もう一つのギルド   作:mshr

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第1章2話 謁見

こうなる事を予想してある程度の予定は考えているが、NPC達にも知恵を借りるべきだろう。

 

原作に合わせて闘技場に集めてしまったけれども、よく考えたら玉座の間でもよかったよな、と今更ながらに思ってしまった。

 

もう少しリラックスするべきだろう、と言う考えと、皆の前に出るのだから身ぎれいにした方が良い。と言う思いから自室の風呂に入って外を眺めた。

 

夜だから真っ暗と言う事はなく、波が光っていた。

確か夜光虫の輝きを再現したはず。最も本物は見たこともないけれども。

 

ユグドラシル時代には多少の回復効果があるだけのものだったが、今は暖かくて気持ち良い。

リゾート地にでも来た気分だ。

大風呂は冬エリアにある。

落ち着いたらそちらも楽しみたいものだ。

 

そろそろか?と思い風呂から出て体を拭き始めると、伝言(メッセージ)の魔法で(シルト・クレーテ様、お時間です。)とアランから連絡が来た。

 

呼び出しをアンネにお願いしたはずだが?と言う疑問を抱きながら「ありがとう、着がえたら移動する」と伝言(メッセージ)を返した。

 

装備品を身に着けていると扉がノックされた。

「少し待てくれ」と答え、着がえ終わると「待たせたな。」と言いながらドアを開けると、アンネ、エレア、クスタフの三人が待っていた。

 

「ずっといたのか?」

 

「御身をお守りする事が我らの役目ですので。」

と返事が返ってきた。

 

どうもドアの前で護衛をしていたらしい。

 

室内で待たれても困ると言えば困るのだが、全員で待っている必要もあるまいに。

この辺りも決めなくてはいけないな。

 

世界征服したいとも思わないし、支配者も柄ではないと思うのだけれども、NPC達にとって創造主にして絶対的な存在なのは変えようが無いのだろう。

少なくともこの都市拠点エルグリラの頂点としての決断だけはしていかなければならない。

 

モモンガさんは、本当によくやっていたよ。

知らないうちに世界征服を始めている、なんて事態だけは避けねば。

 

心持ちを新たにして

「では、闘技場に行こうか」

 

「アラン様から準備が整い次第連絡がありますので、それまでお待ちください。」

 

「そうか。」

 

偉い人は後から来るようにと言う事か。やっぱり慣れない。

 

アンネに伝言(メッセージ)が来たらしい。こめかみに手を当てて「わかりました」と返事をしている。

 

「アラン様から、スキュエル様を除いた階層守護者が集まったとの連絡が入りました。」

 

では移動しようか。

 

私がゲートを開けると私を先頭に第二階層の闘技場に移動した。

 

闘技場に移動すると、かなりの質の椅子が用意されていて私が驚いていると。

 

「急な事ですのでとりあえず貴賓室の椅子を移動させました。お気に召されませんでしたでしょうか?」

 

「いや十分だよ。準備に手間を取らせてすまなかった。」

 

「何をおっしゃいますやら。本来ならば玉座をご用意しなければならないところ。シルト・クレーテ様のご寛大なお心に感謝します。皆さん、ご挨拶を」

 

「第一階層守護者 都市長代行 ステラ ケルト エルティア 御身の前に」

 

「第二階層守護者 資源管理者 フェンデル 御身の前に」

 

「第三階層守護者 諜報担当 皐月 御身の前に」

 

「第四階層守護者 拠点防衛隊長 アレク ストリア メリアル 御身の前に」

 

「守護者統括 守護者統括 アラン 御身の前に 

五階層守護者 スキュエルを除き各階層守護者、御身の前に平服奉る

至高なる御方 ご命令を 我らの忠義のすべてを非才なる我らのすべてを御身に捧げることを誓います」

 

「「誓います」」

 

どこぞと同じような光景に思わず引きそうになってしまった。

いや、これだけでは終わらなかった。

 

「親衛隊 アンネ・レンブラント 御身の前に」

 

「親衛隊 ハサン 御身の前に」

 

「親衛隊 エレア ステラ 御身の前に」

 

「親衛隊 クスタフ 御身の前に」

 

「親衛隊 オックス 御身の前に」

 

「親衛隊一同、御身の前に平服奉る

我らの忠義のすべてを、非力ながら剣となり盾となり目となり足となり、偉大なる御身に災いなすものすべてをこの身をもって退けんことを誓います。」

 

「「誓います」」

 

LV100の彼らが非才で非力って一体誰の事なんだろう、と現実逃避したくなってきた。

 

実際、装備品を排除して考えた場合、私は守護者統括のアラン以外には勝てそうにないのだよね。

 

ユグドラシル時代、LV100のマジックプレイヤーとしては最弱層なのだよね。装備品がえげつないから最上位層だっただけで…

 

「君たちが非力で非才ならば誰が非力で非才ではないのだろうか?私には疑問に思えてならない。

君たちとならばこのエルグリラに起こった事態を乗り越えていけると考えている。

先ほど、親衛隊とアレンに言ったが、儀礼時を除き平服する必要はない。

このエルグリラのつまりはギルド千年王国(ミレニアム)の仲間であると考えている。

立場上の上下は有れど、共にこの非常事態に対処するために忌憚のない意見をお願いしたい。

また、今後私の事を呼ぶ場合、シルトと呼んで欲しい。

まずは立ち上がってくれないかな。」

 

「我々のような(しもべ)に対して寛大なるお言葉を賜りありがとうございます。

皆さんシルト様のお言葉です。立ち上がってお話を伺いましょう。」

 

「「はい」」

 

「情報を共有したい、ハサン、外の様子はどうだったのか?」

 

 

「周辺は森林地帯でエルグリラは丘か山の上の高原にあるような形になっております。

周辺を探索したところ、魔獣と思しき生物とアンデットがおりました。

どちらも大した強さではないようですが、シルト様より交戦を避けるようにご命令がありましたので実際の強さの確認は取れておりません。

又、北方、100KM以上離れた場所でわずかに灯りを確認しております。

知性のある生物がいる可能性が高いと判断いたしました。

南方は山岳地帯となっており詳細は不明です」

 

「今の時間帯を考えると、小さな村ではすでに灯りが無い可能性が高いな。それなりの距離で接触できる可能性が高いのではなのか?」

 

「その可能性も有りますが、野営の光の可能性もございますのでなんとも。日が昇った後であればより詳しくわかるかと。」

 

「いずれにせよ都市ごと転移した可能性が高いな。この事態で発生するであろう問題点及びその対策法はあるか?」

 

「まずは私から、守護者統括、及び情報を担当する立場からですが情報があまりにも不足しております。不幸な接触が発生する場合に備えて防衛体制を強化すべきかと。

また、私の力をもって周辺の警戒を行います。」

 

遠隔視の鏡(ミラー・オブ・リモート・ビューイング)などの遠見のアイテムを使用して地図の作製は可能か?」

 

「私の力でしたら、ワールドアイテムクラスの防御が無い限り可能かと。また使用されていても使用されている形跡自体は把握できます。」

 

アランは情報戦特化のビルドだけは有るよな。ニグレトよりもスペックは上回っているはず。諸王の玉座は何ともならないだろうが。

 

「下手に隠ぺいを突破しようとして攻撃を仕掛けたと思われても困る。地図の作成を優先して隠蔽のかけられている場所のみを地図に記載してほしい。サポートに必要な人員の手配もアレンに一任する。」

 

「かしこまりました。」

 

「他にはあるか?」

 

「都市長代行として申し上げます。外部との連絡が途絶えている状態であれば税収がほぼなくなります。また、周辺耕作地帯や交易入手分が無くなる為、食料も不足します。現状の備蓄では2か月ほどで食料が尽きるかと。」

 

「第二階層の生産を考慮してもか?」

 

「その点については第二階層守護者である私から申し上げます。

第二階層は主にマジックアイテムの生産に重きを置いております。

スクロール制作の羊皮紙用に飼育されております魔物の肉類の供給は可能です。

農園エリアではポーション用の薬草、及び一時バフ効果のある高級食材を生産しております。

これらを食料として供給するとしても都市住民42000名ほど及びその他階層の食料を必要とする(しもべ)及びシルト様の必要分はスキル及び魔法を行使したとしても確保できません。決定的に不足するのは主食となる穀類になるかと」

 

肉自体はPOPモンスターだからリキャストタイムの限界まで生産は可能だけれども、確かに42000人以上の食料にはならないよね。

 

「第二階層の生産をあてにした場合、食料はどの程度持つ?」

 

「先ほどの2か月分は通常消費量ですので市民に節約を求めて消費量を抑えた状態、第二階層での食料生産、及び食事が不要になるマジックアイテムを活用するとして、恐らく3か月半かと。

あくまでも金貨の消費を行わない前提ですので、金貨を消費してよいのであればさらに延長は可能です。

ただ、金貨を消費して食料を用意するのは恐ろしく効率が悪いのですが。」

 

都市ギルドの弊害がこんなところで出てくるとはな。最も、金貨の保有量はギルドの中でもトップクラスだったのは間違いないからそれなりに延命はできるか。

と言っても、エクスチェンジボックスに小麦1トンを入れて金貨1枚だったか。

逆に最低レベルの食事1食でも金貨10枚近くを消費する筈だからステラが懸念する理由を理解はできる。

 

単純に42000×3×10=一日126万枚か。

鉱山エリアとWIを併用すれば、余裕で調達できる金貨量ではあるけれども農園エリアや市街を使って食料生産をした方が良いのか?

 

「そうだな、私とラスターで限界まで魔法を使って農園エリアで食料を生産する。または第三階層や都市外を開墾するのも一つの手ではあるな。」

 

「ラスターは兎も角、シルト様にそのような事をしていただくわけにはいかないかと。

ドルイド系の魔法が使えるものなら可能な仕事ですので。」

 

「これを使用した方が圧倒的に効率は良いだろう。」

 

私は自身の手にはまった手袋を見ながら答えた。

 

因みに、これを装備できるのはエルグリラでは私とラスターしかいない。

 

ラスターはこれを装備できるようにビルドを組んでいるからできるのであって、通常こんな訳の分からないビルドを組んだりしないから、ユグドラシル全体でも私とラスターしか装備できなかったとしても驚かないのだが。

 

私が装備なしでは最弱クラスのマジックキャスターである理由でもある。

 

逆に、装備した状態でのD P M(時間当たりのダメージ量)は冗談抜きでシャレにならなかったからNPC達が抱いているであろう最強のマジックキャスターと言う評価も間違ってはいない訳ではあるが…燃え上がる三眼にばらされてからPKを挑んでくるマジックキャスターの多かった事と言ったら…装備できないと言うのに。

 

「それを奪われる可能性を考慮すると、ラスターに装備させて都市の外に出ること自体が危険です。」

 

「確かにそうだな。これなしでどの程度の期間で必要量の食料生産が可能になるかの調査も必要だな。他には」

 

「防衛部隊長として確認したいのですが、シルト様及び親衛隊の皆さまはどの程度戦力として考慮してよいかと?」

 

「エルグリラを守るために労力を惜しむ気はないよ。遠慮せずに。」

 

「極力お手を煩わせないようにいたしますが、脅威度が予想以上の直接攻撃が行われると判断した場合には、外部の脅威度が判明するまでは被害を抑えつつシルト様の攻撃が行いやすいように対処する方向で行います。

都市部に傭兵部隊がおりますので、余程ないかとは思いますが」

 

「傭兵部隊?」

 

「出稼ぎで外貨を稼ぐ者たちです。現在、都市内にいたものは確認が取れております。500名中50名ほどは確認が取れておりませんが。」

 

500名には身に覚えがある。

運営していたレンタル傭兵屋の傭兵NPCか。

一応、千年王国(ミレニアム)の所属になるのか?

ユグドラシル時代には拠点防衛用には利用できなかったのだが…まあ、ギルドメンバーが傭兵NPCとしてレンタルして利用すると言う裏技が無いこともなかったけれども。

 

と言うか、最終日に50名ほども借りていたやつがいたのかよ。

最後の一週間のモンスターはノンアクティブだったじゃないか。なんで借りていたのだ?

 

今更突っ込んでもしょうがないので400名以上も予定外の戦力がある事を良しとしなくてはいけないな。

 

普通に、世界征服できるような戦力だよな…やりようによってはナザリック攻略も不可能ではないのか。

 

その気はないが、最悪、交渉材料にはなるか。

 

「他にはあるか」

 

「知的生物が確認された場合の接触はいかがいたしましょう?」

 

「その場合は私の部隊を送って様子を見てからになるのでしょうか?」

 

皐月からの質問が来た。

 

彼女自身が職としての忍を持っている上、第三階層は奇襲用の暗殺系統のモンスターが配置されている為、設定で諜報担当になっている筈だった。

 

「直接的な情報も欲しい。地図で集落が確認されたら先に皐月の部隊を送りその情報を基に旅商人等に偽装したものも送り込む手配をして欲しい。傭兵団がいるのならそちらからも人選を行っても良い。皐月、頼まれてくれるか?」

 

「ご下命、承りました。」

 

「食糧問題もある。できれば交易で入手できるようにしたい。よろしく頼む。」

 

「多大なるご期待、皐月は嬉しく思います。」

 

設定上の性格は時代劇の隠密頭…だった筈。微妙に違う気がするのだが?

 

「親衛隊に序列はあるのか?」

 

「先任順となっております。ご変更されますか?」

 

「問題ない。アンネを隊長に、ハサンを副隊長とする。

二人とも悪いが跪いてくれ。」

 

「承知いたしました。」

 

「略式で悪いが」

 

スタッフ・オブ・ミレニアムでアンネの肩をたたき

 

「アンネ・レンブラント、お前を私の親衛隊隊長に任ずる。」

 

「謹んでお受けいたします。私の髪の毛一本、血の一滴まで全身全霊をもってシルト様をお守りする事をお誓いします。」

 

ハサンの肩をたたき

 

「ハサン、お前を私の親衛隊副隊長に任ずる。」

 

「謹んでお受けいたします。アンネ様と同じくシルト様に絶対の忠節を」

 

「立っていいぞ。」

 

周りから視線を感じる。

何というか二人以外の全員が羨ましそうな視線を向けているのだ。

 

「落ち着いたら改めて守護者、親衛隊全員の任命式典を行おう」

 

「「「ありがとうございます。」」」

 

正解だったらしい。

 

「取り合えず、アンネは私の護衛として動いて欲しいが、残りのメンバーは守護者たちを手伝って欲しい。」

 

「承りました。」

 

「後、エルグリラの外に行く場合はアンネとハザンは最低限連れて行くのでそれを前提に予定を組んで欲しい。ハサンは皐月の下で実働部隊の指揮を執る事もあると思うから、外に出る際にはアンネや皐月と相談するので。」

 

 

「「「承知いたしました」」」

 

「他に決めておかねばならない事は有るか」

 

「シルト様のお手を煩わせるような事はないかと。」

 

「本当は、守護者と親衛隊にどの程度強さに違いがあるのかを知りたかったので模擬戦の為に闘技場で集合した訳ではあるが、時間が惜しいな。今日は取りやめておこう。

私は今から寝ることにするが緊急事態が発生した場合は問答無用で起こして欲しい。

休息が必要なものは取れる時に適時取るように。

アイテムで必要が無くなるとはいえ、睡眠や食事をとった方がパフォーマンスも良くなるだろう。

以上だ。よろしく頼む」

 

私は居室に移動した。

 

多分、玉座の間ではなく闘技場に集合させたのはごまかせた筈…だよね。

 

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