第10章1話 評議国からの呼び出し
アーグランド評議国大使の面会があった。
評議国の大使だけれども、彼はリザードマンで、随伴員もオーガやオーク、ゴブリンやらで人間種は一人もいないが、エルグリラでは全然目立っていない。
こちらから送った大使館員も同じような種族構成ではある。
リ・エスティーゼ王国に駐屯していた評議国大使は人間だったよな?と全く人間種がいない訳ではないのだなと思ったけれども。
その大使から書簡を頂いた
「…つまり、私に評議国に訪問して欲しい、そういう事でしょうか?」
「そうです、我が国の評議員がシルト陛下にお話を伺いたいことが有りまして。」
何を聞きたいのか悩んでしまった。
心当たりが多すぎるのだ…。
そして聞き返した。
「十三英雄の白金、リク・アガネイアさんに来てもらっても良いのですよ。
本体は流石に来にくいでしょうから。」
と、カマをかけてみた。
「リク?いったい誰の事でしょう?
シルト陛下には我が国の評議会に出席して頂きたいのです。」
まあ、偽名だからね。
「せめて聞きたい内容を先に教えて頂きたいのですが。」
「かなりの数があります。
また盟約を結んでいただきたいのですが?」
「内容も聞かない事には盟約の件は返答しかねますね。
と言っても極力中立保持ですね。
こちらとしても答弁の用意をしたいので質問内容を聞いておきたいのですが?」
「中立ですか?
ですがスレイン法国の半分の領地を自国領にしましたよね?
聞きたい事の一番はアインズ・ウール・ゴウン魔導王との関係ですが。」
「単なる友人ですよ。
それ以上それ以下の何物でもない。
しかし国家主席たる王と王の関係がよくても国対国は必ずしも仲がいいとは言えないのは何ともですがね。」
「他にも聞きたい事は有るのですが、主にその関係の質問になる筈です。」
「知っていても話さない、と言う選択肢は可能でしょうか?」
近代国家では無いので、黙秘権は多分無いよね。
「話せないような後ろめたいことがあるでしょうか?」
正直、かなり失礼だと思う。
「何事も秘密保持契約や秘密情報がありますから。
少なくとも他国の人間に、何でもかんでも話せ、と言うのは無いかと思いますよ。
逆に評議国議長は何でも教えてくれるのですか?」
「…話せない事は話せない、言いたくない事は言いたくないでも結構です。」
当たり前の事だと思うのだけれども、こういう言い方をしないと認めそうにないのが何とも。
「秘密と言われた事をペラペラしゃべる人を信用しますか?
国民であれば国家の治安維持や安全保障に関する事を政府に隠し立てするのは問題でしょうが、逆に酒場で話すのは問題であると言うのはわかりますよね。」
……
とまあ、あんなこんなでアーグランド評議国の首都、ドラゴンズブレスにやってきた。
人間種がいない事も無いけれども本当に少ない。
人間種以外の者の比率はエルグリラ以上だけれども、かといってエルグリラほどの多種族かと言ったらそうでもない、と言う感じだった。
アンデッドは流石にいなかったし異形種もさほどいる訳では無かった
断っておくと、ユグドラシルではモンスターだったドラゴンもこの世界では異形種だからな。
普通に空を飛んでいるのだ。
後、まあ考えて見たら当然かもしれないけれども、評議会の行われる議事場だけれどもとんでもない大きさで、屋根が無かった。
ドラゴンが永久評議員だからね、場所はいる訳だ。
大きいと言うよりも広いと言った方が正しいけれども。
町並みは基本的には人間種国家と然程違いはない。
然程、と言っているのはゴブリンみたいに小型の種族や、リザードマンのように大型の種族もいるので、建物の大きさに統一感が無い為だ。
報告書で見るのと現実の街を見るのとは違う、と言うべきなのだろうね。
武器屋や服屋の種類の多さは人間種の国とは比較にならない、まあ、この点はエルグリラの方がひどいけれども、
単純にドワーフにとっての両手剣も巨人種から見たら片手剣になるからね…
種族が多いと武器や服の種類も多くなるのは当然だよ。
個人的にアーグランド評議国はアインズ・ウール・ゴウン魔導国とさほど違わないのでは?と思う。
実際に圧倒的な強者によって無理やり共存共生しているなら同じなのだから。
まあ実際には、このドラゴンズブレス以外の街は、ここまで種族の坩堝ではなく、凡そ種族ごとに住む場所が違っていて、種族ごとに評議員を決めてこの評議場で話し合っている、と言うのに近いらしい。
カルネ村のように複数の種族が住む村も有るけれども、やはり居住区は流石に違っているよ。
さて、このアーグランド評議国には他にも疑問がある。
先ず、この国は接している国がリ・エスティーゼ王国しかない。
魔神戦争以降にできたそうだが、どうも元々亜人の国があったらしいのだが、魔神戦争の最終決戦場だったようだ。
ツアーが居なかったら、バハルス帝国とリ・エスティーゼ王国に分裂した国も混乱状態になかったら、人間種に制圧されていてもおかしくない国だったりする。
とは言っても、アベリオン丘陵と違って本当に人間種の国が無かった事だ。
トブの大森林はダークエルフの国が、アゼルリシア山脈ではドワーフの国が有ったので、人間種領域の中で評議国エリアだけが異質なのだ。
更にはここの亜人たちは人間種を襲う、と言う考え方の者がいない。
アベリオン丘陵でもオークや
この国にも冒険者組合がある。
これもおかしな話だ。
冒険者組合の設立にスレイン法国が絡んでいるのに、人間種の国ではないこの評議国に何故あるのか。
実際に、スレイン法国の影響を排除しているエナ多種同盟国には冒険者組合は無いのだから。
この国には実に4チームもアダマンタイト級冒険者がいる。
これもものすごく可笑しい。
全てを確認した訳では無いので絶対ではないが、東方にある西方三大諸国を始め、確認された亜人種の国にアダマンタイト級冒険者クラスの者はいないのだ。
彼らは平均的には確かに人間種より強いのだけれども、とびぬけた強者はいない。
これはかつて八欲王が強者を間引きした為なのでこの状態が普通で、評議国では亜人なのにアダマンタイト級が出ている事が可笑しい。
アダマンタイト級が4パーティーも可笑しすぎる。
リ・エスティーゼ王国 朱の雫、蒼の薔薇
バハルス帝国 銀糸鳥、漣八連
竜王国 クリスタル・ティア、豪炎紅蓮(彼らだけはワーカー)
他にはたったこれだけしかいないのだ。(漆黒は現地人では無いので除外)
因みにスレイン法国はそもそも冒険者組合自体が無かった。
ローブル聖王国もその強さになると半ば強制的に国家戦力に組み込まれるのでアダマンタイト級は全くいない(ほとんどが死んだので、居なかったと言うべきかも?)。
カルサナス都市国家連合も最高がオリハルコンである。
国家戦力を加えて良いなら…って評議国はドラゴンの皆さんが居るので足すのは可笑しいだろう。
他にもあるが、評議国の亜人と、東方の亜人や人間種の近郊に居る亜人はそれぞれ別の存在なのか、それとも八欲王が倒しきれなかったのか、理由を知りたいものだ。
エルグリラに次いでユグドラシルの町のようなドラゴンズブレスの街を散策してオークの主人の飯屋で昼飯を食べた後、評議会議事場に向かった。
予定時間よりも若干早く着くと案内の者がやってきた。
「シルト陛下でしょうか、お待ちしておりました。」
「武器はどうしたら良いのでしょうか?」
預かる、と言われた時用に近衛は安物の武器しか持って来ていない…要するに現地産だ。
「こちらでお預かりします。」
なので、気にする事無く彼に預けた。
そもそもアイテムボックスが有るのだけれどもね…意味あるのかと聞きたいが、普通はアイテムボックスを持っている訳では無いからね。
そうして案内された控室には既にフェデリー率いる外交官とその護衛が既に到着していた。
「シルト陛下、この街は如何でしたか?」
駐在大使が聞いてきた。
「報告書を読んでいたけれども、本当に亜人が多いのだね。
リ・エスティーゼ王国とは国交を結んで交易もしているのだったか?」
「そうですね、実際にこの街に居る人間種のルーツをたどると、交易でこの街に住んでそのまま定住したリ・エスティーゼ王国の者が多いようです。」
「アダマンタイト級冒険者の朱の雫もここまで来ることが有るのだったか。」
「彼らはリ・エスティーゼ王国とアーグランド評議国の間の魔獣を共同で倒していることが多いようですね。
王国と評議国の関係を良好な物に保つことに苦心している節があります。」
一見いい加減そうにみえるアズスも王国の事を考えて行動しているのだな。
原作ではカルサナス都市国家連合に逃げようとしていた人々が多かったけれども、北部を魔導国が抑えていた事を考えると海から評議国経由になっていた筈だからアズスの努力も意味があったのだろう…多分。
ツアーはパワードスーツを他の人に与える事も考えていたよな…複雑だよ。
アズスにパワードスーツを渡したのがツアーの可能性も有るのか。
例えそれでも、殺して別の人に与えるのはないのじゃないかな?
実行していないようだから考えただけで、それを責めるのも筋違いかもしれないけれどもさ。
この点をとってもツアーを今一信用しきれないのだよね。
そもそも、他人を完全に信用するのはどうかだけれども、全く疑わなくても大丈夫な者が居るだけでも私達、NPCと共に転移した転移者は恵まれているのだろう