4度目の人生は悪魔学校で   作:恋音

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第13話 第2の盾

 

「もー!本当に酷い目にあったんだからね!」

「ごめんごめん」

「それ謝ってないやつ」

 

 オペラさんの迎えで家に帰れば、文化祭で散々な目にあった兄貴にプンプン文句を言われた。

 

「リィンちゃん!勝手に置いてっちゃうなんて酷いよ!僕も酷い目にあったんだからね!」

「兄貴そっくり……」

「えっ嬉しい」

 

 放置して同級生の家に泊まりに行った私におじいちゃんもプンプンしていた。

 

「それで、文化祭では何あったです?」

「そう!魔具研究師団(バトラ)に入ったんだけど、先輩が居るって言ってたじゃん。その先輩がキリヲ先輩っていうんだけど、ガブ子が」

 

 急に出てきたなガブ子。誰だ。

 話を聞いていると、その先輩が増幅系の魔具と花火を利用して学校にテロを起こそうとしていたらしい。なんで学校なんだろ、塔とか13冠とか、影響力の塊に火をつければいいのに。

 

「で、リベーラで花火を投げて」

 

 そして落ちそうになった所を助けられたと。

 私は少し考えた後、兄貴にひとつ問いかけた。

 

「その悪魔って、緑髪の眼鏡かけた優しそうな顔の悪魔?」

「そう!」

 

「…………いややわ兄さん」

 

 あいつ、コレがあるから私を学校に返したくなかったんだな?

 バールさんの子分だって顔が割れてるから。

 

「兄貴」

「え、何?」

「兄貴は変な男引っ掛けるするなぞり。アリス君で手一杯」

「なにが!!!???」

 

 だって兄貴、厄介なのばっか引っ掛けるんだもん。魔界に来てまで勘弁してよ。

 

 

 そういえば、バールさんとはあれからつつがなく終わった。まだ人間を悪魔が食べた場合の実験なども終わっていなかった為、味見されること無かったのはホッとした。

 私はすぐに殺される訳ではなく、あと2年。16歳まで別の人に食べられないようにバールさんが後ろ盾として守ってくれる。タイムリミットはある意味伸びた。そして、ある意味短くなった。

 

 16歳までに、バールさんが強行突破しようとしても大丈夫なように地位を磐石のものにし、対抗出来るように他の後ろ盾も得なければならない。

 

 そう、例えば『この娘は人間だったんだ!』って暴露されても、『知ってましたが?』とか『知らなかった……で?』と言ってくれる味方を作らなきゃならない。

 そしてそれは、兄貴も同じ立場になる。

 

「うーん、いっその事バールさんを惜しいと思わせるほど籠絡する?」

「なんか急に物騒なこと言い始めたね???」

 

 うん、策は何個あってもいいですからね。

 同時進行で行こう。学校なんて行ってる場合じゃないけど、アリス君やサブロ君みたいに身内に特大の身分を持ってる人はいるし教師もバカにならな……。

 

「おじいちゃん」

「なぁにリィンちゃん」

「私、別の悪魔学校も行くすてみたい」

「転校の危機!?」

 

 伝手も、なんぼあったっていいですからね。

 

 

 

 ==========

 

 

 

 学校に行けば兄貴は色んな悪魔にもてはやされていた。

 

「それで……リィン?」

 

 ポツン。

 語りかけていた相手が居ない兄貴は首を傾げた後、逃げたと言うことが分かった為プンプンしていた。やだよ、目立ちたくない。

 

 さて、先生に早めに人間についての人体実験を行わなければな。そう思い空想生物学準備室に行こうとしたところ、見覚えのある朱赤の髪が目に入った。

 この世界髪色が目立ちやすいので悪魔区別がついてありがたい話です。

 

「──アンリさん!」

 

 ブンブン手を触り、懐いてるような表情をすれば少し緊張した様子のアンリさんは肩の力を抜いた。

 

「リィンさん、ちょうど良かった」

「んふふ、リィンで良きですぞ?……これから長き付き合いになるかもしれぬのですから」

 

 意訳:帰るつもりねぇぞ

 

 私が言葉の裏をかける人物だということは13冠の集い(サーティーン・ディナー)で分かったはず。やりづらそうな顔をしてアンリさんはメガネをかけ直した。

 

「少し話をしよう」

「いえっさー!」

 

 あまり人に聞かれたくない為、校庭などではなく空き教室の使用をしていいかダリ先生に確認したあと改めてアンリさんに向き直った。

 

 ダリ先生、すごい複雑な顔してたな。

 私が人間だと知ってる先生だもんね。聞き耳立ててくれると助かるわ。

 

「──さて、まずは一緒に来た祖父を拘束してしまったことを謝罪させていただきたい」

「いえいえ。つつがなく解放すてくれたのでしょう?おかげでアミィ・キリヲ先輩の暴動の被害を抑えることが出来た、と聞くすています。こちらこそありがとうごじゃります」

「…………わざとか?」

「全部嫌味に聞こえますた?」

 

 えぇ、わざとです。

 アミィ(魔関署職員)家の息子さんの尻拭いをさせてくれてどうもありがとう、ってね。

 

「情報収集能力に優れているのか……」

「別に、全然。知らぬことばかりですそ?わたしが得意なのは、知ったかぶりです」

「己が無知だと知っている者ほど厄介なのだが……」

「お仕事お疲れ様です」

 

 いやぁ、大変ですね。

 権力者の孫に尋問するの。

 

「まずどこから聞けばいいのか迷ったのだが、最初に──サリバン様と血縁関係はあるのか?」

「…………無きです。おじいちゃんとオペラさんと兄貴がいるですが、私は(・・)養子です。彼らと血は繋がってなきです」

 

 はい。おじいちゃんとオペラさんとの血はね。

 イルマとは繋がっているけど、あえてどちらとも取れるように、むしろ兄貴とも血縁関係が無いように説明した。

 

「私は…………」

 

 すこし躊躇いがちに口を開いて、でも言わなければ話は進まないと思いギュッと手を握りしめた。

 

「……リィンさん」

「はい?」

「怖がる必要は無い、私は君の味方だ」

「ほんと……?ほんとのほんとに、味方?」

「あぁ」

「助けて、くれる?どんな状況でも……」

「もちろんだ」

 

 ここで解説します。

 アンリさんはきっと、『経緯がどうであれ連れてこられた人間なのだろう。保護して返してあげるにもまずは怖がらないようにしてあげなきゃ』と思っている筈だ。

 そして『可哀想に、誰を信じていいのかも分からず食べられるかもという恐怖に震えているのか』ともね。

 

 だから私は──言質を取れたことにニッコリ微笑んだ。

 

「私人間なのです」

「……!やはり」

「で、両親に虐待ぞされていたので売られますて、人間界に戻りたく無きなのですがどうしましょう」

「……………………うん?」

 

 一瞬で処理能力の限界に陥ったのかアンリさんは固まってしまった。

 

「アンリさん………………味方、してくれるって言いますたよねぇ?」

 

 私は聞くも涙語るも涙のクソ両親について話した。立ったから自立、と言われ働かされるのは悪魔的にも有り得ないこと。それが分かっていたので野草で飢えをしのいだり雨水や泥水を啜って生活していたことを淡々と伝えた。

 

 インターバルを挟んで理解出来たアンリさんは頭を抱えてしまった。

 

「もう一つ、貴方が聞くすたかったであろう事についても回答すて良きですか?」

「一切何も質問してないのに答えが出てくる……」

「雷光バールは私が1歳位の頃。最初の自立時に人間界で会いますた。つまりはまぁ……不正渡航ですぞね」

「本当に聞こうと思っていたことの答えが出てきた……」

「それで昨晩、実はバールさんに食べられかけますて!」

 

 たはー、と笑えばアンリさんのメガネが曇った。

 首筋の包帯に手を当てれば、その傷がバールさんから与えられた傷だと言うことを察したのだろう。

 

「尚更危険だ。君にとってこの魔界は、捕食者の塊だ。私は昔、人間を保護して人間界に返したことがある。正規の手続きを持って」

「……でも、元の世界よりは危険じゃなきです」

 

 これは割とガチ。

 衣食住が整備されてるって人間としての最低限の生活を送れなかった私にとってどえらい事。

 

 命狙われるのなんて別に、慣れたわけじゃないけど無かったわけでも無かったし。

 

「次は娼館にでも売られるかもしれませぬね」

「っ!」

「私、顔は良きですから」

「それはダメだろう……!」

「でもしかねないです。マフィア……人間界の悪党にも顔ぞ割れるすてますし。多分予想では一週間ですね」

 

 急に姿が消えて取引していた人達は焦っているだろう、と嘘ぶち込む。

 焦りはしてるだろうが、取引なんてしてない。

 

「だからアンリさん、私を、魔界で保護すてください。お願いします」

 

 どうかこのまま。味方にだけなってください。

 公的機関の人に頼むのは相手の立場的にまずいのかもしれないが、扱いは非常食でいいからさぁ。

 

「……雷光バールについてはどうやったんだ?」

「2年後、16歳になれば私は彼に食されます」

「!!!???」

「でも、アンリさんが協力すてくれればその脅威が無くなるです。よく聞くすて──1歳の頃会うすた悪魔は、雷光バールと……アミィ・キリヲです」

「繋がっていたのか!そこが!」

「はいです。そしてそれを把握すてるというのはバールさんも分かるすてます」

 

 ね?

 アミィ・キリヲが不祥事を起こした以上、バールさんもとっ捕まえれる糸口が出来たって意味で良いじゃん。

 

「……私、こんな綺麗な服ぞ着るすたこと無きです」

「え……」

「あったかきご飯も、警戒せずに寝るが可能な家も。生まれて初めて」

 

 秘技、哀車の術。

 私はほろりと涙を零した。

 

「私のっ、こんなに幸せな、時間。生きてる、かんきょー、ぞ、奪わないでください……!」

 

 ポロポロととめどなく流れる涙を見てアンリさんはガタリと椅子から立ち上がった。

 

「リィンさ、」

 

 私の背中をさすろうとして手を伸ばした瞬間、私はアンリさんの手をガッツリ掴んだ。

 

「──今ここで協力すると頷かねば、私は服を脱いで悲鳴を上げて生徒会長に泣きつくです」

「……………………なりふり構わない感じは嫌いでは無いが、あの、脅し方に手加減持ってくれないか」

 

 うるせぇ!命の危機なんだよ!

 権力者ならちゃんと言質を取らせろ!ほら、早く頷け!

 

「分かった。ただし、人間界に戻りたくなったらすぐに相談するように。もちろん悪魔界でのトラブルもだ」

「やったぁ、ありがとうござります♡」

 

 魔関署警備長、ゲットだぜ!

 

 

 

==========

 

 

 

「いやー、まじで面白かったよ」

 

 ダリ先生が扉の外でニッコニコで聞き耳立てていたのには驚いたけど、そうだよね、愉快犯ポジションだもんね、あなた。

 

「それにしても本当にバラして良かったのかな?」

「んー。魔関署的に、敵の懐に潜り込める……スパイとして利用出来る私を放置はしないでしょうし」

 

 お互い狙いは一緒。

 私はバールさんを捕まえて欲しい。

 魔関署は犯罪を野放しにしたくない。

 

 きっと魔関署も一枚岩では無いだろうから、せいぜいアンリさんの部署内で共有されるだけかな。

 

「あとはまぁ、おじいちゃんがもし犯罪すても告発できる立場にある、というのも大きいかと」

 

 身内に敵でも味方でもない人物が監視している、とあればその情報の信頼性はさておき利用したいだろう。むしろ取り込みにかかるはず。

 

「君、怖いねぇ」

「シンプルですぞ?私は、己が生き残るために行うすてますから」

 

 あとついでに兄貴もね。

 

「人間だと言うことをご存知の敵がいる。なれば、人間だとご存知の味方を作らねば」

「そういうもん」

 

 

 

「やっぱり私は……」

 

──人間ってことをバラしていかないと

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