もう一つのギルド   作:mshr

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第5章6話 一日だけワーカーをやってみた

エルフの三人娘は回収した。

 

奴隷商人から購入した他のエルフ奴隷に混ざってしまったので誰だったのかが分からないのが何とも。

 

彼女達(デケムの馬鹿げた理由で女性に戦わせていた為、男のエルフがいない)の耳を戻しただけで、無茶苦茶に感謝されてしまった。

 

彼女達は(さと)に戻るか、エルグリラに住むか、竜王国難民村に住むかの選択を行う事になったが、好きにしてくれて良い。

 

さて、次はフォーサイトである。

 

ぶっちゃた話、会いたいのはアルシェである。

 

この世界で正式に魔法を習い、かつ、引き抜き可能な人材を中々思いつかないので仕方がない。

 

彼女の場合、妹ごと面倒を見ると言えば大丈夫な気がするのだ。

 

彼女が居なければ、フォーサイトは解散して他のメンバーも魔王の巣(ナザリック)には行かないと思うし。

 

本当は全く持って人道的な理由でないのが笑えない。

 

やっと仕事から帰ってきたフォーサイトと歌う林檎亭で会う事が出来た。

 

「本当にあんたが今話題のシャンドラド千年王国の国王なのか?」

 

「そうは見えませんか?」

 

「なんで、うちみたいなワーカーを訪ねてくるのだ。」

 

「あなた達のメンバーに入れて頂きたくて。」

 

「はあ~。」

 

ヘッケランには冗談に聞こえたのだろう。

 

まあ、半分は冗談だが。

 

「正確には、私が依頼する依頼の期間だけですけれどもね。」

 

「依頼か、なら依頼って言ってくれ。

しかしなんでうちを指名しにきたのだ?」

 

「正確にはフォーサイトでは無くてアルシェさんですよ。

フールーダさんからの紹介です。」

 

「フールーダってあのフールーダか?」

 

「帝国魔法学院を中退されたアルシェさんの事をかなり気にしていまして。

何でもタレントが同じなので気にされていたようですよ。」

 

「何となく事情は分かった。

どんな依頼でいくら払うのだ。」

 

まだ私が国王だと信じていないようだな。

 

護衛がぱっと見一人しかいないからね。

 

「とある秘密結社を潰す依頼ですよ。

証拠が今一なので冒険者組合では受けてくれそうにありません。

報酬は金貨400枚、その内の前金は100枚で。」

 

「仲間と相談してから返事する。

それで良いか?」

 

「何時頃お返事を頂けますか?」

 

「今日の夕方にでも訪ねて来てくれ。」

 

「では、お暇して。」

 

転移魔法で一旦戻った。

 

書類仕事は待ってくれないのだ。

 

夕方になり、再度、歌う林檎亭を訪ねたら今度は4人で待っていた。

 

「いくつか質問したいことがあるけど良いか?」

 

「先に音の隠蔽を行いますね。

では、どうぞ遠慮せずに。」

 

「どこで仕事をするのだ。」

 

「ここ、アーウィンタールですよ。

なので、帝国のワーカーが行ったというアリバイが欲しい、と言うのも理由の一つです。」

 

「なるほど、で、相手の強さは分かっているのか?」

 

「私達二人でも完全制圧できますね。」

 

元漆黒聖典だろうとか、私達が倒せない相手が殆どいないとか言ってはいけない。

 

「どういう作戦なのだ?」

 

「仲間が囮になって集めるのでまとめて捕縛します。

殆どの人は衛兵に引き渡しますが、二人の身柄を我々が引き取る予定です。

この話自体は付けてあるので帝国に睨まれる心配は有りません。」

 

「話が上手すぎるわね。」

 

イミーナさんが言ってきた。

 

「でしょうね。

もう一つ理由があって、この仕事が終わったらアルシェさんを引き抜きたいのです。」

 

「はあ~、あなた何を言っているの?」

 

「シャンドラド千年王国に引き抜きたくて。

別に全員御一緒に来ていただいても構いませんよ。

こっそり引き抜くよりいいでしょう。」

 

エルグリラは物価が尋常じゃないから竜王国難民の移住村で生活する事になるかもだけど。

 

「私ですか?」

 

「妹さんと一緒の移住でも大丈夫です。

ああ、ご両親は要りませんので。」

 

「何を知っている。」

 

「貴族で無くなったのに働かず、贅沢がやめられず、娘に稼がせる借金まみれのろくでもない親。」

 

「何故知っている。」

 

「そもそも、貴方がシャンドラド千年王国の国王と言う証明もないでしょう。

金額もおいしすぎますね。」

 

「相手は弱くはないのですよ。

私達が一緒だから簡単なだけで。

私達が居なければ恐らく返り討ちですね。」

 

「お前は何を言っている。」

 

「アルシェさん、タレントを使ってください。

隠蔽を切りますので。」

 

アルシェにバケツを渡しながら私は言った。

 

「何ですかこれは。」

 

「直ぐに意味が分かりますよ。

では、隠蔽を切りますね。」

 

「――おげぇぇぇぇ!」

 

「アルシェ、大丈夫ですか?

獅子のごとき心(ライオンズ・ハート)。」

 

「何があったの、アルシェ。」

 

「お前はいったい。」

 

「やはりバケツが要りましたね。」

 

「この二人、人間じゃない、力の桁が違う!

化け物だ、いや、化け物なんていう言葉で収まる存在なんかじゃない!

人間が勝てるような相手じゃない。」

 

「一応、私は人間なのですが。」

 

「失礼な。シルト様は化け物ではありません、神です。」

 

アンネは黙ってくれないかな。

 

「再度隠蔽をしますね。」

 

「お前、先ほどの音の隠蔽もそうだけれども、魔法もアイテムも使った形跡がない。

どうやっている。」

 

「秘密です。

あなた方も手の内を明かすようなことはしないでしょう。

先にも言いましたが、私はシャンドラド千年王国の千年王であるシルト・クレーテ・レイ・デ・ミレニアム。

後ろにいるのが近衛隊長のアンネ・レンブラントです。

今ので私達が参加するから簡単な依頼な事とシャンドラド千年王国の国王である証明になりましたか?」

 

「さっき、私は人間、とか言っていたよな。

と言う事は後ろにいる近衛隊長様は違うと言う事か?」

 

ヘッケランは意外と鋭いな。

 

「シャンドラド千年王国は多種族国家なので、と言っておきます。

この国でも、武王はウォートロールでは?」

 

「武王と戦ったのはミノタウロスだったと聞いていますね。」

 

「彼女はミノタウロスではありませんけれどもね。

けれども、ミノタウロスのダイダロスも我が国の大切な国民ですよ。」

 

「状況は理解できた。

実際の相手の強さはどの程度なのだ。

ああ、お前達…あなた方の基準では無く一般的な基準でお聞かせ願えれば。」

 

「今更敬語を使わなくても良いですよ。

ただ、先ほどの話を受け入れて、我が国の国民になったら口調は改めて下さいね。

下手すると不敬罪になるので…多分。

一般的な強さで考えると、先ほど要求した二人の片方はガゼフと互角の戦士、もう一人は第三階位の死霊系魔法詠唱者(マジックキャスター)の筈です。

でも、この二人は私達が相手をするので、その他は戦力としてはたいした事は無いです。」

 

「なら口調は戻せて貰うぜ。

お前は嘘を言っていないがまだ隠している事は無いか?」

 

「アルシェさんのスカウトの件、それとも相手の件ですか?」

 

「両方共だ。」

 

「相手の件でしたら戦力としては大したことが無いと言いましたが、社会的地位は中々です。

と言えば分かりますかね。

先ほどの二人も私達が相手をすると言いましたが、先に接触して攻撃を受ける可能性があるので、それを加味しての依頼金額です。

アルシェさんのスカウトの件ですが今言う必要はありますか?」

 

「シャンドラド千年王国に行って酷い目にあわすとかではないのだろうな?」

 

「それなら、そんな面倒なことをせずに攫うか抹殺すればいいのでは?」

 

「脅迫か?」

 

「事実を言った迄ですが、そんな気はないとだけは明言しますよ。」

 

「受けるかどうかの相談をしたい、少し席を外してくれないか。」

 

「早めにお願いしますね。」

 

私達は少し離れた

 

「断るって選択肢はないだろうね。」

 

ヘッケランに言われなくてもなく、半ば脅迫めいているのは理解している。

 

「シルト様からの依頼を断るのは不敬です。」

 

「ここはエルグリラでもシャンドラド千年王国でも彼らは我が国の国民でもないのだぞ。」

 

とは言っても、隠蔽を解いた状態の私達を見たうえであそこまで言えるのは、流石はモモンガさんと交渉しようと言う気概があるだけはある。

 

「ところで、彼らを選んだのは彼女の異能(タレント)の為ですか?」

 

「それもあるけれども、引き抜きのしやすさもあるかな。」

 

「引き抜きですか?」

 

「今後、エルグリラで生まれてくる子はユグドラシルの民かこの世界の民かどちらなのかな?

後者なら、この世界の教育を行わなければ魔法もスキルも覚えないし、我々が使えない武技だって覚える可能性があるよね。

その為の教師は必要だと思わないか?」

 

「だから彼らを引き抜きしたいと言う訳ですか。」

 

「冒険者は良くも悪しくも組合の紐付きだし、犯罪者は教育係にしたくない。

竜王国からの難民や移民からも募集は出来るけれども、移民の話はまだ決まっていないし、優秀な人材が来るかどうかはまだ分からないからこれは一種の保険だね。

ワーカーと言われる中では彼らはかなりまともだから。」

 

本音はアルシェだけでいい。

 

帝国魔法学院で学んだ経験は同じような学校を作るのに有益だけど、実際に学んだ彼女のような人材は竜王国からでは望み薄だからだ。

 

竜王国からの移民たちはとにかく、元来からのエルグリラ市民の系譜に関しては高度な教育に対して一切の反対意見が出ない自信がある。

 

「我が国に来ますかね?」

 

「さてね、一緒に仕事をしてそう思ってもらえる様にすることが先決かな。」

 

「話し合いが終わったようです。」

 

私はヘッケランに言われて席に戻った

 

「確認しておきたいことがある。

アルシェを何故引き抜きたいのか?

俺たちが千年王国に行った場合はどのような待遇なのか?

エルフの奴隷を買い漁って何をしている。

正直、そこまでお前たちを信用しきれないんだ。」

 

「ちょっとした行き違いでエルフの国が我が国の勢力圏になりまして、エルフ奴隷の購入は国民として迎え入れる為に購入しているだけですよ。

今は準備段階ですが、エルフ奴隷の権利をドワーフ並みに引きあがる事になりましたがそれも私がジルクニフ皇帝と交渉した結果です。

エルフの奴隷に関してはご納得いただけましたか?」

 

「分かったわ、むしろ感謝しなくてはいけないようね。

あの、あの糞野郎(エルヤー)を皇帝陛下の面前で倒したらしいし、いい気味だわ。

ついでにやっちゃってくれても良かったのだけど。」

 

「あのまま、みじめに生きていた方が良くないですか?」

 

「分かっているじゃない、少しすっきりしたわ。

ありがとう。」

 

「どう致しまして。

で、待遇ですがアルシェさん以外はお好きにどうぞ。

教会を作って神官をしても良いですよ。

竜王国からの難民の村も出来ていますしそちらに暮らされては?

難民の村と言っても、住民が難民だっただけで開拓済みの普通の村ですよ。」

 

「何と言うか思ったよりもいい待遇に聞こえるが。」

 

「ですがアルシェさんはどのような待遇で。」

 

「魔法学校を作りたいのでその教師役ですね。

なので、彼女のお手伝いでも構いませんよ。」

 

「言っている事はまともに聞こえるのだが、お前たちの方が余程魔法を使えるのだろう?

何故アルシェなのだ。」

 

「私達は都市ごと他の世界から転移したらしく、色々と(ことわり)が違うのですよ。

今後生まれてくる子供達がどちらの世界の(ことわり)になるのか分からないのでこの世界の教育機関も作っておきたいのです。

帝国魔法学院で学んだアルシェさんにはその点で期待しているのです。

帝国魔法学院出身で我が国に来ていただけそうな方となるとさほど多くはないのです。」

 

「都市ごとの移転と言うのはよく分からないが、学院を作りたいのは分かった。

フールーダからの紹介ってそういう事なのか。

アルシェはどうだ。」

 

「その話が本当ならいい話。

みんなが良いと言うならぜひ受けたい。」

 

「なら話は決まったな。

俺たちもついていくぜ。」

 

「私に気を使っているなら遠慮したい。

今回の仕事も、それに付いてこなくても。」

 

「開拓村で畑仕事をしながらのんびり神官の真似事でもして暮らしていくのも悪くないと思っているのですよ。」

 

「仲間一人を寂しい思いをさせないって。」

 

「貴女の為だけではないわ。

新しい場所に行けるのよ、しかもそこの国王直々に招かれてね。

かなりいい待遇じゃない。」

 

「みんなありがとう。」

 

何故か依頼達成以前に我が国に来ることになったみたいだ。

 

当面は竜王国からの難民支援に回ってもらえば良いから、まあいいか。

 

さて、オックスが邪神のふりをして邪神を信仰する教団を集めたと連絡を受け、墓地に向かった。

 

「見張りがいるわね。

どうする?」

 

イミーナが私に聞いてきた

 

依頼主である私がリーダーらしい。

 

「アンネ、墓地全域の監視は出来ているよな。」

 

「既に完了しております。」

 

「じゃあ始めようか。」

 

私が言うなり見張りが倒れた。

 

「なんで?」

 

「近衛の密偵(スカウト)の者がやったのですよ。

因みに、あなた達と会っていた時もずっといましたよ。」

 

「気が付かなかった。」

 

「では行きましょうか。」

 

私達は見張りの者を縛ってひとりでに開いたように見えた霊廟に入った。

 

「ビーストマン!」

 

「ハサン、この先はどうなっている。」

 

「地下に目標はいます。」

 

そう言うと、ハサンは奥に置かれた石の台座の下の方にある意外に細かな彫刻を押し込んだ。

 

「先に私が参ります。」

 

そう言うと、ハサンが消えた。

 

「とんでもない腕利きね。」

 

「ああ、そうだな。」

 

小声で話しているのが聞こえた。

 

私達は階段を下りていった。

 

そこには男女交えて、総数二十人ほどの人がいた。

 

顔は骸骨を思わせる覆面を被っており、上半身、下半身共に裸である。

 

どう見ても老人や中年なので見たくもない。

 

私も今は覆面をかぶっているがあれは無いだろう。

 

いきなり強力な精神ダメージを受けた。

 

「邪神様、御力を。」とか言っているが、そこにいるのは私の近衛のオックスだぞ。

 

三人ほど、裸になっていない者が居たのだが…クレマンの裸は見られないらしい。

 

「アンネは金髪女を、私は残りの二名を捕縛する。」

 

私は異形種ではないので、クレマンティーヌを取り押さえられる自信は無いのだ。

 

クレマンティーヌもアンネ相手では結果は見えている。

 

あっさりと捕まってて、クレマンティーヌの乾いた笑い声が聞こえた。

 

私は集団人間族捕縛 (マス・ホールド・パーソンズ)を使った…対象以外も捕縛したが気にしていけない。

 

「残りを捕縛してもらえませんか?

ああ、そこのスケルトンの上位種のようなアンデッドは私の配下なので気にしないでください。」

 

階段の途中で固まっていたフォーサイトの人達は、声を掛けたら動き始めて捕縛を開始した。

 

こことは別の奥の出口もすでにハサンが抑えている上、地上に抜け出したとしてもそこも抑えている。

 

麻袋に入った子供と思しき人だけどうしようかと思ったけれども、これこそ動かぬ証拠だよな、と思いそのままにすることを決めた。

 

全員を捕縛したので、フォーサイト(ヘッケランが代表で行った)に衛兵を呼んでもらって引き渡した。

 

私達が捕縛した(名目上)三人の内、神官は引き渡しクレマンティーヌとカジットはエルグリラの監獄にご招待した。

 

この二人だけで問題はない筈。

 

…漆黒聖典と言うよりもスレイン法国の情報に私の頭を悩ませることになるとは思わなかったけれども。

 

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