もう一つのギルド   作:mshr

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第9章4話 漆黒聖典との模擬戦

未だに繋がっているナザリックのホットラインでは、大至急かつ最優先でも即座にスレイン法国に戦争を仕掛ける為の準備に手間取っているようだった。

 

問答無用で滅ぼすのならそこまでの時間はかからないのだけれどもな、流石にそんなことをしたら、私に宣戦布告の言い訳を作るだけと理解しているのだろう。

 

一々モモンガさんに念を押した甲斐があったと言うべきか、そんなことをしたら、せっかく属国になったリ・エスティーゼ王国やバハルス帝国他にいい印象を与えない事が分かっているのだろう。

 

現実的には、あの命令以降、ナザリックの密偵がスレイン法国に入ってきている事の確認は取れているから、ほんの数か月命脈が伸びただけかもしれない。

 

その間にどのような対処をするつもりなのかは法国の上層部にゆだねるしかない……と思っていたら、漆黒聖典との模擬戦をお願いされてしまった。

 

LV100の者達の訓練をどうして第二階層の闘技場で行っているのか知っているのか…って知っている訳ないか。

 

そうすると、アンネとクスタフだけになるのか?

 

ミノタウロスのダイダロスも公然と衆目の目に晒したけれども……ミノタウロスを漆黒聖典の訓練相手にするのは問題が発生しそうなのだよね。

 

私は近衛を引き連れて(ハサンは隠れているけれども)スレイン法国の首都シクルサンテクスの訓練場にやってきた。

 

「この度はご足労をかけまして。

ところでそちらは?」

 

流石にオーバーロードは見た目からして疑問に思うよね。

 

「近衛のオックスと言います。

アインズ・ウール・ゴウン魔導王陛下の下位互換ですが似たような強さだと思って貰えれば大丈夫です。」

 

「その為に連れてこられたのですか?」

 

「アインズ・ウール・ゴウン魔導王の実際の強さを知りたいのでしょう?

後、お願いしていた死刑囚の死体や魔獣の死体は用意して頂けましたか?」

 

「あちらにありますが、ところでどのような用途で使用されるのですか?」

 

案内人と一緒にそこに向かった。

 

「見学される方はここにいる人のみで良いのですか?」

 

「構いません。」

 

「アンネ、オックス頼む。」

 

「「はい」」

 

二人は死体を使って能天使(パワー)やデスナイト、魂喰らい(ソウルイーター)を創造していった。

 

その光景を見学人たちがあっけにとられて見ていた。

 

「天使もアンデッドも、このようにして生み出されています。

この方法で生み出したアンデッドや天使は召喚では無いので時間制限がなくなります。

生み出した者の命令には絶対忠実なので安心ですが、余りいい気はしないでしょう?

アインズ・ウール・ゴウン魔導国が属国に死刑囚の引き渡しを求めている理由をご理解いただけたかと。」

 

「カッツェ平野での戦いで死体を回収したのもその為なのか?」

 

「そうなりますね。

一日に生み出す数に限界はありますが、下級アンデッドなら、それこそデスナイトに殺させても生み出せるので間接的なアンデッドも含めると相当数のアンデッドを用意できるはずです。」

 

法国の見学者がごくりとつばを飲み込んだのが見えた。

 

「まだ、攻めてこないのは戦力を用意している段階だからなのか。」

 

「しかし、かなりの数のデスナイトが攻め込んでくる可能性がある訳か。」

 

「シャンドラド千年王国が対抗できるだけの戦力を用意できるのは理解したが、我々はどう対応するのだ。」

 

法国の見学者が色々言い始めた。

 

「彼らがまだ攻めてこないのは他にも理由は有りますが。」

 

一々、私が半ば脅しめいた事を言ったことは言わなくてもいいかな。

 

後、評議国、正確にはツアーが法国以上にモモンガさんの怒りを買っている筈だからそちらも併せて何かの手を打っているからだろう。

 

「他の理由とは?」

 

「内政がパンクしかかっているのではないのですかね。」

 

適当に答えておいた。

 

マイの件もあるのだろうが。

 

「アンデッドが内政と言うのも、実際に確認していても不思議な気分だな。」

 

「ところで、そちらのオックスがアンデッドを生み出せるのは理解できるのだが、アンネ殿は魔法で生み出しているのか?」

 

「スキルです。

アンネは人間では無いので。

人間でも高位の聖職や死霊術師なら、スキルを持てば天使やアンデッドを生み出せるはずですが。」

 

「人間ではないだと?」

 

「と言ってもアンデッドではありませんよ。

ところで、今日はアインズ・ウール・ゴウン魔導王とその側近がどの程度の強さなのかを知る為の模擬戦ではありませんでしたか?

どなたと行うのでしょう?」

 

「とりあえず、モンスターと戦って貰えるか?」

 

「モンスターとですか?

倒しても良いのでしょうか?」

 

「召喚したモンスターなのでかまいません。」

 

一人師団、クアイエッセ・ハゼイア・クインティアの召喚したモンスターだろうな。

 

「承知しました。

だれが行く?

多分、準備運動にもならないだろうけれども。」

 

「魔導王の強さを実感したいなら私が行くべきでしょう。」

 

そう言ってきたのでオックスを出すことにした。

 

10体のモンスターに10回魔法を使うだけで終わってしまった。

 

普通に心臓掌握(グラスプ・ハート)真なる死(トゥルー・デス)どころかもっと低位階の即死魔法でも問題なく効果を発揮していた。

 

スレイン法国側は絶句していたけれども、こちらも召喚したモンスターにも即死魔法が効くと確認できたので良かったよ。

 

「これでも、魔導王本人よりは効きが悪い筈なのですけれども。」

 

「本当なのですか?」

 

「しかも、万が一にも周りに影響が出ないように単体系のみの即死魔法にしていますし。」

 

「次は、彼らと戦って欲しいのですが。」

 

「魔法は適当なところで納めるのが難しいので、武器戦闘のみでお願いします。

因みにそちらの方々なら私達の誰でも一対一なら問題なく倒せますよ。

ですので複数人でお願いします。」

 

何故か怒らせたらしい。

 

四人がかりで出て来たけれども、クスタフにコテンパンにやられてしまった。

 

「訓練用の武器でも、全員破壊するのもどうかだぞ。」

 

私がクスタフに窘めた。

 

「どうやって訓練用の武器で訓練用の武器を破壊した?」

 

「時間乱流が手も足も出ないとは。」

 

「天上天下の暗殺も完全に気付かれていたな。」

 

戦士系統の漆黒聖典の皆さんだよね。

 

ステータス隠蔽を外した方が良かったのかな?

 

敗北した方々が、「少なくとも隊長よりは強い。」とか言っていた。

 

「あ~ら、そんなに強いの。

私とやりましょうか。」

 

明らかに好奇の視線でこちらを見ながらアンティリーネが出てきた。

 

「そうかお嬢ちゃん、別に構わないぞ。」

 

クスタフが勝手に受けようとしていた。

 

「クスタフ、交代だ。」

 

「シルト様、全く問題は有りません。

準備運動にもなっていませんので。

それとも、彼女は強いのですか?」

 

私が止めた理由が理解できていないな。

 

「それなりには強いと思うぞ、多分、エレアと互角くらいじゃないかな。」

 

クスタフが不思議そうな顔で聞いてきた。

 

「確かにそれなりには強そうですが、何故交代するのですか?」

 

「私に勝つのは当たり前みたいに言ってくれて。

で、そのエレアってのは誰なの?」

 

「絶死絶命さん、エレアはここにいる女神官だよ。

回復役だから、そちらの方面ではエキスパートだけれども、直接的な戦闘は近衛では一番弱いよ。

と言っても、自分を回復できるからそれなりに強いけれども。

クスタフ、彼女の望みは自分より強い男の子種だよ。

彼女と結婚したいのならそのままやっていいよ。」

 

そう言うと、私の方を見ていたクスタフがくるりと後ろを見てアンティリーネを見返して言った。

 

「シルト様の言う通り、交代します。」

 

「私じゃ不満なわけ?」

 

相当に不満そうだ。

 

まあ、容姿はそれなりに良いのだけれどもね。

 

その表情を見ると…ちょっと、って思うよ。

 

「我が国には、貴女よりも強い者がそれなりに居るので、強さ以外の基準でも選んでくださいね。

じゃあ、アンネ、適当に相手をしてあげて。」

 

「へ~そうなの。でも私を相手に適当にって、分からせてあげるわ。」

 

武器は練習用だけれども、鎧は風神の鎧だよな。

 

多分、素早さをかなり上げているよな。

 

でもだ、

 

「一回。」

 

アンネがアンティリーネの首に剣を当ててそう言った。

 

「二回…三回。」

 

戦闘を開始する前に、兜をかぶったので表情は完全には分らないが、一回引いたアンティリーネの顔が絶句しているような気がした。

 

気を取り直した感じで、

 

「私を殺した回数と言う訳かしら?

本当に倒せているのかしら?

だったらこれを倒してみて見なさい。

エインヘリヤル。」

 

「そうですか。

第10位階天使召喚(サモン・エンジェル・10th)

 

恒星天の織天使が召喚された。

 

スレイン法国側の全員からあっけにとられた表情が見えた。

 

恒星天の熾天使は隠蔽されていないからね…強さを実感として分かったのだろう。

 

第10位階天使召喚(サモン・エンジェル・10th)

 

とどめ刺すと言わんがばかりに再度召喚魔法を使用した。

 

原動天の熾天使が召喚された…至高天は態と出さないのだろうか?

 

「何故、二体を召喚できる?」

「第10位階だと。」

「熾天使だと、馬鹿な?」

 

腰を抜かすものが続出した…漆黒聖典のメンバーの中ですらだ。

 

エインヘリヤルで作られたアンティリーネが瞬殺されてしまった。

 

まあ、1:3だからね。

 

「どうしますか?

シルト様には殺さないように適当なところ迄、と言われましたが、まだやりますか?」

 

威光の主天使(ドミニオン・オーソリティ)が最高位天使とか言っていたからな。

 

「かつての魔神よりもはるかに強い事と言う事か。」

 

「ちゃんと武器を使えれば。」

 

「The goal of all life is deathでも使えば勝てるとでも。

それでは私を殺せませんよ。

と言うか、でなければどうやってアインズ・ウール・ゴウン魔導王と戦うのですか?」

 

スレイン法国とアンティリーネに二つヒントをあげたような物だけれども気が付いたのかな?

 

「エリンへリアルで二体出しても、私はもっと天使を召喚するだけですから。」

 

彼女が召喚して運用できる天使が二体では済まない事も教えていた。

 

「何故知っているの?

これで、まだ本気ではないの……」

 

流石にアンティリーネも折れて敗北を認めた。

 

「貴女が、シャンドラド千年王国では最強なのかしら?」

 

「魔法もスキルも使用しなければ、と言う条件付きなら私でしょうね。」

 

「使ったら、もっと強い人がいるの?」

 

アンネは一回私の方を見て再度アンティリーネの方を見た。

 

「私がスキルや魔法無しで最強であり続けられるのかは分かりませんが、少なくともシルト陛下を守る、この一点だけはどこの誰にも負ける気はしません。」

 

「シルト陛下は貴女よりも強いのかしら?」

 

「近づけば私が勝てる可能性があるのではないですかね?

シルト陛下は魔法詠唱者(マジックキャスター)ですから。

ですが、私達が誰も近づかせませんが。」

 

「勝てる可能性がある?」

 

「訓練なら、ですが。

接近戦でも魔法を使用して本気で戦うなら私が負けますので。」

 

そんな事は無いんじゃないかな?

 

どう考えても過剰評価だ。

 

大量に攻撃魔法を使っても、イージス(不壊の盾)で無効化されるのがおちな気がするし。

 

範囲攻撃魔法で自分毎攻撃するしかないので無いかな…私なら、装備を知っているから潰せていない弱点属性を知っている訳で、それの完全耐性になるアイテムを付けてどうにかなるのか?

 

最も、これは反則だよな。

 

まあ、一々口出しする事ではないし放置する事にした。

 

「つまり、シャンドラド千年王国で最強なのはシルト陛下って事で良いのかしら?」

 

「それは間違いありません。」

 

アンネはきっぱりと言い切り、私の周辺にいた者達も首を縦に振っていた。

 

どうしたものか、嫌な予感しかしないので反論する事にした。

 

「これは主君を立てているだけで、私はアイテム頼みだからそんなことは全然ないから。」

 

立ち上がり、兜を脱いだアンティリーネが獲物を狙うような目つきで私の方を見た。

 

「どう見ても謙遜しているだけよね。

良いわ、もし魔導国が戦争を仕掛けてきたら、私は千年王国に負けてあげるわ。」

 

私を狙っている女性が五人に増えた気がしてならない。

 

当事者で話し合って決めて貰うしかないな。

 

うん、そうしよう。

 

一夫多妻制に抵抗感しかないのだけれども…嫁さん問題は未来に丸投げしておくことにした。

 

「ところで、The goal of all life is deathを破る方法ってどのような物なのかしら。」

 

「こちらのオックスが使えるので教えて差し上げたら。」

 

そう、あっさりと言うと、スレイン法国の人達が絶句していた。

 

「発動までの間に蘇生アイテムを装備しておくか使用する、または蘇生魔法を使えば即死から逃れられますよ。

隊長は蘇生魔法を習得しているので、12秒間に使われたらそこまでです。」

 

「そんな欠点があったとは知らなかったわ?」

 

相手を確実に殺す、と思われていた攻撃方法が実は無敵では無かったと知って唖然としていた。

 

「アンネ近衛隊長は人間では無いと言っていましたが、それでしたらどのような種族なのでしょうか?」

 

スレイン法国から質問がやってきた。

 

「アンネ、出して。」

 

「わかりました。」

 

アンネが天使の輪(エンジェル・ハイロゥ)と三対の翼を出した。

 

「「天使だったのか?」」

 

膝をついて手を合わせながらそう言っていた。

 

スレイン法国の人から見たら、天使は崇めるものだからね。

 

「アンネ、改めて自己紹介を。」

 

「私はパラスアテナ(戦いの女神)、神の右座にして最も近き者。

アンネ・レンブラント。」

 

アンネが言うと、本当に聞こえるから怖い。

 

問題は…その神とやらは私なのだよな…良いのかそれで。

 

かくして、スレイン法国の南半分をインチキ戦争をして併合する事が決まってしまった。

 

国宝なども殆ど全て南部に持ち出しである。

 

アンネは偉大なり。とでも言っておこう。

 

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