あっさりと言って良いのかどうかは分からないけれども、たった二日で二都市を攻略してしまった。
回収されたビーストマンの死体の数は15000にも及び連日限界までデスシリーズや
何だか死者を冒涜している気がしないでもないけれども、気にしたら負けである。
ビーストマンの死体は名目上は疫病対策で焼却処分したことになっている。
(人間種は竜国民なのでまとめて安置しただけで手を付けていない)
若干名ではあるけれども食糧として確保されていた人々も助けることができた。
かなりの数がビーストマンの国に送られた後だったようでそこは仕方がない。
いずれにせよ、当初の約束通り二都市を奪還した訳だけれども…8メートル級のケンタウロス型アイアンゴーレムって何に使えるのだ?
製作中も含めて9体になるのだけれども、竜王国に貸し付けるしか利用価値はないよね。
確か8体でミノタウロスの国が崩壊しかかり、その後、口だけの賢者に倒された筈だけれども、普通に考えてやりすぎだったかもしれない。
ビーストマン達がバラバラに攻撃しているせいで、質はとにかく防衛しなければいけない場所の数はこれでも足りないと言うのが一見では作りすぎに見える理由だったりする。
普通なら兵力分散の愚に見えるのだけれども、竜王国側がクリスタル・ティアのような一部の精鋭部隊でどうにか戦線を維持している現状を考えると、ビーストマン達の戦い方が上手くいっているのが何とも。
つまり、竜王国の精鋭がいる所は引いて、他の場所で攻勢をかけている為だ。
竜王国がしている事は要するにモグラ叩きである。
ビーストマン軍の数は推定で10万を超えていたと言っても、15000は全軍の1割以上、しかもライオン、虎の二種族を潰したのでかなり圧迫が減ったのも事実である。
と言う訳で、竜王女からの褒章と今後の商談の為に竜王国に来ていた。
「シャンドラド千年王国、千年王、シルト・クレーテ・レイ・デ・ミレニアム陛下、御入室。」
衛兵の声と共に扉が開き、竜王国の謁見室の中が見えた。
思ったよりも質素である。
エルグリラ都市長城館の謁見室の方がかなり豪華だったりする。
まあ、この国の場合、華美にすると将兵の士気が下がりかねない事と、スレイン法国以外とは物理的に交渉が難しいから外面をあまり気にしても仕方がないのかもしれない。
限界まで軍事費につぎ込んでいると言う話だったしな。
文武百官…もいるのか?の中をフェンデルとアンネを引き連れて進んでいった。
一人、嫌な視線を感じた…
玉座と思しき椅子に一人の少女がワンピースを着て座っていた。
竜女王ドラウディロン・オーリウクルスだろう。
どうでも良いが、ワンピースの丈が短すぎて跪いて顔を上げたらパンツが見えそうである。
確か大人形態もあったのだっけ?
椅子も大人用なので足が地面についていない。
言っちゃ悪いが見た目は
確かにこんなのから嘆願されたら冒険者たちが割引価格で戦うのも仕方がないのかもしれない。
簡単に言うと子供からお金を取りにくい。
過去に読んだ話では大人形態はうちのステラのような見た目なのだろうね。
子供の見た目なら良いけれども、あの姿で男に媚を売ったら、そりゃ女性陣から反感を生むだろう。
実際に為政者としてのステラは見た目と違って毅然とした対応で済ませて男に媚を売らない。
私が指定された辺りで止まると、アンネとフェンデルが後ろで跪いた。
当たり前だけれど私が跪くことはない。
「そなたがシルト・クレーテ・レイ・デ・ミレニアムなのか?」
胸に手を当て軽く頭を下げて
「シルトと呼んでもらって構いません。ドラウディロン・オーリウクルス殿
この度は都市を奪還したものの貴国の国民を多数犠牲にしたことをお詫びいたします。」
陛下と言ってこなかったのでこちらも陛下とは言わなかった。
しかし舌を噛みそうな名前なので愛称を教えて欲しい。
「その事は気にするでないぞ。
わらわも胸が裂ける思いじゃが、本来助からなかった者が幾人かでも助かったのは事実じゃ。
あと、ドラウで構わないぞ、シルト殿。
此度は本当に助かったのじゃ。
竜王国国民に成り代わり礼を言うぞ。」
本当に無邪気な子供のようにしか見えない。
「ドラウ殿、礼ならスレイン法国にお願いいたします。
あくまでもスレイン法国との契約ですので。」
スレイン法国の援軍は公然の秘密だったっけ?
言ってしまったけれども良かったのか?
「スレイン法国には仲介を頼んだだけじゃ。
そなた達への報酬は我が国から出ているのじゃ。
気にするでない。
後、エ・ランテルのアダマンタイト冒険者モモンの食糧の寄付もそなたの口利きのお陰と聞いているぞ。
その件も併せて礼を言うのじゃ。」
そういう事にするのか、国として承認して貰うための援軍で、スレイン法国からお金は一切貰っていないのだけれどもな。
寧ろ食糧を買う為にお金を払う。
「でしたらシャンドラド千年王国の承認をお願いいたします。
国土としては、元ケイテニアス山を中心に半径250KMを主張しています。」
「元とは?」
宰相が聞いてきた。
「山が崩壊しましたので。」
したと言うよりも、させたが正しいけれども。
「先日、南に光が見えて空に闇の
竜王国の領地の半分は500KM圏内なので、
「光は私が行使した魔法によるものですね。
闇の
謁見の間が静まり返ったけれども、フェンデルは話していなかったのか?
「キュアイーリム=ロスマルヴァーを倒したので、あの竜王の領域であった半径250KM半径を領地として主張している訳です。」
「冗談を言っている訳ではないでしょうね。」
あっけにとられている竜女王を半ば放置して宰相が聞いてきた。
「こんなガキがキュアイーリムを倒せる訳がないだろう。」
先ほど嫌な視線を送ってきた奴が言ってきた。
ステータスは偽装しているし、見た目はモブだからね。
何せ実際の自分をモデルにして外装に取り込んでそこから少し美化しているから21世紀初頭の日本の街中なら完全に興味を持たれない自信がある。
容姿は日本人そのもので、中の上から上の下だけれどもユグドラシルでは逆に目立っていた。
まあ、仮想現実の世界で容姿を選べるのにモブにする方が珍しい。
絶世の美男子と言っている人達がいるけれども、某将軍様を美男と言っている国と同じなので彼らの評価は当てにしてはいけない。
ガキも正確で、見た目は私がユグドラシルを始めた年齢である16歳、しかも童顔な東洋系なのでガキだろうよ。
後ろの二人は彼とその仲間と思われる連中に警戒して立ち上がった。
後ろの二人に
「他国の王宮で失礼だぞ」
と声をかけ
「すいませんがお名前は?
不老不死化しているので、見た目と年齢は違いますね。」
とだけ答えておいた。
「アダマンタイト級冒険者チーム、クリスタル・ティアのリーダー、セラブレイトだ。
不老不死だあ。
あのフールーダやリグリットだって完全にはできないのだ。
キュアイーリムといい、法螺吹いているのじゃねえぞ」
思うに彼らが完全ではないのは前提魔法を覚えずに一気に不老不死化の魔法を覚えて使ったからじゃないかな。
私はアイテムボックスからキュアイーリムの鱗を取り出しセラブレイトを無視して
「キュアイーリムの鱗です。
アイテム鑑定でもして確認してください。」
と宰相に渡した。
蛇のような鱗で、体の大きさから考えると一枚あたりは小さいのだけれどもそれでもなかなかの大きさの鱗である。
面倒なので、セラブレイトにも
「確認したら返して下さいね。」
と言って鱗を渡した。
格上に食って掛かるのは良いのだけれども、今はその時ではないのでは?
ガゼフ、ブレイン、クライム、リザードマン達、フォーサイト、彼らは明らかな格上と分かっていて譲れない物の為に戦いを挑んだからかっこよかったのであって、この
あの
可愛い女の子の前で粋がっているヤンキーだな。
「本物のようじゃな。
既に滅んでいると思っていたのじゃが」
宰相から鱗を受け取ったドラウディロン竜女王が答えた。
「アンデッドになっていたので、一回死んだと判定されていたのでは?」
確か吸血の竜王もスレイン法国は間違えているけれども、両者に共通するのはどちらもアンデッドだから、何かしらの方法で死亡判定が出た可能性がある。
流石に1/8とは言え真の竜王が認めたのでセラブレイトは不満そうにしながらもこれ以上楯突くことは無かった。
竜女王から鱗が返却され、セラブレイトに渡した方もクリスタル・ティアメンバーを一巡して戻ってきた。
実際、単なるドラゴンでもこの大きさの鱗のドラゴンはアダマンタイト級でも手も足も出ないだろうからな。
「そこのフェンデルなるものから聞きましたが都市ごと転移したのも本当なのですか?」
「多分、世界そのものからして違うのでしょう。
少なくとも同じ大陸ではないですね。
原因に心当たりは全くありません。
仕方がないので建国して王を名乗る事にしました。」
「千年王は、不老不死だからですか?」
「そうですよ。
もっとも、千年は生きていませんが。」
実際には28歳である。
「大体理解しました。
女王陛下、褒章を。」
「うぬ、このような物しか渡せず申し訳ないのじゃが。」
女王から感状を受け取った。
「また、シャンドラド千年王国を国家として認めるのじゃ。
と言っても我が国にできる事は殆ど無いのじゃがな。」
「他国との取次ぎをお願いできませんか?
スレイン法国との連名の紹介状なら無下に扱われる事も無いかと。」
「その程度の事なら問題はないじゃろう。
どうじゃ宰相?」
「問題はありません。
どちらの国でしょうか?」
「人間領域のほぼ全域、リ・エスティーゼ王国、バハルス帝国、ローブル聖王国、出来れば、アーグランド評議国、エナ多種同盟国、カルサナス都市国家連合への紹介状を頂ければと。」
「出来ればとは?」
「その三か国は誰に会えば良いのかも分からないので、同盟国と連合は構成国家すべてとなるとかなりのお手間を取らせてしまうのではないかと思いまして。」
「でしたら、同盟国と連合は可能な限りと言う条件で紹介状を用意します。」
「ありがとうございます。」
「ところで今後の事じゃが。」
「契約は果たしましたので既にゴーレムは撤収しておりますが。」
「あれは購入できぬのか?」
「とんでもない金額になると思いますが。」
「そこを何とかお願いしたいのじゃ。」
子供にすり寄りながら言われると、ロリババアと分かっていても断りにくい。
「期間限定のレンタルで、及び一つの提案を聞いて頂ければですが。」
「何じゃ、細かいことは宰相に言ってもらえるかの。」
うわ~、上手いこと宰相と自分を使い分けてくるな。
「如何ほどの金額で何年でしょうか?
後、提案とは?」
「最大2年で金額は後で詰めるとして、竜王国の国民全員で移民しませんか?」
「何を言っておるのじゃお主。」
余程驚いたのか竜女王様は宰相に任せると言っていたのに自分で話しているぞ。
「実際にどうやってどこに移民すると言うのですか?」
「最近、半径250KMにも及ぶ面積の国土があるのに一都市しかない国が出来まして、絶賛住民募集中なのですよ。」
「つまりはシャンドラド千年王国の国民になれと言う事ですか?」
「そうですよ。実際問題、ビーストマンとずっと戦争をするおつもりですか?」
「キュアイーリムを打ち取ったと言うなら、ビーストマンの国を討ち滅ぼせるのではないのか?」
「可能ですが、それをしたとして、その後はどうするおつもりで?」
「その後とは。」
確か王様ランキング3位だったよな。
「宰相、つまりはじゃ、シルト殿はビーストマンの国を滅ぼしたとしても別の相手と戦争になると言いたいのじゃ。」
「ドラウ殿の言われる通りで、竜王国が人間種の領域から孤立している以上、余程の大国にならない限り付きまとう問題ではありませんか?」
「だから、国民すべて移民しろというのですか?」
「そういう事です。
丁度、作付けシーズンですから、収穫期までの食糧と種を渡して貰えれば、今日からでもその人数分の耕作地は保証します。」
「どうやってその土地を確保するのですか?
確かアンデッドだらけでは?」
「アンデッドは我々が倒し続けますので、その内に居なくなりますよ。
ビーストマンよりも弱いですからまだましでは?
住居や耕作地も昔あった国の都市や町や村の後を利用すればさほど難しくはないのです。」
実際は250年も経っているからそう単純ではないけれども、0からよりは余程簡単なのは本当だ。
「一つのご提案ですね。
先ほど言った最大2年は竜王国の国民すべての移民が完了する最短時間ですね。
ゴーレムも将来の国民を守る為ですのでお安くしますよ。」
「しかし、そなたの提案には一つ問題があるのじゃ。
どうやって移動するのじゃ?」
気になるのか竜女王から声をかけてきた。
私は
「最低一日一万人の移動はお約束します。」
ファウンダーを使えばもっといけるが、実際に10人の
魔力回復量と移動した人の半年分の食糧の移動を考えると他への支障無しでは一日にこの程度だな。
理屈の上では年間360万人で二年もかからずに竜王国民の移民の完成だけれども、本格的な移民は秋の収穫期以降になるので二年かかる見込みになっている。
私はアイテムボックスから竜王国の国民の移民計画書を出すと竜女王に手渡した。