もう一つのギルド   作:mshr

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第8章3話 聖王国使節団

シャンドラド千年王国ローブル聖王国駐在大使館員の引き上げを決定した。

 

ローブル聖王国がヤルダバオトに襲われたためである。

 

城塞都市カリンシャにヤルダバオトが強襲をかけ、そこで聖王女カルカ・ベサーレスと聖王国最高位神官及び神官団団長ケラルト・カストディオは事実上は亡くなったものと推測された。

 

ヤルダバオト軍、つまり亜人の本軍はまだホバンスに達していないけれども、時間の問題な事は確実である。

 

と、このような状況下で何故か我が国の大使館員を動員しようとした馬鹿が出た…レメディオス・カストディオ聖騎士団長である。

 

報告を受けた私は流石に驚いてしまった。

 

「本当なのか?」

 

「副団長の両名は依頼に来たと思っていたようで、聖騎士団長を止めていたそうですが。」

 

「どう考えたら他国の人間を動員できると思えるのだ?」

 

執務室に報告に来たフェデリーに突っ込みを入れてもしょうがないのは分かっているのだけれども言わずにはいられなかった。

 

「聖王国大使は何と言っているのだ?」

 

「もう平謝りでして。

援軍要請と、せめて一部の人間だけでも転移魔法で退去する際に同行させてもらえないかとお願いしてきました。」

 

まあ、これが当たり前だけれども。

 

「駐在大使に聖騎士団長は、何をどう考えたら他国に入ってそこの人間を勝手に動員できると思ったのかを問いただしてくれ。」

 

大使館の敷地は形式上は他国なのだ。

 

こんな事があれば正式な謝罪と調査を依頼する事になる。

 

聖王国千年王国駐在大使が持ってきた聖騎士団長レメディオスに対する外交官に対する犯罪行為に対する調査結果でこの当たり前の事実を理解していなかったことに驚いてしまった。

 

「つまりだ、貴国の聖騎士団長は、自国にあるから自国、そう認識していたのか?」

 

呼び出したローブル聖王国大使に向かって問いただした。

 

「どうも、そう考えたようです。

本国で国家総動員令が発令されていたらしく、その対象であると思っていたようです。」

 

「そうであっても、他国の人間の帰国を妨げる事は出来ないでしょうし、その資産も接収するとして補償が必要でしょうに。」

 

「軍事的には才覚が有るのですが、政治や外交はからきしダメな方で、カルカ聖王女陛下や姉の最高位神官ケラルト猊下には極めて忠実でして。

要するにそう言ったことを両名に完全に頼り切っていると考えて頂ければ。」

 

ふと、恐ろしい疑問を抱いて私は大使に質問した。

 

「ところで、カルカ・ベサーレス聖王女陛下とケラルト・カストディオ猊下は行方不明のようですが、だとすると誰が現在のローブル聖王国最高責任者代行なのでしょうか?」

 

「他の王族の中で決まれば別ですが、決まる迄は対外的にはレメディオス・カストディオ聖騎士団長閣下になるのではないかと。」

 

「対外的には?」

 

「先ほど申し上げた通り政治や外交はからきしダメな方なので、実際には副団長辺りが代行するのではないかと。

他にも南部貴族が反発する可能性はありますので。

後、死亡が確認された場合は、王族か、王家の血を引く貴族の誰かに決定するまで、と言う事になりますが。」

 

やっぱり。

 

「国の頂点が率先して国民や資産を奪おうとする、と言う事は我が国に対する宣戦布告と取られても仕方ないですよ?」

 

「そう言う訳ではございません。

本当にその辺りの事が分かっていない人でして、現に、副団長が止めた為に未遂と聞いています。

どうかお許しをお願いできませんか?」

 

「まあ、未遂ですし、援軍要請として伺いましょう。

で、相手は難度200超と予想されるヤルダバオトとその軍勢ですが、ローブル聖王国は何を支払っていただけるので?」

 

「友好関係とか、尊敬、畏敬などと言う抽象的なものではないのですよね。

現状では私の一存では何とも。」

 

流石に竜王国の援軍は無償では無い事くらいは知っているのだろう。

 

と言うよりも、国家間で無償で助ける、と言う事は事実上、選択肢はないと言って良い。

 

同盟でも、あくまで自国の利益があるから援軍を出す訳なので。

 

まあ、そのメリットは各国が勝手に検討して同盟などを結ぶ訳なのだけれども。

 

「話になりませんね。」

 

そう言うと、聖王国大使は大使館に帰っていった。

 

結局、聖王国駐在大使と聖王国シャンドラド千年王駐在大使はそれぞれ帰国して、大使館を閉めた。

 

その際に、若干名だけ人員を受け入れた…素質がありそうな子供と養育係だけだけれども。

 

それからしばらくして首都ホバンスを始めとする聖王国北部が陥落した。

 

個人的な事を言うと…さっさとまともな援軍要請しに来いよ。と思った。

 

日に日に増えて行く仕事量に、竜王国とエイヴァーシャー領だけでも大変な事になっているな、と思いながら事態を眺めていた。

 

断っておくけれども、私の仕事なんて報告書を読む、が殆どだぞ。

 

聖王国が援軍を頼める国なんて、事実上二か国しかないのだけれども、エイヴァーシャー大森林に来ても、どこに行けば分からない、と言う深刻な理由で聖騎士団長一行の使節団は原作通りリ・エスティーゼ王国に行ったのだけれども…現在国家再建中でとてもじゃないので、ザナックからも、そして蒼の薔薇からも推薦を受ける形で、シャンドラド千年王国リ・エスティーゼ王国駐在大使館にやってきた。

 

そこからは私の指示通り、使節団一行をエルグリラにご招待した。

 

原作では、アインズ・ウール・ゴウン魔導国は国賓として迎えたと思うけれども、シャンドラド千年王国は国賓としては迎えられない…先にレメディオス使節団長に謝罪をして貰わないと。

 

と言う訳で、都市長城館の一室でレメディオスと会う事になった。

 

「ローブル聖王国レメディオス・カストディオ聖騎士団長です。

シルト・クレーテ・レイ・デ・ミレニアム陛下にはご機嫌麗しく。」

 

「良くは無いけれどもな。」

 

敢えて冷めた口調でレメディオスに答えた。

 

「先日の私の醜態を許していただけないでしょうか?」

 

「貴国の大使からは正式に謝罪を頂いているので国対国としては気にしていないけれども、馬鹿げたことを行った張本人相手ではね。」

 

表情から言って何が問題だったのか、いまでも分かっていないのではないかな?

 

副団長に言われてから謝罪した、と言う感じが見え見えだよ。

 

「ここはどうか許していただけないだろうか?」

 

苦労している副団長が言ってきた。

 

「私個人は構わないのだけれどもね、どうする?」

 

私はフェデリーに聞いてみた。

 

「シルト陛下が構わない、とおっしゃるなら我々としてはことさら問題にしない事にします。」

 

「まあ、と言っても、ただ謝るだけと言う訳にはいけないかな。

貸が一つある事を覚えておいて欲しい。」

 

「ありがとうございます。」

 

だから、何故レメディオスが言わない。

 

このレメディオスは実の所、そこまで嫌いではない。

 

まあ、原作を読んだ時には色々と思う所は有ったよ。

 

カルマ値が高い、と言うのは融通が全く効かないと言うのと大して変わらない。

 

天使だらけのセラフィムの連中は、カルマ値に縛られていたので、例えば自分からPKを挑む、などと言う事が出来なかった。

 

他にもプレイヤーが天使の場合はかなり色々制約が有った事は知識としては知っている。

 

例えば、異種族狩りも、天使は狩れなかったし、天使は異種族狩りですら問答無用で行うとカルマ値が低下していたらしい。

 

彼女は確か200、つまり人間種としては限界まで高いことになる。

 

種族が違えば、もっと高い可能性があると考えると分かる。

 

アンネはどうなっているのか?と思うかもだけれども、NPCである彼女の正義とは私なのだ。

 

私が命令すればどんな酷い事でもしてしまう。

 

この論理を当てはめると、レメディオスの正義とは聖王女カルカ・ベサーレスと聖王国最高位神官及び神官団団長ケラルト・カストディオであると考えればいいと思う。

 

カルカはアンデッドの君主でも柔軟な姿勢を見せていたけれども、カルカが言えば、レメディオスはモモンガさんを邪険に扱う事も無かったと思えば良い。

 

カルマ値が低いと、命令に絶対に愚直に忠実ではなく、命令の穴を探したりや曲解や独自解釈を行ったりするようになる。

 

これはアンネとアレクを比較して感じたことだけれども、この辺りはセバスとデミウルゴスかアルベドを比較してもそう思う。

 

私がレメディオスを嫌いになれない理由は…アンネもそうなりそうだからだ。

 

まあ、だからと言って好きにもなれないが。

 

「シルト陛下、これは人間種全体の危機と考える。

是非お力をお借り出来ないか?」

 

「私は先に手を差し伸べましたよ?」

 

「何時でしょうか?」

 

「私と、カルカ・ベサーレス聖王女陛下との婚姻話です。

彼女と結婚乃至婚約していれば、妻の実家になりますので援軍を出していた事でしょう。」

 

「あの条件は、カルカ陛下が聖王の地位を捨てることになります。

のめるわけがないでしょう。」

 

「ヤルダバオトの難度が200をゆうに超える事、彼らがリ・エスティーゼ王国の南方に撤退したことも大使を通じてローブル聖王国にはお伝えしたはずですが?

我々がエイヴァーシャー大森林を制圧しても彼らの痕跡はなかった。

とすれば、アベリオン丘陵に潜んでいる可能性が高いと思いませんか?

その上でアベリオン丘陵に対する同盟を提案したのです。

あなた方がどう思ったのかは分かりませんが、こちらとしては事前に手を差し伸べたつもりなのですが。」

 

一応、本当の事しか言ってないぞ。

 

アベリオン丘陵に痕 跡(デミウルゴス牧場)を確認してないとは言ってないので。

 

「ヤルダバオトが聖王国を制圧した場合は更に力を付けてさらに脅威度が上がるでしょう。

倒すなら今では無いのですか?

それとも倒す自信がないとか?」

 

「竜王国で、ビーストマンの国に占領された町を奪還した際に、捕えられている人ごと殺しました。

当然、竜女王ドラウディロン・オーリウクルス陛下の御裁可を頂きましたが、他国ではできたとしても私達の判断だけでそのような事は出来ない訳です。

であれば、自国で迎えうつ方が良いと思いませんか?」

 

「お前…陛下は自国民ごとヤルダバオトを攻撃するつもりなのですか?」

 

この辺りがダメなところだな。

 

竜女王は自国民を犠牲にして始原の魔法を使う覚悟を決めていたのに。

 

「積極的にやりたい訳ではありませんよ。

ですが必要と有ればやります。

一人を殺すのをためらって、二人殺される訳にはいけませんので。」

 

「殺されて家族の者はどう思うか考えた事は有るのですか?」

 

「当然納得できないでしょうね。

市民でも兵士でも家族はいるでしょうから、戦争をする以上は仕方がない事かと。

究極的には戦争自体をしない方が良いと考えますが、個人的にしたくなくてもしなくてはいけない時はあるでしょう。

でも、その汚名をかぶる覚悟のない為政者なら、為政者であるべきではないと考えますが。」

 

「陛下は相当な強さであるとリ・エスティーゼ王国では聞いているが、民を守れる自信が無いと言う事か?」

 

「0を目指してはいますがそれは理想論で当然目指しますが完全に0など土台無理でしょう。

現に、守れなかった人に言われても?」

 

流石に不毛な対話と思ったのだろう、副団長が発言してきた。

 

「よろしいでしょうか?

結局、シャンドラド千年王国はローブル聖王国に援軍を出せないのでしょうか?」

 

「条件次第ですよ。

ステラ、我が国の現状を話して貰えないか?」

 

ステラの役職はエルグリラ都市長兼内務大臣だったりする…NPCで内政が一番できるのが彼女なので…超オーバーワークである。

 

「現在、竜王国からの移民を受け入れている関係でかなりの負荷がかかっています。

移民予定者は事実上、我が国の国民ですからその保護の為に竜王国防衛戦に戦力を抽出しています。

また、旧エルフの国を制圧した関係で、エイヴァーシャー大森林にも魔獣駆除のための戦力やアベリオン丘陵からの侵攻に対応する為の戦力が展開しています。

せめて、竜王国の移民が完全に完了しない事にはどうにもなりません。」

 

「何時位になるのですが?」

 

「最短で一年、と言ったところですか?

これは、現在対ビーストマンの戦線で展開している戦力を即座に使用すると言う前提ですので、本来なら休暇と再訓練を必要としますのでかなり無理をする計算です。」

 

この二か所に展開している戦力は全戦力から言ったら1割以下の戦力だけれどもそんなことを知っているのは他にはアインズ・ウール・ゴウン魔導国だけだろう。

 

まあ、本国のアンデッド駆除と道路網や農耕地の開発、維持の方が戦力的には使っているのだけれども。

 

まあ、これでも、最短で2年のモモンを送り込むよりも随分早いぞ。

 

「もう少し何とかなりませんか。」

 

「事実上、自国民になった竜王国民を放置して、ですか?

今なお、ビーストマンの国との戦いは続いているのです。」

 

ステラが冷たく言い放った。

 

「ステラ、予備戦力がいるだろう?」

 

「陛下や近衛の事でしょうか?

シルト陛下が自ら赴くと言う事ですか?

竜王国であればドラウディロン・オーリウクルス竜女王は移民が完了し次第王位を返上してフェンデル総司令と結婚して我が国の重鎮になる事が決定していますのでわかりますが、聖王国に対しての理由が無いのですが?」

 

「レメディオス団長、流石に一国の君主を援軍に出してください、と言うのは無理筋です。」

 

「だが、ゲヘナではシルト陛下自ら赴いたと言うではないか。

出来るのはないですか?」

 

「現在、リ・エスティーゼ王国第三王女のラナーは我が国にいる、と言えば分かって頂けますか?

まあ、援軍の代償はそれだけではないのですが。」

 

暗に代償を要求した。

 

分かって貰えるのかな?

 

「戦後、ローブル聖王国はシャンドラド千年王国に最優遇処置をとるように進言する、それではだめですか?」

 

「それに何のメリットが?

個人的には、貴女との約束は反故にされる可能性が高いと考えています。

そもそも戦後、ローブル聖王国は大量の支援が必要になるのでは?

それも込みで我々に匹敵するメリットを示さなければ無理ではありませんか?」

 

「例えばですけれども、レメディオス聖騎士団長をシャンドラド千年王国の騎士として仕えると言うのではだめでしょうか?」

 

「おい、グスターボ、お前は私を売るのか。」

 

「聞いてみただけで一例ですよ。

で、ローブル聖王国最強のレメディオス聖騎士団長がシルト陛下にお仕えすると言うのはかなりのメリットではありませんか?」

 

「二つの意味で余りメリットを感じられませんね。

私に対する忠誠心が無いのでは?

それに、たいして強くない。」

 

「私が強くないだと?」

 

「現にヤルダバオトに手も足も出なかったのではないですか?

そうだ、エレア、カストディオさんと模擬戦をして貰えないか?」

 

急に話を振られたエレアがあたふたし始めた。

 

「私は神官であって戦士では無いのですよ。

直接的な戦闘では近衛の中では一番弱いですよ。」

 

「だからだよ。

やって貰えるか?」

 

「シルト陛下が言われるのでしたら。」

 

「この、エレアにカストディオさんが勝ったら無料で援軍に行きましょう。

負けたら、戦後、カストディオさんを我が国で仕官してもらった上でこちらからさらに条件を出しますが如何ですか?」

 

「中々にいい条件じゃないか、勝たせてもらうぞ。」

 

「ちょっと団長、勝手に決めないで下さいよ。

で、他の条件とはどんなものでしょうか?」

 

「カルカ・ベサーレスさんとケラルト・カストディオさんも我が国で働いてもらいます。

後は、他に何人か強制的に我が国に来てもらいたいのですが?

ヤルダバオトやその軍勢が持つ財宝やマジックアイテムもでしょうか。

まあ、全て欲しいとまでは言いませんよ。

聖王国由来の物は手を付けないことを約束します。

あと、ヤルダバオト配下の者を調略する事。

思うに無理やり支配下に置いているのではと思いますので。」

 

本音は聖王国民に実験台になって貰いたいのだけれども…法国民よりはましだけれども聖王国民も亜人や異形種を下に見ているからね。

 

多種族国家を運営する身としては、人属優性主義の隣国を変えていく為のテストケースが欲しい訳だ。

 

原作のように別の宗教(アインズ教)を作ってしまうと言うのは本当に一番手っ取り早いのだろうね。

 

「言って良い事と悪いことがあるだろう?」

 

「団長、しかし他には誰なのですか?」

 

「良い話ではないのかな?

生死不明で死んでいるとしたら死者蘇生(レイズデッド)では既に蘇生不可能な二人と、反乱を起こしそうな貴族を何人か人質にとるだけですよ。

復興中に国家が分断するのは嫌でしょう?

後はヤルダバオト由来の物しか要求していない。」

 

「シャンドラド千年王国はそれでメリットはあるのですか?」

 

「あるかどうかを決めるのは我々では?

ステラ、フェデリー、どう思う?」

 

「内政官は不足していますので、その補充でしょうか?」

 

「外交官も不足気味ですな。」

 

「と言う訳だ。」

 

かなり揉めたが、結局、レメディオス団長のサインで契約が行われ、エレアにレメディオスの模擬戦が行われたのだが…普通にエレアが勝利した。

 

聖王国使節団一行は絶句していたけれども、私から見たら当たり前の結果に過ぎない。

 

信仰系魔法職でもレベルが三倍も違うからね…一応、戦士系職も持っているし。

 

エレアが弱いのではなく、周りが強すぎるだけだ。

 

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