もう一つのギルド   作:mshr

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閑話 第三回NPC選手権

「シルト、アンネが決勝大会に出られたぞ」

 

ユグドラシルにINしたらギルドメンバーに声をかけられた。

 

INする前に確認して知っていたけどもこう答えた。

 

「そうか、良かった。

実際に戦うなら強いと思うけれども、予選は単純な戦闘スペック予測で決まるのだったよね。」

 

傭兵NPC選手権はワールドチャンピオン決定戦と違い、開催期間が短い。

 

それもその筈で、本人がINしている必要が無いからだ。

 

自分で動かす訳でもないのでプレイヤーの疲労も考慮しなくていい。

 

何なら参加申し込み時の傭兵NPCデーターを複製した者が戦うので、私の傍らにはアンネが居たりする。

 

戦い毎でリセットされるので連続した戦いも可能である。

 

参加申し込み時、と言っても、不正を確認されたら確実に決勝大会に出られない。

 

例えば、その時だけ仲間からかき集めた最高装備を装備させると言ったようなものだ。

 

細かい違反仕様が分からない辺りは、このユグドラシルで『運営ふざけるな』、とか言われる理由の一つだと思う。

 

こんなだから、運営の仕様を予想しての穴をついたり、ギリギリを狙ったり、ハッキングしようとするような困ったギルド(※千年王国のこと)ができるのだと思う。

 

運営の仕様のギリギリをついたエロメイド衣装や水着(と言う設定のほぼエロ下着)の売れ行きが良いのが良いことなのか悪いことなのかは考えてしまうが。

 

エルグリラに買いに来ていたバードマンがピンク色のこれまた仕様のギリギリをついたようなスライムに引きずられていったのを見たメンバーもいるらしいが、売れなかったのは残念である。

 

そのスライムの見た目にインスピレーションを受けたメイドや執事を作ろうとしたメンバーが居たので確認のため以外に実装するのは流石に止めた。

 

販売用のデーターとしてあるのは良いが、男根様はやめて欲しい。

 

しかも、意外と売れたのだから世の中には困ったチャンは一杯いる。

 

男根様に襲われた女性プレイヤーがバットステータスになっていないのに錯乱状態になったそうだけれども…ゴキブリとどちらがマシなのだろう。

 

話を戻そう。

 

「何位で出場できたのだ。」

 

「15位だからぎりぎり。」

 

「ステータスだけの戦いだとこうなるのか?」

 

「参加総数から言って殆ど誤差じゃね?

実際、去年も一昨年も一位が優勝している訳でではないし。」

 

「だな。

正直に言って団子なら決勝トーナメントを16体までに絞らずにもっと増やしても良くないか?」

 

「見られるのはたった15戦しかないよな。」

 

「3位決定戦とサーバー優勝NPC対抗戦があるだろ。」

 

「サーバー優勝NPC対抗戦の方が多いと言うのがこれはまた。」

 

「対抗戦は総当たりだったっけ?

戦闘AIがポンコツでまともに試合にならなかった試合があったから、トーナメントは少なめになっているのでは?」

 

「第一回で、両方共、MP切れを起こしているのに接近しなくて決着がつかなかったってのがあったのだっけ?

どうなった?」

 

「確か残HP割合で決定したはずだよな。」

 

「三年目で戦闘AIが馬鹿すぎるままって事は無いのじゃないね~?」

 

「基本的に主人を守れって設定の傭兵NPCに主人が居ない状態で戦わせるのに無理があるのだよ。

まあ流石に予選で排除しているだろう。」

 

「それよりアンネの試合は何時だ。」

 

「初戦は第三戦目だな。」

 

「対戦予定相手の試合を見ても対策が取れないからな?」

 

「そもそも、傭兵NPCの設定は触れないからね。

拠点NPCを作る際の参考にしかならないよ。」

 

「そう言えば、シルト、お前はお金を賭けてないよな?」

 

「何を言っているのですか、アンネにお金を賭けていますよ。

御祝儀です。」

 

「た か し!お前は幾らかけたのだ?」

 

「ガンダルフさん、ゲームで本名を言うのはマナー違反ですよ。」

 

「ちゃんと答えろ!」

 

現実世界(リアル)では私はガンダルフに頭が上がらないのだ。

 

私がギルドマスターなのも、ガンダルフに押し付けられたからだ。

 

「個人の手持ちの金貨の半分を優勝に…ご祝儀ですよね。」

 

「本当だろうな?後で家に行って確認するからな!」

 

アバターは表情不変な筈なのになんで気が付くのだ?

 

「今月ユグドラシルで稼いだお金の全額を賭けています。

やっぱりご祝儀ですよね。」

 

「本当か?今回は許すけれども賭け事は止めろ、いいな!」

 

「分かってますって。」

 

「大体そんな金があるなら結婚しろ!

それともなんだ、アンネは俺の嫁って言うのか?」

 

(※この段階では前世の記憶は無いの可笑しいと思っていないが、本人はまだギリギリ10代。

寿命が縮まり、子供でも働くのが当たり前のアーコロジー外では結婚も早くなっています)

 

「そもそも、相手が居ませんよ。

僕の仕事で出会いがあるとでも?」

 

「無いな。」

 

「そうでしょ。大体アンネが負けるはずがないでしょう。お金は増えますよ。」

 

「それを言い切れるお前をすごいと思う。

あんな、極端なスペックで、普段の戦わせ方もおかしいだろうに」

 

「ガルト、装備が確実に違うだろう。ヴァルカンの作った装備だぞ。」

 

「あんな妙な装備の依頼はお前だけだ。

面白いけれども。」

 

「まともにやったらワールドアイテムもワールド職も入手出来ていたのか?

他人がやらないような事をするのが俺たちだろ?

よそは知らん。」

 

「まあ、そういう意味ではうちらしいと言えばうちらしいのか?」

 

「そろそろ始まるぞ。」

 

『さあ、いよいよ第三戦です。

出場するのは千年王国(ミレニアム)、シルト・クレーテ保有のアンネ・レンブラント~

対する……』

 

「いよいよだね」

 

「どう思う。」

 

「アンネの圧勝」

 

「そう思うのはお前だけだ。」

 

 

実際、アンネの召喚天使の数の暴力で相手は叩き潰された。

 

視聴している動画のコメント欄も酷いことになった。

 

「無茶苦茶いろいろ言われているぞ。」

 

「戦いは数だよ兄貴」

 

「兄貴って誰の事だ?」

 

「お前が居ないとこうなるのか?

どうやって教育したのだ?」

 

「見ていたけれども、ひたすら指示を出していたぞ

良くあの根気が続くよな」

 

育成型傭兵NPCのAIの最初はポンコツなのでかなり仕込まなければならない。

 

簡単に言うと、直接命令をし続けて教育する訳だ。

 

指示を出し守るべきプレイヤーが居ない状態では傭兵NPCのAIがポンコツになってしまう事態が第一回大会では多発したのだ。

 

なので、プレイヤーがセコンドに付く大会が別途開催されるきっかけになった。

 

今回の大会にセコンドはないが。

 

『準決勝、第一試合…

対するは召喚天使の数の暴力で押し切ってきた、千年王国(ミレニアム)、シルト・クレーテ保有のアンネ・レンブラント~

 

奇しくも同じ天使同士の戦いだ~』

 

「召喚天使の半分は相殺されないか?」

 

「まあ、見ていろよ。」

 

相手の天使は、天使を召喚すると前に押し出してきた。

 

召喚モンスターを盾役にするセオリー通りの戦い方だ。

 

対するアンネは召喚した天使を置き去りにして相手の召喚天使に向かって追加で召喚をしながら突撃を開始した。

 

当然相手の召喚天使たちはアンネに集中攻撃を開始した。

 

本体が倒れれば勝利なのでこれまたセオリー通りだ。

 

だが、天使同士の場合、直接攻撃でないと攻撃の効きが悪いのだ。

 

要するに遊兵率が上がった。

 

対してアンネの召喚天使たちは、相手の召喚天使達の後方に回って削り始めた。

 

要するにアンネが囮になって相手の天使隊を攻撃したのだ。

 

コメント欄が

〈あり得ない〉

〈あれでは本体が削られるのが先だろう〉

〈召喚天使を完全に制御しているのか?〉

〈数から言って完全制御は出来ないだろう〉

と言ったコメントで埋め尽くされた。

 

確かにプレイヤーが、多数の召喚モンスターを完全制御する事は出来ない。

 

そもそも、出来るなら、【指揮官系ビルドを組んで自分がほとんど動かなくていい状況で三体の傭兵NPCを制御出来たら相当優秀なのだ。】と言われる事も無い

 

これは、召喚モンスターにも当てはまる。

 

だがAIはコンピューターなので、ちゃんと設定した場合は人間よりも余程判断が早い。

 

なので、仕込めばかなりのレベルで可能と言えば可能だったりする。

 

実際、拠点NPCならかなりの数を制御できるようなプログラムを組めなくもない…戦闘AI の担当は死にそうになるが。

 

結局、アンネは相手の召喚天使の攻撃を耐えきり、そのまま相手の天使は撃破された。

 

「まあ、想定通りだったな。」

 

「あんな戦い方をどうやって仕込んだのだ?」

 

「仕込むところを見ていても不思議でしょうがない。

今までの二戦の戦い方と完全に違うからな。」

 

「倍率は結構高かったから、後一戦でお金ががっぽり」

 

「図に乗るなよ、ビギナーズラックで当たった奴がギャンブル中毒になるのだ」

 

「すいません、ガンダルフさん。」

 

「ところで、次の相手は召喚を封じるアイテムを装備していないか?」

 

「今までの対戦を見ているとそうだろうね。」

 

「お前、余裕だな。

アンネの物理攻撃力は魔法詠唱者(マジックキャスター)より低いのではなったか?」

 

「盾役に攻撃力はいらないだろう?」

 

「パーティーならそう言う考え方もできるけれども、どうするのだ。」

 

「対策は打ってありますよ。

次の戦いを見てください。」

 

「何をしたのやら?」

 

『いよいよ決勝戦、ヴァナヘイム最強の傭兵NPCはどちらになるのか?

先ほどは素晴らしい制御をした、千年王国(ミレニアム)、シルト・クレーテ保有のアンネ・レンブラント~

対するは、……

天使と悪魔、勝利の女神はどちらに微笑むのか、いよいよ開始です。』

 

「やっぱり召喚できないな。」

 

「悪魔の召喚は、召喚数は多いけれども下手すると敵味方の関係なしで攻撃するからね。

それを防ぐ為に持たせているのかな?」

 

『おっと、アンネ選手防戦一方だ~』

 

「そうなるよな」

 

「それ以前に物理攻撃は完全に禁止命令を出しているからね。」

 

「「そうだったのか」」

 

「アンネを購入して以来、一回も物理攻撃はさせてないよ。」

 

「お前のやる事が信じられない。」

 

「普通の発想ではないな」

 

「ヴァルカン、お前にだけは言われたくないのだが」

 

『おーと、ここで超位魔法だ~』

 

〈成功するはずないだろう(笑)〉

〈消費アイテムは禁止だろ、どうやって発動するのだ。〉

〈やっぱりAIは馬鹿だ〉

〈NPCに超位魔法WWWW金の無駄〉

 

「発動までの90秒、耐えれるはずだ」

 

「そうなのか?」

 

コメントが大荒れの中ギルドメンバーは固唾をのみ始めた。

 

「あと10秒…5,4、3、2、1」

 

『おっと、指輪の戦乙女たち(ニーベルング・I)の発動だ~』

 

ワールドアイテムでもなければ超位魔法は防げない。

 

なので4体の織天使(セラフ)が具現化した。

 

中途半端な対象を召喚しないで良くできた。

 

ここだけが心配だったのだ。

 

コメント欄が読めないほどの勢いで流れ始めた。

 

これだけと思うなよ。

 

相手に織天使(セラフ)2体を充てると2体と後退。

 

アイテムボックスから、その2体に武器を渡した。

 

2体の位置を変更し、武器を入れ替えると再度相手の悪魔の正面に立った。

 

召喚モンスターの武装を変更できないと何故思った。

 

コメントはさらに読むのも馬鹿らしい状態になった。

 

「普通の発想ではないな。」

 

「でも、これで勝利確定だ。」

 

「一定ダメージを受けたら失敗する筈の超位魔法を止められない程の防御力って頭おかしい」

 

「褒めても何にも出ないぞ。」

 

「俺も褒められたのか?」

 

「防具はヴァルカン製だからね、ありがとう。

織天使(セラフ)に渡した武器もね。」

 

「シルト、お前ほどではない。

武器まで防具として製作しろって依頼は他にはない。」

 

「「嘘だろ」」

 

「アンネ、これでお前が最強だ。

優勝賞品でもっと強くなれるぞ。」

 

何となく、アンネがほほ笑んだように見えた。

 

その後、アンネはサーバー別優勝NPC対抗戦でも優勝し景品としてイージス(不壊の盾)を入手した。

 

育成NPCが優勝できた最後の大会ともなった。

(以降は神々の使徒によるNPC、個人的にはアンネの方が強いとも思うのだけれども…過去の優勝NPC は参加不可)

 

因みに、運営や千年王国(ミレニアム)や私にチートだとかインチキだと言うメールが殺到した。

 

傭兵屋や武器屋の売り上げは上がり、装備品の作成依頼や傭兵NPCの育成依頼も殺到したから良いけどね。

 

後日って言っても数年後、アンネがロンギヌスを食らったのはこの為であろう。

 

その頃は世界樹の雫を入手していて助かったけれども、装備品まで考えるとマジでシャレにならないなと思った。




アニメのシャルティア戦のフォールンダウンで確認したら85秒だったけれども切りよく90秒

ちょっとした裏話

アンネを何故強くしたかと言うと、当初はレンタル傭兵屋の設定が無かったので、これ位強くしないとナザリック勢に対抗できなかったから。
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