もう一つのギルド   作:mshr

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第8章4話 聖王国戦

さて、正式に契約がまとまったので聖王国視察団とパーティーを行った。

 

簡素な立食パーティーにして、私も挨拶をして回った。

 

レメディオスはなんか、ここに来た時のような覇気がなかった…聖王国最強だったのに近衛最弱に敗北したからな。

 

実際、オーバーロードで死霊系魔法詠唱者のオックスも近接でもそれなりに戦える上にステータスではオックスの方が上だからな。

 

だから魔法やスキル無しの訓練では、戦士系を持っているのにエレアの方が敗北する訳だ。

 

戦士系と言っても低レベルの聖戦士系を持っているだけなのだけれどもね。

 

自分で育てておいてこんな言い方もなんだけれども、異常に技量が高いアンネの組んだ訓練を1年もやっていれば、それなりの技量になるし、ステータス自体はレメディオスよりも高いからね、勝って当然なのだけれども。

 

ブレインも既に六光連斬を使えるようになったからね…驚いてしまう。

 

多分、ブレインはレメディオスと互角に戦えると思う。

 

圧倒的に強い相手に揉まれて、格上との戦う方法を模索しているからね。

 

レベルではない強さがある訳だ。

 

無ければ同じLV100ガチプレイヤーの間で強さに差が出る訳が無かった訳で。

 

多分レメディオスはヤルダバオト軍を倒したら、ブレインの相手をしてもらうのが一番いいのだろうね。

 

そんなことを思いながら彼女に声をかけた。

 

「貴女から見てこの国はどう思いますか?」

 

「何とも形容しがたいですね。

人と亜人と異形種までもが同じように暮らしている。

他にもスケリトル・ドラゴンが飛んでいて、使役しているから大丈夫、と言われたが本当なのですか?」

 

スケリトル・ドラゴン…そんなの居たか?

 

誰か下位アンデット召喚でもしたのかな?

 

あれは、飛ぶと言うよりも跳ねるくらいの感覚で、長時間飛べないから空を飛ばしてもあまり意味がない気がするのだけれども?

 

キュアイーリムにゾンビにされたドラゴンを使役化ししたけれども臭いからスケルトンに変えたけれどもあれの事か?

 

大きさが何倍も違うけれども?

 

「空を飛んでいたとするとスケリトル・ドラゴンではなくドラコスケルトンですかね?

ゾンビ化したドラゴンが臭かったので肉をそぎ落としたのですけれども?」

 

ややこしいけれども前者は人骨が組み合わさって竜の形になった物で後者は本物のドラゴンのスケルトンである。

 

難度で行ったら48と90位の差はあるのか?

 

「ドラコスケルトンを使役しているのか?」

 

「でも強さはヤルダバオトの連れていたメイドよりも弱いと思いますけれどもね。

本国では見かけませんが、エイヴァーシャー領ではドラゴンも住人になっていますよ。」

 

「ヤルダバオトと戦わせないのか?」

 

「一方的に殺されるのが落ちです。

一番強くても難度150程度ですよ。」

 

「難度150程度って、十分な強力じゃないのですか?」

 

「ヤルダバオトは難度200以上で、貴女と話している相手も難度200以上ですよ。」

 

多分忘れていたのだろう。

 

そう話すと少し硬直していた。

 

エレアでも難度300だよな…多分。

 

こんな感じで聖騎士たちと話していった。

 

ヤルダバオトの見た目の違いは、高位の悪魔は段階的に容姿を変えると話したり、他にも聖王国で出ていた悪魔の話もしたのだが…カストディオ聖騎士団長に倒せる程度なら十把一絡に倒している筈だと話したらやっぱり絶句された。

 

一番長く話せる状況…つまりは最後に声をかけたのが目つきの悪い女性…ネイア・バラハだ。

 

最後に声をかけたのは、聖王国使節団で一番地位が低いからだ。

 

しかし目つきが悪いな…某巨人の兵士長と互角ではないのか?

 

あちらは本当に元犯罪者だったか?

 

「何か気疲れしていませんか?」

 

「シルト陛下、周りが地位が高い方ばかりなので緊張しています。

 

「メイドや執事も居ますよ。」

 

「彼らは使用人で、私もそのくらいの立場ですから。」

 

「人間の地位と言うのは役割が与えられているだけで、一皮むけたらたいした事は無いのですよ。

実際に私がそうだ。」

 

「でも、ものすごくお強いのでは?」

 

「それって何か関係がありますか?

個人の強さだけでどうにかできるのは、所詮ほんの少しだけですよ。」

 

ネイアはえって顔をした。

 

それに対して私は苦笑しながら答えた。

 

「私一人でどうやって国を統治するのですか?

多くの部下や国民に支えられて統治しているのですよ。

ただ、生きていくのだって自分一人では生きていけない。

場合によっては圧倒的な強者が必要な時もありますが、何も考えていない強者が出来る事と言えば破壊だけ。

違いますかね?」

 

「謁見の際もそうですけれども、色々勉強になりました。」

 

「今夜位はゆっくりしてください。

明日は私どもの転移魔法で一気にリ・エスティーゼ王国の南部国境付近まで移動しますから。」

 

ローブル聖王国に転移しないのは、いきなり亜人軍のど真ん中に転移しかねないから、と言う事にしてある。

 

ネイアと話した、つまり使節団全員と話したことで私は退席した。

 

翌朝、使節団と共にローブル王国国境を目指して馬車の中に居た。

 

馬車には私とアンネ、エレア、そしてなぜかネイアが居た。

 

「シルト千年王陛下のお世話をするように言われました。」

 

「要するに連絡係、と言う事で宜しいのでしょうか?」

 

「そうなります。」

 

とまあ、このような会話が有った訳だけれども…正直、副団長のどちらかが来ると思っていたよ。

 

事前に分かっていたので挨拶の時には驚いていないのだけれどね。

 

エルグリラで何かをして分からない訳がないのだけれども…要求が大きすぎると思ったらしく、かなり罵倒していた。

 

貴女が負けたのでしょうが。

 

この世界の馬は、確実に転移前の世界の馬とは別物だよね。

 

と言うのも、馬の移動距離は50~60KM/日な筈なのに100KM近く移動しそうなのだ。

 

「思ったよりも速いですね。

普通の馬の速度はもっと遅いと思っていました。」

 

ネイアに聞いてみることにした。

 

「軍馬ですから特別な馬です。

それに治癒魔法も使って疲労も抜きますので。」

 

「農耕馬とかの場合はどの程度の速度なのですか?」

 

「歩くのと変わらない程度しか出せないですよ。

馬車ももちませんから。」

 

今、乗っているのはゴーレム馬車なので、この倍の速度でも余裕ではある。

 

けれども踏み固められただけで舗装もされていない訳で速度を出せば乗り心地も悪化してしまう。

 

ジムニー最強、と言いたくなってくるような道だったりする。

 

私たち以外は全て騎乗しているから出せる速度ともいうが。

 

因みにアベリオン丘陵と海の間の道なので、要警戒なのだけれども、実の所、姿を現していないだけでハサンや皐月の配下の者が警戒しているので本物の海を少し堪能していた。

 

淡水、と言うのがどうも解せないけれども、やはり作り物の海とは違って雄大ではある。

 

「聖騎士の皆さんの中に山伏(レンジャー)はいるのですか?

個人的な感覚では斥候が不十分な気がするのですが?」

 

どう見ても周辺偵察が甘い気がしたので聞いてみた。

 

山伏(レンジャー)はいないのですが私は少し心得があるので斥候をしていました。」

 

「ネイアさんはなぜ心得があるのですか?」

 

「父が山伏(レンジャー)で教えて貰いました。

それで知識だけは有るので。」

 

「なるほど、この使節団の中では重要な役目だったのですね。

しかし父の後を追って山伏(レンジャー)になろうとは思わなかったのですか?」

 

「母が聖騎士でして母に憧れました。」

 

……

 

「それでは弓の方が得意なのですね。

こういう場合は外に居た方が役に立つと思うのですが。」

 

「いえ、今は千年王陛下のお相手をすることがお役目ですから。」

 

「そうですか、御面倒をおかけします。

私の相手をしている間はサンプルでこれを使ってみて貰えませんか?」

 

そう言いながら弓を手渡した。

 

「オウバジーンと言います。」

 

ダークドワーフ製の弓なので正直な所、配下に渡すには微妙で自警団なら十分に有効である。

 

見た目は結構派手だ。

 

「このような物を受けるわけにはまいりません。」

 

「私の相手をしている間だけと説明しておいてください。

使い勝手とかを教えてくださいね。

製作者に伝えますから。

合わないようでしたら他の物をお貸ししますので。」

 

「製作された方が居られるのですか?」

 

ネイアが何故か絶句していた。

 

この日は聖王国の城壁跡が見えるところで野営となった。

 

火を使うと目立つので使えないけれども、温かい食事を出すだけならどうとでもなる。

 

ここで野営だと言うので、食事の後で私とアンネはクスタフとオックスと交代でエルグリラに帰還した。

 

執務は待ってはくれないのだ。

 

こんな感じで数日後に彼らが拠点としている洞窟に付いた…

 

一時帰還をしようとしたら、ネイアとグスターボがやってきた。

 

原作の強制力スゲーと思ってしまった。

 

「…と言う作戦ですが、陛下から何かご意見を伺えればと思いますが。」

 

「我が国の作戦ではないのですよ?

私達は援軍です。

私が作戦に口を出して失敗した時に私のせいにされても困るのですよ。

ヤルダバオトとその配下の強力な部下を倒す際に協力する約束では無かったのですか?

ネイアさんはどう思うのですか?」

 

「わ、私ですか?

私のような下っ端が作戦に何かを言うなんて。」

 

「騎士見習いでもどうしてこのような作戦になったのか、どのような問題点があるのかを考えておくのは重要な事ですよ。

将来出世した時や状況によってはこの作戦の場合、一般兵を預かる可能性も有りますよね。」

 

「確かにそうです。」

 

「モンタニェスさんはこの作戦の問題点はどのような物があると思いますか?」

 

分かっていなければびっくりだ。

 

「解放された者が戦力になるのか、食糧は本当にあるのかと言ったところでしょうか?」

 

「他にもあるのですが…では、それをどうにかできる方法はあるのですか?」

 

「…陛下の、シャンドラド千年王国のお力をお借りする事になりそうです。」

 

「でしょうね、事前の話し合いで大量の支援が必要になる、と言ったのはこういう事も想定していたのですよ。

食糧や武器を我が国から転移魔法でもってきたとしても、捕虜が即座に戦力に組み込めるかは未知数です。

後、個人的に作戦以外の問題点を指摘すると、よくこの場所がばれなかったな、と思いますね。」

 

「どういう事でしょうか?」

 

「聖騎士団が騎兵部隊でこういうゲリラ的な活動が出来ないことがよく分かりましたよ。

ネイアさんはどうしてだと思いますか?」

 

「足跡や轍と言った物の隠蔽が出来ていません。

他にも生活している痕跡を残している、と言う所でしょうか?」

 

「凡そあっています。

こういう場合は、戦力は分散しておいてばれた際に全滅しないように手配しておくのはセオリーなのですが。

付け加えると、聖騎士団だけではなく役割別に複数の兵科で集まるべきですね。

冒険者のパーティーがそうであるように。

まあ、今更ですが。」

 

この後も、びっくりするくらいに原作通りに進んでいった。

 

私やアンネの情報を得たいのだろう。

 

かなり本気で挑まれたので、事前に亜人軍を大規模に魔法を使って撃退したことで魔力不足を言い訳にして適当に戦って痛み分けの形で一時後退して、ネイアが活躍して、聖王国軍がかなりボロボロになった所で、亜人軍がやって来て撃退するところまで結局同じだった。

 

違いがあるとすれば、亜人軍は私が編成した者では無くて、エイヴァーシャー大森林から送り込んだ部隊が人質をヤルダバオトの拠点を制圧して救助する事で編成された軍だった事とシャルティア・ブラッドフォールンを正気に戻した位だけれども。

 

まあ、元はデミウルゴスの作戦通りなのだから当然なのかもしれないけれども。

 

戦勝記念パーティーは聖棍棒と頭冠の悪魔(サークレット)の頭を頂いたので印象が悪いと思ったので遠慮しておいた。

 

レメディオス・カストディオ以外の者は、新たに国王になる予定のカスポンド・ベサーレスの選定で選ぶことになっているので一時棚上げである。

 

始めに言っていた通り、反乱を起こしそうな者の人質と言う意味合いが強いので。

 

かくしてヤルダバオトと聖王国の一件は片付いた。

 

 

 

 




オウバジーン(aubergine)=ナス≒那須与一

もっと、細かく書こうとしたのだけれども…原作の流れとほとんど変わらないので…
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