エルグリラ第六階層玉座の間に、初めてちゃんと招待した現地人が入った。
前回は盗賊と間違えた大王国軍兵士だからな。
何というか感無量である。
招待したのはフォーサイトの4名である。
「シルト千年王陛下、これまでの数々の御無礼をお許しください。」
「流石にこういう場でもなければ、そう文句を言う事も無いよ。
大体私は王族っぽくないでしょうからそう思わないのも仕方ないし。
但し、この街には忠誠心過剰な人々が多いから気を付けてくださいね。」
「ありがとうございます。」
「これで私達が別の世界から都市ごと転移したというのは理解してもらえたかな。」
「確かにこんな別のドアに入れば季節が違う世界は有り得ないです。」
「私達は武技と言うのも使えないしタレントも持っている者はいない。
魔法やスキルの覚え方もまるで違っていた。
だから、こちらの教育システムでの学校を作りたい訳だ。
協力してもらえるなら生活に関しては保証するけど。」
「最初から私達には選択肢は無いと思っていたわ、こうして考えさせていただけるだけでも感謝します。」
「なんでも、この街では私は神と言う事になっているけれども大丈夫?」
「ここでは人を助けるのに神殿の意向に従わなければならないと言う事は無いのでしょうか?」
「この街で奉られている神が私や今はいない私の仲間たちだからね。
神官職の者も食べていかなければならないだろうから、その辺りの考慮はして欲しいかな。
竜王国からの難民の為に作った村や町にはまだ教会自体が無いからそこで神官をしてもらってもいい。
なにせ、王権も神権も私だから私が良いと言った、で全てが通るよ。
その上、冒険者
よその冒険者組合とは条件なんかも違うからこの辺りの判断は好きにしてくれて良い。」
「色々と驚きです。」
「そうだろうね、取り合えず食事でもとってその後に最終結論を聞かせてくれればよいよ。
ここにはそうそう来られないだろうから楽しんでいってくれればいい。」
結局、彼ら全員がエルグリラに移住する事にした。
ハーフエルフへの偏見も神殿勢力の存在もないこの街はある意味で生活しやすいだろうから。
こうして、エルグリラの都市部に住む現地出身者は7人になった。(※エルフの秘書官は第6階層の使用人室、元エルフ奴隷は一旦エルフの国に帰郷中、国交を結んだ各国の大使はまだ未決定、大使館開設の事前準備要員兼連絡員は住んでいるとは言わない。)
因みに最初の1人は蘇生魔法の実験台だよ。
結局、彼女の仲間だったゾンビで試したけれども蘇生魔法もユグドラシルと同じでアンデッドはアンデッドのままらしい。
因みに第5階位の
(周辺のゾンビに蘇生魔法を使ったら灰になった…レベルが足りなかったようだ。なので銀級である彼らを使ったのだけれども。)
アンデッドの蘇生方法もユグドラシルとは基本同じらしい…拠点のNPCは拠点のシステムで蘇生できるとは言え確認できてよかった。
アンデッドを元の生者に戻すのはワールドアイテム(世界樹の種)以外にはないのだろうか?
なお、監獄にいるのは住んでいるとは言わないと言っておく。
さて、監獄の住人となったクレマンティーヌであるが、一回死んだ為か自主的に話しているせいか、ズーラーノーンに入ったせいか、あの制約(特定条件下で3回質問されると死ぬ)を受けずにいろいろペラペラ話してくれた。
そして困ったことになった。
私は、スレイン法国に傾城傾国がある証拠としての彼女を欲しただけなのだが。
一つはズーラーノーンを潰しに行った方が良いのか?
もう一つは三人目の神人の事である。
スレイン法国の基準では神人ではないのかもしれない。
まあ簡単に言うと、六大神の系譜ではないと言う事だ。
最も、彼女も噂レベルらしく、裏取りをしなくてはいけないので、現状では真偽不明なのだけれども…本当なら爆弾だよ。
多分、イビルアイとかリグリットならさらに詳しく知っている筈だ。
スレイン法国に直接聞く事も出来ないから調査をアランと皐月にしてもらう事にした。
この話が爆弾だと言うのは私しか理解できないだろうけれども。
まあ、どうせスレイン法国は更地になるレベルで滅びるだろうから良いのか?
その、スレイン法国のトップとやっと会談が出来るようになった。
デケムに助けられ、デケムに面倒をかけられたのがスレイン法国との交渉である。
デケムを引き渡したおかげで最低限の食糧はあっさりと入手できたが、エルフの国との講和交渉はスレイン法国側の被害も大きく損害賠償の交渉が長引いた為だ。
さてスレイン法国だけれども、王政国家ではないので謁見の間と言う物が無いらしい。
普通に談話室とか応接室である。
「最高神官長猊下、お初にお目にかかります、シャンドラド千年王国の国王をしております、シルト・クレーテ・レイ・デ・ミレニアムです。
国ともどもよろしくお願いいたします。」
「最高神官長を務めるヨハネス・ペトルス・ヒスパヌスだ、シルト千年王陛下。
先ずはデケムを引き渡してくれた事に感謝する。」
「いえ、ヨハネス猊下。
我々も、気を使ってエルフの交渉団を送って襲われたのは想像の範囲を超えていましたので。
彼の待遇をどうするかを悩んでいたので渡りに船でした。」
全てのエルフの物は俺の物、俺の物は俺の物だったからな。
アウラとマーレは当たり前と評していたけれども、下の者がそう思うのはまだとにかく、上の者がそう思うのは違うと思う。
どんな命令でも献身的に動き、当然のように全肯定してくるNPCに囲まれていると感覚が可笑しくなるのだろうか?
そう言えば、デケムの親はエルフ属至上主義をデケムに植え付けたけれども、他の八欲王との関係はどうなっていたのだ?
私と話した都市守護者は不死種だけでエルフのような長命種が居なかったのもおかしい。
都市守護者が私に話していない話に何かまだ隠し事がありそうだ。
ヨハネス猊下は何か知っているのだろうか?
「貴国とエルフの国の間で戦争が起こった理由も聞きましたが、我々がエルフの国、と言うよりもデケムと戦争した理由と同じなのである程度は納得しました。
ところで、彼が持っていたエルフ属優性思想と、自分の子供による強力なエルフを生み出す考え方に心当たりは有りますか?」
はっきり言って、エルフ属を人属、デケムの子を神人の子と変えてしまうと、デケムもスレイン法国も似たようなものだ。
「その前にお答えいただきたいが、シルト陛下はプレイヤーで、我が国に交渉に来ていたのはNPCで間違いないのか?」
「プレイヤーが何を意味するのかは分かりませんが、NPCには心当たりがあります。
それがどうかしましたか?」
「質問の仕方を変えましょう。
使者の方からシャンドラド千年王国の首都、エルグリラは都市ごと別の世界から転移した可能性が高いと聞いていますが、転移前の世界はユグドラシルと言うのではありませんか?」
「若干正確とは言えないと思いますが凡そあっていますね。」
「とすると、貴方は六大神様と同じプレイヤーで、使者の方は私達が従属神とよんでいる、NPCではないのですか?」
「ヨハネス猊下の言われている事は大体理解できます。
つまり、私たち以外にも過去に同じような存在が居て主人にあたる者をプレイヤー、守護者とか
傭兵モンスターやPOPモンスターも
若干正確とは言えない、はプレイヤーがユグドラシルからの転移なのだろうか?と言う点だ。
本体はリアルと言われる世界に有るので転移前の世界はユグドラシルで良いのか自分でも疑問だからだ。
「凡そあっています。
守護者とか
もう一つの質問は、プレイヤーはあなた一人か六大神様達のように複数なのかどちらでしょう?」
「一人でもあり複数でもあると答えておきます。
しかし、何の意味が?」
エルグリラであれば一人で同時期と言う意味では複数と言う返事だけれども、分からないだろうから誤魔化したようにしか聞こえないよね。
「複数なら意見対立で回答が変わるかもしれないと思いまして。
我が国や人間種、人属に対してどのように行動するおつもりかを確認しておきたい。」
「竜王国に援軍を送った、ではお答えになりませんか?」
「使者の方からは転移した結果、食糧が不足していてその最大の購入先として期待されているのは法国である。と聞いている。
であれば、食糧の為に援軍を送った、と考えるのが筋ではないのですか?」
「正直に言わせていただくと、何も考えていません。
エルフの国は国王だったデケムの行動によって勝手に属国になってしまったと言って良いです。
竜王国から難民受け入れをしましたが、貴国との間に住まわせることによって人属至上主義の貴国と多種族国家、と言うよりも多種族都市であるエルグリラの間にワンクッションおくのが目的ですから。
転移したエルグリラさえ平和で他国と適度に交流できればそれでいいと考えています。」
「つまりエリュエンティウのように外部には極力不干渉で行きたいと。
の割に、各国に使節を送り大使館や商館を設置し、かなりの領土を要求していますが?」
「領土に関して言うと、キュアイーリムの勢力圏でゾンビだらけですからね。
我々以外が利用するとしてかなりの手間では?
国境策定が終われば、ゾンビを駆除して開発及び移民を受け入れる予定でした。
エルグリラと他国との間に緩衝地帯が欲しい、というのが最大の理由で、竜王国への移民の提案の件は我々にとって渡りに船だったのです。
エリュエンティウが何かは知りませんが、そもそも行っている行動は一般的な国家や貴族の領主が行う行動と然程違いはないのでは?」
「確かにシルト陛下のおっしる通りですね。
プレイヤーは強大な力を持っているので我々としても最大級に警戒しているのですよ。
スレイン法国と友好的で不幸な接触を避けようとして頂けるなら貴国を歓迎いたします。
シルト陛下の質問のお答えですが、デケムの考え方はかつてのプレイヤーの考え方なのです。
特に先鋭化した考え方ですが、我が国の国民の考え方も同じようになっているのは問題だと、少なくとも上層部の者は考えています。
エルフとの戦争が終了したので、人属優性主義を元の人間種至上主義に変えていくようにしていく政策を行う予定です。」
「その割に中々の賠償金と捕虜への身代金でしたね。」
「それは国民を納得させるために仕方がなかった、と考えて欲しいですね。
しかし。どのようにしてあの金額を用意したのですか?
我々は代替のマジックアイテム支払いや分割払い、捕虜のエルフの身代金を少しずつ払ってくると考えていたのですが。」
「原資はキュアイーリムに滅ぼされた街から確保したお金ですよ。
と言っても、食料購入と併せてかなり使ったのでこの先は交易で稼いでいかなければなりませんが。
しかし、人間種至上主義ですか。
竜王国での戦いを見ているとどうも納得できませんが。」
「優性主義と至上主義とは違いますよ。
何処の国も自国至上主義でしょう。」
「おっしゃることは理解できます。
戻すのはさぞや大変でしょうが、お互いの為に期待しています。
ところでエリュエンティウとは?」
「貴国の南にある砂漠の中にある都市で、元は貴国のエルグリラと同じく転移した拠点ですよ。
既にプレイヤーは滅んでいますが、機能と都市守護者と言われるNPCは残っているのです。」
「プレイヤーは何故滅んでいたのですか?」
「プレイヤー同士が仲たがいした結果です。
その欲望を膨らませて戦ったと伝わっていますね。」
「どのような欲なのか知りたいですね。
私もその欲望で自滅はしたくないですから。」
「実際には、欲と言うのは闇の神であるスルシャーナ様との約束を反故にした裏切り者がすべての物を自分の物にしようとした為と国の文献では残っていますが、デケムの事を考えると真実に近いのではと私は考えています。
デケムを引き渡していただきありがとうございます。」
「デケムはどうなりましたか?」
「殺して蘇生して、を繰り返して、最後は灰になりましたので二度と復活する事は無いでしょう。」
「何と言うか。」
「あの者にはお似合いの最後と思いますよ。」
「私には分からない積年の恨みもあるでしょうから、私から何も言わない事にしておきます。」
この後もとりとめのない話があったが、大体このような話で終わった。
スレイン法国に関して言うと、晩餐会でも特に何かがあった事は無かった。
使節団長だったエレアは中々にモテたようだが…信仰する神に操を立てています、とか言ってお断りしていたけれどもそれはガルトだよね?
こうして人間種三大国家への訪問は完了した。
最高神官長の名前は過去のローマ教皇から選んで適当につけました。
第187代ローマ教皇 ヨハネス21世 本名(ラテン語で)ペトルス・ヒスパヌス