4度目の人生は悪魔学校で   作:恋音

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第20話 修行というより拷問にほど近い

 

「おはよう諸君」

「「……………。」」

 

「──おはよう」

 

「お、おはようございます」

「ます……」

 

「とても良い朝だ。気分もいい。さて、どうやら初日は五体満足で乗り越えた様だな」

 

 朝。

 満身創痍の私とソイくんの元に迎えに来たカルエゴがやってきていた。私はあまりにも寝不足と空腹でイライラしていたのでカルエゴに掴みかかろうとして……避けられてべチャリと地面を転がった。

 

「鬼!悪魔!人殺し!」

「死ぬかと思った……もうまじで無理だって女の子と二人きりで淡い恋心を抱くとかそんな青春ストーリーが繰り広げられると思った?そんなわけが無い芽生えるのは恐怖だよ吊り橋効果も行き過ぎるとただのトラウマスイッチ勘弁してくださいカルエゴ先生もしかして悪魔殺しを極めた方???」

 

 私とソイ君の抗議を素知らぬ顔で聞く担任。

 

 

 本当に死ぬかと思った。

 これでも人間界で一生懸命サバイバルやってきたから魔法で気配消せるソイ君ほどじゃなくっても気配消す事なんて出来ると思っていたんですよ。

 

 けど甘かった!

 

 そう、あれはこの森に置いてかれて割とすぐのことだった。ご飯を食べなきゃやってらんねぇ。ってことで、どれが食べれるのか食べれないのか、試食しながら選別していたところ突然でてきた紫色の怪物。

 まぁ逃げたよね。間違えて詰んだ毒持ちの食べ物も含めて丸ごと口の中にぶち込んだから、食べ物はこの時点で消えた。悲しい。

 

『食べ物は無理くない?』

『わかる……ここから外出時する気出来ぬです……』

 

 極度の緊張状態だったからか、眠気はあっという間に訪れた。

 

『お腹すいたけど明日の学食で凌ごう』

『賛成』

『少しでも仮眠を──』

 

 そうして木の洞で寝ようと思った瞬間、バリバリーという轟音。はい、木がなぎ倒され壊された瞬間の音ですね。

 

『む、無理ーーーーー!!!無理みがアッパー!!!』

『静かに!!』

 

 撃退なんて出来ないからひたすら逃げてたけど、叫び声以前に逃げる音で更に気付かれるというね負のスパイラル。

 

 ソイ君と協力してあの手この手で回避してたけどまじで冗談抜きで死ぬかと思ったし、ボロボロよ。

 

「ふむ」

 

 だ〜というのにこのあたおカルエゴはまだまだいけると言いたげに頷いた後、羽を使って悠々と飛びながら学校に向かった。

 

「ソイ君後ろ、後ろ来るすてる!」

「いっ、いそごう!限界を超えて走ろう、カルエゴ先生いるからまだ大丈夫だから全力で走ろう!めちゃくちゃ疲れてるからやばいけど!もう膝に来てる!!」

 

 このクソ〜!!!

 

 

 通常授業は死屍累々と言った様子でクラスメイト達も机に突っ伏して息がなかった。恐らく私たちのように眠れてない者もいるんだろう。

 

 初日ということもあってか、会話する気力もなく。不足していた睡眠と休息をそれぞれ取っていた。

 

 うう、体が痛いし眠たいししんどいし。

 

 これは、やばい。まだ一日だから耐えられるけどこれが1ヶ月くらい続くことを考えたら間違いなくしぬ。

 

「リィン大丈夫?」

「…………」

「これ大丈夫じゃないやつだ。家には帰って来ないってオペラさんから聞いたけど」

「……………………」

「否定なしってことだね、了解」

 

 なんで兄貴はピンピンしてんだよぉ……!

 他のクラスメイトの死屍累々具合が見えないの……!?

 

「ちなみに、リィンは使いっ走りの極意についてどう思う?」

「………………屋敷しもべ妖精」

「なるほど」

 

 いや本当に何をしてんだよ…………?

 

 

 お昼休憩。

 

「──リィンちゃん作戦会議をしよう」

「大賛成ぞ」

 

 ソイ君の提案に食い気味に返事をした。

 食堂からお弁当セットを受け取り、屋上までやってきた。

 

 もぐもぐと、あの、ぷにっとしたマーブル色の野菜みたいな味のよく分からんやつを食べながらソイ君と作戦会議をする。

 

「正直、放課後やってくるカルエゴ先生を避けるって方法もあるけど、多分」

「無理無理無理」

 

 私は無言と首を振った。

 

「ソイくんはあの化け物相手に敵うとでも?」 

「無理み」

「ですぞね!」

 

 無理に決まってるよ。そんなの。

 あの悪魔マジモンの悪魔だもん。13冠の方が優しいもん。

 

「抗うよりも生き残る術を考えた方が良さそうだね」

「うむ、左様ですぞ。出来ることと出来ぬことぞしっかり把握しあって、何とか生き延びねばなりませぬ」

 

 するとソイ君は自分の特技を話し始めた、

 

「僕は家系魔術の認識阻害に長けてるけど、その分戦闘は無理。家庭の事情により目立つのも無理」

 

 なるほど、認識阻害。

 だから私はずっと一学期間ソイ君の存在に気付かなかったのか。

 

「私はそもそも人間なので家系魔術とかなくて基礎的な物しか出来ぬですよねー」

 

 魔術は初心者すぎて、悪魔学校(バビルス)で習ったこと以外のものは使えない。使おうと思ったことが無いわけではないのだけど、小手先の魔術より伝手の方を優先した結果ですよ。

 

「やっぱ戦闘は無理だよね。戦って勝つスタイルじゃ生き延びれ…………。……?ん?人間?」

「うん、人間」

 

 私が頷けばソイ君は明らかに固まった。

 

「…………なんで?」

 

 私がここで人間カミングアウトした理由は二つ存在する。

 

 一つは認識阻害に長けているからこそバレるのは時間の問題だと思ったから。

 

 そもそもソイ君がいるタイミングで、カルエゴ先生に向かって自分のこと人間って言っちゃってるんだよ。

 そういう感じで盗み聞きされたら痛い。

 

 

 もう一つはずばり、共通の敵がいるから。

 

 人は共通の敵や困難に遭うと共感や共同行為から友情を芽生えさせることが多い。

 ミラーリング効果とか吊り橋効果とも言う。実際私たちは一晩を乗り越えただけあって共に苦労する仲間という認識になってる。

 

「ソイ君は、私に酷き事せぬって分かりますぞ」

「……リィンちゃん!(青春の音)」

「お前は苦労する側で酷き事される側」

「……リィンちゃん(距離が離れる音)」

 

 ソイ君は喜びから悲しみの表情に変わった。

 

「ソイ君頑張るしよう!あわよくばソイ君を生贄にぞすて一人逃げ出そうとか悪魔学校に人間がいるくらいの確率で思って無きですから!逃げられぬからには全力で生き延びるしようぞり!」

「ねぇどっち?言語含めて分かりづらい慣用句使わないでもらっていい?人間って悪魔の言葉喋れないんだね知らなかったよ。初知り初知り。それと割と僕のこと見捨てる気だったんだ。あとごめんね人間って聞いて割とテンパってるから時間欲しいんだよね、おかしいな僕悪魔観察結構する方だから女の子のプライバシー守りながら君のこと知ってると思ってたんだけど」

 

 怒濤の長文。

 そして真顔だった。

 

 見捨てて逃げる気は少しだけあるよ。悪魔界に人間が紛れている確率位で。

 

 悪魔観察の趣味は今後色々役立てそうで、嬉しい情報だ。

 

「というか、なんで魔術使えるの?人間って使えないんじゃない?」

 

 ソイ君はぐるぐると疑問が浮かぶのか高速で口を動かしている。

 

「いやこうやって死地に立っている以上、魔術が使えるに超した事はないし、リィンちゃんのサバイバル知識のおかげでなんっっとか生き延びてると言っても過言では無いけど」

 

 私は頭につけたリボンを指さした。

 

「リボンぞ。これが魔力ぞ貯める媒体。よってこの青きリボン経由で魔法使えるって訳ですぞ」

 

 私のリボンを観察したソイ君は『ふーん、わからん』って顔をしながら渋々納得した。

 

「便利だけど不便だね。家系魔術とかも無いし溜めてる魔力が無くなれば回復しないし無力じゃん」

「あとは血液」

「SO CRAZY……(訳:とても狂ってる)」

 

 む、信じてないな。バカにされてる。

 まぁ血液って言っても悪周期を呼び出したりする厄介なやつだけど。

 

「人間の血液、植物ぞ育てるが可能ですし傷を治す事も出来るですぞ。人間が悪魔にとってのご馳走っていうのあながち間違いでも無きですぞねー。だから狙うされるが……」

「──待って待って待って!?それ多分気付いちゃいけないことだよね!?お願いだから僕との約束、内緒にしよう」

 

 植物も育てられるし傷も直せるぜ!とドヤ顔したら顔面蒼白のソイ君が大慌てで手を振った。

 

 約束はできない、かな……っ!

 

「世話焼きぃ」

「焼かせてるんだよ!何、イルマくんってすごい人?あの二人を手玉に取りながらこんな別の意味で会話できない人を丸め込んでたの?猛獣使いの才能あるよ。僕昨日からたった一人に振り回されてばっかりなんだけどカルエゴ先生はどうしてこんな組み合わせに……あれ?ちょ、まってイルマくん?」

「居らぬぞ?」

「イルマくんってあの三人組ってイメージが強いけど、あれ、確か、兄妹……?」

 

 私が割と人間だって事ばらすのには理由がある。

 

 それは『実はこいつは人間だったんだ!』って弱点を暴露された時に『えっ知ってるけど?』としたいのだ。

 秘密は隠すから弱点になるのであって隠さなければ弱点にはならない。

 

 ……ただ、そうなると血が繋がってる兄妹だから兄貴も芋ずる式にバレる事になる。

 

 

 だから私はあえて存在感を消している。だから私はあえて兄貴と一緒にいない。

 

 『リィンとイルマ』ではなく『リィン』と『イルマくんとアリスくんとクララちゃん』に認識を分けている。

 裏工作は最初からやらないと。リスクヘッジだよ。

 

 間違いなく血縁関係はあるのだけど、幸いなことに顔はあんまり似てないからね。

 

「私養子ですもん」

「そう、いう?こと……?」

 

 そうだよ。私(と兄貴)は理事長の養子なんだよ。

 兄貴に同情を寄せているソイ君を見て、私はしめしめとほくそ笑んだ。

 

 

 まぁ過去一レベルで命の危機なのでそれどころじゃないんですけど。

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