もう一つのギルド   作:mshr

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第3章3話 金銭とは

正直、マジックアイテムよりも期待していた物が置かれた。

 

街を視察した結果、ちゃんと指示を出さなくては回収されないと思った物だ。

 

少ない順に、白金色、山吹色の山、黒っぽい山、緑青色の山山…250年経てばこうなるか。

 

「シルト様の御指示なので回収しましたが、どうしてこのような物を回収したのでしょうか?」

 

皐月が聞いてきた。

 

「白金貨、金貨は分かるのですが、残りの二つに価値があるのですか?

白金貨、金貨も小さくて品質が悪いようですが?」

 

モモンガさんはNPCが人間を見下していてセバス以外を街に情報偵察に出せなくて困っていたけれども、私はこの貨幣問題、つまり金銭感覚の差で未だに人を送り込めていない。

 

昨日の段階で計画も人員編制も終わっていたのにエナ多種同盟国に偽装商会も傭兵団も送り込む許可を出せていないのだ。

 

「これは多分この世界の通貨だ。

あの竜王にゾンビにされて長い年月が経っているのだろうな。」

 

そう言うと、黒っぽい山に近づき、ユグドラシルの地雷魔法の一つである、錆取りの魔法を使った。

 

この魔法は酸化や硫化などをした金属を元に戻す魔法で、要するに本来は武器や防具のメンテナス用の魔法なのだけれども、何故地雷かと言うと、そもそもマジックアイテムが基本のユグドラシルで、耐久力が低下する事は有っても錆びること自体がほぼないからだ。

 

一応、データーを込めていない鉄の剣や鎧もあったけれども、今日始めた初心者でも、初心者エリアで戦ってデーターを注入すれば下級マジックアイテムになってしまうので、本当に使い道がなかった。

 

一応、鉄の武具を放置すれば錆びたらしいのだけれども、そのころにはそもそも鉄などと言う材料の武具を使うこと自体が無いと言う有様だった。

 

なので覚えても、ファウンダーを装備する目的の私やラスター以外はデスペナルティを使って別の魔法にしていると思われる魔法だけれども、このような場合では役に立つ訳だ。

 

黒っぽい山は銀色へと変化した。

 

次に緑青色の山々に錆取りの魔法を使うと銅色に変化した。

 

つまりは銀貨と銅貨の山だ。

 

「銀貨と銅貨だな。」

 

そう私が言うと、

 

「銀や銅が通貨としての価値を持つのですか?」

 

と、この手の感情を持たない鏡にとりついている下級精霊以外に驚かれてしまった。

 

そう言えば、そろそろ地図の作製は止めても良いかな?

 

因みに私の指示は小さい金属の円盤(メダル)の回収である。

 

「実際、通貨はそのものに価値が有るか無いかでは無くて、使用する人々が価値が有ると判断するか否かだよ。

何なら紙でもそれどころか現物が無くてもいい。

実際、コンソールで金貨を使う時は勝手に宝物庫の金貨が消費されるけれども、同じようにどこかに預けて、そこに預けた数字の変化だけでも買い物は成立するはずだ。

その場合、預け証は紙だけれども、貨幣としての価値が有るのは分かるだろう?

借用書だって、借りた人の信用次第で通貨としての価値を持つよ。」

 

経済学の基礎だけれども、ユグドラシル金貨と言う、金としても触媒としても価値が有る現物で決済している人たちから見たら驚きの発想だったのだろう。

 

玉座の間が静まり返った。

 

ふと、市民は収入があるようだったけれども、守護者って収入があるのだろうか?と疑問に思った。

 

そう言えば、ナザリックでは、アインズ様にお仕えする事は至上の喜びであって賃金が発生する事はおかしい、と言う考え方だったけれども、何となく、ある一定以上の地位になると収入が下がっていくスレイン法国のシステムの始まりが何なのかが分かった気がした。

 

「つまりは価値観の相違だよ。

実際、この通貨がどの程度の価値なのかを知らなければならないし、この世界とエルグリラの住民の価値観の相違を埋めずに自由交易を行う事は出来ない。

当面は統制交易になるね。

エナ多種同盟国には偽装商会と傭兵団は金銭に対する価値観の相違がある事は理解させた上で送って欲しい。

書類では一時保留にしていたけれども、よろしくお願いする。

昨日の報告書次第で、別の場所にも同じような人員を送るのでその人員にもその点はしっかりさせておいて欲しい。」

 

「「承知いたしました」」

 

「念のために言うのだけれども、ステラとフェンデルにもこの話は伝えておいてもらえるか?」

 

この場に仕事を大量に抱え込んでいる二人は居ない。

 

彼らは昨日の成果物の確認であるこの場に来るほど暇では無かったからだ。

 

「アレク、ちょっとした疑問なのだけれども、お前から見て人間種とはどんな存在か?」

 

千年王国(ミレニアム)で唯一、カルマ値-500の彼に聞いてみた。

 

何せ、ナザリックとは違い頂点にも同僚の守護者にも庇護下の市民にも人間種がいるのだ。

 

私は習得魔法の都合上でオーレオール・オメガと同じく不老不死だから特別扱いにするのか、それとも、単純にエルグリラと言うくくりで見るのか、そもそも、人間を単純に下等生物とは思わないのか。

 

彼が、人間種を下に見るなら、ナザリック陣営のNPCの意識改革は不可能と言って良い。

 

「どのような存在ですか?特に考えた事は有りませんね。

どうしてそのような質問を?」

 

「今朝、ナザリックのモモンガさんと伝言(メッセージ)で話して、ナザリックの守護者達が人間種を下等生物とか、おもちゃとか、虫けらみたいな感じで見下しているらしいのだ。

カルマ値に関係するのかどうかを知りたくてアレクに質問したのだけれども。」

 

「種族、と言うくくりでは気にしたことはないですね。

千年王国(ミレニアム)に敵対するなら虫けらのように踏みつぶしてごらんに入れますが。

ところで、その人間にシルト様は入っているのでしょうか?

でしたら、ナザリックの下賤の輩を攻め滅ぼしに…」

 

「ちょっと待て、その考えに困ってどうにかする為にモモンガさんがお願いしてきたのだ。」

 

「下の者の失態は、上の者がとるべきかと?」

 

「そもそも、食糧事情がどうにかなる迄は絶対に許可はしない。

単純に、千年王国(ミレニアム)以外の者の事をどう思う?」

 

千年王国(ミレニアム)の為に動く駒であり資源です。」

 

発想的にはデミウルゴスに近いのか?

 

彼は、人間と亜人の区別をせずに牧場経営していたよな。

 

多分、デミウルゴスもナザリックで無いものは種族に関係なく家畜か獣の類なのだろう。

 

せいぜい、ナザリックに(こうべ)を垂れて恭順の意志を示した【ナザリックの庇護下】の者とそれ以外でどうにかする位なのだろう。

 

実際、モモンガさんもその程度までは持ち込めていたようだし。

 

「アンネは今の意見を聞いてどう思った?」

 

「この世界にいるのは神たるシルト様の事を知らない者たちなのです。

分からずに敵対したならシルト様の御威光を知らしめ、恭順する機会を与えるべきかと。」

 

カルマ値+500でもあんまり変わらないような気がする。

 

確かにナザリックのカルマ値+勢も、無辜の民衆や何も知らない子供までは?と言う感じだったよね。

 

そう言えば、カルマ値+200の聖騎士団長様は聖王女至上主義で融通が利かなかったな。

 

「そうなのか、ところで、アレクも私を神とか思っているのか?」

 

「そうです、この世に具現化した慈悲深い破壊神の化身以外の何物でもありません。」

 

子宝の神と破壊神…元凶は自分自身だよね。

 

ちょっと、納得できないけれども。

 

「そうなのか?

そうすると、メンバーの仲間も神の化身なのか?」

 

「「「そうです。」」」「「違います。」」

 

違いますはアンネとハサンだ。

 

傭兵NPCでも元仲間の傭兵NPCの二人は違うのだけれども、この二人は純粋に私だけのNPCだからか。

 

アルベドのようにこっそりモモンガさん以外の相手を裏切り者と思っているのとは違うから堂々と言えるのだろう。

 

「私も仲間たちも神と言われるような存在ではないと思うけれどもね。」

 

一々否定はされなかった。

 

実際に古代の神話を読んでも神自身は自分を神と認識していないように思えるもの。

 

人間から見たら神でも、神から見た神は神にあらず。と言う訳で、一切の矛盾が無いから彼らの考え方を私が変えるのは難しい。

 

私とモモンガさんが対等である事をモモンガさん自身がNPCに分からせるしかないな?

 

その為のきっかけを作るしかないのだけれども、前途多難だよ…

 

現状では策略以外で私がモモンガさんに恭順の意志は示せないし、逆もまたないのだから。

 

「地図なのだけれども、これ以上の範囲は必要か?」

 

現在エルグリラを中心に約2000Kmの地図が完成していた。

 

既に厳密には円形ではなくなっている。

 

北が氷の大地か海になり、そこで止めて、その労力を北西部に注いだらしく、北西の半島は海になるまでできており、そこは少し突き出ていた。

 

「少なくとも、北は必要ありませんね。」

 

「西は要るのか?」

 

「先日の高度な遠視魔法のやってきた先が判明しませんので。」

 

「確認されたものもあるのか?」

 

「この二か所です。」

 

北は…どう見てもツアーです。

 

何となくだけれども、リ・エスティーゼ王国とアーグランド評議国の国境になっている山脈に居ないか?

 

もう一か所は、地図でギリギリの東北東の場所なので距離で2000Km離れている事になる。

 

どの真の竜王だろう。

 

大陸は多分Гみたいな形なのだろう。

 

南東も海らしき地形だったりする…この世界の海は塩水でないからな、北東の湖と同じで見間違いでなけれればだけれども。

 

エリュエンティウまでが、ざっと南南西に750Km、ナザリックまではざっと北北西に850Km、王都リ・エスティーゼまでが北西に1100Km…多分、青の薔薇の逃亡先の炎で清められた廃都(元インベリアの王都)と思われる場所は南東に100Km程。

 

イビルアイはメンバーを連れて直線で1200Kmも移動したのか…魔力量によるけれども、テレポテーションでは中継地点で休憩を挟んで魔力回復させながらでなければ無理だな。

 

いや、最終日の1世界(サーバー)で東京都3個分の広さしかなかったユグドラシルのフィールドから大幅に移動できる距離が伸びているのは分かるので、もっと一気に移動できるかもだけれども…何をしてもMP1消費の私では魔力追加による延伸距離が今一分からないのだ。

 

「遠視による確認が入って、何もしてこないのなら今の所は静観するつもりではないのかな?

確認された二体を監視できていれば良くないかな?

それよりもアランには探して欲しいものがある。

昨日は2つも見つかったけれども、持ち主が居ないワールドアイテムだよ。

あっても、どの勢力が保有しているかを知りたい。

地図の範囲で良いけれども調べられるのか?」

 

「畏まりました。」

 

ユグドラシルでは持ち主が居ないワールドアイテムなど、多分、無銘なる物品書(ネームレス・アイテムブック)だけだっただろう。

 

条件を満たすと現れるので、逆に言うとただ単に置いてあったり落ちていたりはしなかったからだ。

 

因みにファウンダーは初めて装備条件を満たしたプレイヤーが入手するようになっていたと思われる。

 

こんなだから、最終日でも発見された事すら無いワールドアイテムが50個位はあったのではないかと推定されている。

 

これらがどうなったのかを知りたいし、この世界でも条件を満たせば入手できるのかも知りたい。

 

人員が居ても限界はあるのだな。

 

「アレクは、三人のナザリックの報告書を読んで取りまとめをして欲しい。

分からない点はそれぞれを呼んで聞いてもらっても良いので三人は協力して欲しい。

ただ、アンネとハサンは同時に呼ばないで欲しい。

どちらかは私の護衛についてもらうので。」

 

「承知いたしました。」

 

「皐月は各国の犯罪者を調べて欲しい。

山賊辺りなら捕まえてしまって情報源にしたいし、裏組織ならばれないように制圧して乗っ取るのもありだ。

居なくなってもかまわない相手や、ばれずに処理できるならそれでいいし、最悪そのような組織があると言う情報だけでも利用できる可能性があるからそれだけでもいい。

この世界の法律が分からないけれども、犯罪者なら無理やり情報をとってもさほどの問題にはならないだろう。

あぶり出し方法は任せるし人員も元傭兵を使ってもかまわない。

お願いできるか?」

 

「シルト様の御期待に応えます。」

 

「他に何かなければ、書類仕事に移るけれども。」

 

「南の拠点と思われる所、エリュエンティウは如何いたしましょうか?」

 

どうしようか?

 

プレイヤーが既にいないのは分かっているのだよね。

 

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