4度目の人生は悪魔学校で   作:恋音

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第21話 使えるものはなんでも使う

 

 本格的に修行、もとい地獄が始まった。

 

 特別講師はカルエゴ先生。相棒はプルソン・ソイ君。目標は片道一時間半かかった道のりを三十分に短縮することと、カルエゴ先生が居ない間の夜中をサバイバルで生き延びること。

 

 もちろん通常授業も変更なく行われ、心身ともに疲れ果てていた。

 

「あの道のりを三十分で行こうとするなら、まず安定したサバイバルの生活は欠かせない」

「ですね、徹夜で走り切れる道では無きです。しっかり休息と栄養ぞとって、それでいて魔物もどうにかせねばならぬですね」

「リィンちゃんの体質上、飛べないのも痛いね。となると地上を行くしかないけど、体力もつけなきゃ」

 

 まずは安定したサバイバル。

 基本は木の洞で気配を限界まで消し、そこら辺にある草をもぎ取って試食した。

 

「可能、不可能、可能、可能」

「せっかく野草の本借りてきたのに口に含んでジャッジするの辞めよ?命に関わるよ?あと不可能ってどういう意味で不可能なの?」

 

 私がOKを出した食材の中でも不味いのはある。生食に向かなかったり。

 この危険地帯で火を使うのはちょっと絶望的な手かなと思う。

 

 口に含みながら毒じゃないものをソイ君には頑張って食べてもらおう。大丈夫大丈夫、毒ではないから。

 

 魔界の毒性がどれだけ強いのか分からないけど、人間界の毒キノコのスープをしこたま飲んできた私ならある程度は耐えられるだろう。

 

「ソイ君」

 

 出惜しみ無しだ。

 

「いざと言う時は、ソイ君が盾になるすてください」

「言われなくてもそうするつもりだったけど言われると途端にやる気なくす。どうして」

「合理的な考えはあるですぞ?」

 

 まず、怪我をした場合の治療方法。

 悪魔がわたしを治療することは魔術的にできなくもないだろうが、試した覚えがないのでいったん置いておく。

 次に私が悪魔を治療することは、血液をぶちまけるだけでいいので可能だ。

 

 確実な手として置いておきたい。

 

「…………それ僕の体に悪い何かとかじゃないよね?」

「大丈夫、実験済み!」

「どこで!!??」

 

 とっても楽しい遊園地でだよ!

 

「ソイ君は遊園地行かなかったですか?」

「まぁ……視認されてもない僕が行っても……そもそも誘われてないし、あ、落ち込んではないよ。だから慰めとかはいらな……要らないとは思ってるけど、あからさまに興味無くすのやめてもらえる?」

 

 それもそのはず、私は薬草をちぎって石の上ですり潰していたのだ。

 

「ねえ、それ何」

「私の選択授業は拷問学です」

「うわ、似合う」

 

 拷問学の授業には悪魔を昏倒させるための薬草学も分類に入っている。

 

「この2日間、全然上手く行くすてなきじゃないですか」

「上手くいってないってこと……?確かにそうだね。あともう少ししたら夜行性の動物が目覚め始めるし、その状態を掻い潜るのは割と至難の業だよ。夜行性って基本的に気配とかじゃなくて別のところ、体温や聴覚や嗅覚でもこちらを見据えてくるから困るよね」

 

 なので私は、1本のお薬を取り出してソイくんの口にぶち込んだ。

 

「!!!!???」

「トんでらっしゃい」

 

 貴方の家系魔術、今伸ばさないでいつ伸ばすっていうの。

 

 ソイ君の羽は大きく、そして目は完全にとんで。この世からその存在を大きく消し去った。

 

 

「ソイ君〜、ご飯こっちぞり」

 

 私は左手に傷をつけて、血を流す。

 人間隠しの香水をつけてないから美味しそうな匂いが強いだろう。

 

 私を食べにかかろうとする理性が飛び去ったソイ君。私はひとつの紙を取り出した。

 

「ピンチです!先生助けて!」

 

 ポフンと現れたのはロビン先生。

 

「えっ!何!なにごと!?」

「ロビン先生、そこの薬草の塊、ソイ君の口にぶち込むすてくださいです!」

「本当に何ーー!?」

 

 

 

 

 

 

「ひ、久しぶりに悪周期になった…………」

「ロビン先生ありがとうござりますた」

「うん……じゃあね……」

 

 膝を着いて息を荒らげているソイ君。

 ロビン先生は周囲の魔物をあらかた片付けた後、兄貴とリード君の修行の方に戻って行った。

 

「そうそう使用不可の裏技です。ロビン先生使い魔にすて良かった〜」

 

 私が作っていたのは鎮静剤だ。

 気を落ち着かせると言うよりは眠りにつかせるためのもの。人間界で言うクロロホルムとかそっち系の薬。

 

 悪周期のセーフワードなどを作ってない為、物理的に悪周期のソイ君を抑え込む必要があった。そのための薬、そのための使い魔。

 

「お嫁に行けない……」

 

 どちらかと言うとお嫁をもらう側だろ。

 そんなことを脳内でツッコミつつ、私はロビン先生が倒してくれた魔物を捌いた。

 

 血の濃い匂いがまとわりつくけどそれより久しぶりの動物性タンパク質。

 

 お昼は、位階(ランク)が低いこともあってそこまでしっかりとした栄養を取れないからね……。

 

「……捨ておくにはもったいなきですけど、抱っこには邪魔な量のお肉」

 

 頑張って安全な場所に運ぶか。血の匂いがする場所で待機は出来ない。

 

重力操作(フラクタル)

 

 私はうつ伏せで倒れているソイ君と魔物のお肉にかけ、両手で抱えた。いざとなったら落として逃げる予定だ。

 

 ある程度安全なポイントだろうと言う場所に逃げ、ソイ君を地面に落とすと私は火を付け加熱調理し始めた。作り終わったらまた別の箇所に逃げないと。

 

「さて、悪周期で何か掴めたぞり?」

 

 傍から見るとすごく存在が薄くなっていた。通常の悪周期に比べて何か変化があるのだろうか。

 

「──とってもね」

 

 その日食べたお肉は、人生の中で1番美味しいお肉だった。

 

 

 体は資本って事だ。

 お肉、どーにかして確保し続けたいから魔術の研究や取得も同時にしたいな。生活の質の向上に繋がる。

 

 

 

 

「ところでリィンちゃん、方向性がわかってきた所で相談なんだけど」

「はい、何です?」

 

「あのカルエゴ先生を、驚かせたいよね」

 

 私達は固い握手をした。

 

 

 

 ==========

 

 

 

「うわっ。なんですかこの講師陣。超有名なくせの強い悪魔ばっかり」

「問題児クラスへの期待が大きいのは分かるけど正直厳しすぎですよね〜!」

 

 職員室。

 

 問題児クラスに振り分けられた講師陣一覧を見て教師達はドン引きしていた。

 

 教師統括のダンタリオン・ダリはケラケラ笑いながら背もたれを引いて、背面にいるカルエゴに話しかけた。

 

「講師陣の選抜はカルエゴ先生ですよね?もしかして、ムチャな試験で王の教室(ロイヤルワン)を学校側に取り戻そうとか、私情入っちゃってます?」

 

 その疑問にカルエゴは口角を釣り上げる。

 

「アイツらが苦しむ姿は見ていて気分がいいです」

「わぁ、陰湿〜」

 

「──しかし。私は奴らを叩き上げるのに適任な講師を用意したまでです。厳粛に」

「それって、あの子も?」

 

 陰湿だなー、なんて言いながらダリはカルエゴの後頭部を指でつついていた。

 

 ダリはリィンが人間だと知っている悪魔の一人。

 

 カルエゴが用意した講師陣は優秀で、癖こそ強いものの悪魔を育てる上では理想的な人員であろう。

 しかし悪魔向けの講師陣のため、非力な被食者である人間には向いていない。

 

 ……特に担当講師がカルエゴであり、放置したのは悪魔学校の崖下荒野の中にポツンと存在する立ち入り禁止区域。

 飛べない子供には崖を登ることさえ出来ない。

 

「プルソン・ソイならともかく、あちらには難しいでしょう」

 

 カルエゴはそう予想を立てた。──と言うのに。

 

 

 

 

 

「──……記録、十五分ピッタリ」

「よっし!!!!」

「やり切った!」

 

 カルエゴの言葉にプルソン・ソイとリィンは互いにハイタッチをして喜んだ。

 

 二人の課題は凶悪な魔物達がいる森の中で過ごす事、そして学校まで三十分で辿り着くこと。

 その目標の半分で辿り着けた事に加え、最近の二人は授業中に寝ることも無くなっていたので、この空間でしっかり睡眠と栄養が取れていたのだ。

 

 まさかとは思うが、サバイバルスキルを持っていたというのか?

 

 カルエゴは通学の様子を思い返しながら採点をした。

 

「なるほど、目敏い魔物の横を通っても気配を消せていたな」

「僕結構頑張ったんで」

「食料はどうした?」

「私かなり頑張りますたぞ!」

 

 そう、二人はかなり頑張った。

 

 まずプルソン・ソイは認識阻害魔術の覚醒により他人を隠せるようになった。手を繋いだり掴んだり、肉体接触が無いと他者を隠せないのは課題だが、己のみだった魔術を考えると大きな進歩だろう。

 

 次にリィン個人も、認識阻害魔術とまではいかずとも並大抵の魔物や悪魔から気配を隠せる術を身につけた。

 

 サバイバル中の過ごし方は実にシンプル。

 食料調達と寝ている間の認識阻害。

 

 食料は、認識阻害で消えている最中にリィンが仕留める方法だ。ソイは家系魔術が進化したとはいえ、さすがにまだまだ荒削り。集中力を切らす訳にはいかない。

 

 

「褒めて!褒めて!」

「褒めるすて!」

 

 ソイとリィンはぐるぐるカルエゴの周りを回る。

 

「(想像以上だ)」

 

 魔物の生態を見抜くこと、初見であっても最適解を見つけ出すこと、体力的な能力も考えての30分という目標に、さらに体力をつけることで15分に短縮したこと。

 

 カルエゴの口角はさらに吊り上がる。

 

 

 講師陣にとって。今回の指導は所謂査定。

 問題児クラスの面々が『四』に上がれる器で無いと判断したら即時撤退する手筈だった。

 

 しかし生徒達は素質、意外性、努力を示し彼らの想像を超えた。

 問題児クラスは講師陣のお眼鏡にかなったのである!

 

 

 ──そう。かなってしまった。

 

 面白いものが大好きな悪魔。気に入ったものにはタカが外れる。

 

「──もっと、キツくしても大丈夫だな」

「「えっ」」

 

 カルエゴの周りでマイムマイムしていた二人は同時に短い言葉を発し、顔を見合わせた。

 

 その日から数週間。

 リィンはもちろん問題児クラスの面々は例外なく、地獄を見た。

 

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