もう一つのギルド   作:mshr

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閑話 クレマンティーヌ

私はクレマンティーヌ。

 

洗礼名も家名もとっくに捨てた。

 

私が可笑しくなったのはなぜなのだろう?

 

弱い頃に陵辱を受けた?

 

単に訓練でボコボコにされただけだ。

 

熱せられた洋梨で拷問を受けた

 

そんなのは嘘だ。

 

それをしたのは私だ。

 

友人の死を目撃した?

 

朝まで隣に居て一緒に飯を食っていたやつが夜にはいない。

 

そんなのは軍に居たらよくある事だ。

 

優秀な兄が居てどれだけ頑張っても誰も認めてくれなかった。

 

これは本当だけれども、それだけでここまで狂った訳ではない。

 

強くなって、聖典に入って、部隊で一番強くなって、殺しまくって…正義の為にやっている、自分が一番強いなんて思って増長する奴は私以外にもいっぱいいる。

 

漆黒聖典に居る奴なんて半分はそうだ。

 

まあ、そんな奴は確実に思い知らされるのだけれども…そう、この世にはどう逆立ちしたって勝てない、人外の英雄に領域に踏み越えてもどうにもならない存在がいるって。

 

そうしてみんな矯正させられる。

 

漆黒聖典か国の上層部にでもならないと噂でしか知らない神人と言う奴に。

 

第一席次はまあ、何とか想像がつくレベルだけれども、番外席次、アンティリーネ・ヘラン・フーシェは完全に化け物だ。

 

絶死絶命の異名は伊達ではない。

 

彼女が本気で戦った相手は全員死んでいるって言うのは嘘じゃない。

 

彼女に勝てる存在なんてこの世に居たとして、スレイン法国の守り神、スルシャーナの従属神、ルージュと真なる竜王達以外には想像できなかった。

 

まあ、こうして一回は矯正されて法国と人間種の為に戦って、後ろ暗い事もしたけれども、ある時、ズーラーノーンと戦った時に一つの真実を知ってしまった。

 

人間種は劣等種に過ぎなくて、六大神とよばれる者は、実は神なんかではない。

 

忌み嫌ってきた八欲王と同じ存在で、闇の神、スルシャーナは強大なアンデッドに過ぎないと。

 

同じ強大なアンデッドなら、今、存在している方が本当は神で正しいのじゃない?

 

か弱い人間は闇の神の御許に送るのが正しいんじゃない?

 

だから、ズーラーノーンに入って隙を見て巫女姫から叡者の額冠を奪ってやった。

 

私よりも強い奴なんて早々いないし、互角の奴だって数えられるくらいしかいない…少なくとも人間では。

 

そんなのは相手をしなければいい。

 

自分が強いと思っているか弱い奴の鼻柱を折り、いたぶるのは楽しかった。

 

番外席次の気持ちが分かった。

 

私をいたぶった時はさぞかし気分が良かったのだろ~ね。

 

その後、まさか盟主並みの化け物に出くわすとは思わなかった。

 

後で、あれは魔導王だと知った。

 

急に出てきたアダマンタイト級冒険者モモンが魔導王だと知っているだけで追われる身になる。

 

その事を知った時には千年王国の首都、エルグリラから別の意味で出られなくなっていたけれども。

 

エ・ランテルで死んだあと、ズーラーノーンの別の高弟に蘇生されて、帝国で潜伏しながらズーラーノーンの下部組織の管理をしていたら奴らはやってきた。

 

昔、番外席次に叩き潰された時の事を彷彿させる強さだった。

 

魔法詠唱者(マジックキャスター)で魔法を使わなければ大して強くない、そう言っていた千年王陛下にも魔法無しで私は負けた。

 

私は元漆黒聖典第九席次、疾風走破だぞ。

 

蘇生魔法で弱体化しているからってなんで私より速いんだ。

 

魔導王は文字通りの人外だからまだわかるけれども、人間の魔法詠唱者(マジックキャスター)に勝てないって可笑しいだろう。

 

笑えない事に、エルグリラには番外席次位の強さの奴がごろごろしていた。

 

私を帝国でボコボコにした近衛隊長はその中でも別格だったけれども。

 

法国も番外席次一人で、法国軍全軍よりも強いと言っていたけれども、千年王国でも正面から戦ったら千年王陛下一人で、残りの全てに勝てると聞いた時は流石ににわかに信じられなかった。

 

番外席次100名以上よりも強いって可笑しいだろう。

 

流石に主君を持ち上げすぎだと思ったら、この街を丸ごと破壊できる魔法を使える上、本来、使える者も一日一回程度しか使えないその魔法を連射できるからどうにもならないらしい。

 

千年王陛下一人で、世界を完全破壊できるって聞いた時には、もう何だろう、すべてがどうでも良くなった。

 

私の知っている世界って本当にちっぽけなんだ…もう、逃げられないし逃げる気力もない。

 

強者だと思っていた私も、私がいたぶってきた奴も、その辺の市民も、この国の化け物どもから見たら同じ弱者なのだから。

 

自暴自棄になった私は知っている事を洗いざらいぶちまける事にした。

 

何故か千年王陛下は少し困ったような感じだったけれども、その理由は後で分かったけれども、私の情報は魔導国と法国やツアーが戦争になる情報だったからと知った時は、どうして?と疑問に思ってしまったが。

 

私の情報が重要情報だったので私は生かしておく、と言う判断になった。

 

同じ時に捕まったカジットは色々魔法やスキルの実験台となって廃人になってしまった事を考えたら私は幸運なのだろう。

 

私はその後、自警団の教育係になった…教育係と言って良いのか自警団の強さの判断基準にされたと言うべきなのか?

 

要するに、この国以外では私が強者なのだから、私に勝てるのなら国の外で仕事をしても大丈夫だろう、と言う物差しにされたのだ。

 

その後、教育する相手に元竜王国の人達が加わり、ブレインやレメディオスまで教師役に加わってしまった。

 

こうした日々を過ごしたら、ある日、シルト千年王陛下に呼ばれた。

 

「お前の知っている情報を魔導王に話して欲しい。

本当のことを言えば私がその身を保証する。

最初に洗脳のアイテム、次に神人の事。

これ以外は話さなくても良いから。」

 

「魔導王に引き渡す、とかではないですよね?」

 

「そんな事をして私に何のメリットが?」

 

「ではなぜ今となって?」

 

「クレマンティーヌ、お前だけしか証拠がないなら本当かどうかも分からないだろう?

別枠で証拠もつかんだから教えるだけだ。」

 

「なぜ、魔導王に教えるのですか?」

 

「魔導国に開戦理由を与えたくない、と言うのが本音だよ。

お前が話せば、お前を確保しなかった魔導王が悪い、と言う言い訳が出来るから。」

 

「本当なのでしょうね。」

 

「別に引き渡しても良いのだが?」

 

「いえ、やめてくださいよ、疑っていないです?」

 

正直、この時はマジで怖かった。

 

千年王陛下の側近からも千年王陛下のお言葉を疑うのか?と言う圧もものすごかった。

 

それでも、聞いておきたいくらい、魔導王の近くに行くのは嫌だった。

 

その後、魔導王の元に行ったらしいのだけれども覚えていない。

 

何でも記憶を弄って消したらしいのだ。

 

知っていてもろくなことが無い、との判断からだ。

 

但し、千年王陛下のお言葉を疑った事への罰は受けた…魔法の的にされたのだ。

 

多くの者を殺してきたので一々覚えていないけれども、流石にこの女の事は知っていた。

 

私が最後に殺した女だからだ…なんでも蘇生したらしい。

 

彼女が許してくれたから一回だけで済んだけれども、死ぬかと思った。

 

その後、スレイン法国は千年王国と魔導国と戦争になって二つに分断されて滅んだ。

 

そして…六色聖典の内、五色が千年王国に捕縛されてやってきた…

 

番外や隊長、兄貴にボコボコにされたのは言うまでも無い…既に身の程を知って改心しているのに。

 




第10章は少し間が開くかもしれません。
申し訳ありません


第4章の頃は20話くらい先行していたのですが、第9章は既にギリギリになっていました。

第10章も6話までは書いていますので完結は確実にさせます。(6/27現在)
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