もう一つのギルド   作:mshr

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閑話 蒼の薔薇の旅行

~~~蒼の薔薇SIDE~~~

 

「で、どうだったの?」

 

「化け物ぞろいだった。

モモンもシルトもアンネもヤルダバオトもアンネと戦った女も。」

 

「そんなに凄かったの?」

 

「全員が、かつての十三英雄でも、あれほどの強さの者はいたかどうかは分からない。

それぞれ話した方が良いか?」

 

「出来ればお願いするわ?」

 

「それぞれの強さの方向性が違うから、単純に誰が一番強いとかは分からないぞ。

モモンは物理攻撃役としての能力だ。

信じられないくらいのパワーだった。

シルトは、魔力量がよく分からない。

あれほど数の魔法を使って魔力切れを起こしているようには見えなかった。

魔法の連射速度も有り得ない早さだ。

アンネは冗談抜きで強かった。

あっという間にかなりの強さの悪魔を倒すとその後もかなり一方的にヤルダバオトと居た貴族の女のような恰好をした魔物と戦っていた。

ただ、彼女は明らかに盾役(タンク)だな。

その、貴族の女性のような恰好をした魔物を仕留めきれなかったのはその辺りが原因だろう。

シルトのような強大な魔法詠唱者(マジックキャスター)がいるなら当然かもしれないけれども。

5人現れたメイドの恰好をした者達が大体私と同じくらいの強さと思う。

モモンと一緒にいるナーベも大体同じくらいの強さだ。

普通なら十分に強いのだけれどもな。

私も自分も戦っていたから殆ど結果だけで判断しているから絶対では無いけれどもな。」

 

「シルト陛下の強さは完全に規格外なのは私達もわかるわ。

今回、兵や冒険者の被害が少なく済んだのは明らかにシルト陛下のおかげだもの。」

 

「ああ、確実に悪魔の撃破数ではシルト陛下がトップだったらな。」

 

「一人で戦場全体を完全に制御していた。

余りに凄すぎる。」

 

「実際に、シルトの支援が無ければ私ももっとボロボロだったと思う。

あれほどの数の魔法を使って魔力切れを起こさないというのはちょっと信じられないのだけれども。

あと、私は冒険者で、シルトは魔法詠唱者(マジックキャスター)としても凄いが、それ以上に国王で指揮官なのは思い知ったよ。」

 

「どういう事だ?」

 

「ヤルダバオトを逃がす判断をした時がそうだ。

多分最初から、倒すのではなく撃退する事を考えていた筈だ。

戦果と被害とのバランスを最初から考えていた、そうとしか思えない。」

 

「倒せるのは確実では無いけれども、王都が壊滅するのは絶対だから逃げるというなら逃がした方が良い、そう言ったのだったわね。」

 

「それだけではない、恐らく他国の人間である自分がリ・エスティーゼ王国で活躍しすぎてもいけない、って判断もしていた。

最後にモモンに勝鬨を譲ったのだってそうだ。」

 

「ああ、支援用の魔法が飛んでくるのも俺たちが戦えるギリギリの辺りを図って使っていたとしか思えない。」

 

「シルト陛下は魔力残を考えて魔法を使っただけ、と言っていたけれども、多分嘘よね。

私達にも花を持たせようとしたのだわ。」

 

「いきなり悪魔どもが障壁に阻まれるとか回りくどい事もしていたからな。

どう考えても倒せていただろうに。」

 

「私も攻撃を受けたのにダメージを貰わなかった事があった。

何でも一回だけ敵の攻撃を無効化する魔法を私にかけていたそうだ。

何時かけられていたのかもわからなかったし、完全に私の魔法抵抗を無視した筈だ。

信じられん。」

 

「近衛所属の神官も呼んでいたけれども、私よりも神官としてのスペックは上だったわ。

彼女が使った蘇生魔法は死者復活(レイズデッド)よりも上位の魔法だったの。

蘇生(リザレクション)と言っていたけれども。

しかも戦闘に参加していないと言ってもかなりの回数を使っていたわよ。」

 

「シルト陛下が言うには自分と近衛で一つのパーティーになるように一芸に秀でた人材を近衛にしていると言っていたからな。」

 

「近衛に私達のような忍者もいるかもしれない。」

 

「おい、知っているか、近衛の1人が帝国最強の武王を倒したそうだぞ。」

 

「ガガーラン、確か、ミノタウロスだったそうね。

亜人でも忠誠心と能力があれば近衛にしてしまうと言う事かしら。

シャンドラド千年王国の首都のエルグリラは多種族の居住する町だったから。」

 

(※情報が間違って入って来ています。)

 

「試合の後にその武王を復活させたらしいぞ。」

 

「今回呼んだ人と同じ人だったのかしら?」

 

「神殿勢力からはクレームが出ている。」

 

「神殿に属する訳でも冒険者でもないから、ワーカーと同じ扱いだ、と言う返事をしていたな。」

 

「無条件、無差別に治癒魔法を使わせるつもりもない、とも答えていたそうよ。

今回は同じ戦線で戦ったのだからパーティーメンバーに治癒魔法を使ったのと同じ扱いと判断した。と言う返事もしていたわ。」

 

「神殿も言い分を認めた。」

 

「それを言い出したら私だって治癒魔法を使ったわ。

でも、ラナーはどうやってシルト陛下を呼んで参戦させたのかしら?」

 

「何かしらの見返りがあった、と考えるのが普通だな。」

 

「きっと、ラナーが婚約の約束でもしたのよね、聞いても教えてくれなかったけれども。」

 

「そう考えるのが普通だな。」

 

「童貞もエルグリラについて行くのかね、寂しくなるな。」

 

「今すぐにって訳ではないでしょう。

でも、残るのがあの王子たちっていうのが。」

 

「ラキュース、一回、蒼の薔薇全員でエルグリラ迄行ってみるか?」

 

「間をスレイン法国が挟んでいるのよ。

簡単ではないわ。」

 

「彼らは転移魔法で人も物資も運んでいる。

大使館か商会に行ったらいけるかもしれない。」

 

「転移魔法なら直ぐに行って帰ってこれる。

私もエルグリラの位置には興味がある。」

 

「聞いてみるだけは聞いてみましょう。」

 

~~~~~

「エルグリラ都市長のステラ・ケルト・エルティアです。

現在、特別な許可なくして市民以外はエルグリラは市内に入る事を禁止しています。

実際市内を廻って頂けたら理由は分かりますが物価水準が他地域とあまりにも違う為ですので、その点が是正でき次第、特別許可なしで入市も出来るようになる予定ですのでご容赦ください。

従って商売を行う事は固く禁止いたします。

その点をご留意ください。

案内の者を付けますので飲食、買い物は彼女を通じてお願いいたします。」

 

(※建国した際に代行が消えた)

 

エルグリラを訪れた私達に都市長自ら説明があった。

 

城館を出て街中を探索する事になった

 

「人間では無かったわね。」

 

「多分サッキュバスだな。」

 

「都市長も俺が勝てると思えないくらいの強さと思うけれども。」

 

「街の中も無茶苦茶すぎ。

なんでゴブリンが普通に歩いている。」

 

「人間も亜人もモンスター(異形種)もごちゃごちゃ」

 

「モンスターの概念を壊してくれるな。」

 

「シルト様に忠誠を尽くすものは誰であろうと平等ですので。」

 

「ある意味とんでもない考え方だな。

俺はエルフだの亜人だのを殺しまくっているスレイン法国よりは好感が持てるがな。」

 

「しかし、スレイン法国から攻撃を受けないのか?」

 

「エルグリラとスレイン法国との間に移民を住まわせることで緩衝地帯にすると聞いています。」

 

「元竜王国民か?」

 

「既に難民が移住していると聞いています。」

 

「物価が全然違うと言っていたけれども、どの程度違うのでしょうか?」

 

「他国から赴任してきた大使が絶句されていました。

現在他国でも流通している交通貨への切り替えを検討していますが物によって物価が単純に比較できないとかでその調整作業を行っています。

今の所、エルグリラ市民権をもつ者と商売等で来られた他国の方で二重価格にする案が有力視されています。

シルト様が問題ないと判断されれば、どれをどの価格にするか細かく決定した後、シルト様の御裁可を経てから通貨切り替えをする筈です。」

 

「とりあえず、武器屋でも見てみようぜ。」

 

~~武器屋~~

「普通の武器が全くないって高級品専門なのか?」

 

「その辺りは初心者用と思いますが?」

 

「可笑しいでしょう、これなんかミスリル製じゃない。」

 

「鉄製の武器が何処にもない。」

 

「そちらの武器は魔法付与がしてありませんので。」

 

「ところで値段はいくらなのかしら?」

 

「交通貨ですとこれくらいになります。」

 

「そんなにおかしな値段では無いな。

やっぱり高級品専門じゃないか。」

 

~~昼飯~~

「私は要らないぞ」

 

「では、五人前を頼みます。」

 

「ちょっと待って、今一体いくら出した?」

 

「金貨50枚ですが?」

 

「一人金貨10枚ってどんな食事なのよ。」

 

「普通の定食ですが?」

 

「しかも交金貨よりも大きかった?」

 

「それは、エリュエンティウから出てくる特殊な金貨と同じように見えたが?」

 

「そうなのですか?

エルグリラでは現在この金貨しか流通していませんので。」

 

「この街に食糧を運ぶだけでぼろもうけ?」

 

「物価が全く違うって意味が分かったわ。」

 

「普通にちょっと豪華な昼飯だよな。」

 

「どうぞお召し上がりください。」

 

「味はおいしいわね。」

 

「酒は無いのか?」

 

「お酒は現在、事実上の配給制になっていますので。

もう直ぐ収穫が行われれば配給制は停止される予定となっています。」

 

「やたらと食糧を買っていると聞いていたけれども、飢饉でもあったのかい?」

 

「そうです、一時期は致命的なレベルで不足していました。

幸い他国と交易が出来るようになってかなり緩和されましたが、最後にお酒だけは購入量に規制が残っています。」

 

「そうかい、それは済まなかったな。

なに、無理して用意しなくてもいいさ。」

 

「しかし、食事がこの値段が普通と言う事は、先ほどの武器は市民にとってはさほどたいした事が無い値段なのか?」

 

「物価調整しないと他国人を無条件に入れられないっていうのも理解できるわ。」

 

「そうすると現在、リ・エスティーゼ王国に出店している商会はぼろもうけなのか?」

 

「対シャンドラド千年王国の貿易は国が管理していますので、それほどの儲けは出ないと聞いています。

寧ろ、他国の商会と比較して輸送経費と輸送時間が全然違うので諸国間の取引の方が余程儲かるようですよ。」

 

「そんなことをしたら、母国との交易を行わないのではないかしら?」

 

「他国に出店するにあたり、母国の食糧不足解消に向けて行動する事、及び新たに自国民になったエルフの奴隷の持ち主が判明した場合は交渉の上で購入し帰国させること、の二点を守らない場合、他国への出店許可は取り消されますので。

各国に進出した我が国の商会が、自国との交易以上に諸国間交易で利益を上げることを許容しているのはこの二点にその利益を使う事を国が商会に要求しているからですので、守らない場合は魔法による大規模輸送を停止させるだけです。」

 

「魔法による輸送を停止するってどういう事?」

 

「転移魔法を行う人員は国からの派遣ですので違反した商会分の輸送を止めることは訳ないですから。」

 

「それは絶対に守る筈だよな。」

 

「実質、転移魔法の輸送料として食糧を安値で母国に送っている訳なのね。

食糧を買い漁る理由が分かったわ。」

 

「そうとって頂いても構いません。」

 

「八本指が目を付けたのも当然。」

 

「利用できれば麻薬でも禁制品でも輸送し放題。」

 

「馬鹿な事をしなくても十分に稼げるでしょうけれども。」

 

「俺は、下手な事をしてあのシルト陛下に目を付けられる方が恐ろしいな。

何が起こると思う?」

 

「八本指の勧誘に誰も引っかからなかった理由が分かるわ。」

 

「結果が国王自ら話し合いし(殴り込み)にくるとは八本指も思って無かっただろうな。」

 

「しかも、その国王が歴史上でも最強クラスの魔法詠唱者(マジックキャスター)って想像の範疇外でしょう。」

 

「その護衛も一人しかいなくても十分と判断できる化け物だ。」

 

「八本指には悩まされたけれども、この点だけは同情するわ。」

 

「手を出した相手が悪かった。」

 

「他国だからと遠慮していただけ。

自国の商会が裏切る筈もない。」

 

~~都市長城館、謁見の間~~

 

「今日は市内観光を楽しんでもらえましたか?」

 

「シルト陛下のおかげで楽しむ事が出来ました。」

 

「蒼の薔薇の皆さんで他国民に開放するにあたっての問題点や気が付いた事を教えてくださいね。」

 

「間違いなくさせて頂きます。

後、ご紹介いただいた方をお断りして申し訳ありません。」

 

「まあ、確実に他国の紐付きなので断る、と言う可能性は考慮していましたので。

逆に彼女からシャンドラド千年王国の情報を入手する為に限定的にメンバーに加える可能性と五分五分かなって考えていました。

その程度ですのでお気にされずに。

では、今後とも何かありましたら。」

 

「一つ伺いたいのですが宜しいでしょうか?」

 

「どうしましたか?」

 

「ラナーと婚約されるのでしょうか?」

 

「する予定はありませんよ。

ヤルダバオトの戦いに何故参加したか疑問ですか?」

 

「ええ、てっきりラナーとの婚約との交換条件で参加したのかと?」

 

「傭兵ですよ。」

 

「傭兵ですか?」

 

「ちゃんと頂く物は頂いています。

その点は冒険者の皆さんも同じでは?」

 

「その報酬がラナーとの結婚だと思っておりましたので。」

 

「彼女は、好みではないのですよ。

政略結婚の相手としてもスレイン法国やバハルス帝国との関係を考えると微妙ですので。

挨拶的に美人ですね。と言ったらなぜかあのお茶会になってしまっただけですよ。

どちらかと言えばラキュースさんの方が好みですね。」

 

「どこまでが本心なのか分かりませんが、これも挨拶の一種として受け取っておきます。」

 

「そうしてもらえると助かります。

政略結婚として考えると、ラナーさんよりもイビルアイさんの方が魅力はありますね。」

 

「何故ここで私の名前が出る。」

 

「ご自身が良くお分かりではないですか?

配下になって貰ってエナ多種同盟国方面の領地を任せるのでも良いのですが。

お仲間に本名は教えておいでで?インベルンさん。」

 

「何故それを知っている⁉」

 

「情報源は教えられませんね。

一応、エナ多種同盟国との協議は終わりましたけれども、国境付近の領地は名目上は貴女を領主にするのが一番良いのですよ。

スレイン法国は気にする必要はないです。

まあ、機会がありましたらご検討をよろしくお願いしますね。」

 

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