もう一つのギルド   作:mshr

48 / 102




閑話 ラキュース

~~~ラキュースSIDE~~~

 

「シャンドラド千年王国のシルト陛下に会ったですって?」

 

ラナーからシャンドラド千年王国について話していて帰ってきたらガガーランとイビルアイがシャンドラド千年王国の国王陛下と会ったといってきた

 

「蒼の薔薇を訪ねてきた。」

 

「ああ、護衛一人しかいなかったから本人とは言い切れないけどな。

だけども恐らく本人だ。」

 

「で、どんな感じの人だったの?」

 

「黒髪なのが珍しいが、それ以外は平凡だった。

第一印象はだが。」

 

「第一印象は?」

 

「多分、護衛も装備ごと何かの隠蔽をかけている。」

 

「護衛も、蒼の薔薇全員よりも強いとか言いやがって、何を言っているのだと思ったのだが。」

 

「実際はどうなの。」

 

「それですら謙遜だな。」

 

「護衛どころかシルトにも全く勝てるイメージが付かない。」

 

「イビルアイでもなの?」

 

「先に言った隠蔽もそうだ。

あんなにも完全にできる物なのか?

気付かないうちに遮音もされていた。」

 

「俺も護衛と腕相撲をしたのだが、ピクリとも動かなかった。

とんでもなくきれいな顔で全く表情を変えずに俺に圧勝したぞ。」

 

「つまり、シルト陛下と自称する人はイビルアイ以上の術 者(スペルキャスター)で、その護衛はガガーラン以上の戦士と言う事かしら?」

 

「実際はそんなレベルではないと思うのだが、強いのか弱いのかを根本的に感じなかった。

黒髪だから珍しい、護衛の鎧もかなりの物だった。

にもかかわらず、気をひかないのはどう考えてもおかしい。

別れてから冷静に考えてどうにか判断できた。」

 

「居る筈なのに興味を持たれない、それは私たち以上の密偵になれる。」

 

「盗賊系の能力ではないのだろうがな。」

 

「腕相撲をする前に兜のフェイスガードを上げたので見れたのだが、護衛の顔の容姿もとんでもねー。

人間じゃない、って言われた方がしっくりくる。」

 

「そんなにきれいだったの?」

 

「ああ、そう言えば、毎日不寝番をしているって言っていたな。

あのセリフが本当なら寝ていないことになる。」

 

「護衛が複数いて交代でと言う意味じゃないのかしら?」

 

「ラキュースの言う通り、私と私達を言い間違えた可能性はあるがな。」

 

「後、蒼の薔薇に一人入れて欲しいとか言っていたぞ。

どうするリーダー。」

 

「どういう人なのかしら?」

 

「後日、蒼の薔薇に伺わせる、って言っていたから、どんな人なのかは分からないがな。」

 

「確実にシャンドラド千年王国の紐付きだろうな。」

 

「冒険者として中立を保てないって言って断るべきでしょうね。

それが一番角が立たないわ。」

 

「リーダーは明日会えるんだろう?

何とか情報を探ってくれ。」

 

「会うと言っても見かけるくらいだろうけれども何とか探ってみるわ。」

 

~~~~~~~~~~~~

 

謁見の間の門が開き、衛兵の「シャンドラド千年王国、千年王、シルト・クレーテ・レイ・デ・ミレニアム陛下、御入室。」の声と共にシャンドラド千年王国の一行が入室された。

 

先頭を歩く黒髪の若い男性がおそらくシルト陛下なのだろう。

 

背はそれなりに高いが、年齢はクライムよりも若いのではないのだろうか?

 

顔つきは良いとも悪いとも言えない。

 

南方系は黒髪が多いと聞いているのでシャンドラド千年王国の場所から考えてそこまでの違和感はない。

 

そんな感じの容姿だった。

 

むしろ、後ろに続く者たちの容姿の方が余程目を引く。

 

特にシルト陛下の左後ろの女性はこの世のものではない、女神と言われても驚かないような容姿だった。

 

ガガーランに腕相撲に勝ったというのは彼女なのだろう。

 

全くそうは見えない。

 

二人の報告を聞いた感じ、この一行はこの謁見の間どころか王都全域を制圧できてもおかしくはないような戦力の可能性がある。

 

なのに、貴族たちは見下したような目や好色な目で彼らを見ている者もいるのだ。

 

逆に彼らは彼らで不機嫌そうな者もいるのだ。

 

一歩間違えたら何が起こるのか考えると恐ろしくなって息を呑んだ。

 

幸いな事に、国王陛下は余りの美しさに見とれていたものの、好色と言った感じではなく神々しい物を見たような驚愕な顔つきだったので少し安心した。

 

一行は立ち止まると先頭を歩く少年と言ってもいいような男性以外が国王陛下に跪くと、彼らにねぎらいの言葉をおかけした。

 

その返答は、長距離かつ複数が移動できる転移魔法を使える者が多数いる事を示唆しているのに気が付いている貴族が殆どいない事に絶句してしまった。

 

リ・エスティーゼ王国最強の魔法詠唱者(マジックキャスター)であるイビルアイやリグリットクラスが当たり前のようにいると言っているのよ。

 

何故分からない。

 

その後も絶句する事が起きた。

 

シャンドラド千年王国はマジックアーマー五領を贈ってきたのにこの国は気が付いてすらいなかったのだ。

 

その鎧はデザイン自体は地味な物だったが、見る人が見れば相当な一品である事が分かるものだった。

 

それは、ぱっと見で強そうに見えない彼らが実は恐るべき強さである事を指摘しているように見えた。

 

シルト陛下はその鎧を大したものでないかのように言っていたが国王陛下に気を使って頂いたのは間違いないだろう。

 

それが、私には圧倒的な強者の余裕に感じられた。

 

~~~~~~~~~~~~

翌朝の朝一でクライムがやってきた。

 

「ラキュース様、昨夜の宮廷晩餐会で千年王国のシルト陛下とお茶会が決まったのでラキュース様にも同席して欲しいとラナー様から言付です。」

 

「えっ、何時になるの?」

 

「午後になるそうですが、その前にラキュース様と話しておきたいとラナー様がおっしゃっていました。」

 

「今から向かうわ。

ラナーと急にお茶会ってよく決まったわね。」

 

「シルト様からアプローチがあってバルブロ王子が後押ししたとラナー様から伺っておりますが、細かくは直接聞いて頂いた方が。」

 

「わかったわ。しかしあの王子、碌な事をしないわね。」

 

私はクライムと一緒にラナーの部屋に向かった。

 

「ラナー様、ラキュース様をお連れしました。」

 

「クライムも入って頂戴。」

 

「失礼いたします。」

 

「ラナー聞いたわよ、シルト陛下とのお茶会が急に決まったって。」

 

「そうなのよ、なので一回お茶会をするのは了承したけれども、ラキュースも会ってくれる?」

 

「シルト陛下からアプローチがあったと聞いているけれども。」

 

「ラナー様の美しさから言えば当然かと。」

 

「どうかしら、私には演技に思えるのだけれども。」

 

「その可能性は高いわね。」

 

「ラキュースもそう思うの?」

 

「実際に護衛の美しさを考えると、一目惚れはちょっと考えにくいもの。

ラナーにアプローチをかけたのは、どちらかと言うと外交的な意味じゃないのかしら。」

 

「そんなに美しかったのですか?」

 

「人とは思えない美しさだったわ。」

 

「バルブロお兄様が容姿で近衛隊長を選んだのかと聞いたくらいで。」

 

「見た目は確かにそう見えるけれども、強さは恐らく化け物よ。」

 

「シルト陛下も同じような事を言っていました。

千年王国で魔法抜きなら最強で、王国の強い順に100人ほどから一斉攻撃すれば強さが分かると。」

 

「多分、シルト陛下は勝つと思っているのよ。

うちのガガーランやイビルアイが蒼の薔薇全員でも勝ち目がないって評価だったし。」

 

「蒼の薔薇の皆さんは会っているのですか?」

 

「会ったのは二人だけよ。

2日前にラナーと会っている時間に蒼の薔薇を訪ねて来たようなの。」

 

「その時の二人の評価が蒼の薔薇の皆さんが全員で勝てない、なのですか?」

 

「父は、それでも自分の事を守り通すという意味で受け取ったようだけれども。」

 

「多分、100人がかりで本当に勝てないのでしょうね。」

 

「私もそう思うわ。

シルト陛下も、多分一緒に来ていた使節の全員がそうなのではないかしら。」

 

「ラナーもそう思ったのね。

それに気が付かない者ばかりで。」

 

「何だか信じられません。」

 

「クライムは実際に会っていないからね。

今日のお茶会で確認してみるといいわ。

クライムも連れて行くのでしょう?」

 

「相手も護衛を連れてくるようなのでそうするつもり。」

 

「年齢も見た目とは違うようなのだけれども。」

 

「どういう事かしら?」

 

「ザナックお兄様が千年王国の千年の意味を訪ねたら、自分が不老不死化しているからだって言っていたわ。」

 

「つまり見た目通りの年齢ではないということかしら?

逆に納得できる所もあるけれども、リグリットもあのフールーダ・パラダインも完全には成功していなくて徐々に年を取っているのに。

本当に人間なのかしら?」

 

「その辺りも確認しなくてはいけないかしら?」

 

ラナーと軽い昼食を取った後、庭に移動し、シルト陛下がやってきた。

 

「シルト・クレーテ・レイ・デ・ミレニアム千年王陛下、私はラキュース・アルベイン・デイル・アインドラです。」

 

「よろしくラキュース嬢。

御高名は伺っています。

名前は長いだろうからシルトと呼んでくれて構いませんよ。」

 

こうしてお茶会が始まった。

 

ラナーだけではなく私や護衛に来ていた近衛隊長にも気があるような振りをしていた。

 

多分演技なのでしょう。

 

実際、クライムを幼馴染と紹介されてやきもちも嫉妬も全く感じなかった。

 

話の流れで聞いた事のない転移魔法を使うと言われた。

 

シルト陛下は第9階位魔法だと何でもないかのように言ってきた。

 

しかも、魔法を使った形跡を全く感じさせずにそれは発動した。

 

イビルアイが気が付かないうちに遮音をされていたと言っていた意味が分かったわ。

 

転移門をくぐった先には信じられない光景が見えた。

 

人間種、亜人種、異形種が混在して歩いているのを見て驚かない冒険者がいるのならば一度お目にかかりたい。

 

お茶会が終わった後

 

「今日は色々な意味で驚きを感じたのだけれども。」

 

「シルト陛下は魔法の行使自体を隠蔽していると言っていましたけれども。」

 

「実際、全く魔法を使ったようには感じなかったわ。

第9位階の魔法なんて伝説上の物だと思っていたわ。

そんな魔法を使えるならそう言った技術もあるのかもしれないのだけれども。」

 

「世界を亡ぼせそうな、キュアイーリムと言う竜王を倒したともおっしゃっておりました。」

 

「キュアイーリム、生きていたの。

本当なら真なる竜王の一体じゃない!」

 

「その竜が名乗っていただけと言っていましたが、半径250KM程を殺しつくすような攻撃を行ってきたと言っていましたので、私は信憑性は高いと思います。」

 

「私の方でも確認してみるわ。

それにしてもとんでもないわね。」

 

その夜の晩餐会でダンスを申し込まれたので踊った時に

 

「シルト陛下は本当に人間なのですか?」

 

とストレートに聞いたところ

 

「魔法で不老不死化しましたがアンデッドのように飲食睡眠不要にはなっていないので人間な筈ですよ。

最も、老けない者が人間なのかと聞かれると少し困りますが。」

 

と返されてしまった。

 

私とラナー以外にも粉をかけようとして周囲に止められていたが、恐らく女好きのふりをする演技と思えた。

 

女好きに見せかけて態と隙を見せているというのがラナーの評価だったのでほぼ間違いないでしょう。

 

しかし執筆意欲をそそるわ。

 




最後の一行で全てが台無し
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。