もう一つのギルド   作:mshr

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第6章3話 冒険者パーティー漆黒

~~~モモンガSIDE~~~

 

シルトさんからユグドラシル金貨を使って贋金を作ると言う方法を教えて貰ったけれども、逆に言うとユグドラシル金貨を消耗する事になるから少しでもお金は稼いでおかなければならない。

 

何せ、エクスチェンジボックスの交換レートではユグドラシル金貨1枚は麦1トンに相当するからだ。

 

かと言って低レベルの依頼を受けて下級冒険者の仕事を奪う訳にもいかないのだよなあ、はあ。

 

そう思いながら冒険者組合のドアをくぐると、冒険者登録をしに来た者が受付嬢を困らせていた。

 

「どうしても(カッパー)から始めなくてはいけないのですか?」

 

「規則ですので。」

 

「僕は山伏(レンジャー)としてそれなりにできますし、彼女の腕前もかなりの物ですよ。

実際にエナ多種同盟国ではそれなりの傭兵団に属していましたし。」

 

「エナ多種同盟国の傭兵団のランクは使えないのです。

規則ですので(カッパー)から始めてください。」

 

「ゲンブ様、ここはルールですので(カッパー)から始めていくしかありませんね。」

 

「ミネルバ、傭兵団ランクはミスリル相当は有ったのだぞ、何だか釈然としないな。」

 

「傭兵団のランクも傭兵団としての物で個人の物ではありませんからね。

それに、ゲンブ様の実力なら直ぐに認められてランクが上がりますよ。」

 

「ミネルバが言うなら仕方がない、(カッパー)級で良いから登録してくれ。」

 

「承りました、こちらが書類ですが自筆で書かれますか?」

 

「エナ多種同盟国とは字が違うな、ミネルバは分かるのか?」

 

「私は分かりますので私が二人分書きますが宜しいですか?」

 

「構いませんよ。」

 

茶髪の軽皮鎧の子供とその護衛のような白銀の鎧で兜からは銀髪の髪が出ている女性だった。

 

茶髪の子供が受付から振り向くと

 

「あ、ナーベさんお久しぶりです。

ナーベさんと言う事は隣の黒い鎧の人はモモンおじさんですか?」

 

と声をかけてきた。

 

こんな子供は知らないよと思ったら。

 

「私は貴方のようなコツノアリなど知りません。」

 

「いつもの御挨拶ですね。

人を虫に例えないでくださいよ。」

 

とニコニコしながら返事が返ってきた、誰だ。

 

その子は額に手をやりながら

 

「ひょっとして本当に覚えていないのですか?

ナーベさんならありそうだ。」

 

と話すと同時に

 

(シルトですよ)

 

とメッセージがやってきた…なんて器用なのだ。

 

と言うか全然見た目が違うけれどもどうやっているのだ?

 

身長も軽く10CM以上は低い。

 

とすると、今、書類を書いているミネルバと言うのはアンネなのか。

 

って、アラサーが俺におじさんは無いだろう。

 

「おじさんですか?せめてお兄さんに。」

 

「ごめんなさい。

でも、やっぱりモモン兄さんだ、お久しぶり。」

 

「モモン様のお知り合いなのですか?」

 

受付嬢も聞いてきた。

 

「昔からの知り合いです。」

 

俺の知り合いだと分かったからだろう、子供が来るところじゃないと言ったような難癖をつけようと近づいてきた鉄級の冒険者がすごすご下がっていった。

 

「モモン兄さんからも言ってくださいよ。

僕とミネルバならモモン兄さんとナーベさんに互角でやりあえるって。」

 

それどころかもっと強いけれどもそうではないだろう。

 

「私も(カッパー)級から始めたのですよ。」

 

書類を書き終わったアンネ…ではないミネルバも宥めにかかった。

 

「ゲンブ様、わがままを言ってはいけません。

モモン様は私達に花を持たせてくれたのですよ。

遅れまして、モモン様お久しぶりです。」

 

「ミネルバさんもお久しぶりです。

登録は済んだのですか?」

 

「今、プレートを頂きました。

ゲンブ様も付けてください。」

 

「分かったよ。」

 

「少し待っていてください。

今日は何か仕事がありますか?」

 

「申し訳ありませんがモモンさんにお願いするような仕事は入っていません。」

 

「では、この子達の仕事を見繕ってもらえませんか?

私達も同行しますので。」

 

「こちらの仕事は如何でしょうか?

モモンさんにお願いするような仕事ではありませんが。」

 

「昔の知り合いについていくだけですので気にしないでください。

危なそうなら手を出しますが。」

 

「ゲンブ君、こちらの仕事はどうだ?」

 

「農地に出てくる魔獣の駆除ですね。」

 

「一つだけではなく、たくさん受けて一気にランクを上げたいのだけれども。」

 

「ははは、私達が付いていくと私達がやったと思われるぞ。」

 

「それは困るな。

じゃあ、それだけでいいや。」

 

「ではゲンブ様参りましょう。」

 

よく観察すれば、シルト…じゃないゲンブ君は音をさせずに歩いているのが分かる。

 

武器はクロスボウとショートソードとダガーを持っていていかにも山伏(レンジャー)だ。

 

パーフェクトレンジャーなんて有ったのか?

 

そう言いたくなるくらいの身のこなしだ。

 

目的地に向かう為に馬車を借りると乗り込んだ。

 

「完全に別人ですけれどもどうやっているのですか?」

 

「髪は(かつら)ですし顔は幻影魔法ですよ。

身長は企業秘密です。」

 

(※年齢操作の魔法で若返って身長を低くした)

 

「しかしおじさんは無いのではありませんか?」

 

「見た目的に私は子供でモモンさんは中年ではないですか?」

 

「そうですが、同じような年齢の人に言われるとちょっと傷つきますよ。」

 

「すいません、わがままな子供の設定なので。

ところで仕事の内容は?(カッパー)級の物ではないですね。

多分、(シルバー)級の物です。」

 

「ゲンブ君は読めるのですか?」

 

「読解魔法で読んでいます。

問題は書けないのですよね。」

 

「使い道がなさそうな魔法を覚えているのですね。」

 

「使い道がなさそうな魔法を覚えていることがファウンダーの装備条件なので。

でも、暗号も読めるようになるのですよ。」

 

「暗号も読めるのですね、知りませんでした。

アイテムですませてしまえば良いと思っていましたよ。

(シルバー)級なのはアダマンタイト級の私達が一緒に行くから問題はないという判断なのでしょうね。

少し高めのランクで痛い目に合えば分かるだろう、と言う所でしょうか?」

 

「そんなところでしょう。

何せどう見ても子供ですから。」

 

ナーベに手綱を取らせた荷馬車で村に向かいながらちょっとしたおしゃべりをしていた。

 

「この村で、依頼の調査ですよね。

家畜を襲うクマが出たのでしたっけ?

村長に話を聞きに行きましょうか。」

 

調査依頼が(カッパー)級と言うのは聞いたことが無いので明らかに私達を当てにしている。

 

「すいませんが調査依頼で来た冒険者ですが村長さんはどちらですか?」

 

「あちらの人ですよ。」

 

「ありがとうございました。」

 

取り合えず見つけた村人に村長を聞くと教えて貰えたので村長に会いに行った。

 

「村長さんですか?

調査依頼を受けた冒険者のゲンブです。

何処に出たのか、どのような被害が出たのか教えてください。」

 

「え~と貴方が依頼を受けたのですか?」

 

「そうですよ。」

 

どう見ても子供の上、プレートも銅なので村長が戸惑っていた。

 

「この二人の昇格試験で、アダマンタイト級の私達も居ますからご心配なく」

 

「アダマンタイト級の方にお支払いするような金額では無かった筈ですが。」

 

逆にアダマンタイト級なので違う意味で村長は驚いていた。

 

「試験ですので私達は気にしないでください。

失敗しそうならサポートに入りますから。」

 

そう言ってようやく納得してもらえた。

 

現場の家畜小屋に案内してもらった。

 

「爪跡は確かに熊の物ですね。

ついている高さから考えて2m以上の体高です。

多分、二頭いますね。

爪跡も足跡も二種類ある。」

 

ゲンブ君は以外と冷静に判断していた。

 

「少し、森の中も確認してみましょう。」

 

そう言うと、ほとんど消えている足跡を追って森に入っていった。

 

「オウルベアかな?

羽が残っている。

もしそうなら難度が40は無いかな?

(シルバー)級パーティーではきついね」

 

「ゲンブ様、どうしますか?」

 

「調査依頼だからこの段階で戻っても良いのだけれどもね。

まだ余裕はあるから実物を確認しておきたい。

って事で良かったですか試験官さん」

 

「からかわないで下さい。」

 

ゲンブ君が立ち止まって集中した。

 

「多分こちらかな?」

 

そう言うとゲンブ君を先頭に森の中を進んでいった。

 

ゲンブ君が手を上げると全員が停止した。

 

「やっぱりオウルベアですね、子供が居ます。」

 

「どこですか?」

 

「モモンさんはそのままでは見えないかな?」

双眼鏡を渡してくると指で方向を指した。

 

双眼鏡でしばらく見るとオウルベアの子供が巣にいるのを見つけた、

 

「よく見つけられましたね、まだ、500Mくらいは有りますよ。」

 

「本当ならここからは討伐依頼を受けた人にバトンタッチですが、倒せますよね。」

 

「親が見つかっていませんが?」

 

「子供の餌を探しに行っているのでしょうね。

普段歩いている道が分かれば罠を仕掛けるのですが?」

 

「罠ですか?」

 

「魔法で一瞬に作れるので、と言っても風向きと相談ですが。

オウルベアは昼夜兼行で寝ている時間が分かりにくいので寝ている隙を狙いにくいのですよね。

子育て中なら交代で寝ているでしょうし。」

 

「魔法とか、ミネルバが正面から倒すのではないのですね?」

 

「それって面白いのですか?

今日の僕は山伏(レンジャー)としてオウルベアを倒すのですよ。」

 

「言っている事は分かりますが、罠を作るのは魔法ですか?」

 

「別に無しでも作れますが時間の節約です。」

 

ゲンブ君は獣道を見つけて落とし穴と弓の罠を設置した。

 

「多分ここを通りますが、罠にかかるのは一体だけでしょうね。」

 

「どれくらい待つつもりですか?」

 

「一時間もかかりませんよ。

間に合わせるために魔法を使って設置したのですから。

一応風下ですけれどもちゃんと隠れていてくださいね。

体が大きくて目立つのですから。」

 

どうしてそんなことが分かるのだろう?

 

三十分ほどしたところオウルベアが獲物を咥えてやって来てそのまま落とし穴にかかり設置したクロスボウから魔法付与と毒を塗ったボルトが放たれヘッドショットしてしまった。

 

「これで一体。

クロスボウを回収できると良いのですが。」

 

「今の叫び声でもう一体が来るでしょうね。」

 

「足音が聞こえる、走ってきているね。」

 

地面に耳を付けたゲンブ君がそう言った。

 

「モモンさ~ん、オウルベアが近づいてきています。」

 

兎の耳(ラビッツ・イヤー)の魔法を使用したナーベも確認したようだった。

 

「ミネルバ、正面をお願い。

回り込んで首を狩る。」

 

「分かりました。」

 

こちらが隠れている事を確認したオウルベアがこちらに突っ込んできた。

 

ミネルバはそれを盾でそらすと、足に傷をつけて回避した。

 

数回それを繰り返すと、オウルベアの後方から急接近したゲンブ君がオウルベアの背中に乗ると首を切った。

 

と言っても首を落としたわけではなく頸動脈を狙ったようで、血が噴き出ししばらくしたらオウルベアは息絶えた。

 

「見事なものですね。

ゲンブ君は本当は魔法詠唱者(マジックキャスター)ですよね。」

 

「アイテムと魔法で山伏(レンジャー)のような行動をとっているだけですからね。

後は子供?雛のどちらになるのでしょうか?を倒すだけですね。」

 

罠として設置したクロスボウを再度引くと、巣に近づいてなぜか罠として設置した。

 

「装備できなくても罠としてなら使えると言うのが不思議でしょうがないのですが。」

 

その為に罠として設置したのか。

 

「恨むなら村の近くに巣を作った両親を恨むのだな。」

 

ゲンブ君はそう言うと罠を発動させ再度、弓の罠を用意して発動して二体の子供のオウルベアを倒した。

 

「確か嘴も毛皮も肉も売れましたよね?

内臓を取って血抜きして持っていきますか?

運ぶのはお願いしても良いですか?

冒険者組合の報酬は私達が頂きますが、売却金はモモンさんが貰ってください。」

 

「それならば任せてください。」

 

帰りは荷馬車が大小四体のオウルベアで占領されたので御者をしているナーベ以外は走る事になった。

 

冒険者組合で二人が倒したと証言したら受付嬢に絶句されてしまった。

 

実際に倒し方が明らかにモモンやナーベの倒し方と違うので俺の証言は直ぐに認められたのだが、なぜか受付嬢に「子供に危ないことをさせて」と私が怒られてしまった。

 

ゲンブ君は「罠を作ってハメ殺しをしただけだからそこまで危険な事はしてはいないのです。」と受付嬢からかばってくれたけれども。

 

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