もう一つのギルド   作:mshr

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閑話 二人の女性

~~~とある王女~~~

 

私は一瞬悩んだ。

 

どちらの勢力が上なのだろうかと。

 

シャンドラド千年王国は私の身柄を欲していたが、何故欲しているのかが良く分からなかった。

 

要求はクライムと私でシャンドラド千年王国の首都で隠居しろと言う物だった。

 

ただそれだけだった。

 

それ自体は大変に興味がある話だったけれども、次に来た話はさらに興味をそそるものだった。

 

クライムを馬鹿にしたやつを皆殺しにできる話だったからだ。

 

更には永劫の時をクライムと過ごせる。

 

結局、後者は無理だった。

 

ゲヘナでシャンドラド千年王国に援軍要請をしたら、シルト陛下が直々に戦いに出てくるとは思わなかった、しかもその強さは圧倒的としか言いようがなかった。

 

隠しているようだったけれども、デミウルゴスと言う悪魔も、モモンも問題なく倒せる筈だと理解できてしまった。

 

八本指とのつながりがある者を知っている娼婦の処理にも失敗した。

 

情報を流した事で、繋がりを隠そうとした貴族の送った暗殺者どころか、ナザリックの暗殺部隊も問題なく無傷で退けてしまったのだ。

 

シャンドラド側の護衛が張り付いていたのは明白だった。

 

その護衛は、戦闘の余波だけでも傷つき、最悪死にかねない一般人に過ぎない娼婦たちを無傷で守り切ってしまったのだ。

 

アレクと言う吸血鬼とデミウルゴスと言う悪魔は同じ程度の存在に思えたが、用意できる駒の数が間違いなくシャンドラド側の方が多くそして強い事を如実に示してきた。

 

この二つの出来事は、私がデミウルゴスと言う悪魔とこっそりつながった事を知っているとの脅しなのだろう。

 

監視の目はごまかしたはずなのに故分かった?

 

全く理解できなかった。

 

シャンドラド千年王国に踊らされたバルブロお兄様によって、私の婚姻話が進んでいった。

 

シャンドラド千年王国エルグリラ。

 

お茶会で城壁から一度見て、実際に街を見て回ったラキュースから聞いてはいたけれども、それでも理解の範疇を超えていた。

 

宮殿と思っていた場所が都市長城館と言う名称だった時には一都市だった名残なのだと考えていた。

 

ロ・レンテ城が貧相に思えるほどの内装や調度品だったからだ。

 

しかもメイドや執事をほとんど必要せずに、マジックアイテムで維持していると聞いてどうなっているのか想像が出来なかった。

 

私はここでクライムと住むことになると思っていたら違っていて、全く未知の世界に連れていかれてしまった。

 

完全に人の力で出来る技では無かった。

 

ザナックお兄様に語った事は、完全にアインズ・ウール・ゴウンの情報を手に入れている事を示していた。

 

同盟を結んでいる?

 

では何故、娼婦たちごときの為にナザリックと戦闘を行った?

 

ザナックお兄様にさせたいことは理解できたが…何の意味がある?

 

その上、何故かナザリックの属国になれと言ってくるし意味が分からない。

 

これほどまでに思考が読めず、これほどまでに力をもつ者、ある意味アインズ・ウール・ゴウンよりやばい存在だと理解してしまった。

 

帝国の戦争で、貴族派閥と裏切者をかなりの数を処理した。

 

アインズ・ウール・ゴウンの一回の魔法で12万人が死んだそうだ。

 

正確には5万人を生贄にしてモンスターを召喚し、そのモンスターが7万人を殺したそうだけれども、結果は同じだ。

 

中にはクライムを馬鹿にしたやつの家族もいたからいい気味だ。

 

シャンドラド、ナザリック、双方の監視役や連絡役の対応を考えると、この魔法を超える規模の魔法が存在して、それをシルト陛下は使えて、アインズ・ウール・ゴウンは使えないようだ。

 

美味しい話に乗らずに選択を間違えなかった自分をほめて良いと思う。

 

クライムと結ばれるだけで満足しなければいけないようだ。

 

~~~とある天使~~~

 

ザナック王子がロ・レンテ城に帰還した後、シルト陛下に声をおかけした。

 

「シルト様、ありがとうございます。」

 

「どうしたのだ、いきなり?」

 

「ロ・レンテ城でランボッサ王が発狂寸前になっている時に、私が完全に蘇生不可能と言われたら半狂乱になる自信がありますとおっしゃって頂きました。」

 

「ああ、その事か。

事実だからな。」

 

シルト様は昔、千年王国(ミレニアム)メンバーに揶揄われた時のようにぶっきらぼうにお答えになった。

 

「例えそれでもです。」

 

本当に事実なのだろうか?私だけなのだろうか?

 

「そうか、でもアンネを女性としてどう思っているのかまでは分からない。

ひょっとしたら失って初めて気が付くのかもしれない。

これは別にアンネに限った話ではないのだけれどもな。」

 

今、なんと言われた?

 

私を女性として見ていたのですか?

 

「ええと、女性として、と言われましたか?

てっきりその。」

 

「前も言ったかな?私も性欲は有るし、アンネを始め皆を魅力的とは思っているよ。

でも、どう考えても私達の事を敵と認識している者達をどうにかしないと子供をつくれる環境にはならないよね。

子供を育てると言うよりも、近衛や守護者が妊娠して戦力外になれる状態にないだろう。

だから、今は恋愛とか結婚は考えられない、そう思ってもらえば良い。

モモンガさんがもっと強く言えば話の半分は終わる事なのに。」

 

私だけではないようだ。

 

そこは少し寂しく思う。

 

「半分ですか?」

 

「アーグランド評議国の竜王と直接会っていないからね。

完全には意図が分からない。

現在得られている情報から言うと、ユグドラシルから転移した存在であるとか、ワールドアイテムを持っているとか、そういう理由で竜王と戦争になりかねない。」

 

「確かにそうですね。」

 

「私はエルグリラの平和以外を望んでいないのだけれどもね。」

 

「しかし、エルグリラに引き籠る訳にも参りません。」

 

「分かっているから色々動くはめになる訳だ。」

 

シルト様は悲しい顔をしてそうおっしゃった。

 

シルト様は笑う事が少なくなった。

 

昔のように心の底から笑って欲しい。

 

私はシルト様によって生み出され、シルト様に育てられた、シルト様をお守りする最後の盾。

 

シルト様がそれをお望みにならなくてもこの身が完全に朽ちようともシルト様を守るためにこそある。

 

それでも…少しは期待している自分がいる。

 

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