。

 

街に住んでいると言う事は無いだろうな?

 

「そう言えば、残りの三人も街に住んでいたのか?」

 

「彼らも住んでいたのですが伝言(メッセージ)が届きません。

転移時にエルグリラに居なかったようです。」

 

期待はしていなかったが残念である。

 

少し歩いていると、にぎわっている武器屋があったので入ってみた。

 

初心者おすすめ品の所で何人も武器を見ていたけれども…思わずアイテム鑑定の魔法を使ってしまった。

 

初心者おすすめ品がオリハルコンやらミスリル合金製ってこれはいったい。

 

データークリスタルを入れていないから大したことはないかもしれないけれどもさ。

 

ユグドラシルでは確かにミスリルやオリハルコンも大した素材ではなかったよ。

 

しかし、初心者用なのか?

 

この、オリハルコンやミスリル合金の武具って…多分エルグリラ第二層の生産品だよな。

 

今は良いが、交流が始まったら規制が必要だよね。

 

金貨が銅貨の感覚のエルグリラの住民なら兎も角、他の地域の住民から見たらとんでもない価格だから大丈夫なのか?

 

この調整も必要になるのか。

 

ユグドラシル金貨は交金貨二枚分の価値だったっけ?

 

他の国から見たらとんでもない物価だよな。

 

次に冒険者ギルド、という名前の職業紹介所にやってきた。

 

リ・エスティーゼ王国なんかにある、ほぼ同名の冒険者組合とは違い、千年王国(ミレニアム)直轄でギルド長は領域守護者である。

 

因みに、エルグリラ攻略時には既にあって、受付嬢がレイスだったと言う、ある意味で由緒ある施設である。

 

第二階層は基本戦闘禁止だった訳だが、ここでクエストを受注すると第二階層で戦闘できた…クエストに由来するものだけではあるが。

 

例えば、スクロール用の羊皮紙を集めるクエストなら、第二階層の草原エリアでPOPモンスターを倒せるようになると言った形で。

 

因みに、適正レベルに満たないと傭兵屋の傭兵NPCがパーティーに誘ってくれると言うイベントが発生するようになっていたので、今日始めたばかりのLV1のプレイヤーでもクエストを達成できるようになっていた。

 

上記の設定で、PKの危険性が無く狩りができる上、ある一定レベルまではパワーレベリングしてもらえる、と言う仕様にしていた訳だ。

 

ユグドラシルの情報板でもビギナーはエルグリラの冒険者ギルドに行くとよいと行き方まで解説の上で書かれていたほどで…書いたのは千年王国(ミレニアム)のメンバーだけれども。

 

ここで育ったプレイヤーは大抵友好的になったから我々の思惑通りだった。

 

当たり前だけれども、千年王国(ミレニアム)ギルドメンバーはこのクエストは受けられないから、自分たちで第二階層のドロップ品を回収する事は出来なかったので、ここのギルドへの納品は有用だった…当然と言うべきか、傭兵NPCの割合分もギルドの物になっていた訳ではあるが。

 

そんな冒険者ギルドは意外にも人がごった返していた。

 

ここは朝晩が混むのではないのだろうか?

 

順番に並んで受付嬢にクエストを確認することにした。

 

どうしてこうなっているのかは理解できた。

自動人形(オートマトン)の受付嬢が

 

「ご依頼でしょうか、仕事探しと受注でしょうか?」

 

「今あるクエストを教えて欲しいのだが」

 

「おすすめの物としてはこちらがあります。」

 

こうして一覧を見せてもらったのだが

 

常設依頼を除き一例をあげると

 

【城壁外のアンデッドの駆除

 

一体金貨100枚 酒類購入券

 

テイムも駆除として認めます。

テイムしたアンデットには、ギルドで渡す黄色のスカーフを左上に付けるように。

アンデット系住民も壁外に出る際には同じ処置を行うように。

成果に応じて壁外に作る農地の譲渡も検討します。

 

依頼人 都市長代行 ステラ・ケルト・エルティア】

 

他にも開拓系のお仕事なども入っていたよ。

 

やっぱり、アンデットの住民もいるのだね。

 

依頼に業務命令が入っているのがなんとも。

 

少し驚いていると、

 

「報酬金額が少ないでしょうか?

今はエルグリラが緊急事態ですので多くの方に引き受けて頂きたいのですが。」

 

金貨100枚で報酬が少ない?と思うかもだが、ユグドラシルと言うゲームは、お金に困らず冒険をして欲しい、と言う運営の意図で、とにかく大量の金貨がドロップしていたのだ。

 

LV一桁のゾンビでも数百枚の金貨がドロップしていた、と言えば受付嬢のセリフの意味が理解できると思う。

 

「主殿、引き受けないか?」

 

絶対に酒類購入券に目がくらんだクスタフが言ってきた。

 

「今回は情報集めですので準備を見直してまた来ます。」

 

と答えて冒険者ギルドを後にした。

 

「あのなあ、私たちの目的は町や市民の視察なのだぞ。

大体、周辺のアンデットの駆除なんてアンネなら一瞬で終わる話なのだぞ。

何故、ステラがあのように依頼にしているか考えてくれ。」

 

「申し訳ない、主殿」

 

私でも、あのようにしている理由をいくつか思いつく。

 

まあ最大の理由は、市民の仕事を奪わないようにと言う私からの指示だろうが。

 

武器屋が混雑していたのもあれが原因なのだな。

 

その後もあちらこちらを見て回った。

 

友好クランの拠点だった場所も空き家なら、宿屋も開店休業である。

 

市内に出ていて問題が積みあがっている事実に頭を抱えたくなったが逃げる訳には行けないのだろう。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。