第19話 もう1人の生徒
私は鈴木鈴音14歳。
ひょんなことから人間界から悪魔界に身売りした人間です。
こっちは兄貴の入間。
他のクラスの子達に囲まれて
「おはよーござりまーす」
浮かれぽんち達がいい具合に目くらましになってくれているので、私はスススと人影に隠れて教室にはいった。
あ、その浮かれぽんち達?
「──本日より新学期である」
カルエゴ先生に締められたよ。
カルエゴ先生は私や入間が人間だと知ってる教師の一人で、人間である私が悪魔界でバレないように手を回し…てはくれないけど、私が勝手に巻き込む担任だ。
終末日という名の夏休みを過ごしたが、相変わらず堅物はご健在。
なんか巻き込まれで宿題が2倍くらいに増えたのはいただけないけど。
ちなみに私の夏休は己の血の効果が大体わかったので薬を作ってたよ。あと13冠の会議のお茶組みバイト。
「いいか問題児クラス。貴様らは特例だ」
二学期は収穫祭や音楽祭、そしてその都度
あっ、なんか嫌な予感。
「
キィーーン!
耳!耳が!耳が死にます!!
ダメだ何言ってるか聞こえない!
耳をふさいでいると、ようやくうるさい指令が終わったので困惑しながらカルエゴ先生を見上げた。
「な、何……何言うすたです?」
「……どうやら
「ひょえ……横暴……」
クラスメイトが答えてくれた。
確か四って卒業の
なのに1年で全員四になれって、とんでもなくヤバくない?
…………裏技使わないと難しそう。正攻法でいけるのかな?
クラスメイトは絶望に打ちひしがれている。
三学期に何があるのか分からないけど、何も無い可能性が高いから実質二学期中だよね。
えー、無理じゃん。
まぁ、無理なら無理で戻ってもいいか。おじいちゃんパワー使ったらいいんだし。
「まぁこれも授業の一環、不可能な課題は出さん。貴様らを
カルエゴ先生の言葉に、言葉通り特別講師がクラスに入ってきた。
あっ、シチロウ先生とロビン先生とライム先生もいる。
あとは教師陣ではない、かな?
悪魔は、わかりやすく派手な色味だから見分けがつきやすくて幸いです。
兄貴はリード君とペアらしく、ロビン先生に連れられ去っていった。
──ポツン……
「あっ、あれぇ!?」
私だけ誰にも連れられず、取り残されてしまった。
「──お前
「あ、良くは無きですけど、良かったです。カルエゴ先生が担当です?」
「いいから早く着いてこい。逃げても無駄だからな」
念押しするように言ってきて、私は首を傾げた。
嫌な予感はするけど、さすがにここで逃げるほど危機管理能力が低いわけではないよ?
カルエゴ先生は私の姿を見下ろして、鼻で笑った。こ、コノヤロウ……!
さて、大人しくついて行くと辿り着いたのは悪魔学校の近くにある森の中。ある日森の中熊さんどころかドラゴンさえ出てきそうな鬱蒼な森だ。
カルエゴ先生に単について行くならともかく──
「ぜぇ……はぁ……」
──こいつ、飛びやがったのだ!
私飛べないのに!
全速力で走りましたとも。えぇ!
なんか後ろからケルベロスっていう、カルエゴ先生の眷属みたいなのが追い立てるように迫ってくるから全力で!しかもなんか魔物もいたし!
ゼェゼェと息切れした呼吸を整えていると、カルエゴ先生は衝撃的なことを仰った。
「さて。お前達がここに辿り着くまで一時間半。収穫祭までにその移動時間を三十分に短縮してもらう」
ん?
「わ、ワンモアタイムプリーズ」
「三十分以内にこの距離を走れるようにしろ、俺の手助け抜きでな」
魔物蔓延る森、持たない体力。
カルエゴ先生付きでさえ、1時間半。
私はその無茶振りを理解した瞬間、瞬間沸騰湯沸かし器のごとく爆発した。
「はーーー!!!???一時間半ぞ!?なにゆえそれを半分以下に!?ここまで来るのに魔物ぞ居ますたし危なかしき植物みたいなのもござりますたぞ!?頭パー??」
「粛に!それだけでは無い。お前達には授業以外の時間をここで過ごし、サバイバルを行ってもらう。ここまでの通学路の監視はしてやろう」
カルエゴ先生が追い払ってくれたから助かったけど、確実に野生を凌駕した生物が襲いかかってきたし、なんだったらこの道が舗装された危険を避ける必要が無く極々まともな道だったとしても五十分はかかりそうですよね。
それを!このあたおか教師は!
三十分って言いましたよね!?
あたおカルエゴ!
「抗議ぞするです!か弱き人間に何ぞする!」
「…………はぁ」
こいつ遂に人間ってこと武器にし始めたな、って顔で私を見下ろすカルエゴ先生。
えぇ、使えるものならぜんぶ使ってやりますよ!やること?駄々をこねることですけどね!!
「ため息!?私の方が吐き散らかす事願望ぞりんちょ!?素人一人でこのようなる道ぞなんとかする術は全くござりませぬぞりーーーっ!」
まだ魔術もそこまでマトモに使えない新米悪魔になんという仕打ち!
サバイバルならなんとでもなるけど、魔界ならちょっと話は別ですが!?
「やはり気付かないか。お前一人では無い」
「ほへ?」
「だから言ったであろう。──お前
私が疑問符を浮かべて首を傾げているとカルエゴ先生は空間をひっぱたいた。
「あいてっ」
何も無いはずなのに空間から鈍い音が鳴る。
何も無いはずなのに空間から声が聞こえる。
「えっ」
すると、まるで煙を払うように何も無かったはずの場所から、地味な顔をした、とても影の薄そうな生徒が一人出てきた。
というか今まで気付かなかったけどずっと居たの?だ、誰?
「我々は貴様らを育成する為にそれぞれの
カルエゴ先生は腕を組んで私ともう1人を見下ろした。
「喜べ、私が直々に教えてやろう。私は貴様らを
あ、ぜんっっぜん、嬉しくないです。
カルエゴ先生は教員寮に帰っていって、私ともう1人だけが残される。
と、とりあえず今夜を生き残るためにサバイバルって認識であってるよね。初対面の人と。
「……えっと、リィンですぞ。初めますて?」
私が挨拶する。
薄紫の髪をしてパッツンの前髪と後ろ髪。一般的な人間に近い形だけど、角が生えていることから悪魔だということが分かる。
「では無いよ。自己紹介はしたことないけどね。僕の名前はプルソン・ソイって言うんだ。気軽に呼んでよ。そういう事だから君のことはある程度知ってる。あ、カルエゴ先生帰ってっちゃったね。まぁそれはそれとして僕達でこんな所に居れるわけ無いと思うんだけど、どうする?帰っちゃうのも手だと思うよ」
ソイ君は私の目を見てキュルキュルと膨大な文字数を喋り始めた。
ちょっと情報量で頭が混乱しそう。とりあえずプルソン・ソイって名前なのは把握できた。
「めっちゃ喋る……。影薄キャラですたら寡黙の方が良きと思いませぬ?」
「最初に聞くことがそれ?」
「そう。1番気になるすた」
「一時期そっち路線も考えたよ。でも無理。ほら、悪魔に口があるのって食べるための他に喋るためにあるじゃん。普段目立たないように口を閉ざしている分もあって反動で人と話す時も無口になるだなんて本当に難しくてさ」
「そういうも──ぴょえっ、」
ガルル、という獣の呻き声が聞こえた気がして、私とソイ君は咄嗟に固まって木の洞に隠れた。
えーん、怖いよぉ!
朝カルエゴ先生が来るまで本当にそのままなの!?
「……というか、さっき言ってますたよね。帰れるです?」
私の疑問に、ソイ君は無言で渋顔を作った。
「僕だけなら気配消せばなんとか」
「──逃がすか」
物理的に捕まえた。逃がすかこの野郎。
「やだ、離して。僕は気配を消すのが得意だから頑張ったら逃げられる、と思う。リィンちゃんには潔く犠牲になってもらって……」
「させぬぞ!?私一人置いて行こうとすてるですね!?させぬぞり!?」
「僕もまだ死にたくない。そもそも収穫際だってー目立ちたくないのに……っ!」
物騒な森の中にか弱い女の子一人残して行かせてたまるか。
ガサゴソと音が鳴る度に私とソイ君は肩を跳ねさせ、互いに息を殺す。
「……ここ、本当にやばいよ。木の洞の中にいればひとまず大きい生物から身を隠せるとは思うけど、朝まで気配を消し続けないと出来ないし、そもそもさっきの移動でめちゃくちゃお腹すいたし」
私もやばいのはわかる。
兄貴みたいに危険に対しての対処能力が高いわけではないのだけど、それでも今の私じゃ無理なものは無理。
しゅ、修行とか1番やりたく無さすぎる。
「登下校を見守るとか言ってたよね。朝になったらカルエゴ先生が迎えに来てくれるみたいだしサバイバルしかないよね。お互いサバイバル慣れしてなさそうだけどとりあえず……」
「あ、私サバイバル慣れすてますぞ?」
「えっ?」
とりあえず、課題とかじゃなくて、1晩生き残ることを最優先に考えてなら、何とかなると思います。でも……寝れそうには無いかな……!
カルエゴ先生の馬鹿野郎ーー!!!