もう一つのギルド   作:mshr

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第5章4話 男性の敵(イケメン)と会う

さて、リ・エスティーゼ王国の舞踏会はズワースにさんざんたしなめられて終わった。

 

多分、節操がない男と思われただろう。

 

実際にダンスをしたのは二人で、ラナー、ラキュースだけに絞られた訳だけれども。

 

アンネに挑んだ者は「私はシルト千年王陛下の護衛ですので」と言う言葉で撃沈していったが。

 

しかし、アンネをよく狙う気になったな。

 

ファーストダンスをさせられなくてよかったよ…あれって一カップルでするのだ…ファーストダンスは当然バルブロ王子夫妻だった。

 

数日経ち、私の前には男性の敵(イケメン)がいる。

 

バハルス帝国ジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクス皇帝陛下である。

 

殆ど何も決まっていないのにいきなり皇帝と会えると言うのはある意味凄い国家だ。

 

しかも、謁見の間とかではなく、単なる応接室である。

 

本当にトップ同士で一気に話を決める気らしい。

 

「シャンドラド千年王国、千年王、シルト・クレーテ・レイ・デ・ミレニアムです。

ジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクス皇帝陛下にはこのような機会を頂きありがとうございます。」

 

「堅苦しくしなくていいよ、シルト・クレーテ・レイ・デ・ミレニアム千年王陛下。

長いな、シルトと言って良いかい。

私の事はジルクニフと呼んでくれ。」

 

いきなりフレンドリーである。

 

どうなっているのだ?

 

「千年王陛下も使者の者も転移魔法で来られたと聞く。

誰が使えるのですかな。

ぜひとも、魔法談義をしたいのですじゃが。」

 

じい(フールーダ)のせいか!

 

何が起こるのか無茶苦茶怖いが、真実を言ってみよう。

 

「私も使えますが、何人も使える者はおりますよ。」

 

「失礼ながら陛下には魔力を感じられませんが。」

 

「隠蔽していますので感じたら逆に驚きです。」

 

「隠蔽を解除していただけませんかな。」

 

解除したとたん足をなめてきそうで怖いのだが…

 

どうしたものかと考えて私は立ち上がり、皇帝の後ろにいる黒鎧を着こんだ女性に近づいた。

 

「呪いがかかっていますよね?

解除しましょうか?」

 

「「「出来るのか(ですか)?」」」

 

「魔法自体は第3階位にすぎませんし、要するに、呪いをかけた者より弱いと殆ど成功しないだけなので、大した事は有りませんよ。

抵抗しないでくださいね。」

 

彼女、重爆レイナース・ロックブルズに、魔法位階上昇化(ブーステッドマジック)呪い解除(リムーヴ・カース)とレベルダウンを使用した。

 

位階上昇させているから嘘はついていない。

 

彼女がかかっている呪いは上位呪詛(グレーター・ワード・オブ・カース)相当と推定されるので、最低でも第8位階、確実性を求めるなら第9位階まで上昇させる必要があるからだ。

 

レベルダウンは彼女の職業のカースドナイトを消滅させる為に使用した。

 

多分、これも無くしておかないと多分ダメだろう。

 

「多分、元の強さは無くなっていると思いますので気を付けてくださいね。」

 

私はアイテムボックスからハンドタオルと鏡を取り出して彼女に渡しながら言った。

 

彼女は顔についていた膿を取り、鏡を見ると泣き崩れてしまった。

 

「これで、私に魔力がある事が証明出来ましたね。」

 

「魔法を使ったようには見えなんだが…」

 

「無詠唱化で使いましたし、魔力は隠蔽状態ですので。」

 

「無詠唱化じゃと!?」

 

目をギラギラさせた爺さんが迫ってくるのは正直恐ろしい。

 

「儂にも教えてくれないか!!弟子にして欲しい!!」

 

「じい、よさないか。

シルト、すまない。

後、ありがとう。」

 

「どういたしまして。」

 

「レイナース、どうする?

シャンドラド千年王国に鞍替えしても良いが。」

 

「陛下から受けた恩を返すまでは残らせて頂きます。」

 

「彼女に我々(千年王国)の大使館警備をお願いしてもよろしいですか?」

 

「それが良いだろう。レイナース、お前をシャンドラド千年王国の大使館警備責任者にする。それで良いか?」

 

「謹んで承ります。」

 

ふと、アランとアレクの提案を思い出した…帝国から政略結婚の嫁さんとしてレイナースがやってくるって事は無いよね…

 

彼女も性格が歪んでいることを考えると…嫁にしたくない。

 

「シルト、希望はスレイン法国と同じ待遇で良かったか?」

 

「間違いないです。」

 

「良いだろう。

最恵国待遇で遇しよう。

何なら、同盟を結んでも良いが?」

 

「転移魔法があっても距離がありますので、同盟を結ぶと間にあるスレイン法国が対象と思われませんか?」

 

「確かに。

言ってみただけだ、気にするな。

大使館は取り潰した貴族の屋敷を使うと良い。

商会も、やはり取り潰した商会の店舗を用意している。

店舗も外交官特権が必要か?」

 

さらっと言っているけれどもとんでもないな。

 

「いえ、商会は国営ではありませんので。

私からお願いがあるのですが。」

 

「何かあるのか?」

 

「ズーラーノーンと言う組織を御存じですか?」

 

「知っているがどうした?」

 

「帝都にいる連中を潰しても良いですか?

帝国貴族が何人も属しているので。」

 

「どうやって調べた。」

 

流石に驚いているね。

 

「エ・ランテルで大量のアンデッドが発生した事件はご存じで?」

 

「知っているが?

確か最近アダマンタイト級冒険者になったモモンが解決したと聞いているが。」

 

「その首謀者の死体が冒険者組合から無くなった事は?」

 

「そこまでは知らなかったが、それがどうにかしたのか?」

 

「その首謀者がズーラーノーンの関係者で帝都アーウィンタールに潜伏しているのを確認しているのですが、二人が接触した相手の何人かが貴族で彼らもズーラーノーンに属しているのではないかと。」

 

「何で勝手に調べているのだ。」

 

「秘密です。

けれども、実際に捕えたり倒すのは不味いと思って遠慮していますが。」

 

「捕らえた後でこちらに引き渡して貰えるのか?」

 

「先ほどの二人はこちらで引き取りますが、それ以外なら。

我々が制圧した後で衛兵を突入してもらえますか?」

 

「何となく、どこからの依頼なのかわかったよ。

許可しよう。」

 

「ありがとうございます。」

 

法国の依頼と勘違いしたよね。

 

オックスに頑張って貰えれば、情報源をゲットだぜ。

 

「まだお願いがあって恐縮なのですが。」

 

「他に何かな?」

 

「エルフの国がシャンドラド千年王国の属国か我が国の一部になりまして、帝国の奴隷エルフを解放するか、シャンドラド千年王国で買取するか、最低でも待遇を向上していただきたいのです。」

 

「解放は流石に無理だな、奴隷商人が所有する者を買い取るのは問題ないが個人所有の者は個別に交渉してもらうしかないな。

待遇はそうだな、ドワーフと同等までなら検討しよう。

これで納得してもらえるか?」

 

「それでお願いいたします。

エルフの国とスレイン法国の間で停戦した為、今後スレイン法国から奴隷エルフが流れてくる事は殆ど無くなると思うので。」

 

「それは知らなかった。

ところで貴国がエルフの国を征服したのか?」

 

「エルフの国への使節団がエルフ王、デケム・ホウガンに襲われて返り討ちにしてしまい、その際にエルフ王に推されたのが私の配下でして、結果としてこうなりました。」

 

「あのスレイン法国が苦戦していたデケムを倒したのか?」

 

「倒すと言うより取り押さえました。

スレイン法国に引き渡しましたのでどうなったのかは。」

 

「スレイン法国が紹介してくる訳だ。」

 

何故かジルクニフと友達になり、儀式めいた事なしに書類を取り交わすことになった…これもどうかと思うのだが。

 

私の貴族や役人へのお披露目は宮中晩餐会で行う事になったのだが謁見とかしなくて良いのか?

 

空きの時間を利用して、ワーカーなるものに会いに行った。

 

冒険者なら冒険者組合に行けばいいので簡単だけれども、ワーカーは拠点がバラバラだからな。

 

探しているのはフォーサイトと天武だ。

 

どうせ、彼らが行かなくても違うワーカーチームが行くことになるとは思うけれども、全く違う理由で会いたいわけだ。

 

嫌な方から片付けよう。

 

皇帝陛下から直々にエルフ奴隷の買取の個別交渉の許可を頂いたので。

 

と言う訳で、目の前にエルヤー・ウズルスがいる。

 

こいつの場合は、イケメン死すべし、慈悲は無い。で良いだろう。

 

どうでも良いが、エルフ三人娘の一人が違うのだが?

 

確か、神官、野伏(レンジャー)森祭司(ドルイド)では無かったか?

 

森祭司(ドルイド)が居なくて彼女は元素系だよね。

 

アーウィンタールで奴隷と思われる存在は見かけたけれども、こいつの場合は中々にひどい。

 

奴隷と言っても自国民やドワーフは一定レベルで保護されているからな。

 

この格好で街中を歩かせているのか?と思うと少々不憫である。

 

あちらこちら穴が開いている貫頭衣って、私も視線をどこに向けて良いのか分からない。

 

エルフなのにエルフの扱いが酷いデケムと似たようなものだ。

 

「私に何の用で?」

 

何故か上から目線である。

 

「うちの者と試合をして頂きたくて。

武王と戦わせたいのですが、その前にあなたと試合をするように言われまして。」

 

お前なんか武王の前座にすぎないと言っている訳だ。

 

こいつの性格からして怒るだろう。

 

「私よりも強いというのですか?

調子に乗らないでいただきたいですね。」

 

「出場金以外にも勝ったらこれをお渡ししますよ。」

 

ズワースが机に置いたのは聖遺物級(レリック)の日本刀だ。

 

「ご確認を」

 

これで乗らない筈がない。

 

エルヤーが手に取って確認をしていた。

 

「こんなものをどこで手に入れた。」

 

答え、どこかの拠点で拾ってきた。

 

「秘密です。

こちらからお願いするのですから、私どもが勝利した場合の物は多少悪くても構いませんよ。」

 

どうせ負けようがないし。

 

「そちらのエルフ三人とか。」

 

ここはオスクの屋敷でオスクが伝説上の武器に等しいと判断したものだ。

 

エルフ三人とは相当な価値の差があるぞ。

 

「こんなので良ければ構わない、誰が相手だ。」

 

こいつが見下している非人属の方が良いだろう。

 

「こちらのクスタフがお相手します。」

 

奴の刀をへし折るのはさぞや楽しいに違いない。

 

「ドワーフが俺に勝てるとでも。」

 

これ以上は相手をしたくない。

 

「では、試合でお会いしましょう。」

 

オスクに賭けの対象となった武器を預けると、

 

「これで、武王とも試合を組んでいただけますね。」

 

と聞いた。

 

エルヤーは無茶苦茶きれていた。

 

さて、帝国の宮中晩餐会では、御令嬢方は弾除け(アンネ)を使って華麗にスルーする事にした。

 

半分自作とは言え、こんな美人に手を貸すのはかなり緊張する。

 

先日は護衛として騎士服で私の後ろにいたからな、今日はドレスだ。

 

「私がドレスで同伴して大丈夫なのでしょうか?」

 

「アンネは私の護衛なのだろう?

私を守ってくれないか?

まあ、貴族の御令嬢達からだけれども。」

 

「王国ではかなり来ましたからね。」

 

なにせ、見た目だけはかなり若いからな。

 

東洋人は童顔なので余計にだ。

 

十代前半の御令嬢なら婚約者が決まっていない人はかなりの数いるので、親同伴でご紹介を受けたのだ。

 

因みに、どこでも私達の入室は皇帝や国王よりも後で最後である。

 

WEB版で御令嬢たちは何故かアインズ・ウール・ゴウン辺境侯が最後な事を不思議がっていたけれども、そもそも晩餐会の目的が我々の紹介なのだから最後なのは当然なのだよ。

 

(辺境侯の場合、多大な武勲で新たに生まれた大貴族のお披露目になる。)

 

「皆様、我が国と新たに国交を結びましたシャンドラド千年王国、千年王、シルト・クレーテ・レイ・デ・ミレニアム陛下と御一行のご来場となります」

 

私はアンネに手を貸しながら入室した。

 

後ろから、外務大臣のフェデリー、駐留大使になる者、護衛のズワースとクスタフなどを引き連れ入室した。

 

アンネは宮中晩餐会の前に顔合わせした時に然程美人に興味がないジルクニフが一瞬息をのんだのが分かったほどなのだ。

 

かなりの有名イラストレーターだった三毛さんが本気で描いただけあって、どれだけぶっ飛んだ容姿なのかは分かる。

 

元データを知っているから分かるのだけれども、アンネはメインヒロインで、シャルティアはサブヒロインくらい作り込みが違うのだ。(一応断っておくと、シャルティアは実質ぶくぶく茶釜さんからの依頼だったからか、依頼品の中ではかなり作り込みが良かったので、サブヒロインと評価した。)

 

応接室で面会した時には兜をかぶっていたのだけれども、あの時の護衛で近衛隊長だと言ったらさらに驚かれた。

 

さて、こんなだから、入室した時に私を無視してアンネに視線が集中して会場が静まり返ったのが分かった。(王国では謁見の間で一回見ていた人達がいたのでそこまででは無かった。)

 

ジルクニフの元に向かう時に楽団の音楽が非常によく聞こえた。

 

それは彼女を称える宗教音楽のようだった…本当に天使だけれどな。

 

「皆さん、私からもご紹介しよう、シャンドラド千年王国のシルト殿だ。」

 

「ジルクニフ殿よりご紹介預かりました、シルト・クレーテ・レイ・デ・ミレニアムです。

シルトと呼んでくだいね。」

 

ここで主賓が私だとやっと気が付かれるのはどうなのだ。

 

何せ、千年王国一行で一番容姿が悪いのが私だからな。

 

服装も見た目はそこまで豪華ではない。

 

ロクシーさんに遠慮したからだ。

 

外務大臣のフェデリー、駐留大使と彼らの護衛は貴族たちに話に行き、私はジルクニフとアンネはロクシーさんと始めた。

 

ジルクニフは上位カーストの陽キャだなと思いながら話していたが、アンネはロクシーとの会話を適当に聞き流している気がした。

 

「アンネ、今日は護衛では無くて私のパートナーだぞ。」

 

「失礼しました、ロクシー様、癖で周辺の警戒をしておりました。」

 

近衛隊長と紹介してあったので返答に何も違和感がない。

 

「アンネさんは仕事熱心なのですね。」

 

「ジルクニフ、近衛隊長をパートナーにした私が悪かった。」

 

「構わないさ、ところで彼女を何故近衛隊長に?」

 

「ズワース、クスタフ、二人がかりでアンネに勝てるのか?」

 

「シルト様、御冗談を、勝てるわけがございません。」

 

「と言ったところです。

クスタフは今度、帝国闘技場で不敗の天才剣士と言われているエルヤー・ウズルスと戦う事になりました。

武王との対戦も取り付けましたが誰を出すかは悩んでいますね。」

 

クスタフ二連戦でも良いのだけれども。

 

「それは私も見てみたいな。

アンネは出さないのか?」

 

「ぜひご覧ください。

アンネは女性なので手加減したとか言い訳されそうでちょっと。

武王はウォー・トロールと聞いているのですが、亜人種を出した方が盛り上がるのでしょうか?」

 

「亜人の配下もいるか?」

 

「シャンドラド千年王国は多種族国家ですのでいますよ。

貴国へは問題があるかもしれないので今日は連れてきてはいないのですよ。」

 

ジルクニフとはこんな感じで話していった。

 

かくして、エルヤーとの戦いは天覧試合となった。

 

貴族たちへの紹介で、アンネは近衛隊長だと言ったら絶句された。

 

アンネにダンスを誘った者は当然のように、「私はシルト千年王陛下の護衛ですので」の言葉で撃退していたがジルクニフとだけは私からお願いして踊って貰った。

 

私はロクシーさんとレイナース、アンネと踊った。

 

レイナースは私も護衛だからと遠慮していたが残り3人もいるから踊ってこい、とジルクニフに言われた結果だ。

 

呪いが治ったのだから少しは人生を楽しんでいいと思うぞ。

 




レイナースの呪いは、D&D準拠とすると、ウィッシュ、ミラクル、殺してトゥルー・リザレクションで蘇生でないと直せないらしい、がレベルダウンと位階上昇で無理やり何とか(殺してトゥルー・リザレクションと同じ状態)する事にしました
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