もう一つのギルド   作:mshr

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第7章2話 提案

~~~モモンガSIDE~~~

 

どうしようかと思った。

 

確かにデミウルゴスの出した作戦は非常に良いものだと思う…ナザリックに薄汚い盗人を土足で招き入れるのが気に入らないけれども。

 

対してシルトさんの代案は非常に穏健的なものだ。

 

シルトさんがジルクニフ皇帝にアインズ・ウール・ゴウンを紹介すると言う物だ。

 

デミウルゴスの作戦の問題点は、ジルクニフ皇帝の側近を寝返らせなければならない事だ。

 

最有力候補だった主席宮廷魔術師フールーダ・パラダインはシルトさんが抑えてしまったと推測されているのが致命傷だった。

 

シルトさんが言うにはバハルス帝国の首席宮廷魔法使いが勝手に孫弟子になった、だったが同じようなものだ。

 

魔法狂いらしいが、千年王国(ミレニアム)以上の物を見せないと裏切らないだろう。

 

そしてそれは不可能に近い。

 

他の者ではジルクニフ皇帝に対する影響が少なすぎる。

 

従って、次善の策として適当な貴族を動かして上の者の責任だと強弁するしかなくなっている。

 

「デミウルゴス、シルトさんの案で良くないか?」

 

「しかし、それではナザリックの威光が伝わりません。

我々ナザリックが千年王国(ミレニアム)の下に見られます。」

 

「下手に威圧するとかえって千年王国(ミレニアム)にすり寄らないか?」

 

シルトさんの言っていた軽い敵対関係が自動的に成立してしまうのではないか?

 

その辺りを説明すれば、シルトさんは協力する可能性もある訳か。

 

「帝国としては近くのナザリックか遠くの千年王国(ミレニアム)かと言う選択になるでしょう。

アインズ様の御威光にすがるのは当然の事かと。」

 

500人近いLV100戦力を抱え込んでいる相手だって事を忘れていないか?

 

どちらかと言うと膝を屈するのはこちらだと言うのに。

 

多少下に見られても仕方がないのではないのか?

 

それに最近増えたミスリル級あたりの冒険者やワーカーはシルトさんの手の者の可能性が高い。

 

アダマンタイト級などと言う目立つクラスまでは上げないように指示しているって言っていたからな。

 

「デミウルゴスの案を採用するとしてもだ、呼び込んだ者の中にシルトさんの配下が居たら目も当てられない。

一回、シルトさんに相談だな。」

 

「口惜しいですが確かに千年王国(ミレニアム)が絡んできた場合は失敗する可能性がありますし連絡なしで行った場合は連絡しなかった方が悪いと言ってくるのは想像できますので。」

 

そうだよな。

 

セバスの所に派遣されていたメイドに何かあったらデミウルゴスの牧場を叩くと言う警告は普通にして来たからな。

 

シルトさんは完全に恩は恩で仇は仇で返す、と言うよりも一種の商取引と考えている傾向があるのだよな。

 

同盟を結んでいると言うよりも違約条項付きの商契約を常時結んでいるのに近いと考えている。

 

千年王国(ミレニアム)も全ての情報をこちらに送ってはいないがお互いさまでは?と言われてしまった。

 

最近では、セバスがツアレニーニャとデート(買い物)に行ったらエルグリラに妹のセリーシアが居てびっくりしたと言う事があった。

 

俺の話を聞いて蘇生魔法の実験台にした為に生きていたらしい。

 

教えてくれても良いのにと聞いたら、漆黒の残りの三名は蘇生できなかったから教えるのもどうかでしたので。と返事が返ってきた。

 

そもそも、NPC達が色々やりすぎでシルトさんも全てを把握している訳ではないらしい。

 

俺もデミウルゴスが何をしているのか把握が出来ていないからシルトさんに強く言えない部分だ

 

但し、ナザリックと衝突しそうな情報は送ってきている。

 

例えば情報集めの為に冒険者やワーカーとして配下を送り込んでいるという情報は入って来てもどこにどれだけ送っているのかまでは教えては貰えないからだ。

 

と言っても、送っている事は言っているのに何も教えずに結果ナザリックに招き入れて殺しました。と言っても通用しないのは俺だってわかる。

 

俺がシルトさんに伝えれば、シルトさんからナザリック探索の依頼は受けるな、とバハルス帝国に展開している配下の冒険者やワーカーに指示を出すだけで済む話なのだから。

 

明朝、何時ものメッセージを送ると

 

『どちらでも良いですよ。』

 

「どちらでも良いですか?」

 

『結局のところ私はナザリックの仲裁役になる事は必然ですから。

ただ、モモンガさんに親しい関係として求められるかそうでないかの違いに過ぎないですかね。』

 

「どちらが安全ですかね?」

 

『個人的な感想で悪いのですが、モモンガさんの外見は普通の人間には恐怖を与えますので…下手に威圧しすぎても却って恐怖をあおるだけでマイナスではないですか?

別にそんなことをしなくても、普通にナザリックに招待しても良いわけですから。』

 

「シルトさんに紹介されると下に見られるのではないかと言われまして。」

 

『勝手に思われるのはどうでも良くないですか?

じゃあ、バハルス帝国がモモンガさんに何かできませんし、私もモモンガさんに命令を出せる立場でもないですからね。

友達を紹介するのと同じですよ。

言い方を変えれば後輩を紹介するとして、紹介者よりも下ですが、だからと言って何か変わるのですか?』

 

「何かあった時にシルトさんに何か言ってきませんか?」

 

『そうなると思いますよ。

でも、それはどちらの場合でも言ってくるのは確実なのでどちらでも構わないと言っているのですよ。』

 

結局、シルトさんに紹介してもらう事にした。

 

ナザリックの防衛能力についてのテストは、シルトさんの協力で行う事にした。

 

訓練なので実戦ほどの結果では無いと思ったら…招き寄せようとしたワーカーよりも余程強いと言われてしまった。

 

エルグリラではやらないのかと聞いたら、やるまでも無く酷いと返事をされてしまった。

 

シルトさんは拠点のギミックだけなら傭兵NPCの1パーティーでも攻略可能だと評価していた。

 

そんなに防衛能力が低いのか?

 

ちょっと驚いてしまう。

 

(※実際には、そもそも都市階層と言う急所をさらけ出しているようなものだ、と言う評価の為)

 

かくして、俺はバハルス帝国皇帝ジルクニフとの会談に行くことになった。

 

~~~シルトSIDE~~~

 

「シルト、ズーラーノーンの下部組織を排除してくれたのは助かったのだけれども、後始末がまだ終わらないよ。」

 

「ジルクニフ、私は覆面だったのでどんな人がいたのか分からないのですが、見ていたとしても誰だか分からないかもしれませんが。」

 

「公爵やら魔法学院の学院長まで居たよ。」

 

「でも、高位貴族が居たのなら、更に帝権が強化出来たのでは?」

 

「おかげで休む暇もない。」

 

「悪いことをしましたね。」

 

配下をこき使っている自覚はあるので、もし一人でもボイコットした瞬間にこうしてジルクニフに会いに来る時間もない気がする。

 

エルダーリッチを文官として使ったモモンガさんを見習って、その手のモンスターも使ってみたけれども、融通が利かない事が分かった。

 

単純な事務作業みたいな事には十分役に立つのだけれども、新規提案とか決断みたいなことは出来ないと思った方が良い。

 

行政機構を丸ごと再編中の皇 帝(ジルクニフ)から見たら十分に羨ましいのだろうけれども。

 

「いや、何れは出さなければならなかった膿だよ。

気にしなくても良い。

ところで、ヤルダバオトとアインズ・ウール・ゴウンについてシャンドラド千年王国の大使に問い合わせたら直接シルトが話すと言っていたけれども、何か知っている事は有るのか?」

 

「ヤルダバオトなら、私とアダマンタイト冒険者の漆黒のモモンで撃退はしました。

私なら倒せない事も無いですね。

モモンさんもかなり押していましたし。」

 

「ヤルダバオトなる悪魔は、じいも知らないのだがシルトは知っているのか?」

 

「偽名でしょうね。

偽りの神を意味する言葉なので。

神や悪魔に正式な名前は無いので、そのように名乗ったのでは?

大体、神と悪魔は表裏一体ですし。」

 

「ほう、シルト様は神と悪魔は表裏一体で名前が無いとおっしゃるのか。」

 

話が長くなりそうだよな、適当なところで切り上げないと。

 

「フールーダさん、スレイン法国の闇の神をバハルス帝国では邪神にしていませんか?

つまり、ある国では神なのに、ある国では悪魔なのですよ。」

 

「そのような考え方もあるのか、とするとヤルダバオトは炎を扱ったそうじゃが、火の神なのか?」

 

「火の神でもあり悪魔でもある、と言うべきでしょうね。

と言う訳で、ヤルダバオトで調べても出て来ないのではないですか?

シルトとかジルクニフとかフールーダと言ったような名前を言っているようなものなので、○○(何々)の悪魔みたいな物を調べても出て来ないと思いますよ。」

 

「そうすると、火の上位悪魔がヤルダバオトと名乗ったと考えておられるのですな。」

 

「そうなりますね。

ああ、それに似た実例を紹介したいのですが。」

 

「どう言う物事ですかな?」

 

「シルト、それは何を紹介するつもりなのかい?」

 

「もう一人質問に有った、アインズ・ウール・ゴウンですよ。

呼んでも良いですか?」

 

「何時頃に呼ぶのか?」

 

「転移魔法で呼ぼうかと思いますので直ぐですが。」

 

「そうか、呼んでくれないか?」

 

「では伝言(メッセージ)の魔法で呼びますね。

伝言(メッセージ)、来ても大丈夫ですよ。」

 

モモンガさんが転移魔法でやってきた。

 

「こちらがアインズ・ウール・ゴウン殿です。

事実上のトブの大森林の支配者です。」

 

「シルト、アンデッドに見えるのだが?」

 

「間違いなくアンデッドですので。」

 

「ちょっと待て、何を言っている?」

 

「そんなに驚くことですか?

私も寿命はほぼ存在しないと言いませんでしたっけ?」

 

「先ほど言った、上位の悪魔が名前を名乗っているのがヤルダバオトであると同じ意味じゃな。」

 

「そうです、スケルトンメイジの上にエルダーリッチ、その上がナイトリッチ、その上がオーバーロード(死の支配者)

オーバーロードのアインズ・ウール・ゴウン殿です。」

 

「例の闘技場の話がだれのことを言っていたのかようやく分ったよ。

改めてアインズ・ウール・ゴウン殿、私がバハルス帝国皇帝ジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクスだ。」

 

「シルトさんにご紹介預かりました、ナザリック地下大墳墓の主人にしてトブの大森林の支配者、アインズ・ウール・ゴウンです。

始めまして。

シルトさん、先に私の事を紹介していたのですか?」

 

「いきなりだとかなり驚愕する事になると思ったので、それとなく言っておいたのですよ。」

 

まあ、本当はデミウルゴスの策でナザリックに呼びつけられた時の耐性を付けておいたのが正しいのだけれどもね。

 

「で、彼をトブの大森林を領地とする国家の君主として認めて頂きたいわけですよ。

まだ、国名は決まっていないそうなのでその後になると思いますが。」

 

蠍人の大王国もエルフの国も大王国や国であって国名は無かったので異形種や亜人の国家の場合は国名が無いのは珍しい事でもない。

 

「アンデッドの国家なのか?」

 

「現状ではリザードマンを始めとした亜人国家になる筈ですが、リ・エスティーゼ王国領域と被っているところがありましてご相談したいのですが。」

 

「そこは何処なのだ。」

 

「先ずは私達の本拠があるナザリック地下大墳墓が一応はリ・エスティーゼ王国領域にあるらしいのです。

次いで近隣のカルネ村ですがここはどちらともいえないのではないかと。」

 

現代人から見ると信じられないかもしれないけれども、町や村が複数の国や貴族に属しているなんてことは普通にあったので可笑しくもなんともなかったりする。

 

その名残がバールレ=ナッサウのような町になっていたりする。

 

さらに突っ込みを入れると、国の中に国があると言う事もあった。

 

封建制と言うのはこれの亜種かな。

 

具体例を挙げると、神聖ローマ帝国の中にプロイセン王国があったみたいな状態だ。

 

土地持ちの貴族領はそれ自体が国だったりする。

 

日本でも戦国時代は同じような状態だったと言えば分かって貰えるだろうか?

 

更には、二つの国の貴族を兼任していたりとか、イングランド王が同時にフランス貴族だったりと歴史を紐解くと現代人から見たら妙な事はよくある話だったりする。

 

(※フランス貴族のノルマンディー公爵がイングランドを征服してイングランド国が出来た結果こうなった。英仏100年戦争は正確にはイギリスとフランスの戦いでは無くてノルマンディー公爵とヴァロワ伯爵のフランス王位継承戦争。)

 

話を戻すとカルネ村はリ・エスティーゼ王国国王直轄領であると同時にアインズ・ウール・ゴウン領域であると主張していると思って貰えば間違いない。

 

この知識は私がモモンガさんに伝えたものだ。

 

因みにバハルス帝国領であると同時にリ・エスティーゼ王国領の場所もある。

 

カッツェ平野から出てくるアンデッド退治を行う者達を支援する為の小さな街、ヴァディス自由都市がそれだ。

 

「ヴァディス自由都市とは意味合いが違うのではないか?」

 

「結局は住民が誰を領主と思っているかではありませんか?

トブの大森林やアゼルリシア山脈、カッツェ平野は何処までが誰の領地なのでしょうか?」

 

「それぞれが勝手に領地を主張しているな。」

 

「トブの大森林の亜人たちは彼の部下を領主として認めています。

であれば、トブの大森林はアインズ・ウール・ゴウンの領地でしょうし、カルネ村は住民が決める事ではありませんか?」

 

「シルトは口が立つね。」

 

「ジルクニフほどではありませんよ。」

 

「ところで、アインズと呼んでいいかな?」

 

「構いませんよ。ジルクニフで良いのでしょうか?」

 

「構わない、アインズとシルトでどの程度強さが違うのだ?」

 

「フールーダさんが詳しいのでは?

魔法詠唱者が単純に強弱が分からないのは?」

 

ここで、フールーダに話を振った私が馬鹿だった。

 

要するに、死霊系特化のモモンガさんと火力特化の私(実際は違うがそういう事にしておく)で単純にどちらが強い?と言われても困ると言う事だけは分かって貰った。

 

「ところでだアインズ、カルネ村だけではなくもう少し広い範囲で国として認めようか?」

 

「どういう事でしょうか?」

 

原作に有ったエ・ランテルを領有してはどうか?と言う話になった。

 

「ジルクニフ、アインズさんに最強の魔法を使って欲しいとは言わない事だよ。」

 

「何故だい?」

 

「私の最強の魔法なら、王国軍を一撃で全滅させられるからね。

アインズさんも近いことができるから。」

 

「はっ?」

 

「フールーダさんには教えておきましたが?」

 

「あれは本当なのか?」

 

「本当ですよ。」

 

この後、ナザリックとエルグリラにジルクニフやフールーダを招待する事になった。

 

転移魔法であっという間だからね。

 

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