もう一つのギルド   作:mshr

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閑話 スレイン法国への使者

私はエレア・ステラ、偉大なる神の一柱であるガルト様の薫陶を経て最高神たるシルト・クレーテ様をお守りする近衛の役目を頂く身です。

 

シルト様はシルト・クレーテ・レイ・デ・ミレニアム千年王陛下に名前を変えられたのでした。

 

申し訳ありません。

 

始めのうちは偉大なる方々に大変なご迷惑をおかけしました。

 

軽傷の方に大治癒魔法を使って魔力を無駄にしたり、重傷の方に魔力がたっぷりと残っているのに下級治癒薬(マイナー・ヒーリング・ポーション)を使用していたりしていました。

 

(※傭兵NPCの初期の戦闘用AIはこれくらい馬鹿な状態です。)

 

ガルト様の薫陶で、適切な治癒魔法を選択できるようになっていきました。

 

治癒術師なのに無意味な攻撃魔法を覚えたり盗賊職に付いたりして、シルト様のレベルダウンの魔法でリセットして頂いた事も多々あります。

 

私の姓を名前にした守護者を生み出された時には腹が立ちましたが今となっては些細な事です。

 

しかし、彼女はシルト様の正妻の座を狙っているようですが、これだけは阻止しなくてはいけません。

 

ずっと、シルト様をお慕いしているアンネさんこそシルト様の正妻にふさわしく、この事は正義なのです。

 

話がそれました。

 

偉大なるシルト様から重大な役目を仰せつかりました。

 

スレイン法国への使者のお役目です。

 

スレイン法国は人間種人属至上主義らしく、多種族国家であるシャンドラド千年王国とは一歩間違えれば戦争になる危険性があると言われました。

 

シルト様からは、

少なくとも食糧事情の安定までは戦争を極力回避する事。

大義無き戦争はこの世界の全てを敵に回す可能性がある以上は、これは絶対に承認できないので回避する事。

 

をお命じになられています。

 

その上で、スレイン法国と可能な限り友好的な国交を樹立し、食糧を購入できるようにすることが私の使命で、特に食料購入はシャンドラド千年王国の生命線を握っていますので重要なお役目です。

 

のですが、一日目の夜に報告の為に帰還したら、戦争禁止命令が出ていたにも関わらず、レイラはエルフの国と戦争をしたらしく、あらかじめ予見なされていたシルト様の御采配で即座に決着がついたと報告がありました。

 

エルフの国はスレイン法国と交戦中の為、その事をスレイン法国に伝えてエルフの国との停戦交渉まで追加されてしまいました。

 

完全にエルフ王に非があったそうですが、シルト様の非戦の御命令を破ったのにエルフ領の領域守護者に任命されたのは、ほんの少し納得が出来ないところですが。

 

シルト様に言わせると、

エルフ達の指名なので民心を考えるとレイラにするしかない。

夫のラスターとしばらく会えない事、手探りでエルフの国を運営して国家運営の基礎を勉強する事は十分に罰になるとのお考えのようでした。

 

更にはシルト様自身がある程度は予想されその為の対処として内々で命令されていたそうで、罪と言うなら私の罪だろう。

 

との事でした。

 

大王国でも向こうから戦闘を仕掛けられたようで、こちらの対処もしていました。

 

私は大丈夫なのでしょうか?前途多難です。

 

ゴーレム馬車がついに法都シクルサンテクスの城門に到着しました。

 

「途中の町や村でも注目を集めていましたが、馬が引かない馬車は珍しいのでしょうか?」

 

「シャンドラド千年王国の国使の中でも、一番豪華なゴーレム馬車を使っていますからその為では?」

 

「それもありますね。

そろそろ検閲の順番ですね。」

 

不安を紛らわすために護衛の者と話をしていました。

 

確かに荷馬車が殆どの順番待ちの中ではひときわ目立つのでしょう。

 

順番が来たので私はドアを開けて衛兵の人と話しました。

 

「この馬車は勝手に動くのか?」

 

「ゴーレムの技術で作られたものです。

操縦は必要ですが、ある程度なら自動でも動かせますよ。

珍しいですか?」

 

「はい、初めて見ました。

ところでシクルサンテクスへの目的は?」

 

「ご理解いただくのは厳しいかもしれませんが、私どもは都市ごと、この法都の南東にある山に転移しました。

つきましては、国家の承認して頂き友好関係を築く事と、領地の境界の設定の為に参りました。

出来ればなるべく地位の高い方とお会いできればと思います。」

 

「分かりました、上の者と掛け合ってみますのでそちらの空きの場所でお待ちください。」

 

「お早目の対応をお願いいたします。」

 

私達が指定された場所に馬車を動かすと城門から中心に向かって騎馬が走っていくのが見えた。

 

「ちゃんと上の人に掛け合って貰えるようですね。」

 

「信じて貰えず、手探りで色々な人に会う事も覚悟していたのですが。」

 

暫くすると、騎馬の数が増えて戻ってきた。

 

「お前たちが言っていた山の方でかなりの光と、空に黒い光線がそちらから向かってきたことと地震の発生を確認しているが、お前たちは何か知っているのか?」

 

「存じております。」

 

「知っているなら行政機関長のバイロン様がお会いになるそうだ。

ついてまいれ。」

 

役職の名前からしてかなりの高官でしょう。

 

この騎士は少々上から目線ですが、ありがたいことです。

 

騎馬兵に先導され、シクルサンテクスの中心に向かい私達は進んでいった。

 

かなりの大きさの建物の前に来ると騎馬は停止して私達も停止した。

 

「ここだ、おりてこい。」

 

私達が馬車から降りると

 

「武器を改める」

 

と言って触ってこようとするので、

 

「お役目は分かりますが女性の方でお願いいたします。」

 

と言ってお断りしました。

 

そもそも、触らないといけない武器検査とは何でしょうか?

 

「それもそうだな、失礼した。」

 

触ろうとした彼は別に下心は無かったらしく、女性の者を呼んで、男性は男性が、女性は女性があちらこちらを触り、何も持っていないと言う事になりました。

 

ところでアイテムボックスを確認しないのでしょうか?

 

案内の者に先導され行政機関長のバイロン様の部屋に入った。

 

「シャンドラド千年王国、近衛にてスレイン法国使節団長のエレア・ステラと申します。

お見知りおきの程を。」

 

「私はスレイン法国行政機関長バイロン・フーゴ・デズモンドだ。

一つ聞きたいのだが、お前たちは不死山脈の異変の原因をしっているのか?」

 

「恐らくですが、私どもの主であるシルト・クレーテ・レイ・デ・ミレニアム千年王陛下と竜王キュアイーリム=ロスマルヴァーとの戦闘ではないかと。」

 

「キュアイーリム=ロスマルヴァーは滅んでいたのではないのか?」

 

「こちらがキュアイーリム=ロスマルヴァーの鱗です。」

 

アイテムボックスから私の顔程もある白い鱗を出してバイロン様に渡した。

 

「確認しても良いか?」

 

「どうぞ構いません。」

 

「おい、研究機関に持って行って直ぐに確認させろ。」

 

バイロン様は鱗を近くの者に渡すと彼は持って部屋から出ていった。

 

「今のは?」

 

「アイテムボックスですがお持ちではないのですか?

後、すり替えたら分かりますのでちゃんとお返し下さい。」

 

「確認が済んだらお戻しする。

遅くなったが椅子に座って下さい。」

 

キュアイーリムの鱗のおかげか、バイロン様の口調が丁寧になった。

 

「その前にシルト・クレーテ・レイ・デ・ミレニアム千年王陛下からの親書です。

お受け取り下さい。

文字は違いますので読めないかと思いますが、内容は貴国と仲良くしていきたいと言うものです。

こちらは貴国への贈答品です。」

 

「確かに受け取りました…これは神文字に似ていますが。」

 

(※六大神の残した文章の文字と当然同じ)

 

「そうなのですか?

ならば同じ場所から転移した者の文字ではありませんか?

南や北に同じように転移した者の痕跡を確認していますので。」

 

「北と南ですか?」

 

「北は何と言って良いか?南は砂漠の中にある空に浮かぶ城です。

エリュエンティウとか言いましたか。」

 

「やはりそうなのか?」

 

「やはりとは?」

 

「そのエリュエンティウも500年ほど前に転移したと聞いています。

私達も遠視の魔法で不死山脈を確認したのですが、その際にエリュエンティウの者が使用したとされる魔法の記録と類似していましたので。」

 

「私達も転移して間もないのでそこまでの情報は掴んでいないのです。

あくまで空に浮かぶ城とその名前だけで。」

 

「山脈近郊の町や村と連絡が取れず、アンデッドのエリアが広がったとの情報も入ってきているのですが心当たりは?」

 

「キュアイーリムによる攻撃でしょう。

私達は防御結界で防ぎましたが、周辺の木々が一斉に枯れ虫まで死んでしまいましたので。」

 

「それはまた、確かに似た事例が250年程前にもあったようですが。」

 

「恐らく同じ攻撃を行ったのでしょう。

我々としてはその攻撃範囲をキュアイーリムの勢力圏と考え、それを倒した私達の領地と規定するつもりですが問題は有りますか?」

 

「その勢力圏には、滅んだとは言え我が国の町や村も存在していたのです。

そこは譲れませんが?」

 

「現状、ゾンビに覆われている筈ですが排除の見込みはあるのですか?

我々はゾンビがいても何ら問題ありませんし、ゾンビを全て片付けるのも大した手間ではないと考えております。

ただ、ゾンビを完全に排除すると、貴国のように主張された場合は無駄な労力になるので行っておりませんが。」

 

「では、この件が決定するまではその範囲には手を出しませんので地図等で教えてください。

あと、昨日ですが貴国と戦争中と思われるエルフの国に送った使節団とエルフの国王が交戦いたしました。」

 

「あのデケム・ホウガンと交戦したのですか?

あの者には苦汁を飲まされております。

で、どうしてそうなりどうなったのですか?」

 

「エルフの国への使節団はエルフで構成していたのですが、どうも使節団長が強姦されそうになった為と聞いています。」

 

「あのデケムらしいですな。

我々がエルフの国と交戦しているのも、デケムに我が国の重要人物を監禁、強姦され、取り戻した時には妊娠しておりました。

その為です。」

 

「そうなのですね、そのデケム・ホウガンですが、シャンドラド千年王国で取り押さえました。」

 

「取り押さえたですと!

本当なのですか?」

 

「現在、本国で監禁しているそうです。

それに伴い、エルフの国の王が交代しまして次の王としてエルフ達に推薦されたのがエルフの国に派遣した使節団長でしてエルフの国とスレイン法国の停戦交渉もするように指示が来ています。」

 

「キュアイーリムの件と言い信じられない思いです。

デケム・ホウガンを引き渡してはいただけませんか?

引き渡していただければ領地に対する貴方たちの主張も認めるよう根回しして認めさせますし、キュアイーリムとの戦いで生じた損害も請求しません。」

 

「エルフの国との停戦は?」

 

「そもそもデケム・ホウガンを倒すか捕えるための物ですので他のエルフはどうでも良い話ですので引き渡して貰えれば即時停戦致します。」

 

「我が国の国家の承認とエルフ領域に対する優先権は。」

 

「デケム・ホウガンさえ引き渡して貰えれば問題ありません。

ただ、エルフの国との戦争が長引いた為、エルフをはじめとする他の人間種に対する差別意識が国民に蔓延していますので、人属以外はスレイン法国に入れない事は条件になりますが。」

 

「と言う事は亜人種や異形種はさらに問題でしょうか?」

 

「と言いますと?」

 

「シャンドラド千年王国は多種族国家なのです。」

 

「シルト・クレーテ・レイ・デ・ミレニアム千年王陛下は?」

 

「人属ですがどうかしましたか?」

 

「スレイン法国は人間種至上主義で動いています。

実際には人間種は脆弱なのですが、そうでもして人間領域を守護しないと人間種を守れない為です。

シルト陛下には人間種側である事をお示し願いたいのです。」

 

「シャンドラド千年王国はスレイン法国との交易を求めていますが?」

 

「先ほども言いましたがスレイン法国に入国できるのは人属のみとする事と、人間種側である事をお示し願いたいと思います。」

 

「あまり、弱みをさらしたくはないのですが、せめて食料購入とその為の資金調達は御認めいただけませんか?」

 

「デケム・ホウガンを引き渡していただければ手配いたしましょう。

ですが先ほどの条件が満たされるまでは人道上を目的とした最小限の食糧用とさせて頂きます。」

 

「どのように人間種側と示せばよいのでしょうか?」

 

「竜王国に援軍を送っていただきたい。

諸事情で内密に送っていた我が国からの援軍を引き上げることになりましてその穴埋めに苦慮していたところです。」

 

「承知いたしました。

今日にでも転移で帰国して千年王陛下にスレイン法国の条件をお伝えする事を約束いたします。

ところで、キュアイーリムの鱗の返却ですが?」

 

「そろそろ戻ってくるでしょう。」

 

「それを受け取りましたら一度下がらせて頂きます。」

 

こうして私のスレイン法国との一回目の交渉は終わりました。

 

妙な話、レイラの失敗の結果、スレイン法国との交渉が上手く言ったのは複雑な気分だったのですが。

 




行政機関長の名前は完全に創作です。
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