もう一つのギルド   作:mshr

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第5章5話 天覧試合

さて、目の前には目を血走らせた爺がいる。

 

まあ、ここは帝国魔法省なのだから当然だ。

 

モモンガさんと同じ問題…つまり〈魔法を教える事が出来ない〉はどうしたら解決できるのだろうか?

 

傭兵NPCや市民に聞いても戦ったり、訓練したら勝手に覚えると言う困った回答だったよ。

 

確か、魔法の覚え方はスクロールから読み解くのだったっけ?

 

何本か渡せばいいのか?

 

「師匠になって貰えないだろうか?」

 

隠蔽を解いていないから私の実力は知らない筈なのだが…

 

「真なる竜王を倒したのではないですか。

だとしたら第10階位どころか第11階位魔法も使えると見たがどうなのです。」

 

周辺国家には言ったけれども、しっかり知っていたよ。

 

離反しかねませんよと言ったのだが、ジルクニフからの許可は貰っているからここにいる。

 

皇帝でも何ともならないらしい。

 

私は一番伸ばしたのが魔力系だから隠蔽を解除したら第10位階魔法まで使える事はばれるよね。

 

本当にどうにもならないので、傭兵NPCを一人連れてきた。

 

「私の弟子にあたるものです。」

 

そう言って、彼の隠蔽をカットした。

 

LV100の魔法詠唱者(マジックキャスター)であるから、イベントや、課金でMPを増やした私ほどでは無いけれどもかなりのMPがある筈だ。

 

ファウンダーが有るのに課金してMPを増やすのが可笑しいって?

 

無駄に魔力を使う事が多かったので不安だったのさ。

 

有って困るものではないだろう。

 

私ではなく彼の足元にすり寄ってきた。

 

押し付け完了…で良いのか?

 

後は魔法の実演やスクロール、何なら死者の書で誤魔化すしかないだろう。

 

「これほどの方が弟子なのですか?」

 

「一応、私が教育しましたから。」

 

嘘は言っていないが、どのように教育したかと言うとパーティーに入れてのパワーレベリングだ。

 

「立場上、私が教えることはできませんが、彼はバハルス帝国大使館付けにしますので彼に聞いてください。」

 

「おお、ありがたや。」

 

周りにフールーダの弟子もいるのだが本当に良いのだろうか?

 

「地下にデスナイトがいるのですが支配できないのです。

方法をご存じですか?」

 

「魔法でのアンデットの支配は短時間なら可能ですが永続支配は難しいのでは?

アンデッドの永続支配は魔法でなくネクロマンサーのスキルなので。」

 

そう答えたのだが

 

「スケルトンの支配には成功したのです。」

 

確か、不死支配(アンデッド・ドミネート)の魔法は時間制限があるぞ…転移して仕様が変わったのだろうか?

 

相手に知能が発生する、つまりリッチやデスシリーズのように中位アンデッドの場合、かなり難易度が上がる。

 

「掛けなおしている、召喚魔法で作成した、継続的に魔力を消費してのどれかではないのですか?」

 

「おお、よくお分かりで、現状単純な規則正しい命令をさせるだけです。

行動を変えようとすると魔法を使う事になるので、実用化からは程遠いのです。」

 

完全に運用できるなら既に使っているよな。

 

ネクロマンサー職で毎日一定数の創造したものでなくてはまともには使えないだろうに。

 

「魔法ならアンデッドよりもゴーレムの方が使いやすくありませんか?」

 

「ゴーレムはかなりのコストがかかるので、カッツェ平野で大量発生するアンデッドを使えば安価になると研究を進めているのです。」

 

ゴーレムもアンデッドもほとんど変わらないと思っている私の価値観が可笑しいのだろう。

 

こちらもスキル限界までとは言え量産できてしまうからな。

 

「私は基本的には火力特化なので知らない事もあるようですね。」

 

と答えておいた。

 

何故か?フールーダと魔法談義になってしまった。

 

キュアイーリムを屠った最強の魔法、大災厄(グランドカタストロフ)を教えたら、フールーダの弟子は絶句していたのに、なぜか目を輝かせていたのだが大丈夫か?

 

まあ、ワールド職の魔法など絶対に使えないから良いのだけれども。

 

その後、天覧試合に同行した、いや、私が配下を出した試合を見る為にジルクニフが来てくれたが正しい。

 

エルヤー、単に、私がエルフをナザリックに送りたくないだけの理由でボコボコにされてくれ。

 

彼女たちがダークエルフの双子がダークエルフの村に来る理由になったのだけれども、我が国の勢力圏になってしまったので勝手に来られても困るのだよ。

 

エルフの国が属国になった件はモモンガさんとナザリックに通達をしているけれども、ナザリックに侵入した際に彼女たちの存在が問題になっても困る。

 

一人違うと言う事は、彼女はあの時までにどうなったのだと思うと全く心が痛まない。

 

配下を使って容赦なく限界までクスタフに賭けたのに意外とオッズは落ち着いていた。

 

と言う事はエルヤーに賭けた人がかなり多かったと言う事だ。

 

一応無敗だからな。

 

正直、資金繰りが大変になりそうなので稼げるときに稼いでおく。

 

滅んだ国からお金を回収したのに足りなくなりそうなのだ。

 

スレイン法国とエナ多種同盟国への損害賠償とスレイン法国とバハルス帝国で奴隷となっているエルフの買取と竜王国難民用食糧で使う予想金額で結構ギリギリになると出ているのだよ。

 

スレイン法国のエルフの国への損害賠償はある程度仕方が無いと思うけれどもエナ多種同盟国はどうしようか。

 

竜王国から30万人も難民が来ることになったので食料購入費だけでも馬鹿にならない。

 

と言うか、あの国の人口の一割くらいが難民として我が国に来るってそんな馬鹿な、と言いたかった。

 

これでも、難民の全てではないらしい。

 

冗談抜きで、難民の命を使って始原の魔法を使うかどうかを悩んでいたと打ち明けられて驚いてしまった。

 

他にも民兵として前線に送り込んで食い扶持を減らすなんて作戦も検討されていた。

 

思った以上に竜王国の現状がひどかったのだ。

 

なので、少なくとも三人分は奴隷購入費が浮く上にお金が稼げるこの機会を逃す手は無いのだ。

 

それもあって天武(エルヤー)なんかと会ってこんな手を使ったのだ。

 

闘技場のアナウンスが私達を紹介した。

 

「本日はジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクス皇帝陛下と先日、我が国と国交を結びましたシャンドラド千年王国のシルト・クレーテ・レイ・デ・ミレニアム国王陛下がご覧になられています。」

 

私達は二人で観衆に手を振った。

 

ものすごい大歓声である。

 

人気があるな。

 

『次の試合は、ワーカーチーム天武の天才剣士、エルヤー・ウズルス~~~。』

 

中々の人気なのか結構歓声が上がった。

 

『先ほど紹介しましたシャンドラド千年王国の近衛、クスタフ~~。』

 

一応歓声が上がったけれども先ほどよりも少ない気がする。

 

私はクスタフに手を振って見せた。

 

エルヤーは私が皇帝と貴賓席にいる事を知って少し驚いていた。

 

まあ、武器の出所が国の国宝とでも理解したのだろう。

 

その後でクスタフを見て舌なめずりをしていた。

 

相手の強さが分からないようではだめだな。

 

『この試合は、シルト陛下より勝利報酬として国宝クラスの刀を預かっております。』

 

この宣言にかなりの盛り上がりを見せた。

 

「そんなものを出していたのか。」

 

「ええ、いい宣伝になりました。

クスタフが勝てば良いだけですし。

実は、エルヤーも所有しているエルフ奴隷をかけて貰ったのですけれどもね。」

 

エルフの奴隷もかかっている事はアナウンスでは黙っておいて貰った。

 

まさか、エルヤーも天覧試合なのに後でグタグタ言うまい。

 

「すごい自信だね、エルヤーはかなりの腕前と聞いているけれども。」

 

「でも、帝国四騎士には選ばれていないのですよね。

天才剣士とか不敗といってもその程度なのでしょ。

要するに、自分よりも弱い相手としか戦ってこなかっただけでは?」

 

「言うね~、シルトも。

近衛は全員が強いのかい?」

 

「神官がいるのですが彼女は強くはないですね。

彼女が近衛なのは蘇生魔法も使えるので。」

 

「そんな人がいるのかい?」

 

「今はスレイン法国にいてエルフの国の講和条件を交渉していますよ。」

 

「なるほど、帝国には来ていないのか。」

 

「優秀な神官も一つの強さなら強いと言えるかもですが。」

 

「いや、参考になったよ。」

 

「いよいよ始まりますよ。

自信過剰で相手をなめすぎだな。

国の近衛が代表で出ているのに弱い筈がないだろうに。」

 

いよいよ試合が始まった。

 

二人は接近するとエルヤーは急に加速して横に回り込んだ。

 

多分、縮地改だな。

 

斧を使っているクスタフにあっさりと対応されてしまっていた。

 

「アンネ、確か相手に会わせて全力は出すな、と言ってあったよな。」

 

「相手のステータスに合わせていますが、そもそもスローですからね。

同じ速さで動いても対応は簡単です。」

 

「そんなものかね。」

 

「何を言っているのだい?」

 

「あっさり決めては観客がつまらないだろうから、ちゃんと楽しませるように言っておいたのですよ。

しかし、刀で両手持ちの斧にスピード負けするのはどうかですよね。」

 

何合か打ち合っているけれども、スキル無しでも刀では武器が壊れないか?

 

エルヤーがいったん下がって何かを使用してるのが分かった。

 

中々やるじゃないか、能力向上、能力超向上とか言っている。

 

手合わせしても分からないとは、だめだな。

 

空斬も使ったようだが、だめだめだな。

 

派手なのは良いが無駄が多すぎると私でも分かる。

 

「アンネ、相手のエルヤーをどう思う?」

 

「基礎からやり直しですね。」

 

「厳しいね。」

 

四騎士が嘘だろとか言っている。

 

「エルヤーが弱いのか?」

 

「才能に胡坐をかいて格上と戦うと言ったような、ちゃんとした指導を受けていないのでしょう。」

 

私は立ち上がり前に出て、貴賓室からクスタフに合図を送った。

 

私の合図を受けてクスタフは武器破壊(ウェポンブレイク)を使用してエルヤーの刀を破壊した。

 

そのまま片手を斧から離すと刀が破壊されてあっけにとられた表情のエルヤーを殴り飛ばした。

 

私は席に座りなおすと

 

「立ち上がってさらに戦う意思位は見せて欲しいですね。」

 

と言って会場を見ていたが、一発KOらしい。

 

武王なら最後まで戦っただろうに。

 

意識を取り戻したエルヤーは斧を持って待ち構えているクスタフを怯えた表情で見ているのが分かった。

 

エリートで挫折を知らないとああなるのかな。

 

帝国の市場に出ているエルフ奴隷買占めているからね。

 

追加で購入するのは厳しいし、もうすぐにエルフ奴隷も待遇改善だ。

 

あの性格で仲間が出来たらいいけど

 

『勝者、クスタフ!』

 

クスタフは私を見ながら斧を使って剣礼をしたので私も立ち上がり答礼で返した。

 

クスタフは会場から下がっていった。

 

ジルクニフは四騎士に聞いていた

 

「どの程度の強さか分かったか。」

 

「いえ全く分かりませんでした。

かなり実力を隠していた事は分かりましたが。」

 

「そうか。」

 

『次の試合は、久しぶりに挑戦者が出てきた武王~。』

 

観客は大盛り上がりだ。

 

『対する挑戦者は、こちらもシャンドラド千年王国から、ミノタウロスのダイダロス~!』

 

「亜人がいるとは聞いていたが、ミノタウロスもいるのか?」

 

「我が国は多種族国家ですので、法律さえ違反しなければ誰でも居住できますよ。

当たり前ですが人間を食べるのは禁止です。」

 

ダイダロスは私の方を見てやはり剣礼をしていたのでダイダロスに手を振りながら答えた。

 

『今回の試合も、シルト陛下より勝利報酬として国宝クラスの斧を預かっております。』

 

「こちらも何かをかけているのか?」

 

「いえ、武王と戦う代償としてオスクさんが武器コレクターなので提供させて頂きました。」

 

「何と言うか。」

 

「これで、勝っても負けても我が国の知名度は上がりますね。」

 

因みにこちらもかけさせてのだが、流石に相手が武王なだけあって中々いい倍率だった。

 

「近衛をやっているだけあって、ダイダロスよりもクスタフの方が強いですよ。」

 

「そうなのか。」

 

「技術の問題で、単純な肉体能力ではクスタフは劣るのですけれどもね。」

 

「なるほど。

しかし、武王に勝てるのか?」

 

「私が気にしているのが、再生能力が高いトロールなので、殺さずに勝てるのかです。」

 

「そうなのか?」

 

「武王はウォートロールとしてはさほど強くはないですよね?」

 

「はっ、シルトは何を言っているのだ。」

 

「ただ、先ほどのエルヤーとは違うようですね。」

 

武王とダイダロスが握手を交わしている様子が見えた。

 

この世界の亜人種は基礎身体能力が高くても、かつての八欲王の間引きの影響で限界レベルが低いのだったっけ。

 

亜人種が平均的には強くても突出した強者が生まれてこないのはその為だった筈。

 

武王とダイダロスの試合が始まった。

 

どちらも重量級なので中々に見ごたえがある。

 

「先ほどのエルヤーよりも余程丁寧な戦い方だな。」

 

「武王を評価してくれてうれしいよ。」

 

「アンネがダイダロスならどう倒す?」

 

「首をはねるしか思いつきませんね。」

 

「だよな~。」

 

一応、炎の斧だけれども対策は取られているので効果が薄い。

 

多分、同じレベルでの戦いなら、攻撃力のミノタウロス、防御のトロールなのだろう。

 

ここに、ビーストマンが加わる訳か。

 

こうしてみると、ビーストマンは真っ向勝負をしていないのだろうな。

 

西方三大国家と言われる国の争いを思い出した。

 

この三か国が戦っているからバハルス帝国が持っているという悲しい実態がある。

 

「ジルクニフ、貴国の東方で争っている二種族の戦いをどう思う?」

 

私とアンネの会話に何を言っているのだと言わんがばかりの四騎士とジルクニフの方を見て言った。

 

「どうとは?」

 

「トロールとミノタウロス、それとビーストマンが争っているから人間領域は無事なのだなと、ふと思いまして。」

 

「シルト、貴殿はその事を私に教える為に武王とミノタウロスで対戦を組んだのかい。」

 

「そうですよ。

武王に勝てないようではトロールに勝てないと言っているようなものなので。」

 

私は立ち上がりダイダロスに武王を倒す指示を出した。

 

「アンネ、蘇生魔法の手配をしてあるな。

私が行っても良いけれども」

 

「大丈夫です。」

 

『勝者、ダイダロス。』

 

司会の声が聞こえる中、闘技場の中でダイダロスは私に斧で剣礼をし、武王に向かっていくシュバルツを見た。

 

拡声魔法を使い

 

「皆さん、帝国の勇者の戦いに強い感銘を受けました。

勇者の強さに敬意を。

シュバルツ、蘇生を行え。」

 

シュバルツが蘇生魔法を使用した。

 

「私達の事を知っていただくためにこのような場を設けさせて頂きました。

このようなわがままを聞いて頂き、興行主の方に感謝いたします。

今後ともに仲良くしていただくようにお願いいたします。」

 

私はジルクニフの方を見ると彼は立ち上がり私の横に来たのでジルクニフと握手して反対の方の手を観客に手を振って見せた。

 

「人間種を守る為に、例えそれがアンデッドでも魔王でも使える物は使うべきです。」

 

ジルクニフにだけ聞こえるように私は話した。

 

「それは貴国の事か?」

 

「違いますよ。

その内に分かります。」

 

観客の方を向きながら私はジルクニフに答えた。

 

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