もう一つのギルド   作:mshr

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外交と戦争と
第4章1話 エルフ王国攻略


使節団を送り出した翌日、予想はしていたけれども…

 

書類仕事をこなしている私に早速レイラから伝言(メッセージ)がやってきた。

 

『シルト様、申し訳ありません。

エルフの王様を叩き潰して取り押さえました。』

 

「わかった、すぐ行く。」

 

予想出来ていたから良いけれども、出来ていなかったら混乱していたよ。

 

しかし、一日で会えるのも凄いな。

 

「如何されました。」

 

「私の予想通りにエルフの国で問題が発生したので向かう。

アンネ、ハサン、付いてきてくれ」

 

「「承知いたしました。」」

 

伝言(メッセージ)「アラン、アンネとハサンを連れてエルフの国に行くからよろしくお願いする。」

 

『承知いたしましたが、エルフの国で何の問題がございましたか?』

 

「エルフ王を叩き潰したらしい」

 

『そんな馬鹿な!』

 

「なので収拾を付ける為に私が向かう」

 

『了解いたしました。お気をつけください。』

 

あんまり感情が無い精霊でも驚くことがあるのだな。

 

こんな事も有ろうかとハサンは近くに居て貰ったよ。

 

某宇宙戦艦の技師ではなので、別にすごくもなんとないけれども。

 

「アンネ、シルト、では行くぞ。」

 

と言っても、指輪をステラに預けてからだけれどもな。

 

レイラを基準に上位転移(グレーターテレポテーション)で移動すると、何人ものエルフがボコボコにされ拘束させられていた。

 

「シルト様、お手を煩わせてしまい申し訳ありません。」

 

レイラが謝ってきた。

 

こうなる事が分かっていただけに心が痛んだ。

 

「気にするな、半ば予想はしていた事だ。

ハサン、周辺で怪しい動きをしているものが居ないか確認してくれ、場合によっては殺さずに制圧しろ。」

 

「承知いたしました。」

 

探知、探索系のビルドでも、流石にレベル差があるので遅れは取らないだろう。

 

番外席次はこの段階では動いていないだろうし。

 

「しかし、よく予想されていましたね。

最初、兄妹の振りをしろと言う意味が理解できませんでしたが、実際にそうする事になるとは思いませんでした。」

 

「そんなに難しいか?

傲慢な王なら、レイラを貢物位にしか思わないのではないかな?」

 

ごめんなさい、嘘をついています。

 

「で、誰がエルフの王だ?」

 

「こちらです。」

 

まあそうだよね。

 

この一人だけ拘束魔法ではなく二人がかりで取り押さえているのだから。

 

「私にこのような事をしてただで済むと思うのか?」

 

「確かにただでは済まないね。

現に戦争になってしまった。

決着はあっという間だから、歴史に残るほどの短期戦争になるのかな?

ところで、どれくらいの時間がかかった?」

 

「戦闘開始から五分もかかっていません。

そのエルフの王がいなければ、一分かかっていないかと。」

 

デケム・ホウガン以外なら恐らくレイラでも敵わないのではないのかな?

 

完全に過剰戦力だ。

 

デケム・ホウガンはLV80位だっけ?戦闘職のLV100のエルフ5人相手では5分と持たないのは直ぐにわかる。

 

上位排除(グレーター・リジェクション)で根源の土精霊を排除できる者もいたからよけいとだ。

 

多分、殺さない事の方が難しかったのではないかな。

 

「しかし、エルフは父の言う通りどんな生物よりも強くなれる素晴らしい種族だな。」

 

ボコボコにしたのがエルフなので勘違いが治らないらしい。

 

「エルフこそ最高の種族だと言うのに何故その男に頭を下げる。

その男を取り押さえろ」

 

「如何いたしましょうか?」

 

アンティリーネ方式の教育で治るのかな?

 

「そこの馬鹿(デケム)千年王国(ミレニアム)にご招待してボコボコにして差し上げろ。

の前に、お前はなんでエルフの王様なのだ?」

 

「下等種族が分からないのか?

一番強いからだ。」

 

「と言う事は、こちらの者がお前の代わりの王様で良いな?」

 

「構わないぞ、脆弱な失敗作など好きにするとよい。

それよりも同じ父を持つ強き者同士交わり強きエルフの子をなそうではないか。」

 

「これで終戦か。

誰か王様になりたいか?」

 

デケムの言葉の後半を意図的に無視してレイラと五人の元傭兵NPCに聞いた。

 

全員が首を横に振り

 

「シルト様を差し置いて王を名乗るなどできません。」

 

と返事が返ってきた。

 

「そうか、ではこの地域の領域守護者と言う事で。」

 

「領域守護者?お前は父と同じ転移者なのか?」

 

やっと気が付いたらしい。

 

と言うか、都市ごと転移したとちゃんと説明していないのか?

 

「ちょっとした疑問だけれども、ちゃんと会談をしたのか?」

 

「いえ、私を見るなり手を掴まれて奥に連れていかれそうになりまして。」

 

頭が痛くなってきた。

 

幾らなんでもこれは無いのではないかな?

 

かつてはスレイン法国と協力体制だった筈だけれども、よく協力が出来ていたな?

 

デケムは無視するとしよう。

 

拘束魔法で拘束されている側近に話を聞くことにした。

 

「そこの前国王が退位したらしいけれども、次の国王は誰になるのだ。」

 

現状は勝者として敬語や丁寧語を使う必要も感じなかったのでぞんざいに聞いてみた。

 

「そちらの女性になるかと。」

 

やっぱりレイラになるのか…団長なので五人を従えてしかもオッドアイだからな。

 

しかも、よりによってデケムの妹と言わせてしまったし。

 

「レイラ、単身赴任で申し訳ないがこちらの領域守護者を兼任してもらえないか?

国王が不味いなら公爵で公爵領でもいいから。」

 

超妥協案である。

 

「シルト様の命ならば。

では公爵でも恐れ多いので爵位は伯爵でエルフ伯国に致します。」

 

「多分、あの王様なら居ても居なくてもほとんど変わらないだろうし。」

 

「すいません、前国王陛下はスレイン法国との戦争で最大戦力でしたので協力願えるのでしょうか。」

 

エルフの側近が口を出してきた。

 

そう言えばそうだった…デケムを送り付ければ大丈夫だよな…多分。

 

「とりあえず、国王が変わったので講和できないかの使者を出して貰えないかな?

シャンドラド千年王国に制圧されたとも記載して欲しい。

後、何人かを書記官として首都のエルグリラに来て欲しい。

文字が違うので教えて欲しいのと、当面は他国に出す書簡を書いて欲しいのだけれども。

来たい人を選定しておいて貰いたい。」

 

エルフの側近にそういった。

 

「レイラはここに残って国を掌握して欲しい。

書類、特に過去の事が書いてあるものと国家所有のマジックアイテムは全て、食料はエルフの人達が困らない程度でエルグリラに送るようにして欲しい。」

 

「承知いたしました。」

 

恐ろしいくらいの短期戦の戦争はこうして終結した…私としては領地や属国は要らないのだけれども、なってしまったものは仕方がない。

 

文字の教育者と食料が手に入っただけで良しとしよう。

 

細かいことを考えることを拒否して、まだ五月蠅いデケムと共にエルグリラに帰還した。

 

帰還するとステラが出迎えの挨拶及び指輪の返還にやってきた。

 

「お帰りなさいませシルト様。

そちらのエルフは誰でしょうか?」

 

「エルフの前国王だ。

制圧して退位させた。」

 

アンネとハサンに拘束されているデケムを指していった。

 

「この馬鹿がレイラを襲おうとしたので正当防衛だぞ。」

 

「どのような事情で襲われたのでしょうか?」

 

「いきなりらしい。

理由はまだ任務についていない兵隊で揉んでやれば素直になるだろう。

闘技場で訓練して差し上げろ。」

 

「そうなのですね。

手配いたします。」

 

「後、ラスターにレベルダウンの魔法をかけて貰え。

効くかどうかの確認もしたい。

効くなら条件も知りたいのでラスターにその調査もお願いする。」

 

ユグドラシルでは同じパーティーやギルドメンバー、所有NPCにしか使えなかったからどうなっているのかの実験台としては良いだろう。

 

最低でも、スレイン法国に引き渡すのはこの調査の確認後だな。

 

ラスターやステラを見ていると、どんどんブラック企業への道を歩んでいる気がしてしょうがない。

 

「ところで、新たなエルフの国王とは話は済んだのでしょうか?」

 

「レイラが指名されたので問題は無い。」

 

「レイラが国王ですか!!」

 

「なので、エルフの国は属国だな。

エルフ達にはこれまでと殆ど変わらない生活をさせる事になるから名目上にはなるけれども。

何でも国王を名乗るのは申し訳ないとかで伯爵を自称するようだ。」

 

「では、食料の融通はきくのでしょうか?」

 

最大の問題だけあって即座にこの質問が来た。

 

「余剰食糧を送るように指示は出したけれども、エルフの国の国力も何も分からないから、足しになる程度で考えておいて欲しい。」

 

「承知いたしました。」

 

呼び出された兵隊に連行されていくデケムを確認した後に玉座の間に移動した。

 

「アラン、多分ステラとの話は聞いていたと思うけれども、エルフの国が属国になった。」

 

「シャンドラド千年王国エルフ伯爵領では?」

 

「どちらにせよ実態は変わらないだろう。」

 

「エルフの国はスレイン法国と戦争していた筈ですので、エレアに連絡が要りますね。」

 

「そうなるな、エレアに連絡を頼めるか?

書状は書くけれどもどうせ相手は読めないだろうし。」

 

「承知いたしました。」

 

今回の一件は不幸な接触だ…多分。

 

最悪、空き地はたっぷりあるので、エルフツリーを移植して大森林ごとエルフを移住させる、だよな。

 

私は書類仕事に戻った。

 

その日のうちに、書記官兼、文字の教育係がやってきた。

 

デケム・ホウガンによって監禁されていた女性…もとい妻達らしい。

 

そう言えば居たな。

 

私の精神安定上、罪もないのにアンティリーネに惨殺された人たちを救えたと思っておこう。

 

彼女達はデケムを追ってエルグリラに来た訳ではないらしい。

 

闘技場でデケムがボコボコにされているのを見て涙を流して喜んでいたそうな。

 

何となくエルヤーの奴隷エルフを思い出してしまった。

 

夜になり、夕飯の後に呼び出しされた。

 

使節団と言っても転移魔法で移動しているので、今日の報告の為に戻って来ているからだ。

 

細かいことを言うと、ほとんどの使節団は情報収集を兼ねて国境付近から馬車での移動なので首都にまだ到着していないらしい。

 

玉座の間には知らない顔も居たのだが…

 

「彼らは誰ですか?」

 

「使節団を襲ったので捕らえた者たちです。」

 

あえて言おう、私と対面させる理由は何?

 

「報告だけで構わないと思うのだけれども?」

 

「夜盗の類と思ったのですが、本人達は軍隊だと申していまして。」

 

まあ、ここまで聞けばどこの国かは分かる。

 

蟲系の異形種で特徴的な尻尾があるのだから。

 

「だったら、彼らに案内してもらえれば良かったのでは?」

 

「それが、首都を知らないと言っております。」

 

どういう事?

 

「自分たちの集落は知っているようなのですが、大王国の首都は知らないようです。」

 

兵は将の将を知らない、と言うやつか。

 

そう言えばキャラバンから貢物()を受け取っているのだっけ?

 

「彼らの主張は、砂漠を通るなら通行料を払えと言うものか?」

 

「その通りです。

ですが彼らに渡すものが無くて。」

 

「肉を渡して、取り合えずその集落の長に会って紹介状を書いてもらえば良くないか?」

 

「そうなのですが、一回、捕縛してしまった為にご判断を仰ぐべく連れてまいりました。」

 

当たり前なのだが、使節団には手土産を渡してあったのだけども、食料の要求は想定外だったと言う事か。

 

「慣習を知らなかったこちらの手違いなので許して貰えないだろうか?」

 

私はその蠍人に言ってみた。

 

「謝って貰えれば大丈夫です。

(おさ)には紹介させて頂きますので。」

 

おびえたようにその蠍人は答えた。

 

絶望的に強さが違うからね、ほぼ脅迫だ。

 

「なるべく丁寧に対応して案内してもらえ。」

 

その後は話を聞いたが、法国と同盟国の使節団は明日にでも首都に到達するとの判断だった。

 

スルターン小国の使節団は、既に首都の宿屋で宿泊しているのと、一気にエリュエンティウに向かった使節団は既に都市守護者と接触していた。

 

「都市守護者と言う者の一人に会ったのですが、(しもべ)に話す事は無い、主人を連れてくるようにとの事でした。」

 

「つまりは私が直接赴く必要があると言う訳か。

明日はエリュエンティウに向かおう。」

 

「主殿、ありがとうございます。」

 

八欲王の秘密を知れることになる。

 

原作ではほとんど出て来ないから興味があるけど…襲われる心配は無いよね。

 

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