もう一つのギルド   作:mshr

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第2章8話 モモンガさんからの返信

私は書類と格闘していた。

 

ズワースが寝ているのに仕事をしているのって可笑しくないか?

 

ズワースに休むように指示を出したのは私だけどさ。

 

モモンガさんもとんでもない時間書類仕事をしていて、付き合わせていたセバスとアルベドに申し訳ないって思っていたのだっけ。

 

たまに執事やメイドが入ってきて書類が追加でもってくるのだけれども、24時間稼働のNPCがいるからだよね。

 

私は不眠不休で動けるようにはなっていないのだが。

 

睡眠が不要になる装備に頼る事になりそうだ…反動が怖いのだけども。

 

書類と格闘していると皐月がやってきた。

 

「失礼します、使者に送った者が帰ってまいりましたので手紙を持ってまいりました。」

 

皐月も起きていたのか?人属だろうに。

 

「ご苦労様、皐月は寝ないのか?」

 

「今は緊急時ですので。

休める時に休ませていただきます。

シルト様もお休みではないようですが?」

 

各地に送っている斥候部隊に指示を出さなくてはいけないから中々休めないのだろうな。

 

許してくれ。

 

「書類を片付けたら寝るつもりだけれども、何時になるやら。」

 

肩をすくめて私は答えた。

 

「一番重要な案件だから先に読もう」

 

【シルトさんですかお久しぶりです。

ぜひお会いしたいので明日にでもナザリックに来てください。

あまり大人数で来てもらうと歓待の用意が出来ませんので御付きは三人程度にしてもらえると助かります。

お会いできるのを楽しみにしております。

 

ナザリック地下大墳墓の主人 アインズ・ウール・ゴウン】

 

色々と突っ込みたいのだが…モモンガさんって営業職だったよな?

 

これは、ビジネス文書と言うより友人に出した手紙と思うべきだな。

 

「アンネも読んでくれ。」

 

私はアンネに手紙を渡した。

 

「何と言うか…シルト様、お知り合いでしょうか?」

 

「アンネ、お前も会ったことがあるぞ。」

 

「アインズ・ウール・ゴウンなる人は存じませんが?」

 

「アインズ・ウール・ゴウンはギルド名だからな。

多分、モモンガさんからの手紙と思うと言えばわかるのか?」

 

「ギルド アインズ・ウール・ゴウンのギルド長のモモンガさんなら存じております。

しかし、手紙の書き方がなっていませんね。

名前を書いていないのはどうかと。」

 

モモンガさんがアインズ・ウール・ゴウンに改名していることを知らなかったらそうなるよな。

 

「とは言え、招待を受けない訳にはいかないよな。」

 

「アインズ・ウール・ゴウンの良い噂をあまり聞きませんでしたが、罠ではありませんか?」

 

「と言っても、モモンガさんは知り合いだしね。

罠だとして、相手の守護者総がかりで叩き潰しに来ると言ったあたりかな。

アンネがいて逃げ切る事すらできないのは想像できないよ。

ああ、地表部なら兎も角、余程信用できないと中に入る気はないよ。

多分入れてくれないとは思うけれども。」

 

「承知いたしました。

中に入った場合、籠の中の鳥のように追い詰められると思うのですが、何故、中に招待されないと判断されるのですか?」

 

「夕食の時にも話したよね、私だけ生き残っても勝利とは言わないって。

モモンガさんも同じだからだよ。

内部に招待して罠にはめたとしても、その階層を丸ごと破壊されたら敗北って考えるのではないかな?

実際、第八階層以外ならできると思うし。」

 

「理解しました。

上に立つ方々として、下々の者を守るのも義務、所謂ノブレス・オブリージュの精神をお持ちなのですね。」

 

「それに近いかな、全員のプレイヤーがそうだとは言わないけれども、少なくともモモンガさんは味方の被害は最小限に抑える為の努力は怠らない筈だよ。

だから、モモンガさんも私の事を信用できないうちは内部への招待は無いと考えた訳だ。

 

アランとも打ち合わせをしたいから玉座の間に移動する。

皐月もついてきてくれ

後、アレクも呼んで欲しい」

 

「「はい」」

 

 

------

 

「アレク、北の拠点と思しき場所から手紙が返ってきた。

手紙が正しければ、ギルド アインズ・ウール・ゴウンの拠点ナザリック地下大墳墓だ。

そして、明日にでも来て欲しいそうだ。」

 

「それは性急ですね。

罠ではありませんか?」

 

「それは先ほどアンネとも話したけれどもね。

罠だったとしても会いに行かない訳にはいかないよ。」

 

「代理の者では?」

 

「器量が低いと舐められるかな。

油断を誘うのも一つの手だけれども今回の場合は悪手だと思うよ」

 

「確かにその通りです。

承知いたしました。

で護衛の者は如何ほどお付けになるので?」

 

「三名が先方の指定だよ。

アンネとハサンは連れて行く。

皐月、ハサンを戻して欲しい。」

 

「畏まりました。」

 

「あともう一つ、ナザリック近郊に大規模な戦闘跡か強力な魔法の使用痕跡は無いかな」

 

有ったらシャルティア戦の後と言う事になるけれども。

 

「それなら、こちらになりますね。」

 

アランが地図を拡大した。

 

小災厄(プチカタストロフ)及びかなり強力な熱魔法を使用したと思われる形跡があります。」

 

うわ、あちらのNPC達は世界征服を目指して動き出した後なのか。

 

直径200mの砂地がThe goal of all life is death(あらゆる生ある者の目指すところは死である)の結果とは思わなかったわけだ。

 

大災厄(グランドカタストロフ)の跡地を知っていたらそのように判断するのか。

 

「皐月、斥候部隊を戻して、ここを中心に探索を行った形跡を作って欲しい。

ここの戦闘跡を発見して偶然ナザリックを見つけたことにしたい。

見つけた後に送り込んだと気が付かれたくない。

可能か?」

 

「シルト様の勅命を成し遂げて御覧に入れます。」

 

「アラン、アレク、問題は無いか?」

 

「こちらが優先されるべきなのは理解できますので。」

 

アランに許可を取ったのは、アランと皐月の関係が、人工衛星や戦略偵察機がアランなら戦術偵察機や偵察部隊が皐月と言った関係だからだ。

 

間違いなくアランの予定に変更が入る。

 

「発見方法の隠蔽は不可欠かと。

付け加えるなら事後工作がばれた時の対策も考えておいた方が良いかと。」

 

「私が失敗するとでも?」

 

「皐月を信じていない訳ではないが、失敗した時の事を全く考えないのも問題だろう。」

 

「アレクの言う事ももっともだが時間が惜しい。

皐月、直ぐに実行して欲しい。」

 

「承知致しました。」

 

皐月は急いで玉座の間から出て行った。

 

「ところで、隠蔽していたからばれた、と分かったらどうする。」

 

「複数の場所を隠蔽してごまかしますね。

今回は最低でも隠蔽強度でばれた、と言う事は隠すべきかと。」

 

「なるほど、事後工作がばれた場合の言い訳は?」

 

「どのように場所を知ったかと言う質問は必ず来ると考えます。

 

一つは素直に隠蔽場所に斥候を送ったと答える。

次に先ほどの戦場跡があったので周辺探索した結果であると答える

 

の二つになりますが、

 

前者であれば、その後にあの戦闘跡を発見したので追加で斥候部隊を送ったと答えれば良いかと。

後者であれば、帰還した斥候部隊を随時送って偶然に第一陣が発見したとお答えするのが一番無難かと考えます。」

 

「どちらが良いかは私が判断するべきだね。

正直、アランが隠蔽されている場所が分かる、と言うのは出来る限り隠しておきたいのだよね。」

 

「敵に与える情報は少ない方が良いですから。」

 

「敵って断言するのはどうかな?

正確には仮想敵かな、欺瞞情報でも良いのだけれどもね。

 

後者でも完全に嘘、と断言できるほどではないのだよね。

後者を採用する。

次に三人目だけれども、誰が良いかな。

誰でも微妙だけども、ステラか第一階層の領域守護者、ズワース、親衛隊の他の者だけれども。」

 

「選定基準をお聞かせ願えませんか?」

 

「アインズ・ウール・ゴウンのギルドマスターのモモンガさんが知っているメンバーだよ。

ガンダルフィーも考えたけれども、拠点防衛が低下するのは避けたいから除外している。」

 

「ガンダルフィー様も顔なじみなのですか?」

 

「アンネ、ガンダルフィーは会っていないが、元となったガンダルフさんはワールドガーディアンとして有名だったからね、モモンガさんは知っている可能性が高い。

ガンダルフィーにガンダルフさんの振りをさせるのも一つの手ではあるのだよね。」

 

「理解いたしました。」

 

「シルト様のお考えはズワース様では?」

 

「アレク、よくわかったね。

消去法なのだけどもね」

 

「ですので、何を心配されているのかもわかります。

いっそ、ズワースもズワース様の振りをさせては?」

 

「ズワースさんはそこまで有名ではなかったからね。

寧ろ、モモンガさんを第六階層に招待した時に執事としてあった時の方が覚えている可能性が高いと思うよ。」

 

「他の者の方が更に問題ですよね。

罠の場合、第一階層の領域守護者では切り抜けられない可能性が高いので除外。

ステラは抱えている仕事が多すぎる。

エレアは回復役ですのでやはり厳しい、クスタフは先方に失礼な事をする可能性がある。

オックスは、確かモモンガさんはオーバーロードでしたよね?

同じ種族を連れて行って護衛に付けるのは心象が良くない。

で合っておりますか?」

 

「その通りだよ。

ステラに余裕があればな。

しょうがない、ズワースにするか、起きたら私の元によこして。」

 

「承知いたしました。」

 

「次に手土産の件だ。

一応、こちらが最初に失礼をした訳だ

何が良いかな?」

 

「お気持ち程度で消耗品、下級の物でも良いのでは?」

 

「ケチだと思われそうだね。

今後の取引品目としては良いかもしれないけれども。」

 

「では、シルト様の肖像画や銅像を用意いたしましょう。」

 

「エルグリラの住民以外でそれを喜ぶ人がいるのかね?

寧ろオーバーロードの人形の方が喜ばれそうだ。」

 

「余り高級な物も下手に出ていると思われて、搾取しようと考えるのでは?」

 

「そうだね、取り合えず情報かな。

地図を用意しようか、アラン、地図を全体図に戻して貰えないかな。」

 

 

「承知いたしました。」

 

「この範囲の地図を紙で用意できないか。」

 

私は地図を指で示しながら話した。

 

「承知いたしましたが、随分北に寄っていますね。」

 

「我々は食料不足なわけで、食料が無い砂漠の地図作製は打ち切ったと言えば良いだろう。

西の海も同じだ。

単純に地形図だけにしてくれて良い。

何処まで知っているかの情報は最小限だと思うが。

相手が作成方法を知らなければ作成方法を含めてかなりの価値になると思うが」

 

「確かにそうですね。」

 

何せ作った地図の面積の1/4以下だ。

 

砂漠と海を外しても半分にも満たない。

 

北はナザリックの辺りまでだし、西は聖王国、東は竜王国も外している。

 

殆どスレイン法国の地図と言っても良いくらいだ。

 

と言っても、この世界の地図の精度とは比較にならないから地図の作成方法を含めれば手土産しては十分だろう。

 

「他にミドルグレードポーション…アンデットには嫌味になるのか?やめておこう。

未記入の中級羊皮紙(ミドルグレードスクロース)を20本ってところで良いかな。

羊皮紙(スクロール)は商品サンプルとしても良いだろう。

一日一本なら錬成賢者の釜の負担にもならないだろうし、下級(ローグレード)なら草原エリアでかなり大量に作れるから問題は無いだろう。

現状、食料不足だから当面は食料と交換にすればよいだろう。

交換レートは相場が分からないから後日決定相談で。

問題はあるかな。」

 

「「無難なあたりかと思います。」」

 

「後、キュアイーリム戦の戦闘報告は二種類作る。

偽物をアインズ・ウール・ゴウンに渡すから守護者も見ておいてくれ。

口裏を合わせたい。」

 

「市民も見ていましたのでばれるのでは?」

 

「戦闘そのものではなく戦闘に至る経緯と損害をごまかす。

後、アンネは世界樹の雫で蘇生したことにする。

使って無くなった事にするから覚えておいてくれ。」

 

「承知いたしましたがどうしてでしょうか?」

 

「私が戦闘してアンネがいないのは不自然だからだよ。

ところでアレク、分かって聞いているよね。」

 

「そんなことはございません。シルト様のお知恵は私に及ぶことではありません。」

 

明らかに嘘だと分かるのがなんだかね。

 

モモンガさんがデミウルゴスを使うほどアレクを使いこなせていないのがなんとも。

 

千年王国(ミレニアム)は商業ギルドなんだ、商売をしに行くと思えばよい。

書類仕事を終えて準備が整い次第に伺うと返事をする。

多分、午後になる。」

 

私は書類仕事に向かった。

 

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