わたしをあの荒れ地から拾い上げた男性は、どうやらわたしよりもこの世界についてずっと詳しいようだった。
わたしなりに色々と考えを巡らせながら聖杯戦争を生き抜いてきたつもりだったが、自惚れだったのだろうか。彼はわたしよりも深い場所からSE.RA.PHを見ていたのだろう、きっと。
聖杯戦争のことは覚えている。わたしは参加したすべての
ひとりで手にした勝利ではない。あの死と隣り合わせの生活の中で味方でいてくれた友が、強い信念と共に駆け抜けていったライバルが、何よりもすべての時間でわたしの最も大切なサーヴァントがいた。
サーヴァントのこと──
岸波白野にとって何にも代え難いことなのに──そこだけはさっぱり記憶にない。
この事実はわたしを焦らせた。だって、何があっても忘れたりなんてしないし、死んでも忘れたりしないだろうと思っていた──筈の──事だったから。
ひとりで何もない地面に立たされたことなんて、それへの罰だとすら思っていた。
件の男性はそんな最中にわたしの目の前に現れた。
しばらくの間、彼が一体
記憶のない身で言うことではないが、サーヴァントらしくなかった。あんな場所で平然としていたから、人間にも思えなかった。
彼は──アルキメデスはわたしに色々な言葉を与えたが、本当に知りたかったことは分からないままだ。
わたしがとても大きな役割を持っていることは分かったが、それを聞いてもわたしはそれをどこか他人事のように感じた。
アルキメデスはその何か大きな目的の為にわたしの力を必要としているらしく、事細かくお互いの状況について話してくれた。こんなわたしにもやらねばならない事があると思うと気が楽になったが、事実はそれはそれで重たすぎた。
サーヴァントとはそういうものだ。皆、何かひとつの大切な目的の為にサーヴァントとして戦うのだ……わたしが生きる為に戦ったように。
アルキメデスもそうなのだろうか。彼がわたしに教える「目的」もまた、彼のすべてなのだろうか。
わたしはやがてすべてを思い出すかもしれないが、その時が来るまでは彼がわたしの唯一のサーヴァントになるのだろうか……
わたしはこの世界で圧倒的に無知だ。わたしの存在を証明するものは、この誰と契約をしたのかすらも定かでない無意味な令呪ひとつしかない。
しかし確かなことはある──それは、彼が疲弊しているということだ。