「我が名において、妻となる、この者達を愛おしみ、健やかなるときも病める時も豊かな時も貧しき時も支えあう事を宣言する。」
何を言っているのだと思うかもしれない。
シャンドラド千年王国、と言うよりもエルグリラの宗教を覚えているだろうか?
神とはギルドメンバーで、最高神は私だ。
ごく一部、一神教徒もいるけれども、その場合の神は私だ。
何れにせよ、この街では私に結婚を誓い私の名で結婚を認められる。
が、その本人の場合はどうなるのか?
その結果が上記の宣言だったりする。
次にアンネが
「神たるシルト様に、地獄の煉獄の底でも、空気すら凍り付く氷塊の中でも、いかなる生物を寄せ付けない毒の底なし沼でも、骨すら残らない強酸の海でも、九曜の世界喰からでも、今までも、永劫の果て、この身が朽ち果てるまで、お傍に居てお守りする事をお誓い申し上げます。」
と私に誓いの言葉を述べたのだが…いや、確かに実際に経験した事実だけれどもさ、何というか重すぎないか?
「神たるシルト様に、その身心のまま、民草の安寧と、エルグリラ、ひいては千年王国の繁栄の為に私の持てる全てを差し出すことを誓います。」
ステラも結婚の宣言としては何かが間違っていると言いたい。
「神たるシルト様、この身を流れる血の一滴、髪の毛の一本に至るまで、すべては尊いシルト様の者。
愛おしむとは誠にもったいなきお言葉。
始めから私は貴方様の者。
私を好きにお使いくださいませ。
それで私は幸せであります。」
皐月も絶対に何かが間違っている
元来のエルグリラ住民は何とも思っていないようだけれども、外から来た者は基本ドン引きである。
例外は、ナザリックの連中(モモンガさんを除く)である。
因みに第二夫人と第三夫人はクジ引きの結果らしい…
「いや、この三人を見習う必要は無いから、自分の言葉で誓って貰えば良いから。」
思わずフォローを入れてしまった。
「わかりました、火、水、土、風、四つの大いなる神々よ、シルト陛下と私が幸せな家庭を作る事を御認め下さい。
その祝福は数多の者達にお与えください。
私は、祝福が無くてもシルト陛下と支えあい、それをなします。
ただただ結婚を御認め下さいますようお願いいたします。」
カルカは聖職だったからな、こういう風になるのか。
「シルト様、貴方は私に光をくれた。
呪いを受け穢れた私があなたの妻になるなどもったいなき事。
ですが妻となるからには貴方をお支えし、貴方と私の何れかが死するとき迄、愛する事を神の名において誓います。」
レイナース・ロックブルズ改め、レイナース・ロックブルズ・ファープリンセス・エル=ニクスが宣言してきた。
あのお茶会の二日後にジルクニフ皇帝とロクシーさんの養女になっていた。
そのあまりの速さに私は絶句してしまった。
こうして外堀を埋めてきたのだ、とんでもない。
「神よ、夫となるシルト陛下を愛おしみ、健やかなるときも病める時も豊かな時も貧しき時も支えあう事を誓います。」
七人の中で唯一、本気で私と結婚を望んでいた訳ではなく、ほぼ自業自得の結果で結婚する事になったラキュースは私の宣言の真似をしてきた。
レイナースが皇帝の養女になったものだから、ラキュースが第六夫人になった。
現地妻四人は身分順である。
なので、いくら神人で元漆黒聖典隊長といっても聖典は特殊部隊なので公式上の身分は平民扱いの彼女が第七夫人となった。
既にスレイン法国が存在しない、と言うのも一つの理由ではある。
「神がいるのなら、シルト陛下と私の間に強い子を望むわ。
私よりも強い子供を。」
内心は全然違う事は知っている。
彼女は法国を愛していたのだ。
だから、相当、魔導王を憎んでいるし、私と結婚する事で、法国民の待遇が良くなる事を期待しての物である事も知っている。
ただ、魔導王を倒すのを、私にではなく自分の子に望んでいるのは歪んでいる、そう評するしかない。
ともあれ、全員の宣言が終了した。
イオランセが、「神たるシルト陛下の名においてこの結婚を認めます。シルト様を手を携えてお支えするよう。」と宣言した。
普通はこの後に夫婦としての心構えを説く説法が有るらしいのだが、何せ今回は私に説法をするのも可笑しい、となり、この宣言となった。
しかもだ、支えあい、でななく、一方的に私を支えるように言っているのは気のせいではない。
ある意味で無茶苦茶な結婚式を終え、ブーケトスになった。
七個も飛ぶし、この後すぐにフェンデルと元竜女王ドラウディロンの結婚式もあるからまだ後一個あるのだが…目を血走らせたサッキュバスとトゥルーヴァンパイアが居る…気のせいと思いたい。
関係が相当悪かった筈なのに何故平然とそこにいる。
しかも、評議国との開戦は明後日だよな。
モモンガさんを確かに招待したけれども、準備は大丈夫なのだろうか?
魔導国と評議国の戦争前に結婚する為に無茶苦茶大至急結婚したのだ。
さて、七個飛んだブーケだけれども、流石にLV100と言うべきだろう。
きっちり二人とも入手していた…と言うよりも投げた瞬間にそこに居た。
魔法でステータスアップ迄していたので本当にドン引きである。
狙われたのはカルカとラキュースである、二人とも腰を抜かしていた…わかるよ、怖かったよね。
三人に手を貸してあげた。
三人なのは間に居たレイナース迄、腰を抜かしたからだ。
LV100の異形種が目の前で口喧嘩とか恐怖しかないだろう。
大急ぎでモモンガさんが止めに来たよ。
その後に披露宴のパーティーを行った。
多分最後の機会だろう、披露宴が外交の舞台なのはどうにもならないと思う。
魔導国と評議国の最後の交渉が行われたのだ。
寧ろその為に開戦前に急いで結婚式を挙げたのだ。
私の最後の悪あがきと言っても良いのかもしれない。
「シルトさんに免じて、ツアーの首までを要求しないだけでも相当に譲歩しているつもりですが。」
「この世界に問題を起こす存在を放置できない、それが議長であるツァインドルクス=ヴァイシオン様の意志です。」
当然交渉は披露宴とは別会場ではある。
「私からも仲裁の提案はしていますよね。
それでだめなら魔導王と評議長の一騎打ちではだめなのですか?」
思わず私はそう言ってしまった。
これなら最小限の被害で済むだろうに。
因みに私は仲裁案としてモモンガさんには
・ツアーの正式な謝罪
・リク及びアケミちゃんさんの遺品(ワールドアイテムを含む)を二人の子供である、マイに譲渡する事。
・マイへの行動の自由
以上の三点で矛を収めて欲しいと提案している。
アケミちゃんさんの敵討ちよりもマイの自由の方が優先順位は高いだろうと何とか説得した。
一方のツアーへは、
・魔導国のこれ以上の侵攻停止
・アンデッドの輸出制限
更に私から
・ワールドエネミーの対処
・竜帝と
を約束している。
個人的には悪い条件では無いと思うのだけれども。
「シルトさんの条件で有れば吞みますが、流石に一騎打ちはちょっと。」
「一騎打ちは吞めませんな。
後、ワールドアイテムの管理は余程の事情が無い限り我らが行う、とのお言葉でした。」
一騎打ちはどちらが死んでも大事だからね。
実際、ツアーを一騎打ちで倒しても、他の竜王の動向が全く読めないので意味がない、と言う事実もモモンガさんが一騎打ちを嫌がる理由ではある。
けれども、私から出した条件をツアーが呑めない理由も返答が返って来ている。
ツアーはモモンガさんを信用していないのだ。
と言うよりもデミウルゴスが色々やりすぎているので、ちゃんとモモンガさんがNPCの手綱を握れているのか疑問視している。
けれども、ナザリックの面々も約束を破れば私も敵にまわす事になる事が分からない程ではあるまいに。
結局は、ツアーは私も色々な意味で信用してはいないのだろう。
私や千年王国の戦力は、双方に条件の履行を強制できるほどの物だと言うのに。
だからこそ、最後の望みをかけてこの結婚式にかこつけて、交渉の場を提供したのだ。
ナザリックの守護者達が何故私の条件を呑んだのか。
私から出た条件を評議国側が断れば、私に後方から刺される事は事実上なくなるからだ。
マモン戦でワールドエネミーや私達とナザリックが余りにも戦力が違う事と、世界征服をするのも面白いかもしれない、とは言ったけれども、千年王国やらワールドエネミーがいる現状では面白い等と言える状況ではない。とやっとモモンガさんが
どう考えても無傷では済まないからね。
世界征服の夢よりもお前たちの安全の方が大切だ。と言ったら、
それでも、ツアーが挑んでくるなら話は別だと言う気持ちもわかる。
「私から出た条件が納得できないと言う事は、私も信用しては頂けない、そう取りますが。」
評議国の大使にそう私は言った。
「そう言う訳ではありません。
一つ目に、マイへの行動の自由ですが制限を付けても宜しいですか?」
「どのような?
当然、行動の自由、とはしていますが、一般的な犯罪行為に関して迄、自由にして良い、などとは考えてはいませんよ。」
他の国ならとにかく、魔導国ならマイの戦闘力を当てにする程でもないからだ。
普通の一般市民、とまでは言わないけれども、アダマンタイト級冒険者相当の自由位を想定している旨は伝えている。
「拠点内、と言えば恐らくシルト陛下は呑まないと思われますので、魔導国の領域範囲内を行動範囲としてもらいたい。
魔導国の配下の者たちも含めてですが。」
「外交使節は別枠で、後、リ・エスティーゼ王国、バハルス帝国、ローブル聖王国、シャンドラド千年王国の範囲も足すのならモモンガさんも呑むのではないかと思いますが。」
そう言った後にモモンガさんの方を見たら頷いていた。
「それは評議長と掛け合ってみましょう。」
実際に無茶な要求では無いからな。
「次に、アケミ・ヤマーのアイテムで呼び出せる魔獣をすべて倒す事。」
「どのようなものが?」
「神竜、
動物園だろうか?
「それは認められない。」
モモンガさんが宣言した。
ようは、アケミちゃんさんのペットだからな。
特に
「神竜はレイドボスでしたっけ?
せめてそれだけでは?」
私は折衷案を出してみた。
「モモンガさん、流石にLV100のレイドボスは私も看過できないですね。」
リクがあけみちゃんさんを殺すことになった元凶ともいえるモンスターだ。
「…仕方がないですね。」
それを告げたらモモンガさんも渋々認めた。
正直、それを排除してもアウラ配下の魔獣達よりも戦力が上の可能性が高いのだけれども。
本当にライトユーザーだったのか?と突っ込みたいラインナップだった。
そう言えば、やまいこズ・フォレスト・フレンズで最強だったっけ。
「それも検討して持ち帰らせて頂きます。」
「次に所有ワールドアイテムとその性能の提示。」
「それは私が却下します。
私も所有するワールドアイテムの情報を外部には教えたくはない。」
「承知いたしました。」
「ところで、評議国のお返事は何時迄に返していただけるので?
その間は開戦を思いとどまるようにモモンガさんにお願いしますが、10年後までにとかふざけた回答は困るのですよ。」
「一月以内に。」
「モモンガさんも了承して頂けますか?」
「シルトさんを敵にまわしたくは有りませんので。」
「私としては極めて常識的な範囲の要求であると思っています。
追加で、ワールドエネミーなどのユグドラシル由来のものへの対処の際は、先ほどの行動範囲外での行動をその都度認めて頂く事、及び他の真なる竜王が我々を攻撃しないよう押さえて貰う事は最低でも要求します。」
「最低でもと言いますと。」
「ワールドエネミーが転移してきている事を知った以上、これ以上のユグドラシル由来の者の転移を止めるための行動をしたいと考えています。
ツアーの願いと一致するのでは?」
「それを行った場合、竜帝や
「他の真なる竜王が我々を攻撃しないようと言う願いが叶えられなかった事になりますので、その者達を倒すまでです。」
と言ったものの竜帝はLV100を超えるのだったよな。
倒せるのか?
そもそも、ワールドエネミー自体がLV100超の強さが有るよな。
まあ、千年王国にも防御力だけなら推定LV120相当を誇る天使が居ると言えば居るが。
「竜帝をあまり刺激して欲しくは無いのですが?」
九曜と竜帝、どちらが強いのか考えてしまう選択ではある。
そもそも、九曜の世界喰いが既に転移している可能性だってある。
そしたら無意味だけれどもな。
とりあえずは一月の時間は稼げたか。
このような中々にきわどい交渉を間に挟み、披露宴は始まった。
七人の嫁、見た目だけなら中々なものだよ。
モモンガさんも受肉化の魔法を使ったので、食事をしてその美味しさに相当感動していた…リアルの食事は悲惨だったからね。
受肉化したモモンガさんの見た目が…日〇聡さんに似ているのだが…私の深層意識に引っ張られたに違いない。
会場では、魔導国宰相アルベドと一緒に居るこの人誰?となっていた。
知られているのは骸骨だからね。
彼は漆黒の英雄、モモンさんと言う事にしておいた。
実際、間違ってもいないし。
今後、幻影魔法を使う時はその容姿でお願いします。
この披露宴でついでに、キーノ・ファスリス・インベルンが私の配下になり、南東部の統括行政官になった事を紹介した。
エナ多種同盟国からの招待客が慌てふためいていたが、まあ、
こうして何とか結婚式は無事に切り抜けた。
その後…魔導国からとあるポーションを輸入する羽目になった