4度目の人生は悪魔学校で   作:恋音

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第17話 天敵

 

「うーん」

「ううーん」

「おい、そこの人権ガン無視教師と生徒。もういいだろ」

「……そうですねぇ」

 

 こちらウラボラス監獄。

 ダリ先生とアンリさんをお供に適当な囚魔を捕まえ、『私が新たに開発した薬』という名目で『私の血が混ざった水』を投与したのだ。

 

「濃度の低いものでも経口投与すれば簡単に悪周期にはなるね」

「です」

 

 ダリ先生が悪周期の囚魔を踏んずけて押さえ込んでいる。私はアンリさんの後ろに隠れてメモをとっていた。この二人の何かあっても大丈夫、感すごいね。

 

「でも、傷に対しての効果は濃度の濃いものじゃないと効かなそうだ」

「あとは悪周期耐性と悪周期からの脱却も視野に入れねばなりませぬね?」

「あぁ勿体ない……僕も飲みたかったのにな……」

 

 ダリ先生がガックリ肩を落としている。濃度が薄ければわんちゃん、と考えていたのだろう。

 

「んー。それであれば風味付け程度にまで抑える必要あるですね。悪魔学校(バビルス)に元気で回復力の高い悪魔おらぬかなぁ」

 

 ウラボラス監獄での人体実験はここまでだろう。傷の手当の実験ができたのはいいことだ。

 それはそれとして、悪周期にならない程度の度合い、っていうのは探りたいんだよね。

 

 手持ちの薬の1番薄いやつで悪周期になったんだから、ちょっとなぁ。

 

「……まぁ、一つだけ心当たりはあるけど。タフな非公式師団(バトラ)が」

「んえ?」

「まぁ今度ね」

 

 どおん。

 実は先程から地上で魔獣が三体くらい暴れている音が聞こえているんだよね。

 

 アンリさんがどこかに連絡をとっていることから痴情で何か問題が起こっていたのだろう。

 

「……戻るかぁ」

「……音止まってからにしませぬ?」

「戻るぞ!」

 

 

 ==========

 

 

 地上に上がれば全てが終わった後だった。

 

「うわ……」

「先生混ざる?」

「絶対嫌」

 

 なんか、猫みたいな巨大な乗り物に乗って兄貴たちが称えられている。

 

「あの先頭にいるのはロノウェ・ロミエールとそのお父上でありウォルターパークの支配人のロノウェ・ローズベルト氏だね」

 

 パレードの最中なのだろう。

 ちなみに、生徒たちだけで大人たちがいないことから避難しているのだろう。

 

「リィンちゃん、混ざってくる?」

「絶対嫌」

 

 アンリさんはウォルターパークでの惨劇を目撃した途端魔関署としての業務に向かった。

 

「……ん?」

 

 ちらりと物陰に緑色の髪をした悪魔が横切った気がした。

 

「先生、少しだけ単独行動すてもいいですか。5分だけ」

「え、トイレ?」

「そうそう。トイレ」

 

 ダリ先生は雑に乗ってきた私に怪しげな視線を向けた。

 

「5分、迷子になってたら迎えにぞ来てください」

 

 私はピッと、人間界のスマホを起動させ、てくてくと歩いていった。

 その鮮やかな青緑を追って。

 

『──出られたか、報告しろ』

「……はぁ。戻りました兄さん……」

『何ため息ついてんだひねるぞクソメガネ!』

 

 その声が聞こえた瞬間、私はひょこっと顔を出した。

 

「あ、やっぱりバールさんの手引きだったんだ?」

「「「「「!!??」」」」」

「げっ……」

 

 キリヲ先輩が電話片手に6人の誰かと話していたからだ。しかも、電話の向こう側にはバールさんが居る。

 

「なんや、目ざといなぁ」

「貸一」

「えっ」

 

 私は刑期2年のキリヲ先輩に指さした。

 

「あじゃぜるアンリさんの目を背けますた。貴方、疑われるすてますたよ?」

「……ほんま?」

 

 刑期2年なのがあまりにも少なすぎるから、私としてはもう少し罪を重ねさせてなんなら死刑くらいまで持っていきたい。

 だから、脱獄を阻止しなかったんだけど。

 

 そんなことを知らない彼らは勝手に私に助けられたと思えてしまう。というか、思わせる。

 

『……レディか?』

「バールさん、この6人誰?さっきから殺気立つと言いますか、野生動物みたきなのですが」

 

 ビリビリと鳥肌が立つくらいの敵意に襲われている。この6人、誰だよ。

 

『お前ら、レディには手を出すなよ』

「そうぞりそうぞりー!だれとここころえる!」

「こ、が多いなぁ」

『まぁ、レディがここでこいつらに会ったことは、忘れるから誰が誰とか気にするな』

「えっ」

 

 それは、今から死にますので大丈夫、パターン?

 ヤダヤダ、まだ死にたくない!もう少し健康的に太ってから死にたい!せめて!胃が健康的になってから!

 

『レディ、落ち着け。そういう魔術だ』

「あれ?口からポロンぞすたです?」

『何語だ?』

 

 気持ち的にはちゃんと喋れているつもりなんだけど。

 

「ははーん、さてはバールさん、読解力なき?」

『殺すぞ』

「ごめんなさい」

 

 舐め散らかしていると、6人からの殺気が少しはマシになった気がした。

 フッ、野生動物に追われた時を思い出すぜ。

 

「えっと、ちなみにですけど。その骸骨さんと小人さんは悪魔?」

「珍しいん?」

「えっ、もちろんですぞ!?口ぼくろのお姉さんとか、白髪のお姉さんとか、くるくるしっぽのお兄さんとか、あと、影薄そうなピンクのお兄さんならともかく」

『ふぅん、人間の基準ってのはよく分からねぇな……』

 

 悪魔の基準の方が分からないけど!?

 いや、そういえばうちのクラスにも人面ライオンとかおばけモップとか居たな……。

 

 異形悪魔、分からない……。

 

「でもほら、私、おもしろき人好き。愉快!」

 

 この6人、楽しくではある。

 

『俺としてはレディが一番の面白存在なんだがな』

 

 人間、という言葉に困惑したのはその6人だ。もちろんキリヲ先輩は知っていたけれども。

 

 参ったなぁ。

 バールさんが、特に遠距離でいる限り安全だろうと思ったから首を突っ込みに来たけど、情報を集めるには時間が足りないや。

 

「あ、私5分だけって言うすてたのですた。故に手短に教えるですね。私ずっと地下にいるすたので今回の全貌は分かりませぬが、キリヲ先輩を脱獄させるためにバールさんが動くすたってのは分かるますた」

「ホンマに嫌やわこの子」

「で、次は何を企むすてるですか?」

『レディ、首を突っ込むつもりか?』

「うん、だって巻き込まれるすたくないですもん?」

 

 好き好んで巻き込まれたくないよね?

 だから私に被害が出る前に逃げておきたいんだけど。

 

『……13冠の集い(サーティーン・ディナー)で会ったら教えてやるよ』

「え、また呼ぶされるです?」

『まぁな。──六指衆、レディには手を出さず送り返せ』

 

 下まつげの目立つ大男に手のひらを向けられて。

 

 ──。

 

天敵(バール)さん、またね」

 

 

 

 ==========

 

 

 あのパレードの先頭でキラキラ視線を集めていたロノウェ先輩という方の実家がやっている高級ホテルに問題児(アブノーマル)一同招待されたため、私も遅れながらやってきていた。

 

「リィンちゃ〜〜〜〜〜ん!大丈夫だったかい?」

 

 おじいちゃんが来る、というハプニングがあったが。私に好感度MAXな理事長の姿を見た一同が驚いた顔をしていのを見て、そろそろ漏らし時か、と悟った。

 

 

 

「「「「まごぉ!?」」」」

「はいです。私も、理事長の孫ですぞ」

 

 時はバイキング。

 みんな楽しそうにご飯を取りながらも、『理事長とどういう関係?』と言われたので嘘偽りなく話した。

 

「え、じゃあイルマくんのきょうだいってこと?」

「姉です!」

「いや妹だよ?」

「兄貴♡妹の面倒見るすてね♡」

「他人です」

 

 手のひらくるっくる返された。げせぬ。

 

「むしろ、私としてはイルマ様とリィン様の関係性を、ずっと知らなかった貴様らの方が不思議だが」

「いや、アリス君だって初対面見抜けぬだったぞり」

「ぐっ、いや、だが!」

「リンリンはね、目立つの嫌だもんね」

 

 割と最初から知っていたアリス君とクララちゃんが両隣で擁護?してくれる。

 

「うん。私目立つ嫌い。あ、でもめんどくさきことになったら『へぇ兄貴、兄貴の言う通りで!』って言いながら巻き込む気満々ですぞり」

「こう言うところが厄介なんだよ……」

 

「へー、でもあれだね、なんか似てないよね」

 

 リードくんの鋭いツッコミに皆『バカ!』って顔をする。

 

「あはは、そうなんだよね。リィン美人だし、本当に双子かなって思ってるんだ」

「……(ニコッ)」

 

 まず、弁明しておくが。

 私と兄貴は──正真正銘の双子だ。同じ母体から生まれ、同じ家で育った。

 双子だから親が違う、ということもまぁないだろう。

 

 でも、魔界での方針は『私:人間だとバラしていく』『兄:人間を隠していく』だから。血が繋がっている、ようには見せたくないのだ。

 兄貴は血が繋がってるよ!って擁護しても、私はやんわり否定せず肯定せず、『優しい入間くんが血が繋がってないのを誤魔化している状態』にしておきたかった。

 

 もちろん、兄貴が人間だとバレた時は別の言い訳が必要だけどね。特に敵対勢力とか。

 

 私の目論見通り、皆『あっ察し』みたいな顔をしてリードくんをぶん殴っている。

 

「まぁそんなことどうでも良きなのですぞ」

「どうでもいい事なの?」

「私としては、師団(バトラ)発表会?みたいな感じに巻き込まれたくなき故に、兄貴とはわざと距離を離すでたです」

「そういうとこ!ほんと、そういうとこだから!自分は巻き込む癖に僕には巻き込まれたくないんだから!」

「あれ?誰が企むすてたのですたっけ?」

「先輩!もー、僕に少しも興味無いんだからさぁ!」

 

 失敬な。

 興味はあるってば。少しだけ。うん、少し。

 

「私、シチロウ先生にご飯持ってくカルエゴ先生を手伝いに行くですから。また後で皆の勇姿を聞かせてくれませぬ?」

「もっちろん。俺らも手伝おうか?」

「大丈夫ぞり!だってほら、新しい料理、ステーキです」

 

 にっこりと断った。

 

 ステーキという大目玉の登場に食べ盛りの子供たちはキラキラと目を輝かせている。

 

 

 私はそっと気配を消して適度に料理を盛り付け、カルエゴ先生に近付いた。

 

 

「せーんせ」

「……なんだ厄介者」

「いや、シチロウ先生のとこ行くでしょ?私が居るすたらオペラさんもマイルドですし。あと実権結果報告もいるですし」

「そうか」

 

 ダリ先生は一足先に悪魔学校(バビルス)に戻って行ったし、アンリさんも魔関署として後片付け。報告者は私一人しか居ないのだ。

 

 私は行き道、ウォルターパーク内で起こっていたことを聞いていた。

 

「常々、トラブルしか呼び寄せませぬね」

「全くだ」

 

 扉を開けると、マスクを外しかけたシチロウ先生が部屋にいた。

 

「あれ?カルエゴ君と……リィンちゃん?」

 

 デリバリィンです、お邪魔します!

 

 

 

 

 

 二人で分担して(と言ってもほぼカルエゴ先生持ち)持ってきたご飯と、せっかく無料なのだからと注文したお高いワインを先生たちが飲食しながら私の簡単な報告書に目を通した。

 

「あちゃー、1番薄いのでも悪周期になっちゃったか」

「はいです」

「無理矢理悪周期にする方法としては有効だけど、悪周期にならない範囲、を探さなきゃね。傷の耐久結果は……うん、1番濃いものだけか。2倍希釈だね」

 

 大きな口でもぐもぐと食べながら書類から視線を外すシチロウ先生に、私は笑顔を浮かべた。

 

「もはや毒ですよね、人間全部食すると」

「……やめてよ、なんか、なんかやだ」

「経口投与のデメリットが大き過ぎるです。悪魔のためにも人間を食糧とするは止めるのが大きいですねぇ」

「そうだけど、それでも食べようとする悪魔はいるからね」

 

 そういえば、という顔をして私は2人のことを見た。

 

 

「今回のウォルターパークの襲撃犯についての情報はなきですか?」

 

 2人は顔を見合わせ、小さく首を横に振った。

 

「スタッフの数名が実行犯だったらしい。ただ、同僚のスタッフたちも囚魔も、誰1人としてそいつらの名はおろか姿すら思い出せないそうだ」

「ふぅん。キリヲ先輩のことも?」

「あぁ…………………………ん?」

 

 なるほどねぇ。

 キリヲ先輩の脱獄も、無かったことにされているのか。

 

 でも兄貴がキリヲ先輩のことを覚えていたし、存在自体の記憶を無くすというよりは『ウォルターパークで起こった記憶を消した』って感じだなぁ。

 

「実行犯は六指衆(むさしのしゅう)と呼ぶされた、男4名女2名の集団。目的は、アミィ・キリヲの脱獄です。他にもあるとは思うですけど……流石にそこまでは探れませぬ」

 

 私はスっと録音していたスマホを取り出して、5分間のやり取りを再生した。

 

 あ、頭抱え始めた。

 

「…………密告するか?」

「まだ。まだです。証拠と悪行にすては、甘きでしょ?」

「それで死者が出たら、元も子もないんじゃないかな」

「だから、情報を回して貰えるようにすたです。あとは、『弱点を掴む』すてから、ごにょごにょですねぇ」

「ごにょごにょ。」

「何それ……」

 

 もちろん後々アンリさんには伝えるつもりだけど。今は逃げて、更なる悪行を重ねてもらわなきゃ。私の命が危ない。

 

「というか、貴様も記憶を無くしたのか」

「………………それが、何故か覚えてるのですぞねぇ」

 

 

 びっくりポイントなのだけど、私、覚えてるんだ。路地裏での会話も、顔も、全部。特徴的な人達で良かった。

 

「私は忘れますた。そう行きます。でも、顔は覚えてる故に、それとなく教えるです」

「あ、じゃあ似顔絵とか書いてもらえる?アミィ・キリヲについては僕らも覚えてるけど、言葉の特徴だけじゃ分からないから……」

「…………………………。」

 

 私は無言で顔を背けた。

 

 

 

 

 私お手製の似顔絵をみた二人は、すぐさま私の似顔絵を消してヒール系の魔術をいっぱい唱えていた。芸術って、腹の足しにならないよね。控えめに言って無くなってほしいかな。

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