「なんだなんだ、13冠に媚び売って自分の祖父を魔王に推薦したいのか?」
「いやそれは全然。あみゃいもんさん」
「アマイモン」
「あまいもん、さん」
アマイモンさんが聞いてくる発言に首を横に振ると興が削がれた様に彼は荒々しさの鳴りを潜めさせた。
「ズーズー弁と変わらないくらい変な言語してるな」
「確かに変わった方言だ。サリバン様は普通だが」
「えっと、色んな言語ぞ学ぶすてた内に、母国語がどっこいしょすちゃったです。完璧では無きですが、大雑把なら古代語も読めるですぞ!」
ニコニコ質問に答えていく。
パイモンさんという人が訛っている喋り方だったからか、私の摩訶不思議言語に馴染むのが早い…!
これが13冠……!流石だ!
「これは協議にならないな」
「あ、あじゃぜるアンリさん!」
電話をしようとしたのか連絡ツールを取り出した彼に媚びを売るため頭を下げる。
「生徒会長にはお世話ぞぶっかけるすてます!」
「アザゼル」
「あじゃじぇる」
「お世話をかけます」
「お世話ぞかけます」
「……。うーん」
まあ生徒会長には会ったことないけど、兄貴はお世話になっているし。
アザゼルさんはすごく微妙な顔をしてお礼だけは受け取ってくれた。
「サリバン様のお孫さん。このうんめ゛ぇ紅茶、お前が?」
「はい!」
ニコニコとか弱い乙女なので敵対しないように可愛がられるように愛想を振りまく。
私のニコニコ笑顔のままだと興味が無くなったのか、パイモンさんはふぅんと品定めをする様な顔になった。
「黄色のお兄さん」
「……っ!どうしたレディ」
「どこかで見たことが…………あ!サブノック・サブロ君!」
見たことあるー!と一気に親近感を抱いた笑顔で抱っこをせがんだ。
懐いたフリをして抱きつくと嗅いだことのある匂いに早い脈拍。うん、ビンゴだ。
見たことあると思っていたんだよね、特徴的な髪色。
「バールさん、ですたっけ」
「あぁ、そうだよレディ。初めまして」
「
まだ短期間だけど、魔界に来て分かったことが何個かある。その中のひとつ。
悪魔は、面白いものが好き。
「リボン似合うでしょ?(訳:忘れてねぇからな)」
従順でにこにこ可愛い私より、わがままで小生意気で野心のある私の方がさぞかし魅力的に見えるだろう。
バールさんはガタリと椅子を大きく揺らした。逃げ出したくとも私が膝の上に座っている為払い除けられなかった様だ。
内容や詳細は分からずとも、私が『13冠の1人を脅した』という事は明らかに見て取れる。
他の13冠は興味なしの反応から一気に私を探るような視線を向け始めた。うーん怖いね。
怖いけど、おじいちゃん以外の13冠の覚えを良くする為にも利用させてもらおう。
「あっ。そういうすれば、あじゃじゃるアンリさんって不正渡航の問題ぞ提示すてますたよね?」
「アザゼル。呼びにくければアンリでいい」
「アンリさん!不正渡航って、魔界から人間界にってことです?」
「……人間界なんて言葉をよく知っているな」
「得意科目です!」
不正渡航ねぇ。私の椅子になっている13冠の男は不正渡航についてどう思っているんだろうなぁ。
ぎゅるんと上を向いたらバールさんと目が合った。にっこり。
私の視線にアンリさんは『不正渡航の疑惑があるのでは』という視線をバールさんと私に向けた。そうだよね、意味深な視線だもの。
「それにアンリさん、不正渡航について何かさらに情報があるのでは無きかと思って」
アンリさんは観念した様にメガネをかけ直すと、会議していた面々に向けて『サリバン様の不正渡航の容疑がタレコミであった為容疑者となっている』と語る。
あ、なんだ。ただのタレコミか。
証拠掴まれたわけじゃないんだね。
「私、このバールのお兄さんと一緒にいるから大丈夫ですぞ!どうぞどうぞ、泊まりがけでもなんでもおじいちゃん拘束すてOKです!」
「……。そう言ってくれると助かる。流石に子供が一緒だとは思わなかったのでな、拘束をどこまでするか迷っていたんだ」
「大丈夫です〜!ただおじいちゃんに『今日のご飯は私もお手伝いするつもりだったのになぁ、手料理食べさせるすたかったなぁ』って伝えてくれませぬ?」
「承った。だが、どうしてサリバン様『不正渡航の容疑がかけられている』と分かった?何か証拠でもあるのか?」
アンリさんの言葉に私は笑みを深める。
「1.警備の多さ。厳重さぞ必須なる場所とは言えど、一定の組織による人員の待機が多かったこと。通常は分かりませぬが、実力者を抑え込める人員なのだろうなと」
初見の場所だしこれだけなら気のせいに出来たんだけど。
外部の悪魔を近付けさせないというより明らかに内部を警戒していたから。
「2.議題。多く語らず、簡潔故に、『今後動いても議題として他の13冠に確認した』という免罪符になるかなー、と思考すたです」
免罪符というべきだろうか。
位の序列が優先される魔界で高位の悪魔を裁くのは中々に難しいだろうから、ある程度発言力がある悪魔の賛同というか、言質というか。
「そして最後、予想を確信へと押し上げるすたのは……」
「それは?」
「──勘かなぁ」
多分、そのタレコミってバールさんだったんじゃないかな。あわよくば自分の罪をおじいちゃんに被ってもらおうと策を弄じてたのだと思う。
まぁ!実際悪魔召喚って形で人間界に呼び出されてるから、嘘ではないし、なんだったら事実でもある。
なので、おじいちゃんには頑張ってごまかしてもらって。
私はこの隙に13冠の悪魔たちと交流を深めさせていただく。まぁ13もいないけどね。今。
欠席者の中のアスモデウスって多分アリスくんのご両親のどちらかか親戚だよね。文献では色欲を司る悪魔として知られているけれど、悪魔界でどんな人物かはわからない。ただ、悪魔界と人間界が地続きになっている現状、当たらずも遠からずだと思う。
歴史は湾曲されているけれど、たどりつけば元は案外外れてもない気がしている。
「ま、ということですぞ」
アンリさんににっこり笑顔で結論を言えば、彼は不機嫌そうに見える表情で私を見下ろしていた。
「ヒュウ、腹の底見えないタイプか」
「おっだまげだ」
「故に、おじいちゃんが迎えに来るまでお世話ぞすてくださいね」
タジタジのバールさんに向けて微笑むと、バールさんは降参したようにため息をついた。
さて、人間だとバレている相手にどれだけ口止めやらできるか、腕の見せどころかな。
ふふん、数々の修羅場をくぐってきた私の処世術をお見せする時が来たようだ。
時には警察にご厄介になり、時にはヤクザにご厄介になり、はまたまその敵対しているヤクザにご厄介になり。派閥や情報や始末からくぐり抜けて来たんだこちとら。危険な犯罪の片棒を担がされそうになったし、なっても警察にバレないようにしたり。
「ぐすん」
泣いてないったら泣いてない。