第7章1話 収穫
やっとだ。
何がって思うかもだけれども、収穫の時期が来たことだ。
実際は生育の早い芋等は先に収穫が始まっているけれどもそう言う事ではない。
魔法で育成を速めて二期作でもしたら良いのでは?と考えていた時も有ったのだけども、竜王国移民を受け入れる計画ができた段階で不可能になった。
地中細菌まで殺してくれた奴のせいで
拉致の間違いではないかと思うのだけれども、エルフ伯国のエルフの全面協力があった為、予定よりも進捗率は進んでいるので、来年の秋までかかる予定だった竜王国民の移民が来年の春までに完了しそうである。
と言う訳で、竜王国でも収穫が済み次第、続々と移民がやってくる。
エナ多種同盟国からも移民が来る予定になっているけれども、こちらから頼んだことでは無いので彼らの居住予定地は後回しになるから当分先になるだろう…このまま行くとスレイン法国から難民が来るのは確実だから。
リ・エスティーゼ王国への住民虐殺は止める算段は付いているので…クレマンティーヌのおかげで。
傾城傾国の情報と引き換えならリ・エスティーゼ王国への鞭作戦の侵攻は止まるだろう…代わりにスレイン法国が廃墟になるけれども。
余計な事を話したり、記憶を読まれなければ大丈夫…な訳ないよな。
スレイン法国を陥落させたら自動的にあの爆弾も解る筈だ。
どうしたら良いのかの検討もつかない。
アレクには、ナザリックを攻め落とすしかないと迄言われてしまった。
過去に戻ってシャルティア事件を無かった事にしたいがそんなことはできない。
間違っている事を期待したいが…情報の裏取りする相手が相手なので今一上手くいっていないから間違っている事にかけるしかないのか?
モモンガさんではないが未来の自分に丸投げである。
今日くらいは良いだろう、収穫祭なのだから。
私は解放された都市長城館の庭に集まった市民にバルコニーから声をかけた。
「この世界に来て初めての収穫だ。
この先もずっと皆が作ってくれた食べ物を食べられますように。
後、新たに国民になった者たちもいるしなる者達もやってくる。
同じ国民として受け入れて仲良くして欲しい。
では乾杯。」
収穫されたばかりの麦から作ったエールを私が飲むと歓声が上がり、庭は大騒ぎになった。
そして、最後まで統制されていたお酒が今日から解禁になるらしい。
市民の大歓声もわかると思う。
何でも、私が飲んでいないからと言う理由で飲んでない市民も居たそうだ。
発酵も熟成も魔法で強引に早めた為か単に技術力の違いか前世に飲んだビールの記憶とはかなり違う味だったけれども、それでもあまりにも久しぶりのアルコールと皆の雰囲気で美味しく感じられた。
転移前のリアルでは…実はアルコールを飲んだことが無い。
仕事柄、明確な休日と言うのが無かった事も有るけれども、メチルアルコールが入っていても驚かない状態だったからだ。
つまり、数十年ぶりのアルコールだよ。
部屋に戻り、窓から聞こえる歓声を聞きながらおつまみとお酒を飲みながら話しかけた
「これでアンネやステラとも食事ができるな。」
「「私は必要ないのですが?」」
「せっかく食べられるのだ、一緒に食事がしたいね。
こういうのはコミュニケーションでは無いのかな?」
「機会がございましたら。」
「では謹んでお受けいたします。」
「そうだ、一杯くらいは飲むと良い。
市民が育てた麦で作ったエールだ。
味わうのも仕事の内だろうよ。」
どう考えても酒を無理やり進める上司である。
「では、都市長として一杯だけ頂きます。」
「私は護衛中ですので。」
二人の反応が分かれた。
第一階層の領域守護者達も下手すれば酔いつぶれる程飲まされるに違いない。
なので、ステラは私が居なくなり次第、飲む羽目になるだろう。
働きづめだったから、ここで一区切りだろう。
少しくらい楽しめ。
「アンネ、確かにそうだけども、ここで私が襲われる可能性はあまりにも低くないか?
他にも護衛はいるのだから交代で一杯ずつ位は飲んでも良いだろう?
こういう時も指揮官先頭だ。」
大体、アランの警戒網とガンダルフィーの防御が効いているエルグリラでいきなり襲われるのは現実的に考えられないほど低い確率だ。
エルグリラ市内に関して言うと、パンドラを始めとするナザリック勢のスキルや魔法を使った諜報活動も全て把握しているのだから、各国の大使たちの動きなど完全把握である
そもそも、ほとんどの市民が転移して具現化したNPCなのでミスによる事故でもない限りそんなことは起きない。
この場合は襲撃と言う意味でアルベドがモモンガさんを襲ったのとは違う意味だぞ。
同じ意味の場合、アンネに襲われたら誰が止められるのだろう?と言う巨大な疑問はおいておくとして…実の所、自分自身でも止められる気がしない…。
「ではお言葉に甘えまして一杯だけ。」
私の貞操の最大の敵…違うか、いい加減諦めた方が良いのかもしれないが…もエールを飲んだ。
「美味しいだろう?」
私の押し付け以前に市民が作った初収穫のお酒にいちゃもんを付けるのは立場上憚られる者ばかりなので
「感動します。」「美味しかったです。」
と言う返事が返ってきた。
「来年はもっとおいしいお酒を飲めると良いね。」
原作通りなら、来年の今頃は聖王国が、再来年にはリ・エスティーゼ王国が戦乱に巻き込まれている筈だ。
厳しいなと思いながら話した。
アレクに言わせれば、ナザリックのやりたいようにやらせれば良いらしいが偽善かもしれないが止めたいのだよ。
せめて、被害が半減する程度には。
もう少し力が無ければ断念していたと思う。
自身だけの単独転移ならナザリックによってモモンガさんで行う事が出来ないプレイヤーの各種実験体だ。
そう思うと贅沢な事だと思わずにいられない。
「本当にそう思います」「そうなるように微力を尽くさせて頂きます。」
二人からの返事を聞きながらそう考えていた。
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暫くして正式にお断りのお返事がやってきた。
何って、聖王女カルカ・ベサーレスさんとの婚姻話だ。
もっともお断りの返事を書いたのはケラルト・カストディオ神官団団長で宗教が違うからと言う返事だった。
まあ、こちらからの条件も中々な物だったけれども。
断られて当然の婚姻話だったから、婚姻話を持ち込んだという事実だけがあればいい話なのでお断り自体はどうでも良い。
そもそも、カルカ聖王女がなぜ結婚できないかと言うと、彼女は分かっているかは分からないがそもそもできる状態にないからだ。
神殿の後押しもあり前王から位を譲られたらしいが、カスポンド以外の王族が何故了承したのかが分からない。
確実に神殿勢力が他の王族を抑え込んだことは間違いない。
カルカとケラルトは役職を逆にした方が良くないか?
さて、シャンドラド千年王国からのお手紙だが、内容的には王位を捨てて嫁に来てください。
その代わりにアベリオン丘陵の亜人に対する共同戦線の提案をした訳だ。
そんな聖王女に王位を捨てろというのだからお断りも当然だろう。
彼女もお婿さんを望んでもお嫁に行くことは考えていないのだから。
話を戻すと、じゃあ、彼女と結婚できる相手が居るのかと言うと実の所何処にもいない。
国外の話を言うと、まともに国交があるのがリ・エスティーゼ王国だけだったりする。
そうすると、事実上ザナック王子しか考えられないのだけれども双方ともに望んでいない訳だ。
片方は国を良くするために国を出たくない、片方はリ・エスティーゼ王国の乗っ取りの危険性がある為に。
次善の相手として国内貴族からと言う事になるけれども、北部と南部の対立がひどすぎる。
彼女がもう少し苛烈な性格なら北部の有力貴族の子弟と結婚して南部を抑え込んでしまう。
又は南部の有力貴族の子弟と結婚して取り込んでしまう。
と言った可能性も有るのだけれども、八方美人すぎる性格と、彼女の王族にあるまじき結婚願望をどうにかしないと結婚は無理じゃない?と思うのだ。
自身の結婚自体を政略結婚、つまりは政策として割り切らないと…
その点がケラルトはドライなので、カルカ聖王女の結婚を餌にしてどうにかしていた。
カルカ聖王女が結婚してしまうとこのカードが切れないのだ。
かくして彼女は結婚相手が居ないという事態に陥っている訳だ。
しかも彼女が結婚しないから、他の王族から見たら、次の王位が自分の子供になる可能性がある辺りも見逃せない。
上手い事手玉に取っているなと思ったよ。
彼女が結婚できるのはケラルトの粛清が完了して南北対立が無くならないと無理じゃね。
何時になるやら。
しかし聖女王ではなく聖王女が正式と知った時は驚いた。
王女は国王ではなくお姫様なのだけれども…ずっと間違えていた。
なんで聖女王ではないのかと言うとどうも南部貴族からの反発による妥協の結果のようである。
そんなことまで調べ上げていた。
まあ、実際にお妃にするにはもう少し清濁併せ吞まないと厳しいかな。
なので、頑張って側室止まりだよね。
私や彼女が国王でなかったら普通に良い人だと思うけれどもね。
ヤルダバオトは聖王国侵攻をするのだろうか?
したらこの手紙が意味を成してくるのだけれども…アビリオン丘陵の状況を考えると多分やるよね。
私が行っている事は、一応はカスポンドの奇麗な死体を確保していたナザリックと同じ事をする可能性への布石だと言えば分かるだろうか?
上手くいくかも、そもそもこの手を使う事になるのかも分からない。
いくつもの手を打っておいてその中の一つが使えれば良し、みたいな感覚で手を打っているので。
現に蒼の薔薇に手の者を入れるのは失敗したし。