~~~デミウルゴスSIDE~~~
「アインズ様、あの娘を御存じだったのですか?」
「私はなデミウルゴス、恩には恩を仇には仇を返すべきだと思っている。
同じ様に受けた借りはしっかり返すべきだと。
司書長によって翻訳されたものがあるが、これは原本だな。
ある一人の姉を貴族に攫われ憤怒に燃えた一人の少女の日記だ。
この日記によって私はある程度この世界の一般常識を学んだ。
ならばこれは借りだ。
私はお前より受けた借りをお前の姉に返そう。」
「そういう事ですか。
そのような考え方は私を創造されたウルベルト様もされていたのでしょうか?」
「何故そんなことを聞く?」
「シルト様との話し合いの際にギルド、アインズ・ウール・ゴウンの成り立ちを聞きまして。
元々は弱者救済の為にできたと聞きまして本当なのかと?
シルト様はあくまでも外から見ての判断なので確実とは言えないけれども、弱者救済を正義とするたっち・みー様とウルベルト様の違いは弱者を助けるのは偽善に過ぎない、しょせんは悪であると考えているように見えた。
と聞きましたので、今の考え方はウルベルト様の考え方に近いのかと考えまして。」
「シルトさんから見るとそう見えたのか。
少々違うが概ねその通りとしか言いようが無いな。
そういう意味では私の考え方はたっち・みーさんとウルベルトさんの中間の考えかたに近いのかもしれない…」
私はアインズ様からアインズ・ウール・ゴウンの歴史を聞き感動に打ち震えたと同時になぜ、アインズ様がくだらない生き物にも気にかけるのかが分かった気がした。
アインズ様が牧場の事を分かっていて見逃していただけるのはアインズ様の御優しさなのでしょうが、直接、アインズ様を牧場にご招待できないのはアインズ様の本心から望まれている訳ではないと分かっていたからだ。
アインズ様が直接おできにならない事は、不肖このデミウルゴスが行うべきだろう。
~~~レイラSIDE~~~
「まさか、魔獣を間引きするだけで勝手に支配者として認めてくるとは思いませんでしたね。」
「シルト様にはエルフ領の領域確定以外の御命令は受けてはいないのですけれども。
どんどん領地が増えて行きましたからね。」
私は配下としてつけられたエルフと話していた。
困ったことに、元々のエルフの国の重鎮たちも意外と統治能力が低いのだ。
この点はダークエルフの国も似たようなものだった。
支配した?と言うよりも勝手に支配されていった他の種族や部族も似たようなものだ。
「強者が支配者の論理な原始的な感覚の部族だらけですので。」
「で、支配者の要求はほとんど聞きますっていう事なのよね。
部族全員で自殺しろ、みたいな要求は流石にのまないようですが。」
「普通に生贄位は出してきそうですから。」
「シルト様は、生活の向上、明確な分かりやすい法律、公正な裁判があれば基本的に大丈夫とおっしゃっていましたが。」
「歴史的に見ても支配者に一番求められるのは調停能力でその規範となる基準が法律でしたか…現状まともに法律もありませんよね。」
「生活の向上はかなり難しいですね。
本国の整備が終わらないとゴーレムは使えないですから。」
「天敵となる魔獣の駆除だけでも生活が向上していませんか?」
「問題は利益、つまり税収が無いとどうにもならないのですよ。
無償で魔獣を倒すものではないでしょう。
交易を活発にしようにも道路建設もままならないですので、危険な魔物が出た場合の情報伝達手段の構築も難しいですから。
現状、伝言を使える者も殆どいないのが現状ですので緊急用に各集落に伝言のスクロールを渡しているだけですからね。」
「一応貢物は貰っていますけれどもね。
私達が倒したものの価値の方が高そうですが?」
「その査定も完全ではないですからね。
ダークドワーフに査定させても、各国の実際の金額的な価値と言う物に置き換えにくいですから。」
「かなりの期間、物々交換だったようですから仕方がないかと。
当面は各種族、各部族間の調整以外は出来ませんよ。」
「そうなるわよね。
ナザリックのコキュートスと言う者の管理地の報告書は見た?」
そう、あちらも出費ばかりで見返りが余りに乏しい事に驚いてしまう。
何のために領地を手に入れたのかがさっぱり分からないのだ。
先行投資としても、一体何が得られるのかが明確ではないのだ。
竜王国と言う国が国ごと移住してくるので、来年にはそれなりの実入りがありそうな本国とは大違いだ。
人口的には竜王国に乗っ取られたように見える程なのでどう言って良いのかは分からないのだけども。
「ナザリックも何をしたいのかいまいち分からないですが、人の事は言えませんね。」
「まだ、私達の方がましでしょう。
一応は大森林で得た素材を各国に売り捌いてますから。」
「ドワーフ製のアイテム販売も出来るようになりましたからね。」
「極力、転移前の資産は売らない方針ですから少しはましになったと思うべきでしょう。
シルト様のお考えも、この世界のアイテムのレベルを考えると分からない事は無いです。」
「二度と入手できない物を売るのは財産の切り売りをしているだけですからね。」
と言っても、国家としての体裁を整えるのも大変なのです。
与えられた任務をこなさないのはだめですがあまりにも領地が広がりすぎました。
中々帰れないですが、ラスターは浮気していないでしょうね。
~~~竜王国SIDE~~~
「結局、国民総出で移民する事になったのじゃ。」
「ですが、シルト陛下は落とせませんでしたね。」
「わしのナイスバディーが通用しなかったのじゃ。
あの年代ならきれいなお姉さんにメロメロになるのじゃないのかえ」
「子供状態でも通用していませんでしたね。
でも良いではないですか?
一応重鎮のフェンデル閣下となら問題ないそうですから。
容姿はフェンデル閣下の方が上ですよ。」
「今一、脳筋なのじゃ。
宰相、他人事だと思っているじゃろう。」
「実際、他人事ですから。
セラブレイトとフェンデル閣下とどちらが宜しいのですか?」
「考えるまでも無い選択なのじゃ。
選択の片方がひどすぎるのじゃ。」
「しかし、シルト陛下もフェンデル閣下も女王陛下が大人形態になったら冷めた目で見ていましたよね。」
「わしだって好きでやっている訳ではないのじゃ。
真の竜王の血を引き継ぐ希少種なのじゃと言ったら、容赦なく
「多少脳筋ですが、実際かなり強いですよね。
先日のビーストマンの攻勢での戦闘でも、クリスタル・ティア全員の上げた戦果よりもフェンデル閣下一人が上げた戦果の方が多かったようですし。」
「転移魔法で移動するから戦場に付くまでの時間が違いすぎるとセラブレイトが文句を言っておったな。
宥めるのが大変だったのじゃ。」
「その後の模擬戦ではフェンデル閣下が圧勝しましたよね。」
「それどころか、部下も軒並みじゃったな。
あの全員よりもシルト陛下や近衛隊長のアンネの方が強いと言っておったがどんな強さなのじゃ?」
「多少は割り引いて考えるべきでしょうが、シルト陛下は女王陛下の曾祖父さんと同格を倒していますからかなりの強さでしょう。
しかし、フェンデル閣下は気に入らないのですか?」
「フェンデルはシルト陛下がおっしゃるならで、全然わしにメロメロではないのじゃ。
子供形態に欲情するのも困るが、大人形態でも欲情しないのも何だか癪に障るのじゃ。
ナイスバディーで相手をメロメロにして嫁ぎたいのじゃ。」
「贅沢を言わないでください。
国民の事を考えるとフェンデル閣下に嫁ぐのが一番良いのですから。」
「わしは仕様がないで貰われるのか~~。」
~~ブレインSIDE~~
シャルティア・ブラッドフォールン、あの吸血鬼にあってこの世には人間ではどんなに努力を重ねても、絶対に到達することができない領域があると思ってしまった。
強大な山か壁のような存在。
だけれども、同じような強さをもつセバスさんに出会い、更にはシルト陛下に近衛隊長のアンネ、アダマンタイト級冒険者のモモン。
俺は井の中の蛙だったのかもしれない。
さらに上の化け物が世の中にいるのだと。
娼館の前であったシルト陛下とアンネはそこまで強くは感じられなかったが、ヤルダバオト戦でその恐ろしいまでの強さを見せつけた。
クライム君と住民を避難させている時に上空で戦っている者を見た。
一人が貴族風の女、容姿を変えていてもわかる、シャルティア・ブラッドフォールンだ。
もう一人が白い鎧の大盾を持った騎士、アンネだった。
ものすごい速度の交戦だったが、いきなりシャルティアはアンネではなく別の所を攻撃しようとして、それをアンネが防いでいるのは確認が取れた。
ふと、その先を見ると、夜なので分かりにくい群青色のマントを身にまとう者が魔法を放っていた。
恐らくシルト陛下だ。
一人で戦域全体に魔法を行使しているのだろう。
信じられないものを見た気がした。
シャルティアとアンネの交戦を見ているとアンネはシャルティアとシルト陛下の間の位置に陣取っていることが分かった。
あの、シャルティアを相手に主君を守る事を優先させているのだ。
そんなことができるのか?
他にも建物を破壊しながら戦っている気配があったが、後でヤルダバオトとモモンの戦いで有った事を教えられた。
戦いが終わった後にシルト陛下にお願いした。
「模擬戦をやっていただけないでしょうか?」
シルト陛下は困ったように
「私は
戦士のあなたとは系統が違いますね。
代わりにアンネと模擬戦をしてみますか?」
「お願いいたします。」
「他の人に見られない場所が良いですね。
少し移動しましょう。
抵抗しないでくださいね。」
そう言うと転移魔法で闘技場か訓練場のような場所に連れていかれた。
「アンネと模擬戦をするようだから、一回訓練を中止してくれ。」
訓練していた者たちは周辺に行き座って見学するようだ。
「ここは何もイベントが無いときは軍の訓練場で使っているのですよ。」
シルト陛下がそう答えた。
「軍の人間は他の人に入らないのか?」
「シャンドラド千年王国軍ですよ。
アンネの強さは知っているので他の人には入らないですね。」
アンネは武器を持ち換えていた。
「訓練用の武器です。
殆どダメージは出ないので死ぬ事は無いでしょう。
死ななければ治癒魔法で治しますので遠慮せずに。」
「俺は自前の武器で良いのか?」
「その武器では鎧を突破する事は有りませんので気になさらずに。」
「そうかい、行くぞ、〈能力向上〉〈領域〉」
「待ちの攻撃の型ですか。
私には参考になりませんが困りましたね。
私はシルト陛下をお守りする事が役目なので基本的には相手の攻撃に合わせるのですよ。」
「参考にならないってか?」
「貴方を蔑んでいる訳ではありません。
私でなければ参考にできる者もいるでしょうね。
その型では動けませんよね?
なのでシルト様をお守りするのに適切では無いと言うだけですよ。
では参ります。」
「はっ?」
気が付いたら首に剣を当てられていた。
「どうなっている?」
「気配を読んで攻撃するのでは?
ですので限界まで気配を消してみました。」
地下でも、領域を使っている時にセバスさんとシルト陛下の気配に気が付かなかったがこれはさらに酷い。
相手はプレートメイルや大盾のフル装備で、しかも明確に攻撃してきたのだから。
一瞬、陽炎のように気配が消えたと思ったらそこに居たのだ。
「驚きましたか?
限界まで気配を消すと、見えていても見えていないと言う事も起こるのです。」
「もう一回お願いできるか?」
「構いませんよ。
では仕切りなおして。」
〈神閃〉〈四光連斬〉
勝手に体が反応してしまった。
アンネは全く動いていなかったので空振りに終わった。
領域に入った気がしたのだ。
「逆に殺気などの気配のみを放ってみました。
私が接近したと誤認したのでは?」
「その通りです。」
信じられないものを見た気がした。
身体能力とかそう言う物以前の段階で勝負がついてしまったのだ。
「私と貴方では根本的に身体能力が違いますのでこのような稽古の方が良いかと思い試してみましたが如何でしたか?」
「いや、確かに参考になった。
しかし、一回、普通に相手してもらえないだろうか?」
「分かりました。」
俺は再度スキルを使って〈領域〉を張った。
アンネが領域に気負いもなしに入ってきた。
〈神閃〉〈四光連斬〉
右手の剣で四つの斬撃を問題なく対処してそのまま首の喉元で剣が止まった。
シャルティアの時のように信じられない速さで動いた訳ではない。
最小の動作で剣を弾いたまま剣で首を突いてきたのだ。
「攻撃の精度をもっと上げた方が良いですね。」
「それは俺も分かっている事だ。
あんたはまだ本気で動いていないだろう。」
「私が本気で動いたら訓練になりませんが?」
「はるかに高い山の頂を知りたい。
見せて貰えないだろうか?」
「そうですね、ブレインさん、貴方は一回見学してください。
4人ほど立ちなさい、私が相手をします。」
先ほど迄訓練していた者たちが4人立ち上がってアンネを囲んだ。
「始め。」
シルト陛下の号令と共に始まったのだがあっという間に終わってしまった。
アンネに挑んだ4人も完全に化け物じみた強さだった。
シャンドラド千年王国は化け物ぞろいなのだろうか?
しかしアンネは彼らを一方的に叩き潰してしまったのだ。
「あのシャルティア・ブラッドフォールンと一方的に戦っていたように見えたのは見間違えでは無かった訳だ。
世界は広いな。」
「技量では、あの4人よりもブレインさんの方が上ですね。
そんなに卑下する物では無いですよ。
ただ、それでもアンネよりは技量が低いのです。
まだまだ強くなれると思いますよ。」
「シルト陛下、アンネが俺のスピードやパワーに合わせてくれていたのは分かっていましたよ。
技量だけでも俺より上がいる、その事が分かっただけでも今日訓練を付けて貰った意味がありました。」
「本当に国の誰も相手にならないのですから少々特殊ですが。
アンネの動き自体は合理性を追求したものなのですけれどもね。」
「本当に参考になりました。
今日はありがとうございます。」
その後、シルト陛下は転移魔法で俺だけをリ・エスティーゼ王国に戻した。
ガゼフやクライム君にこの話をしたらどう思うのだろうか?
羨ましがるだろうな。
本篇に主人公を絡ませのは面倒だった。
原作と同じセリフとか意味あるのだろうか?と疑問になりながら書いたのがこの第6章でした。
最後までのあらすじは考えているけれども、ゲヘナ以外では本篇の内容に主人公は絡まない…と思う。