4度目の人生は悪魔学校で   作:恋音

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第12話 ご馳走の飼い方

 

「サリバン様、貴方に不正渡航の疑惑がありますので拘束させていただきます」

「ほえ!!??……あ、いや、実は孫と来ていて。子供を1人放置するのはまずいから帰りたいなーなんて……」

「その孫のリィンさんからの許可はいただいています。どうぞ泊まりでもなんでもと」

「リィンちゃん!!??」

「『今日のご飯は私が作るつもりだったのになあ、手料理食べさせたかったなぁ』とも」

「リィンちゃん!!??」

「ちなみに彼女は雷光バールに預けられていますので。師団(バトラ)にも所属してないようですし、しばらく拘束ですね」

 

「──リィンちゃん!!??」

 

 

 

 ==========

 

 

 

 アンリさん曰く、容疑があるのを知られているし悪魔学校(バビルス)に戻るのは待って欲しいとの事だった。

 要するに監視下にいて欲しいということなので、監視役をバールさんに指定してサブロ君の実家に遊びに来たのだった。

 

「つまり、魔関署の命令で家に帰れぬので泊めて欲しい、と?」

「はいです!」

 

 本当は魔関署の関係者に監視してもらうべきなのだろうけど、一旦お家に帰るのだけ却下。

 

「ヌシの家族への連絡は大丈夫なのか?」

「厳重なルールぞあるわけじゃなくて、連絡も取る可能ですぞ。実際、ゲームすてたし」

「ゲーム」

 

 連絡も止められなかったのでオペラさんに連絡入れておいた。兄貴、慣れないゲームに悪戦苦闘しているんだろうな。

 

 というか、魔関署はそこまで私への監視自体は重要視していない。

 しているのは私とバールさんの2人の間で、だ。

 

 私は『人間だとバラされたくない』し、バールさんは『人間界への不正渡航を漏らされたくない』し。能力や理解力も未知数だからお互い認識のすり合わせや監視をしたいからこそ、乗っかっている。

 そしてバールさんは『自室に私を招くほどでは無い』のと、なぜかは分からないが『引き止めておきたい』という部分があった。

 

 よって、選ばれたのはバールさんの兄の家でもあり甥っ子の家でもあるサブノック家だったのであーる。もはや城って言っても過言では無いが。それはさておき。

 

 学校に戻らせずに引き止めておきたいって部分が引っかかるけど、学校には兄貴がいるし、バールさんの思惑に逆らって警戒レベルを上げられるよりは何も気付かないフリをして流された方が生き延びれる確率は高いだろう。

 

 これ、処世術。鈍感って便利〜。

 

「叔父殿も泊まるのですか?」

「あぁ、部屋を用意してくれるかサブロ」

「もちろんです!お仕事は大丈夫なんですか!?」

「あ、あぁ、今は暇でな。というか今回も仕事みたいな」

「そうなんですね」

 

 サブロ君が嬉しそうに頷く。すると奥から私と同じくらいの身長の女の子が駆け寄ってきた。

 

「叔父上ー!!」

「シルビア」

 

 バビュンと元気良く飛んできた女の子はバールさんに飛びついたあと、そのまま私の方を見た。

 

「こんばんは!私シルビアっス!兄様のクラスメイトなんですよね!?」

「リィンです、これからよろしくぞり」

「こちらこそっス!」

 

 早速客室を案内します!と言ってシルビアちゃんは私の手を握った。

 

「あ、そうだバールさん」

「(びくぅっ!)」

「後で、お話ぞしましょうね?」

 

 お互い話したいこといっぱいあるよね?

 

 その言葉を隠しながらにっこり微笑めば面白いくらい警戒して肩をはね上げた。13冠とはいえ脅しには弱いんだろうなぁ。

 

 そうしてシルビアちゃんを見ると、シルビアちゃんの目は大きく見開いてキラッキラ輝いていた。

 

「リィン先輩は叔父上とお知り合いなんですか?」

「小さき頃あったことあるです」

「叔父上は父上と違った方向ですごい方っス!その叔父上があんなに様子を伺ってる姿なんて初めて見たっす!あれですね、母様に怒られる兄様を見てる気分」

 

 悪巧みをした子供が怒られる感じね。

 シルビアちゃんは色々お話してくれた。家庭環境から兄弟構成まで。兄はサブロ君とイチロさん、そしてシルビアちゃんの3人兄妹みたいだ。

 イチロさんは方向音痴で、サブロ君の魔王師団(バトラ)の発表を見るために明日はバビルスに行くつもりだけど、ずっと手を繋いでおくんだと意気込んでいた。

 

 兄妹は読書家で家に巨大な図書室があるみたいだった。私は読書かと言うわけではないけれど、ぜひ読ませて頂きたい。最近もっぱら図書館通ってるし。

 

「ここがリィン先輩の部屋っス!アメニティとかは使い捨て置いてあるんで、好きに使ってもらってください!」

「シルビアちゃんありがとうぞり」

 

 部屋はホテルの一室のように綺麗だった。

 

 

「それにしてもリィン先輩って不思議な喋り方がされるんッスね」

「こ、これでも割と抑え気味で話ぞすてるですぞ?ただ言語ぞ直す方法があまりわからぬ故に」

 

 特に翻訳魔法を介しているから日本語力が上がらないと上手く喋れない気がする。

 目標は翻訳無しで魔界の言語を喋れることだ。

 

「リィン!」

「あ、兄様!」

「サブロ君」

「夕食を共に食べるだろう?用意が出来たのだがヌシも来ないか?」

「もちろん!」

 

 ご飯大好き!食べれりゃなんでもいいから生き延びれる分の食事は欠かしたくないしもう毒でも何でもかんでも美味しい。腐ってさえ無ければなんでもいいです。

 

「そういえばイルマは……」

「サブロ君。私実は今、イルマとは喧嘩してるです」

「えっ」

「故に、名前は出さないでくれませぬか?」

 

 まだバールさんに手の内晒したくないんだよね。隠しておけるとは思えないからせいぜい事実に至るまで遠回りさせる程度だけど。

 

 サブロ君は気まずそうな顔をしながら頷いた。

 

 

 ちなみに蛇足だが、翌日兄貴と出会ったサブロ君が『ヌシはリィンと喧嘩してると聞いたのだが一体何をしたのだ?』と聞き、予想外の言葉に兄貴は大きな声で『なんで!??』と聞き返したそうだ。

 

 

 さて、食事会は父親のサブザンさん以外で和気あいあいと行われた。サブザンさんはサブロくんと仲良くない。というかサブザンさんがバールさんを毛嫌いしている様だ。

 サブザンさん、多分あんたが正しい。人(悪魔)の良さそうな顔をして懐柔しようとしてる奴だよきっと。

 

 私に話を振られる度挙動不審になるバールさんに、サブロ君達は不思議そうな顔をしていた。

 

 

 

「迷子になっては困るだろうから、もし部屋の外や厨房など行きたい場合は鈴でヤマンダを呼んでくれ」

「はーい、ありがとうですサブロ君」

 

 食事も終わり、部屋に入る。

 

 ふぅ、と息を吐いた瞬間──私の首元に武器が突き付けられた。

 

「っ、」

「なぁレディ。どうしてしまおうか」

 

 いつの間に部屋に入ってきていたのだろうか。食事の場で離れてから別の方向に去っていったはずなのに。

 今にも取って食われそうなくらいギラギラとした目をしている。

 

「ふふ、今、私ぞ殺すすたらですよ。それは雷光バールの仕業って、すっごく分かりやすきですよね」

 

 強がりで笑顔を浮かべる。

 私は自分の命すら生き残る為の駒にしてやる。

 

 アンリさんも他の13冠も『私がバールさんを脅した』というのが分かっている状態だし、おじいちゃんもバールさんに預けたのを分かっている。

 だからここで死ぬと、『口封じで殺されたのでは?』となるのだ。私が人間ではなく、サリバンの孫として名前を売っている以上。高位魔族の孫を殺した者として13冠を取り上げられる可能性が高いよね。

 

 殺したいならどうぞ。

 サブロ君たちにその本性を見せなかった以上、そこまで浅はかな真似は出来ないはず。

 

「…………はぁ。レディ、いやらしい所を突くな」

「やだ!年端も行かぬ小娘の部屋に忍び込むすてるおじさんの方がいやらしきですぞり!」

「う、ぐ」

 

 ピッ、と私の首筋に小さな切り傷ができて赤い血が流れる。

 

 バールさんの目が見開かれた。

 武器がカランと地面に落ち、勢いのままバールさんはヨダレを垂らして私の首に噛み付こうとした。

 

「──伏せ」

 

 鼻っぱしらを押し、傷口を隠しながらバールさんの頭を下に向けた。

 

 あ、危な〜〜〜〜〜!

 物理的に食べられるかと思った。

 

「………………や、っぱりな。レディ、人間だな」

「人間界に不正渡航ぞすておきながら、それ?」

 

 血液だけでヨダレが出るほど美味しそうな匂いがするのか、私は。

 いや、人間は……か。

 

「人間は美味いと聞いていたが、これは想像以上だな」

「申し訳なきですけど、私は健康状態が悪しき故に。下の下の味ですぞ」

「それでも、今すぐ食べてしまいたいな」

 

 バールさんは口元を押さえてヨダレが出ないようにした。

 私は護衛の為に青いリボンを触りつつ、食欲を抑えようとしているバールさんの顔を上げさせ私と目を合わせた。

 

「ダメじゃ無きですか」

「ハッ!命乞いか?それとも脅しか?俺の不正渡航とレディの人間の秘密は、釣り合いが取れねぇぞ」

 

 私は無言で首を横に振った。

 

「16歳になったら、食べてくれるのでしょう?」

 

 だからリボンをくれたんじゃない。貴方の餌の印だと、首輪代わりのリボンを。

 

「わたしはまだ14歳ですもん」

「レディ……」

「ちゃーんと、食べてくれねば困るです」

 

 だからあと2年。

 私はそれまでに──こいつを牢獄に叩き込むなどして何とかしなければ。

 

「だからね、バールさん。これは貴方から持ちかけるすた契約。16歳になるまで、無力な私は人間だとバレぬように立ち回りし、生き残らなきゃならなき」

 

 16歳までにお前の首に首輪を向けて、服従させてやろう。悪い子はゲージに入れて躾をしてしまおう。

 

 お前が私を脅すんじゃない、私がお前を脅すんだ。

 

「さぁバールさん、賢き貴方ならどうすればいいのか分かりますぞね?」

「……あんな小さな赤子が、随分偉くなったものだな」

「やだ、私偉きですもん。サリバンの孫ぞり?そして貴方のご馳走。超高級料理を食べるなら、マナーも店も調理方法も一流で無ければ困るです」

 

 ちゃんと守ってね。

 13冠、雷光バール。

 

「──あぁ、16歳になるまで、俺がレディを誰にも食べられないように大事に大事に飼育してやろう。なんて甘美な言葉だろうなぁ」

 

 まずは命と引き換えに後ろ盾ひとつ。時間制限付きだけど。




内心ガクブルです。
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