目が覚めると見知らぬ天井だった。
一瞬ここは何処だ?と疑問に思ったが、エルグリラごと異世界転移をした事実を思い出した。
エルグリラ第六層の自室だった。
窓からは青い空と青い海、日が昇っているのだが何時間寝たのだろう。
ユグドラシル時代にはステータス画面に時間が出ていた為、部屋には時計が存在しない。
結果時間が分からないのだ。
時計が無ければ目覚ましもない。何時間寝たのやら。
起こされていないのだから緊急事態にはなっていないはず。
服を着替えて寝室を出ると
「「「おはようございます、シルト様」」」
アンネと執事長のズワース、メイドの2人が頭を下げて挨拶してきた。
何故分かった。
リアルの感覚が抜けていないらしい。
意識すると寝室にも多分護衛なのだろう、不可視の
着がえている間に彼らから報告があったのだろう。
「おはよう、寝ている間に何か変化はあったか?」
「アラン様は地図作成の命を優先されるとの事で、私から報告します。後、お食事の用意も出来ておりますが。」
ズワースが答えた。
「食事を取りながら聞こう。」
ダイニングには朝食が用意されていた。普通?にご飯と味噌汁、納豆である。
水上コテージのイメージには似合わないけどね。
「食糧が不足する予定と聞いていたが、魔法かアイテムで食事を抜いても良かったのだが?」
一応確認してみる。
ユグドラシル時代、食事や睡眠を不要にするアイテムがあった。と言ってもデメリットもあった訳ではある。食事や睡眠のいらない異形種のモモンガさんは知らなかった可能性も有る。
当たり前ではあるが、バットステータスとしての空腹、寝不足、疲労を無くすものであってプレイヤーのリアルで不要になる訳ではないから、どうしたってログアウトをする。
そのデメリットもログアウト時に解消されてしまうものではあった。
要するに外した際に反動で睡眠や空腹状態になるが、ログアウトしていた時間でそれは解消されてしまっていた。
つまり、現実化した以上、付けていたとしても食事や睡眠はとった方が良い。
付け加えるならMP回復速度も悪化する。
「あれは後で反動が来ますので。期間限定の緊急時にされた方が良いかと」
「私ならMP消費で何とかなると思うが?」
「そもそも、シルト様一人分ではさほど変わりません。そもそもシルト様は質素ですので。」
質素なのだろうか?リアルの食事の悲惨さを考えると十分すぎるメニューだったりする。
バフがかかるのは何を食べても一緒だから、前世の朝食メニューをギルドの食堂で食べていたにすぎないのだけれども…
「いただきます。」
和食にメイドの給仕は必要なのだろうか?
疑問に思いながら食事を食べ始めた。
因みにこのメイド、正しくは拠点維持用NPCで、配備すると拠点(正確には居住階層)の維持費が下がると言うメリットがあったのだが別にメイドである必要などどこにもない。
猫が拠点維持用NPCと言うギルドもあったくらいだ。
だが、このメイドの外装と行動データーはうちの売れ筋商品だったので、これでもかと色々なパターンを用意していた。
アインズ・ウール・ゴウンはホムンクルス一択で見た目も似たような容姿が多かった気がするが(一方、メイド服はやたらと細かい意匠だったが)、
それはさておき
「現状を報告します。北方に集落を確認しましたので、既に皐月様配下の部隊を送り込んでいます。
東西には廃墟となった町や村を確認しております。
そこにはアンデットが徘徊しており、オックス様が確認したところ、支配下にはおけなかったと報告が来ております。
これらのアンデットは目的もなく徘徊しているようで何者かの支配下にあるようです。
少なくともオックス様が支配を奪えないレベルのモノです。」
「オックスが支配できないだって?」
「はい、したがって、オックスと同等以上の存在によってつくられた可能性が高いと考えられます。
南方の山には生物が不自然なレベルで存在していません。また、アンデットは種族を問わずに存在しています。
元は動物または魔獣と考えられるものもあるようです。
これに伴い、アレク様が緊急防衛体制の計画を作成されています。
作成次第、実行の許可を頂きたいとの事です。」
「なんで起こされなかったのだ?」
内心で首をひねりながら思わず口に出してしまった。
「起こしに伺うのと起きられるのがほぼ同時でしたので。」
道理で準備が良い筈だ。
私は食事を駆け込むと洗面所に向かった。
「顔を洗い次第向かうがどこに行けばよい。」
「完成次第、玉座の間にお持ちするとの事でした。」
「わかった、すぐに向かう。料理長には美味しかったと伝えてくれ。」
「かしこまりました。」
本当に泣くほどおいしかった。だが、エルグリラ周辺がアンデットに覆われていると言うので感動している暇が無かった。
ユグドラシルから転移する際に、プレイヤーや拠点の設定に引きずられた場所に転移すると言う説があったのを思い出した。
この拠点は攻略時にはアンデッドが徘徊する廃墟の町だった。
多分、この位置に転移したのはその為だろう。
玉座の間に入るとアランとラスターが
ユグドラシル時代には微妙系アイテムだったが転移後には役に立つことを知っていたので集めておいたのが役に立ったようだ。
手を止めて立ち上がり頭を下げて「「「おはようございます、シルト様」」」とあいさつをしてきた。
「おはよう。手を止めさせてすまない。職務に戻ってくれ」
「「「かしこまりました。」」」
「アラン、ズワースからは説明を受けたが周囲が何者かの支配下にあるアンデットに囲まれているようだと聞いたが」
「その件ですが、先ほど、原因となっているであろう場所を確認いたしました。こちらをご覧ください。現在までに約200KM半径の地図ができております。問題の場所は南方に180KM程の山の山頂付近で、何かの隠蔽がかけられています。」
アランが地図に指を指しながら説明した。
「また、アンデットが徘徊している範囲ですが、このポイントから250km半径と推定されます。」
南側の地図が無い関係上、半円状にそのエリアが記された。
半径250kmでアンデット…記憶にあるぞ。名前は何だったか、亡国の吸血姫に出てきたアンデットのドラゴンロードの可能性が高いよな。
と言ってもNPC達に知らせたら何で知っているのだ。と言われるし、亡国の吸血姫を読んではいないから、モモンガさんがどうやって倒したのかも分からないのだよ。
確か、ワールドアイテムのロンギヌスの効果を持つブレスがあるのじゃなかったか?
下手したら拠点ごと消されかねないのだが。
「隠蔽の突破は試みていないよな?」
「ご指示道理に行ってはおりません。また、隠蔽の突破を行った場合、ほぼ確実に相手に監視がばれることになります。
アンデットのいる半径を考慮すると、エルグリラにも影響がある可能性が高いと判断しています。
例えば効果がLV100の者の絶望のオーラⅤに相当するとして、対策なしでは殆どの市民が死ぬことになります。」
「アランの判断を尊重する。そこに、ワールドエネミーがいると仮定して対策をして欲しい。」
ユグドラシル時代のアランには前科がある。彼が突破できない隠蔽された場所があるといって、そこに遠征したらワールドエネミーが出てきたのだ。
ギルド武器と私の装備している手袋、ワールドアイテム ファウンダーが無ければ倒せなかったのは確実である。
記憶が間違っていなければ、
この際の問い合わせに対する運営からの返事も中々な物だったらしく、「運営狂っている」とか言われていたな…
魔法で地形に対する影響が無かったユグドラシル時代なら兎も角、ここではどんな事になるのか想像もできないのだが…
「ワールドエネミーと仮定してエルグリラに攻撃が行われた場合、ガンダルフィー様による防御を前提としても第一階層は消滅する可能性があります。
また、何かしらのスキルを行使した場合、その影響範囲にエルグリラが入っている以上、排除する事を進言いたします。
現在、アレクが作戦案を立てておりますが…ただ、排除する場合は…」
「言いにくい事は解る。ワールドエネミー相当と仮定した場合、私がギルド武器を装備した上で戦闘を行う必要があるからな。
後、ガンダルフィーは様付けなのだな。」
「ガンダルフィー様は特別な三人ですので。」
ワールドアイテムで作成された三人は特別になるのか?
まあなるよな。引退したメンバーのコピーだものな。
偽物呼ばわりする可能性も有ったけれどもそれが無いだけ良しとするか。
「もう一つ、ここにいますラスターが戦闘に出ると言うのも一つの手ではありますが…」
私が危険に身をさらすのも困るが、ギルド武器やワールドアイテムを
「必要とあれば私が出るべきだろう。
そもそも、ギルド武器は私が使用する事を前提としているからな。」
「シルト様のお手を煩わせる、非才なるわが身をお許しください。」
「一々謝るようなことではないだろう。これは必要性の話ではないのか?それにエルグリラを守るのは私の使命と思うのだが?」
「承知いたしました。私どもも参加しシルト様の御身を命を懸けて守らせて頂きます。」
さてどう説得しよう。替えの利く傭兵モンスターなら兎も角、守護者や傭兵NPCは困るのだよね。
ロンギヌスと同じ効果を持ったブレスだったか。
ワールドの守りが無いと即死の上、通常の復活手段が使えないからな。
こうしている間も地図が拡大しているのだが、いまだに身に覚えのない地図のままだ。
あの竜王がいるのだとしたら、大陸西部の筈なのだが、地図上は北東に海か巨大な湖か判断できない地形がある一方、西はまだ陸地なので確信が持てない。
「シルト様おはようございます。」
アレクが玉座の間に来たようだ
「アレク、おはよう。アランから話は聞いている。お前の考えを聞きたい。」
「既にガンダルフィー様、ステラ、フェンデルとも既に調整済みですが、第一階層の全住民を第二階層に避難させます。
又、その上で第一階層と第二階層を結ぶ転移門の5か所の内、4か所を閉鎖。その上で第二階層の防衛システムを稼働させて各エリアを分離します。
これにより、第二階層の闘技場を除くエリアはリング・オブ・ミレニアム装備者の転移無しでは出入り事ができない独立した状態になります。
その上で残った転移門をガンダルフィー様に防御していただくのが最善かと。
ご命令を頂ければ、すぐに実行いたします。
それが済み次第に、原因となった正体の確認を行い、その排除を行う事を進言いたします。」
防衛システムを解除すると第二階層は一体化するのだな。誰が設定したのだ?知らなかったよ。
「すぐに実行してほしい。避難を完了するのはどれくらいになる?」
「半日程度はかかるかと。日が沈むまでを目標としてます。」
42000人の避難と考えると意外と早いな。
「了解した。ところで、リング・オブ・ミレニアムを貸した場合時間は短縮できるのか?」
「お貸し頂けるので?」
ギルドメンバーの証であるギルドの指輪はやはりNPCにとっては恐れ多いらしい。
「効率を重視したい。私のしているものを含めてのリング・オブ・ミレニアムは97個あるが。」
「12個もお貸し頂ければ、
「では、アレクに預けておこう。」
私はリング・オブ・ミレニアムを12個取り出すとアレクに渡した。
「慎重に取り扱わせていただきます。」
アレクは恭しく平伏して受け取った。
「因みに原因なのだがワールドエネミーではないかと考えている。
なので、討伐する場合は私の他は
「我々守護者はお役に立てないとの事でしょうか?承服しかねます。」
「私達、親衛隊もお役に立てないのでしょうか?再考をお願いいたします。」
「「なにとぞご理解を」」
「別に君たちが役に立たないとか考えているわけではないよ。
ワールドエネミーと仮定した場合、ワールドの守りが必要であると考えているからだ。
この場合、ワールドアイテムを所持する、もしくはワールド職についている必要がある。
ファウンダー以外の二つは戦闘に役に立つものではないので所持しながらの戦闘が厳しい点、ワールド職についているのは、ガンダルフィーと政宗だけれども、ガンダルフィーは拠点防衛に必要で、政宗は戦闘職ではないから連れてはいけない。
以上の理由から君たちを連れていけないと判断しているまでだ。
ガンダルフィーを連れていけるなら君たちにも参戦してもらいたいのだけれどもな。」
多少の嘘をついた。
親衛隊の何人かはワールドエネミー戦に参戦しているからこの嘘に気が付くかもしれないかもしれないけれども…多分ガンダルフィーでごまかせた筈だ。
特別な三人、元メンバーのコピーで作られた彼らは、ワールドアイテムを消費しただけあって、その内二人はワールド職だった。
多分この方法以外でワールド職のNPCを作成するのはできないのではないかな?
ワールド・ディザスターのNPCを作る計画もあったのだけれども、NPCには持たせれなかったのだよね。
権限自体は私がファウンダー狙いの相手を返り討ちにして所持していたのだけれども、多分、NPCは実際に権限を奪った際のパーティーメンバーではなかったのがダメなのだと思う。
正直、あのブレスがある以上、傭兵モンスターですら連れて行きたくないのだよな。
ガンダルフィーを連れていけるのなら、NPC達にも参戦してもらうと言うのも嘘ではないのだよね。
ワールド・ガーディアンならレギオン編成の全員にワールドの守りを付与できるのだから。
拠点にワールドの守りをかけなくてはいけないのが出撃させられない理由だけれども。
今回の場合は損失の発生しない召喚天使のみを連れて行くのが一番良いと思うけれども…許して貰えないだろうな。
「理解は致しましたが…では、ワールドエネミーでないと判断された場合は、我々で対処させて頂きたく思います。」
「転移したからね。予想外の敵の可能性も有る。ワールドエネミーと限るのではなく、ワールドエネミー相当とさせて欲しい。」
「承知いたしました。」
何とか言質はとったぞ。やれやれだ。