もう一つのギルド   作:mshr

98 / 102
第10章9話 最終話 九曜の世界喰い

あれから、私はアランに慈母(マザー)を探させた。

 

…どうしたらいいのだろう。

 

発見された慈母(マザー)を見てげんなりした。

 

原作者様は竜帝はLV100OVERと言っていたけれども、慈母(マザー)は言及がなかったよな。

 

ツアーの、そもそもダメージが通るとも思えないが、のセリフを思い出した。

 

「シルト様、如何いたしましょう?」

 

「今日はとりあえず見るだけだよ。

竜帝に気付かれないようにするだけでも骨だからね。」

 

「畏まりました。」

 

私達はエルグリラに帰還した。

 

完全に勘違いしていた。

 

慈母(マザー)を運営のようなものだと思ったけれどもある意味正しかった。

 

この世界とは別の次元の存在、そうとも言っていたな。

 

私はモモンガさんに連絡を取った。

 

慈母(マザー)と竜帝を見てきました。」

 

『どうでしたか?』

 

慈母(マザー)ですが、十中八九、九曜の世界喰いです。」

 

『本当なのですか?』

 

「正確には、乗っ取られたと言うべきなのかもしれません。

もしくは変態したのか。

見た目が違いましたから。」

 

『では何故、九曜の世界喰いだと?』

 

敵識別(ディサーンエネミー)の魔法、及び私の百科事典(エンサイクロペディア)にそう記されました。」

 

『…敵識別(ディサーンエネミー)の魔法だけではなく百科事典(エンサイクロペディア)にもですか。』

 

当たり前だけれども、百科事典(エンサイクロペディア)に自動記載されていく名前や外見画像・神話出典データに間違いがある筈がない。

 

『乗っ取られたと判断した理由は何故ですか?』

 

「アウラの件を覚えていますか?

慈母(マザー)の魔法の劣化版を使用した、ツアーはそう言っていました。

結果はアウラが九曜の世界喰いのセリフを話し始めた。」

 

『劣化でない召喚魔法を使用した結果、慈母(マザー)は九曜の世界喰いに乗っ取られた、もしくは浸食された、そう考えたと言う訳ですか。』

 

「その通りです。

おそらく今は攻撃が通りません。

出現前または撤退時のように半ば透き通っていましたから。」

 

『では、やはり止められないのですか?』

 

「そうなりますね。

これは勘ですが、攻撃できるのは100年に一回ではないかと。」

 

『何故そう考えたのですか…ああ、我々と同じような存在の召喚時期なら攻撃できる、そう考えたのですか。』

 

「そうですよ、最も倒せるとも思っていませんが。」

 

モモンガさんはPVPに関する限りデミウルゴスよりも優秀では無いのだろうか。

 

最近そう思うようになってきた。

 

『この世界で倒せるようになっていると良いのですけれども。』

 

「仕様が同じなら何とか撃退なら可能でしょう。

最悪、暴れるようなことが有ったらどうにかします。」

 

『シルトさんに頼るようで申し訳ありません。

この情報は守護者達にも伝えておきます。』

 

「よろしくお願いいたします。」

 

私はモモンガさんとの伝言(メッセージ)を切った。

 

こちらも全ての配下に伝えておく必要があるな。

 

後、馬鹿な真似をしないようにしないと。

 

そう思うと、階層守護者を集めた。

 

「アンネとハサンと私でワールドエネミー、九曜の世界喰いの存在を確認した。

現状、休眠状態にあると同時にダメージを与えられる状態でもない。

正直、活動を再開した場合、倒せるとは思えないけれども、活動を停止させるまたは撤退させる必要はある。

その時の為に戦力の温存と拡充を行いたいが、馬鹿な真似は絶対にしないように。」

 

「馬鹿な真似ですか?」

 

皐月がそう聞いてきた。

 

自分が馬鹿だとでも思っているのだろうか?

 

正直アンネが一番やばい。

 

そう思っている。

 

「それは、下手に刺激をするな、そう言う意味でしょうか?」

 

ステラが言ってきた。

 

慈母(マザー)には刺激できないとは思うけれども、刺激するとしたら守っている竜帝だな。

そちらの問題も確かに有るけれども、正確には活動を確認した場合だけれどもな。

アランは分かるか?」

 

「あのアイテムは使うな、と言う事でしょうか。」

 

「戦闘力が強化されるのは良いけれども、自我を失う可能性が高いからな。

それに元に戻れない。」

 

大罪の一体を倒した関係で、使用した者をレイドボス化するアイテムが有る。

 

ワールドチャンピオン・ムスペルヘイムがかつて使用した物と同じ、大罪の実だ。

 

はっきり言って、ワールドエネミー、強欲のマモンの弱化版になるだけだかな。

 

本来の使い方は敵に使用して再度、劣化版大罪のマモンと戦うのが正解だよ。

 

無茶苦茶ドロップアイテムが美味しかった上、大罪の実も再入手だったからね。

 

普通ならあまりにも強いのでこんな事もしない気がするけれども…弱体化したと言っても30名パーティーが普通に壊滅するからね。

 

傭兵モンスターに使用して、本当かどうかは知らないけれどもそのエリアを封鎖の上守護者にしたギルドもあると聞いているが、まあ、そう言う使い方も有ると思うよな。

 

因みにこの話には落ちが有って、その拠点は維持費が急増してユグドラシル金貨を消費しきって崩壊したそうだ。

 

対、ワールドエネミーの訓練には使えるのか?

 

最悪、私が撃破すれば良いだけだし…よく考えたら再度、大罪の実がドロップするかもわからないよな。

 

一応、現在二個あるから確認の為に使っても良いのか?

 

取り合えず、今いる全LV100の傭兵NPCを不老不死化した上で可能な限りの訓練と…出来る限り神人を増やした上で約100年後を待った。

 

神人の増やし方は…わかるよね。

 

私達は慈母(マザー)の元に来ていた。

 

100年かけて徐々に具現化してくる慈母(マザー)

 

この世界には軍団(レギオン)編成の縛りも消えている事は他のワールドエネミーで確認したので、限界まで戦力をつぎ込む形になった。

 

「いよいよですね。」

 

「どうなるのでしょうか?」

 

どうでも良いが、魔導国に傭兵モンスターではない黒髪のインキュバスとサッキュバスだけで50人以上いるのは気のせいだと思いたかった。

 

 

竜帝が言うには慈母(マザー)を止めようとしてもどうにもできない、と言ってはいたけれども。

 

慈母(マザー)が目を覚まし、首を持ち上げると

 

「O, wonder, how many goodly creatures e there here! How beauteous mankind is! O brave new world, that has such people in'it!」(まあ、不思議!ここにはなんて多くのすてきな人たちがいることでしょう!人間ってなんて美しいのでしょう!ああ、すばらしき新世界、こんなに人がいるなんて》

 

間違いなく、九曜の世界喰いのセリフだった。

 

そのセリフと共に、何かしらの力を発生したのを感じた。

 

上空に向かってブレスのように何かを吐き出したような恰好をしたのだ。

 

ここには来ていないアランに伝言(メッセージ)を送った。

 

慈母(マザー)が何かをした。

何をしたのかは分からないがお前は分かるのか?」

 

『世界の何か所かで具現化していない地形の変化及び転移者と思しき者を確認しました。』

 

「つまりは?」

 

『次のユグドラシルからの転移と考えられます。

おそらく具現化した段階で転移が完了するのだと思われます。』

 

「分かった。」

 

メッセージを切りモモンガさんに話しかけた。

 

「モモンガさん、次の転移が行われたようです。」

 

「シルトさん、つまり我々は九曜の世界喰いの力によって転移したのでしょうか?」

 

「一つの仮説を言って良いでしょうか?」

 

「何となくは私もわかりますが私が答えましょうか?」

 

「一斉に答え合わせと行きましょうか?」

 

「「慈母(マザー)は九曜の世界喰いが食べた世界を生み出して(吐き出して)いる。」」

 

「シルトさん、吐き出すですか?」

 

「私の口が悪かったですね。」

 

私は苦笑しながら答えた。

 

「アインズ様、どうしてそのようにお考えなのでしょうか?」

 

「アルベド、ユグドラシルで九曜の世界喰いを撃退すると、ダメージ量に応じて世界が広がっていたのだ。」

 

「そんなことが有ったのですか。」

 

「今の現象はその時に似ているのだよ。」

 

「今はダメージを与えておりませんが?」

 

モモンガさんとアルベドの話を聞きながら、そうなのだよね、と同調してしまった。

 

ダメージを与えていないし、他のワールドエネミーを倒したわけでもない。

 

我々の拠点である、エルグリラも、建前上はワールドエネミーに食べられた世界にあった町なのだけれども、これも初のワールドエネミー撃破によって出現したのだよね。

 

まあ、そもそも、データ上のものに過ぎないものがこうして具現化するだけでも十分に可笑しいのだけれども。

 

ふと気になり、私は魔法の矢(マジック・アロー)慈母(マザー)に放った。

 

位階上昇も最強化も抵抗難度強化も何もしていない魔法の矢(マジック・アロー)である。

 

効くとは思っていなかった。

 

この場に居る誰に対しても効果がない筈のその魔法は無効化される事無く慈母(マザー)に当たった。

 

「っは?何故当たる?」

 

慈母(マザー)は私の方を向いて話し始めた。

 

「Yea, all which it inherit, shall dissolve, and, like this insubstantial pageant faded, leave not a rack behind. We are such stuff as dreams are made on; and our little life Is rounded with a sleep.」

(この大地にあるものはすべて、消え去るのだ。そして、今の実体のない見世物が消えたように、あとには雲ひとつ残らない。私たちは、夢を織り成す糸のようなものだ。そのささやかな人生は、眠りによって締めくくられる)

 

「すまない、多分戦闘だ。

ワールドアイテムを持たないものは後退。」

 

私は即座に命令を下した。

 

ナザリック陣営に私に命令権は無いが、彼らも転移魔法で後退を行った。

 

まあ、事前の打ち合わせ通りと言えばそれまでなのだけれども。

 

後退した者達は情報確認の者達で、九曜世界喰いと戦う事は前提ではないからだ。

 

それでも100名近くが残っている。

 

この100年間に双方ともに、どれだけのワールドアイテムを集めたのかが分かる光景だった。

 

全員がすごい勢いでバフをかけまくっていった。

 

動きを止めたい、そう思った私はこれでもか、と言う位に浮遊大機雷(ドリフティング・マスターマイン)を周辺に設置した。

 

「いったん離れろ。」

 

そう命令して範囲内に誰もいないことを確認すると、核爆発(ニュークリアブラスト)を放った。

 

ダメージを期待すると言うよりも、この魔法で発生する数多くのバッドステータスのどれかが効かないかの確認用と言って良い。

 

何せ、見た目は九曜の世界喰いとはまるで違うのだ。

 

効く可能性が無いとは言えない。

 

と同時に、ほぼ無効化されるだろうな、とも思っていた。

 

マーレがすかさず、地割れ(クラック・イン・ザ・グラウンド)を使用した。

 

上から核爆発(ニュークリアブラスト)で抑え込んでいる今なら効く可能性が有るからだ。

 

大地系統は空を飛ぶと意味がないのだよね。

 

浮遊大機雷(ドリフティング・マスターマイン)が炸裂したところから考えて、行動阻害はできなかったようだ。

 

何発もの隕石落下(メテオフォール)がヒットした。

 

こちらも普通にヒットした。

 

何というか、状態異常以外に無効化が無い?

 

このように、私達は攻撃を行い続けたが効いているのにダメージが出ているように感じられなかった。

 

と言うよりも、強烈なレベルで生命力持続回復(リジェネート)されている気がした。

 

埒が明かないな。

 

そう思った私はモモンガさんの基に近づき声をかけた。

 

「最終手段しかないと思います。

私以外の全員がスキルと魔力の7~8割を使用したのでは?」

 

「最初からその予定でしたし。

全員後退。」

 

大顎の竜巻(シャークスサイクロン)慈母(マザー)の動きを止めると私も後退した。

 

理由、一つしかないでしょう。

 

課金アイテムでギルド武器、スタッフ・オブ・ミレニアムを呼び寄せるとキュアイーリム戦以来となる魔法を使用した。

 

魔法最強化(マキシマイズマジック)魔法三重化(トリプレットマジック)大災厄(グランドカタストロフ)をそれこそ有り得ない回数使用した。

 

極大の光の輝きに慈母(マザー)が包まれた。

 

文字通り、一心不乱に敵感知(センス・エネミー)で感知しているそれに向かって使用し続けた。

 

ユグドラシル時代にこの勢いで使ったら、九曜の世界喰いのダメージスコアのトップは流石に私だったと思う。

 

一々数えていないが、軽く、1000発以上の大災厄(グランドカタストロフ)は使用され、これで倒せないのなら流石に倒せない、そう思う程の攻撃だった。

 

不思議な事に、慈母(マザー)は効果範囲から出てこようとしなかった。

 

敵感知(センス・エネミー)の反応が消えたので、今回は撤退を考えて次元封鎖(ディメンジョナル・ロック)は使用せずに、転移遅延(ディレイ・テレポーテーション)なので転移したかもしれない、と思い、生命の精髄(ライフ・エッセンス)を使用したら、何と、反応が有った…

 

マジか?

 

大災厄(グランドカタストロフ)の効果が終わり、膨大な量の砂が落ちて行った。

 

その砂煙が収まると。慈母(マザー)はそこに居た。

 

「But this rough magic I here abjure.」(だが、この荒々しい魔法の力を私は今日限り捨てよう)

 

そう言うと、慈母(マザー)は新たにできた砂漠の上に降り立った。

 

終わったのか?

 

転移遅延(ディレイ・テレポーテーション)に巨大な何かが転移してくる気配を感じた。

 

と言ってもすぐそばでは無くて慈母(マザー)の元にだったが。

 

現れたのは竜帝だった。

 

「この世界の浸食はこれで亡くなった。

と言っても、この世界からいなくなっただけのようだが。」

 

ユグドラシルの時と同じく時空の狭間に撤退しただけなのか?

 

よく見ると慈母(マザー)の雰囲気が変わっていた。

 

敵識別(ディサーンエネミー)を使うと、普通に慈母(マザー)と出てきて、百科事典(エンサイクロペディア)を取り出し読むと、こう書いてあった。

 

この世界そのものと。

 

どういう事だ?

 

「伺いたいのですが、過去に何が有ったのか、本当の事を教えて頂けないのですか?

ツアーからは慈母(マザー)の目的は、世界の完全なる救済、つまり消滅、竜帝であるあなたはその力を手に入れるつもりでいる。

と聞いていましたが。」

 

「あの息子はそんなことを言っていたのかい。

まあ、病原体を除去してくれたお礼に教えよう。

慈母(マザー)は他の世界を見てしまったのだよ。

力なきものが文明と言う物を作る世界を。」

 

「文明?」

 

「だから弱きものに力を与える存在を召喚しようとした。

まあ、お前達だけれども。」

 

「それは表向きの理由、ツアーはそう言っていましたが。」

 

「事実そうだったのだよ。

だが、別の者もこの世界に呼び込んでしまった。

文字通り世界を亡ぼすもの。」

 

「九曜の世界喰いでしょうか。」

 

「お前たちがそう呼ぶものだな。

慈母(マザー)はそれを封じ込めようとした。

100年ほどしか持たないので、その都度再使用する事になったが。」

 

「その再使用の狭間が我々を召喚したと?」

 

「少し違うな、九曜の世界喰いが呑み込んでいて消化できなかった何かがこの世界に吐き出されていった。

慈母(マザー)が見た世界はあれが呑み込んだ世界だった、だから呼び寄せた。

そう私は考えているのだがね。

正しいのかどうかは分からないのだがね。」

 

「貴方はどうにかしようとしなかったのですか?」

 

慈母(マザー)はこの世界そのものだ。

どうにもならない。

それが食われきった時は、この世界が滅ぶ時だよ。」

 

常軌を逸した数の大災厄(グランドカタストロフ)を食らったのにもかかわらず慈母(マザー)が無事な理由が少しは理解できたような気がした。

 

この世界全体から言ったら、たかが知れているのだろうよ。

 

本来ならそれを喰らおうとする九曜から見てもたかが知れているのだろう。

 

だが、一定ダメージで次元の狭間に撤退するのが仕様だった。

 

そう言う事だ。

 

要するに私はこの世界の手術をしたようなものなのだろう。

 

しかし、ツアーもかなり間違えていたよな。

 

と言っても、レイドボスはすべて処理しないと、それを座標としてまた九曜の世界喰いがやって来かねないよな。

 

「何となく状況は理解できました。

ところであなたはユグドラシル由来の者を排除するつもりですか?」

 

「私からは何もする気はないよ。

私に牙をむくと言うのならそれ相応の覚悟をしてもらうけれども。」

 

「ありがとうございます。」

 

私は良い感じで閉めようとした。

 

「シルトさん、話は終わりですか?」

 

「モモンガさん、終わりましたが?」

 

「では言わせてもらいますが、何故、あの時は魔法の矢(マジック・アロー)を使ったのですか?」

 

「いや、何となく…本当に申し訳ない。」

 

「謝って済むような話ではないでしょう…」

 

この後、無茶苦茶モモンガさんに怒られた。

 

当たり前だけれども、エルグリラにもシャンドラド千年王国全体でも私を怒る人なんていない。

 

本当に貴重だよな、そう思った。

 

その後、レイドボスを倒して回り、100年後、新たに転移してくるものは無かった。

 

私とモモンガさんは人生に飽きが来るまでの悠久の時をこの世界で過ごした。

 

と言っても多分千年くらい。

 

他のプレイヤーたちと同じく、蘇生できる状態で私は眠りについた。

 

その後の歴史がどうなっていくのかについては私は知らない。

 

まあ、お互いの子孫がもめそうになったら起こされるのだろうな。

 




奇麗に完結させるって本当に難しい、書いてみて本当にそう思いました。

多分これが三つある最終回でこれがトゥルーエンドだと思う…少なくともアルベドにとっては。

本篇はこれで完結となります。

後、閑話が三話あります。

因みに、九曜のセリフは全てシェイクスピアの戯曲テンペストのものです。理由はオバマス。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。