もう一つのギルド   作:mshr

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第7章3話 皇帝来訪 

「ようこそエルグリラへ、ジルクニフ。」

 

「何と言うか、ナザリックと比べれば、まだほっとするのだが。

豪華さはこちらも相当なものだが。」

 

私は都市長城館でバハルス帝国一行を応対していた。

 

「ナザリックはどうでしたか?」

 

「シルトは行った事は有るのか?」

 

「地表部までですね。

私達の一行では中に入れてくれないでしょうね。」

 

「何故だい。」

 

「私達は何かあった時にナザリック地下大墳墓自体を破壊しかねないからですよ。

逆に、私も主人であるアインズさんと一緒でない限り入る事は無いですね。」

 

「ナザリックの中は化け物ぞろいだったぞ。

飲み物は驚くほどのおいしさで、建物は神の居城のような美しさで、メイドも美女ぞろいだったけれどもな。」

 

飲み物は、この世界で手に入れた紅茶ではない方が良かったかな?

 

口に合わない可能性を考慮したのだけれども。

 

「その、美女のメイド達も化け物ですよ。」

 

「それは本当なのか?」

 

「確か、ダークエルフの双子とメイドの1人以外の人間種は居なかった筈です。」

 

オーレオールは絶対に出て来ないと思うから外しても構わないだろう。

 

ジルクニフから漏れてオーレオールの事を知っている事がばれた時の方が不味いし。

 

「そうなのか?」

 

「まあ、人の事はあまり言えないのですけれどもね。」

 

「シルトは人間なのだよな。」

 

「そうですよ。」

 

「あの、化け物を何とも思わないとは。」

 

「エルグリラにもいますから大した事は有りませんよ。

アインズさんと話してみてどうでしたか?」

 

「大した事は無いって、ははは、笑うしかないな。

私は生きた心地がしなかったよ。」

 

「容姿で相手を判断しない事ですね。

アインズさんはナザリックでは数少ない人間よりの考え方の者ですよ。

ズワース、例の物を。」

 

私はナザリックに渡したものと同じ水晶を持って来させた。

 

「それはどういうマジックアイテムなのじゃ。」

 

フールーダが食いつきてきた。

 

「起こった事を封じ討込めて後で確認できるようにしたものですよ。

これは私が竜王キュアイーリムとの戦いを保存しています。

ご確認を。

作動させて。」

 

改めて見ても、よくこんなのと単騎で戦ったよなと思う。

 

同格の真なる竜王とどう戦うのかと言うイメージが湧かなすぎるのだ。

 

キュアイーリムは事前情報が曲がりなりにもあったから戦えた側面が大きい。

 

真の竜王にワールドアイテム無しで勝てるイメージが全くつかない。

 

武王はトロールだった為、戦士としてのレベルだけで判断するなら銀級冒険者以上の前衛を務めている者よりも劣るが、種族としての腕力・耐久力・攻撃範囲といった基礎能力が人間を遥かに凌駕しているから、帝国最強だったよな。

 

真なる竜王のLV95はステータスは人間ならどんな強さになるのだ?

 

LV100超の竜帝など、考えたくもない。

 

ツアーも多分LV100だよな。

 

隠し番外編でシャルティアがツアーにやられていたけれども、ステータスだけ考えてもそうだろうなとしか言いようがない。

 

多分、ツアーの大爆発も世界の守りなしではまともにダメージを受けるのだろう。

 

と言うよりも、始原の魔法に関する物は全てそうなっていると考えておいた方が良い。

 

キュアイーリムとの戦いを見ながら他の真なる竜王と戦う事になった場合の事を考えていた。

 

「シルト、本当にあった事なのか?これは創作ではないのか?」

 

「知らない魔法が多数使われておった。

実演して頂けないじゃろうか?」

 

「フールーダ、地形への影響が大きすぎるのです。

ジルクニフ、戦場の跡にご招待いたします。

多分、フールーダは来ますよね?

他に見てみたい方はどれくらいおられますか?」

 

結局、ジルクニフ、フールーダ、四騎士の他数名を連れてキュアイーリムとの戦場跡の上空に連れて行った。

 

「シルト、何故空中なのか分かったよ。

地上からでは確認しようがないな。」

 

フールーダは感極まって話せなくなっていた。

 

他の人は絶句して何も話せなくなっていたのに…

 

「地形を完全に破壊しましたからね。

既に開発を始めている個所もありますが。」

 

キュアイーリムのブレスによって削られた結果、山から強制的に高原になった場所には、家畜の放牧地帯になった場所が既にあった。

 

高原よりも標高が高い場所がない為、湧き水なんて湧かないから、畑にするには水が足りない為だ。

 

肉はさほど困っていないので、基本的には毛やミルクを目的とした牧畜となっている。

 

「あの映像が創作ではない事は分かったが、少々寒いな。」

 

かなり上空だからね、そりゃそうだ。

 

「そろそろ戻りましょう。」

 

私達はエルグリラに戻ってきた私はメイドにカプチーノを頼む事にした。

 

「カプチーノを用意して欲しい。

戦場跡に行った全員に頼む。」

 

この世界でお茶を飲んだ記憶は有るけれどもコーヒーを出された記憶は無かったので、ナザリックに対抗してコーヒーを出すことにした…と言っても流石にブラックはないだろう。

 

芸術性も楽しめるカプチーノを用意させたのはそう言った理由からだ。

 

私の元には鶴が、ジルクニフの元には有翼の獅子を描いたカプチーノがやってきた。

 

その他の人にはここまで凝った物では無いけれどもラテアートを描いたカプチーノが提供されていった。

 

「何だこの飲み物は?」

 

「味は人によって好みがあると思うのですが、芸術性は分かって頂けると思いまして。

体が冷えているでしょうから冷めないうちに飲んでください。」

 

私がカプチーノを飲み始めると、もったいないなと言いながらも皆も飲み始めた。

 

若干冷えた体にほろ苦くて甘いカプチーノは大変美味しかった。

 

コーヒー豆はこの辺りで育つのだろうか?

 

冬の気候が分からないと何とも言えないな。

 

育てば産業化できるけれども。

 

とか思いながらバハルス帝国一行がカプチーノを飲んでいるのを見ていた。

 

「ナザリックで出された飲み物の味も驚いたが、この飲み物も中々に美味しいな。」

 

まあ、カプチーノなら子供でも飲めるからね。

 

「褒めて貰って嬉しいです。

量産化できたら店を出したいですね。

ところで、私の事を恐ろしいと思いますか?」

 

「何が言いたいのかは分かるよ。

ナザリックもエルグリラも似たようなものだと言いたいのだろう?」

 

「まあ、一々配下を並べて威圧はしていませんが。」

 

「しかし、どのようにナザリックに対処したらよいかを教えて貰えないだろうか?」

 

「単純ですよ。

アインズさん以外は無視してしまえば良い。」

 

「どういう事だ?」

 

「これはこのエルグリラでも同じなのですが、ナザリックのアインズさんの配下の者を裏切らせるのは事実上不可能です。

少なくともジルクニフには実現できません。

私でも不可能で、出来るのはかつてのアインズさんの仲間だけでしょう。

逆に言えば、アインズさんの言う事は絶対なのです。

命令を曲解する者は出る可能性はあるとは思いますが、断言された完全な命令は確実に履行されます。」

 

「それはシャンドラド千年王国でもなのか?」

 

「元々のエルグリラの住民であれば絶対ですね。

移民で増えた者達は別ですが。」

 

「それを言い切れる自信がすごいよ。」

 

「そう言う物と認識してください。

見た目はアンデッドでも中身は普通の人ですよ、アインズさんは。

なので、誠意をもって対応すればそれで構わない筈です。

何なら属国になっても酷い事にはならないと思ってもらえれば大丈夫です。」

 

「つまり、他の者はアインズを裏切る事は無い。

そしてアインズは人間のような感覚を持っている、そう言いたいのか?」

 

「人間のような感覚と言うよりも価値観が全く違う、と言った方が良いでしょうか?

あの、ダークエルフの双子もです。

東方諸国と同じかそれ以上ですかね?

人間を餌か何かとしか思っていないと思って貰えれば。」

 

「言いたいことがなんとなく見えてきた。

寧ろアインズが変わり種と言うべきなのだろうな。」

 

「そうでしょうね。

ジルクニフでも、帝国臣民と他国民で命の重さが変わりませんか?

それが極端に作用しているだけですよ。

寧ろ、属国になった方が安全と言うべきかもしれません。

アインズ・ウール・ゴウンの庇護下になるのですから。」

 

「では、安全の為にシャンドラド千年王国もアインズの属国になるのか?」

 

「私はなれませんよ。

これは戦力差と立場の問題です。

こういう言い方をするのは失礼とは思うのですが、ナザリック陣営から見たらバハルス帝国の事を何とも思っていないのですよ。

裏切るなら潰すだけです。

でも、私やシャンドラド千年王国は違う。

対抗出来てしまう。

私がアインズさんと一緒でなければナザリック地下大墳墓に入れない、と言ったのは覚えていますか?」

 

「そう言っていたな。

つまりシルトは、アインズを信用していても配下の化け物たちは信用していない、そう言う訳か。」

 

「そういう事です。

最も、アインズさんは分からないのですが、ナザリックの配下の者達も同じでしょう。

配下の者は私が居ない状態でエルグリラの本当の意味での内部に入る事は間違いなくと止める筈です。」

 

「本当の意味でも内部とはどういう意味だ?」

 

「今から行きましょう。

フールーダさんが帰らなくなりそうで怖いのですが。」

 

「はは、楽しみだよ。」

 

私はバハルス帝国一行を第六階層に招待した。

 

連結の間から扉を開け玉座の間に入っていった。

 

連結の間でもバハルス帝国一行はそこにある彫像や壁画、天井画を驚きの目で見ていた…その神や天使を模した彫像は最終防衛ラインのゴーレムだけれどもな。

 

天井画もデーターを入れ込んだだけなので、もとネタの某大聖堂の方が余程すごいと思うぞ。

 

中央にある階層転移門以外の壁にある四つある扉の内の一つを開けるようにここの領域守護者であるエグゼキューショナーに指示を出すと扉が開いていった。

 

私は花畑の公園以外には見えないその最奥にある玉座に向かった。

 

ナザリックでは守護者やモンスターがお出迎えした筈だけれども、こちらは今、入ってきたもの以外は誰もいない。

 

普段はいるアラン達には退室して隠れて貰っている為だ。

 

私が玉座に座ると、左後ろにアンネが、右後ろにズワースが立った。

 

「ジルクニフ、ここがエルグリラ最奥の玉座の間だけれども、前室の方がそう見えたのかもしれないね。」

 

今は秋であるから春の花が咲き誇っているこの場所は色々な意味で圧巻だと思う。

 

「先ほどの門は転移門では無いな。

どうなっているのだ?」

 

「どのようにここを維持しておるのじゃ?

教えて貰えないじゃろうか。」

 

この二人以外は絶句していたのだけれども…やっぱりフールーダが興奮した。

 

「地表部にある城館は飾りで、こちらが本当の意味での居城、と言うべきかな。

外にあるように見えるけれども実際は完全には作り物だよ。」

 

確かナザリックの扉や内装の装飾に驚いていたようだけれども、こちらは完全に人外の現象だ。

 

アルシェがナザリックの第六階層の端で絶望していたけれどもジルクニフはどう反応するのだろう。

 

「ここは外部ではないのか?」

 

「先ほど通ってきた門の横を触ったら分かりますよ。

結界のように通れなくなっていますから。

この後ろも同じです。」

 

私は玉座から立ち上がると、後ろにある枝垂桜を通り過ぎて外壁に当たる所を叩いて見せた。

 

「ここは、室内だと言うのか?」

 

「結界で作った温室ではないのじゃな?」

 

うん、驚くよね。

 

水着は持って来てはいないよな。

 

海水浴も楽しめるけれども。

 

「ジルクニフ、私から質問しましょう。

アインズ・ウール・ゴウンとナザリックに恐怖を感じて、私やエルグリラに恐怖を感じないというのは可笑しいとは思いませんか?」

 

「それはシルトが人間だからな。

いや、それしか違わないのか。」

 

「そういう事ですよ。

フールーダに、ここがどのように作られ、どうやって維持しているのかを教えることはできませんが、書庫に入る事を許可します。

ああ、禁書は許可できません、ですけれども、第7階位魔法にどのような物があるのかを知るだけでも全然違うと思います。

持ち出し不可のアイテムの閲覧も許可しますよ。」

 

「何ですと~、本当に宜しいのですかな。」

 

「ここにある他の施設も案内しますね。」

 

私はそう言うと、そのままバハルス帝国御一行を通り過ぎ、入って来た扉を開けて連結の間に入っていった。

 

実際には奥にも隠し扉?と言って良いのか事実上、私が入ってくる専用の扉があるのだけれども、そちらは使わないし見せる事も無い。

 

最も、どこの王宮の謁見の間も王族が出入りする出入口を使わせる事は無いのだけれども。

 

夏、冬、秋のエリアを案内して秋のエリアにある資料室にフールーダを監視…用件伺いの者と残して夏のエリアのテラスにやってきた。

 

「ジルクニフが良ければ泊っていくかい?」

 

「仕事が山積みになりそうなのは怖いから遠慮しておくよ。」

 

「フールーダが帰るのかな?」

 

「じいは適当な所で帰してくれないかな。」

 

「フールーダは皇帝でもどうにもなりませんか?」

 

「ああなったらどうにもならないよ。」

 

「夕食は、皇帝陛下にこのような物で申し訳ないのですけれども、海鮮バーベキューです。」

 

塩の海が無いのだから食べた事がない食材だらけになる筈だ。

 

ノーアトゥーンにいたような巨大な魚は流石にいないけどね。

 

「帝都では新鮮な海の魚は食べられないから十分だよ。」

 

海鮮バーベキューと言っても皇帝やら国王などと言う人が自分で焼く事は無い。

 

メイドや執事が目の前で焼いた物を食べる形式になる。

 

同じものを四騎士を始めとした護衛や付いてきた文官にもふるまう事になっているのだが…四騎士は食べないのか?

 

「四騎士の皆さんは食べないのですか?」

 

「私達は護衛ですので。

アンネさんとズワースさんも座っていませんが。」

 

「文官の方々は座っていますが?」

 

「シャンドラド千年王国の文官と同じ席ですのであれは仕事ではありませんか?」

 

「立ち食いでも良いので食事を楽しんでくださいね。

暑いようでしたら軽装を用意しますけれども。」

 

あの黒い鎧で夏の気候である。

 

夕飯にした理由は分かって貰えると思う。

 

「お気遣いありがとうございます。

ですが大丈夫です。」

 

そこから、いかにも南国、と言う訳で、ファイアーダンスやフラダンス、タヒチダンスなどを鑑賞しながら食事をとった。

 

この場所に相応しいと思って執事やメイドが踊れる設定にしておいて良かったよ。

 

私の勝手な思い込みなので、こちらの風俗とは一致していないだろうけれどもな。

 

食事が終わり

 

「楽しんでくれたようで幸いです。

格式ばった晩餐会よりもこのような物の方がストレス発散になったのでは?」

 

「確かにな。

ここは本当に別世界だよ。」

 

「私はここで、のんびり暮らすのが夢なのですけれどもね。

現実は中々そうはいかないので。」

 

「シルトもアインズも圧倒的強者なのになんだろうな、この差は。」

 

「でも実際に恐ろしいのは普段おとなしい人とも言いますよ。

次回はロクシーさんでも連れて休暇として来てくださいね。」

 

バハルス帝国一行は一人を残して転移魔法で帰国した…フールータは、実に十日間も居座った…流石に限界を超えているので皇帝からの呼び出しで帰っていったが…

 

あの爺さんを若返らせたらどうなるのだろうか?

 

流石に蘇生魔法よりもやばい魔法なので使う気になれなかったのだが。

 

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