もう一つのギルド   作:mshr

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第2章6話 多分警戒された

夕食後、私は執務室(正しくはギルドマスター室)で書類と格闘していた。

 

笑顔で書類を持ってきたズワースに嫌味を言いたいくらいの量だが助かる。

 

仕事に忙殺されていた方が考えなくてもいいことを考えずに済むからだ。

 

しかし、終わらせると徹夜にならないか?

 

エリュエンティウとナザリックと推定される場所に送った斥候が帰還するまでの時間で少しでも処理しなくては。

 

キュアイーリムとの戦闘詳細の報告書を書かなくてはいけないのだが、それもまだやれていない。

 

仕事が溜まっているなら街に出るなよ、と言われそうな気もするが、実際街に出て様々な問題点も気が付いたから必要な事だったと思う。

 

報告書を見ないと指示も決済もできない訳で報告書の確認から開始した。

 

モモンガさんは読んだふりだったっけ、それが問題なのは今日の街の視察で痛感した。

 

最初の報告の要約

【希望のオーラ及び絶望のオーラの効果半径について。

どちらもⅠで半径5KM、Ⅱで半径4KM、Ⅲで半径3KM、Ⅳで半径2KM、Ⅴで半径1KMが最大で、範囲を縮小する事は出来るようです。

※LV100の者で確認した為、追加調査が必要です。】

 

希望と祝福の効果は若干違うがⅤ以外はバフで、Ⅴはアンデット及びカルマ値マイナスの相手に特攻で、恐怖や絶望のオーラⅤが高レベルの者に効かないのと同様、高レベルのアンデットや悪魔に効かないので、雑魚を掃討する用途にしか使えないけれども。

 

カッツェ平野や、今のエルグリラのような状況なら大変ありがたいスキルではある。

 

ユグドラシル時代と半径が10倍違う…LV100の場合だけれども、単純に考えて魂喰らい(ソウルイータ)の恐怖のオーラⅤの半径は90~160M(LVの二乗比例)か、この世界なら十分に脅威だな。

次の報告

 

【昨日召喚した至高天の織天使を使って確認したところ、祝福のオーラⅤの半径は1KMでした。

そこで外壁の外1KMを一周廻らせましたので、外壁から2KM以内のアンデットを一旦は片付けましたが、アンデットも動きまわりますのでその後に入ってきている可能性があります。

 

追記、至高天の織天使を飛ばした為、飛行解禁されたと勘違いしたものが出ました。

特別飛行許可の通達方法を再度検討いたします。】

 

追記は多分、朝見かけた、警告を受けたバードマンの事だろう。

 

こんな感じの報告を確認してサインをしていった。

 

食料制限は段階的に進めていくようなので早めに目途をつけないと。

 

一日50tの食糧を消費する一方、生産できている食料は15トンでほぼ肉。

 

食料が不足している最大の原因は、麦の収穫直前に転移した為らしい。

 

二か月分はあまりにも少ないと思ったら、一年で一番備蓄が少なくなる最悪の時期だったようだ。

 

しかも一貫して人口増だった為に備蓄が追いつかなかったらしい。

 

報告書を読むことでこのような事も理解した。

 

税収欲しさに町づくりをしすぎたのだろうか?

 

そもそもユグドラシル時代に籠城戦なんてなかったからな。

 

やって、ギルド対抗戦イベント位だけれども、メンバーが自分だけになってからは参加していないのだよね。

 

ステラの戦闘経験もこのギルド対抗戦イベントだったりする。

 

対抗戦以外では攻略しようと言う人はいなかった訳だ。

 

あくまでもイベントなので、実際には損害はないしね。

 

と、このように状況の変化はものすごいものだった。

 

しかし物価と貨幣問題をどう伝えるべきか?

 

後は生産物の取り扱い。

 

エルグリラでは大した事が無くても、この世界では明らかにオーパーツ気味なのだ。

 

皐月の報告によると、自分が翻訳した感想だけれども、今の季節的には春らしいのだけれども、エルグリラのある地域は高原地帯で農耕にはあまり適しておらず牧畜が適している。

 

と言ったような気候や農業を中心とした報告になっていた。

 

昨日の流れからこの件の緊急性を上げたのだろう。

 

しかし、報告書の書き方にも個性があるのだな。

 

ステラの報告は、現状、対応とその理由、対策や今後の方針まで書かれているのに対し、

 

皐月の報告は、「スレイン法国のハイン村でカブの種まきをしていました。」みたいな報告なのだ…ハイン村って何処なのさ。

 

みたいな報告なのだ…ハイン村って何処なのさ。

 

フェンリルに至っては、領域守護者に書かせて、自分では書いていないよね。

 

と言う感じなのだ。

 

こんな感じで読み進めているとドアがノックされた。

 

「どうぞ入ってくれ」

 

ブラウニーの執事が入室して

 

「失礼いたします。北の斥候が帰還いたしました。」

 

「報告をここで…いや、アランにも聞かせたいな、玉座の間で聞こう。

アレク呼んで欲しい。」

 

「畏まりました。」

 

私は事実上アランの作業場になっている玉座の間に向かった。

 

全員が揃ったところで、最後にやってきた何体かの(しもべ)を引き連れてきた皐月が

 

「申し訳ありません、お預かりしている(しもべ)を一体失いました。」

 

と謝ってきた。

 

「それに見合う情報は手に入れたのか?

無意味に死なせたのなら謝る必要はあるが、そうでないなら、その(シモベ)の為に胸を張っていろ。」

 

多分、引き連れてきた(しもべ)から考えて、失ったのはPOPモンスターだろうと思っていたが、傭兵モンスターだとしても文句を言うつもりはない。

 

行った先が行った先だからな。

 

「ありがとうございます。

では画像をお願いします。」

 

アランが何枚かの画像を投影した。

 

内、一枚は子供のダークエルフが杖を振りかざしている画像だった…マーレだよね。

 

「あれは?」

 

「視界共有によって得られた、失った(しもべ)が最後に見たものです。」

 

「こちらから攻撃はしていないよな」

 

「確実にしておりません。

不可視化状態で攻撃を受けております。」

 

「不可視化した者が拠点に接近したのだから、それをもって攻撃と判断したのだろうな。」

 

マーレでなければ、倒すのではなく捕縛していたと思うのだよね。

 

後で蘇生させて情報を抜く可能性も有るか。

 

「ところでその(しもべ)の種類は何だ?」

 

「ナイトストーカーです」

 

コンソールから該当モンスターを確認したところ、既にPOPしていた。

 

「POPモンスターの蘇生は可能なのか?

既にPOPしているのだけれども」

 

「POPする前ならば蘇生魔法で蘇生できますがPOP後は不可になります。」

 

あっさり答えが返ってきた。

 

そう言えば、普通に蘇生魔法を使ってくる(モンスター)が居たな、そういう理屈だったのか。

 

複数回ドロップアイテムが狙えた…レベルダウンの為だろう、グレードは劣化したけど。

 

「申し訳ありません、先ほど失いましたと申しましたがPOPしているのですか?

確認できませんでしたが。」

 

「もしかして向こうで蘇生魔法を使われたのか?

アレン、POPしているのか?」

 

「私も確認できませんので、こちらでPOPしておりません。

向こうで蘇生魔法を使われたとみなすべきです。」

 

POPモンスターの細かい確認ができないコンソールでの確認の欠点が出たな、いや、蘇生魔法で復活したと確認できたのだから意味があるのか。

 

「早急に対応する必要があるな。

アレク、どうしたらいい?」

 

「皐月に確認したいが、そのナイトストーカーからどの程度の情報が得られる。」

 

「知っているのはギルド名、拠点名、シルト様のお名前、向かわせた部隊の規模、情報収集任務である事くらいです。

エルグリラの位置も分からない筈です。

拷問で口を割る事は考えられませんが魔法によるものでは防げないかと考えて最小限の情報しか与えておりません。」

 

「それでは、シルト様、如何されますか?

画像から見る限り陵墓型のダンジョンで、そこの住民、恐らくは守護者の可能性が高いと考えますが。

攻め込むにしても情報が欲しいので誰かを捕縛しましょうか。

それとも使者を派遣いたしますか?

シルト様のお名前を聞いてひれ伏す可能性も有りますが。」

 

何処をどうしたらそんな発想になるのだ。

 

「極力友好的に接したい。

同じくユグドラシルから転移した者ならば協力もできると思うのだが。」

 

「なるほど、そういう事ですね。

でしたら、早急に使者を出すことをお勧めいたします。

誤解は時間がたつほど拗れますので。」

 

何がそういう事なのかは考えないでおこう…恐ろしいけど。

 

「では使者を出すことにしよう。

ナイトストーカーに白旗と手紙を持たせて隠蔽をせずに接近させろ。

手紙は今からしたためる。」

 

……こんな感じで良いか。

 

「これを持たせて向かわせろ。」

 

「ハンゾウ、三階層に居るナイトストーカーを一体倒してPOPした者に持たせて向かわせろ。

お前は遠隔監視してとらえられた場合は情報を持ち帰れ。」

 

最小限の情報しか知らないって…結構野蛮な方法なのね。

 

POPしたばかりなら、そりゃ何にも知らないけれどもさ。

 

「もう一枚、南から先行して帰還した者からの者です。」

 

画像が一枚…予想通り天空城だった。

 

ユグドラシルにおいて天空城は各世界(サーバー)に一か所の合計九か所。

 

情報板によると。NPCポイントは3000の最難関拠点だったりする。

 

あんなに目立つのに、その内、攻略してギルド拠点になったのは五か所

 

四か所は最後まで攻略されなかった。

 

ユグドラシル中期以降に落としたギルドまたはクランは存在しないと言うか、あそこを落とせるギルドやクランは出来無かったと言うべきだろう。

 

最終日まで存続していたのは三か所だから、拠点名が分からなくても三ギルドまで絞られる。

 

セラフィム、傭兵魔法職ギルド、トリニティ、最後まで残らなかったギルドの一つは2CH連合なのだ。

 

トリニティは2CH連合をつぶす目的で拠点である天空城の情報を得るために攻略したのではないかと思っている。

 

それはさておき、天空城の段階で上位ギルドなのだよな。

 

「これは天空城だよな。

こちらも転移したものなのか?

何処の拠点だ?」

 

答えを知っていてもこう答える他はない。

 

因みにモモンガさんが懸念したアースガルズの天空城ではない。

 

アースガルズの天空城はセラフィムだからね、モモンガさんが恐れるのは仕方がない。

 

「あの日に転移したとすれば、セラフィム、傭兵魔法職ギルド、トリニティの何れかですか。

いずれにせよ千年王国(ミレニアム)に匹敵するギルドですね。」

 

アランさんや、千年王国(ミレニアム)はそこまで強力なギルドではないのですよ。

 

最終日のギルドランクは38位だったけれども、上位ギルドが解散したり崩壊した結果だから。

 

ユグドラシルの最盛期、ギルド アインズ・ウール・ゴウンが9位になった時に3桁順位のギルドでしかなかった。

 

一応、学びを標榜していたけれども、要するに普通はやらない馬鹿をやって運営のシステムを解析して、情報やらデーターや作ったアイテムをリアルマネーで売っていた人たちが集まったギルドだぞ。

 

階層転移門を閉じてもアリアドネに抵触しない裏技まで知っていたけどな。

 

天空城のNPCか亡くなったプレイヤーが裏技を知っていたら現在の天空城には侵入できない筈。

 

確か許可なく入れないだったよな。

 

モモンガさんもギルド武器(スタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウン)を第八階層に置いて第九階層への階層転移門を閉じていたのだっけ。

 

と言う事は裏技を知っているよね。

 

有償でいくつかのギルドに教えたから、広まった可能性はあるけど。

 

何も難しい話ではない。

 

ギルド武器の破壊=ギルドの崩壊なのだから拠点攻略とは何を指すかと言うと、ギルド武器の破壊なのだよ。

 

ギルド武器をフィールドに持ち出せば拠点に入れないようにしてもアリアドネには抵触しないって訳だ。

 

戦闘禁止エリアでもギルド武器への攻撃が出来るように修正が入ったけれども確実にうちのギルドのせいだ。

 

学びと称する馬鹿な行為の一端がこれだったりする。

 

拠点外に冒険に出ていても拠点の防衛について考えなくても済む。と言うメリットは残ったままだったけれども…戦闘でギルド武器が破壊される可能性は発生するので普通はやらないが。

 

要するに天空城のギルド武器はツアーが持っているのだから入れないようにできるって訳だ。

 

プレイヤーは全滅している筈なので、一々訂正を入れる必要はないだろう。

 

最終日のギルド アインズ・ウール・ゴウンの順位は29位だったから、9位差。

そこまで的外れでもないのか?

 

「北の拠点もだけれども慎重に事を進める必要があるな。

南側も外見では判断できないだけであちらも上位ギルドの可能性がある」

 

ナザリックって露骨にわかりやすい外見ではないものな。

 

あれやこれや話していたら斥候が帰ってきて、エリュエンティウの地名と下に万単位の住民がいるオアシス都市がある事が判明した。

 

帰還が遅れたのは街を調べていた為らしい。

 

こちらは何かの結界で不可視化の魔法が切れたらしく、街に向かうキャラバンの話からの推測になる。

 

よく、都市守護者に襲われなかったな。

 

エリュエンティウは、強制翻訳によって『世界の中心にある大樹』とも聞こえたらしい。

 

多分、逆なのだろう。

 

エリュエンティウとユグドラシル『世界の中心にある大樹』が混在したのが由来なのだろう。

 

エリュエンティウは魔法職傭兵ギルドの拠点だったのだから。

 

結果、私以外の者も魔法職傭兵ギルドが転移してきたことを確認した

 




書くまでもない事ですが、八欲王=魔法職傭兵ギルドは私の見解にすぎないので、独自解釈となります。

正直、一番すっきりするのだよね。

もう一つ
エリュエンティウはエリュシオン(ギリシャ神話の楽園(天国))とティーウ(北欧神話の軍神テュールの古英語)から、軍神の楽園の意味ととらえています。
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