もう一つのギルド   作:mshr

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第6章2話 ガテンバーグ

これまで、強い者が偉い、と言う原始的な価値観の者ばかりだったので、大樹海十五王みたいな危険なモンスターを間引きするだけで自動的に傘下になってきた種族とは全然違う。

 

と言う訳でダークドワーフの国にはクスタフと政宗を使節団長及び副団長とした使節を送る事にした。

 

エルフにも魔化できる者たちが居たのだけれども、ドワーフの方が技術は上である。と言う訳で交易の為だ。

 

資金の為とは言え手に既に入らない消費アイテム(データクリスタル)を使ったアイテムをポンポン売れないので、現地産のマジックアイテムを主力商品にする為である。

 

ダークドワーフの取引先は亜人たちで人間種ではないからな。

 

新規営業先は欲しい筈だ

 

 

 

と思っていた時期が私にもありました。

 

第一階層都市長城館の謁見の間に座る私の前にはドワーフが跪いていた。

 

そうしてこうなった。

 

ダークドワーフと言ってもアゼルリシア山脈にいるドワーフは地下に街を築いて生活していたけれども、こちらは地上で生活していて日光に当たるから日焼けして色黒なだけで、殆ど普通のドワーフと変わらないらしい。

 

元々は丘ドワーフと呼ばれていたが、亜人やモンスターにアベリオン丘陵から追い出された結果ダークドワーフと言われるようになっただけらしく、簡単に言うとエルフとワイルドエルフのような違いと言って良いらしい。

 

「面を上げよ、と言うより何があった。」

 

ガテンバーグ(ダークドワーフ王国)商務代表のレギン・フグスタリです。

シルト・クレーテ・レイ・デ・ミレニアム陛下にはお目通りのご許可を頂きありがとうございます。」

 

ガテンバーグだって…確か滅んだのでは?

 

しかも翻訳機能でダークドワーフ王国って聞こえるし。

 

と言うか、ガテンバーグは300年ほど前に滅んだ人間種の国。伝言(メッセージ)の魔法を信用し過ぎ、偽情報によって内乱が起こり、モンスターと亜人たちの侵攻で滅亡した。ダークドワーフは亜人やモンスターにアベリオン丘陵から追い出された…一致しているじゃないか。

 

八欲王はちゃんとアベリオン丘陵の亜人を片付けていたのかよ。

 

竜王国が人間種領域として飛び地だったように亜人種領域のアベリオン丘陵が飛び地に見えたのは気のせいでは無かったのか。

 

「用件があると聞いているがどのような物だ?」

 

「シャンドラド千年王国の戦力でアベリオン丘陵を奪還していただけないでしょうか?」

 

まあ、こういうのは本命の要求の前に無理目な要求を出して交渉する物だから断られるのは承知の上だろう。

 

「お断りする。

理由はいくつもあるけれども、最大の理由はシャンドラド千年王国のメリットを感じない。

後、国是として防衛戦に援軍を出すのは良いけれども侵攻戦に援軍は出せない。」

 

「アベリオン丘陵は元々は我が国の領土でした。

ならば奪還なので防衛戦になるのでは?」

 

「昨日今日奪われた、と言うならそのように考えるけれども、アビリオン丘陵がガテンバーグだったのは何時の事です?」

 

「300年ほど前になります。」

 

嘘をついたらどうしてやろうかと思ったけれども言わないか。

 

「奪われたのが300年前で、その論理を認めるとすべての国が最大領土だった時代を出してきて防衛戦争を主張できるのではないのかな?

300年間ずっと奪還の為に戦争してきた、と言うのなら少しは納得できるけれども?」

 

「現状は武器を売ったり、捕虜を奴隷として武器の対価として受け取る事で亜人間の対立を煽る事で国を守ってまいりました。

これも戦争と言い換えることはできるのではありませんか?」

 

そうだよね。奴隷と武器の交換は白人がアフリカでやっていた事だけれども、このせいで随分人口が減ったと記憶している。

 

ガテンバーグは同じことをしていた訳だ。

 

「それは戦争では無くて死の商人、つまりは武器商人の行動ではないのかな?

相手の国力をそぐのには有効だけれども戦争では無いですよね?」

 

ナザリックとの約定以前に、私は元々属国となってしまったエルフの国の領域の確定をしたかっただけで、それ以上はそもそも望んでいない訳なので、一方的にどこかの勢力に加担はしたくはないのだよ。

 

「では、私達を難民としてシャンドラド千年王国に受け入れてもらえないでしょうか?」

 

これが本命か。

 

「何万人?」

 

「20万人ほどになります。」

 

「全員がドワーフですか?」

 

「流石に奴隷迄受け入れて欲しいとは言いませんので。」

 

「しかし、何故シャンドラド千年王国に移住しようと考えたのですか?」

 

「最近亜人たちの紛争が減少して種族の垣根を越えてまとまってきているようなのです。

我々としては、先制攻撃して撃破してしまう、攻撃を受けないように移住してしまう、どこかの援軍を得て防衛する、自力で防衛する。

の4つを検討したのですが、あの数でまとまられると自力防衛はかなり厳しいと判断しました。

別の国が脅威にさらされていて、その国民すべての移住を行う計画をされたと聞きまして我々も受け入れてもらえないかと考えた次第です。」

 

亜人たちの集結を自分達への攻撃と考えたのか。

 

人口20万では数百万の聖王国に進攻しようという戦力では格差がありすぎる訳だ。

 

ガテンバーグの人口よりも多い軍勢になりそうだし亜人奴隷の反乱だってあり得る。

 

結果論だけれども、デミウルゴスによるマッチポンプで移住してくるらしい…食糧問題だよな…多分ドワーフの主食は酒だし。

 

竜王国に同じような提案をしてしまったからな…。

 

人間あきらめが肝心である。

 

「一年分の食糧と一緒に移住してくると言う条件付きなら考えます。」

 

領地の大半は元々は山だったのだからに鉱山は有るよな、きっと。

 

食糧問題が緩和したと思ったら再度、食糧事情を悪化させる問題がやってくるのは何故なんだ。

 

「流石に一年分はきついのですが。」

 

「そもそも、何を食べているのだ?」

 

「酒や乾パン、糖分を固めた棒、肉、キノコなどです。」

 

「その酒を造る為の穀物などが不足しているので先ほどの条件を付けた訳だから、極端な話、自給自足できるのなら別に問題は無いけれども、諸般の事情でほとんどが死の大地だから、移住して即食料がある訳ではないのですよ。」

 

腐肉なら用意できるけれども嫌だろう。

 

竜王国の時と違って既に作付け時期を逃しているから半年と言う訳にはならないのだよね。

 

魔法を使って強引に育てるって方法も有るけれどもエルフなら兎も角、ドワーフではドルイド系魔法詠唱者(マジックキャスター)は少ないだろうし。

 

結局、先に一万人が移住して、残りは秋に移住する事になった。

 

それからしばらくして、移住してきたドワーフの元に修行に行かせていた政宗と話をした。

 

「政宗、お前でもこの世界の材料や方法での魔化は出来そうにないのか?」

 

政宗はワールドクリエイターなる生産職の頂点の職を持っている。

 

政宗の元になったヴァルカンはDMMO―RPGをやる人としては完全に可笑しくて、戦闘をチュートリアル以外では一回もしたことが無かった。

 

一応、アイテムの生産をしても経験値が入るとは言っても、初期レベル以外のLV99分を全て生産活動で上げると言うのは常識的に言って可笑しい。

 

まあ、だからワールドクリエイターなる変わった職に就いていたし、戦闘が全くできない困ったちゃんになった訳ではあるが。

 

一方でユグドラシル時代ならマジックアイテムだろうがポーションだろうがスクロールだろうがゴーレムだろうが何でも普通よりも性能が良いか素材を少なく出来たのだけれども、そんな彼でもこの世界の方法でマジックアイテムを作れないらしい。

 

「シルト様の御期待に応えられず申し訳ありません。」

 

「お前にできないのなら転移した者はだれにもできないだろうよ。

と言っても、お前だからこそ気が付く事もあるのじゃないかな?

今度移民してきたドワーフの職人と研究をしてくれないか?

ゴーレムや自動人形(オートマトン)だけでも十分に役に立っているよ。」

 

実際、受肉化した天使やアンデッドのように素材さえあれば時間制限のない好き勝手な構造のゴーレムが作れてしまうので十分だったりする。

 

現在でもゴーレムと言う名前の重機は不足しているのだ。

 

エイヴァーシャー大森林の開発に入ったらゴーレム不足はさらに酷いことなる。

 

曲がりなりにもワールド職なのだから、他のワールドがそうであるようにこの世界で信じられないような影響がある存在の可能性は十分にある筈なのにそれを発見できていない責任の一端は私にもあると思う…重機型のゴーレムが作れるって言うのがそうかもしれないけれども。

 

「しかし、お前はヴァルカン程には性格がぶっ飛んでいないよな。」

 

千年王国(ミレニアム)に余裕が出来たら趣味に入りたいと思っているのですが、その為にもこの世界で安定的に入手できる素材でのマジックアイテムを作れるようになりたいと思っています。」

 

材料に余裕がないからやらないだけなのか、ヴァルカンは余裕が無くても不思議アイテムを作っていなかったか?

 

ヴァルカンのおかげで普通じゃ考えられないような質のマジックアイテムがあるのは事実だけれども、なんでこんなものを作ったのだ?と言うアイテムも無茶苦茶ある。

 

例えば透けて見える眼鏡とか。

 

服が透けて見える訳ではない、全員スケルトンに見えるのだ。

 

この世界ではレントゲンの代わりに骨折診断に使えるかもだけれども、何の意味があるのか?と言いたいのは分かって貰えると思う。

 

他にも、真ゴブリン将軍の角笛なるアイテムも作って見せた…ゴブリンジェネラル一体が召喚される筈である。

 

「まあ、趣味の為に頑張るのは良い事だ。」

 

としか、答えようがなかった。

 




ワールドクリエイター

ユグドラシルの情報板にも出ていないほどのレア職。
レベルを全て生産活動のみで上げなくてはいけないので、普通に考えて、仲間に相当恵まれないとなること自体が不可能。
なれたとしても拠点から一歩も出て来ない引きこもりになるので知られていなかった。

この職の者はアイテムや武具に本来はいる以上のデーターを入れる事が出来た。
例えば伝説級(レジェンド)用の器に神器級(ゴッズ)相当のデーターを入れることができる。(要するにワンランク上まで入れられると考えれば大体あっている。)

アンネのチートスペックの一端をこの職が作った武具やアイテムが担っている事は言うまでも無い。

実は、ギルド武器、スタッフ・オブ・ミレニアムはヴァルカン(ワールドクリエイター)がいたから作れた。
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