4度目の人生は悪魔学校で   作:恋音

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第3話 先生と行く楽しい使い魔召喚!

 

「入間はいい子なのに、鈴音は悪い子ね」

「断るし嫌がるし逃げるし、ほんとに困った子だ」

「だからね、鈴音。──悪魔さんに売ってもいい?」

 

 

「──よろこんで!!!!」

 

 ギャースギャースという鳥か何かの囀り声が聞こえて、私は目を覚ました。

 

 

「よくないよっっ!!」

 

 隣で似たような夢を見ていたであろう兄貴がほぼほぼあ同時に目覚めたのを見て、今世始まったな、と確信した。

 

「おはようぞり、兄貴」

「うん、おはようリィン」

 

 顔を見合せて朝の挨拶をする。双子パワーというかなんというか、私たちはよく同じような夢を見る。

 兄貴がげっそりした顔をしている。うん、同じ夢だな。

 

「あのさ、人間ってバレたらやっぱり食べられるかな」

「食人文化は確定で存在するぞり」

「だ、だよね〜〜〜〜ッ!やっぱり今からでも断って……」

「でもね兄貴」

「うん?」

「熊とか鰐とかに追うされるより会話の余地があるから楽じゃなき?」

「……。確かに」

 

 納得しちゃった。

 そうだよ、危険はあるとはいえど、想定しうる危険しか無いんだよ。

 

 それにお布団で寝れて暖かいご飯が出てくるならクソ両親よりも100倍安全だよ。今のところ。

 

「大丈夫兄貴」

「リィンの大丈夫でろくな目にあったことないから何も信じないけど言ってみて?」

「死ぬまで殺せばなんでも死ぬ」

「ほーらろくなこと無かった。おやすみ」

 

 あぁ、兄貴は布団の中に舞い戻ってしまった。私のせいです。

 私がこんなに物騒な思考回路をし始めたのは元を辿れば兄貴のせいだからね。

 

 そう、あれは約6歳位の事だった──

 

「……イルマくん、リィンちゃん、起きてるー?朝ごはん食ーべよ〜!」

 

 むっ、ヤクザのシマでティッシュ配りやってた時に覚せい剤患者が私たちのことバイヤーだと思って襲いかかって来たのを必死にかわしてボコボコやり返そうと頑張ってたのに大人には全然敵わなくて兄貴は避けれるけど私は避けられない可能性あるしこうなりゃ殺されるより殺すしかねぇと思って石を片手に構えた時ヤクザ(覚せい剤患者ボッコボコの刑)に拾われた話がまだ終わってないのに。

 

「あ、はい!今行きます!」

 

 バタバタ制服に着替えて部屋の外に出るとおじいちゃんが立っていた。おじいちゃんの後ろには使用人のオペラさんが控えている。

 

 ……個人的にまだオペラさんには歓迎されてない気がするんだけど、おじいちゃんはもちろんそうなんだけど、私の勘は『媚び売れ!』ってオペラさんに対して訴えてくる。

 

「よく眠れた?」

「は、はい」

「それにしてもほんとに一緒の部屋で良かったの?2人用に個室用意してたのに……」

「ずっと一緒ですた故に!バラバラだと眠れぬです!」

 

 おじいちゃんに手を上げて訴える。

 そう、私と兄貴は共依存気味。そうなんです。だから兄貴は『いや子供じゃないんだから独り寝できるじゃん』みたいな視線やめて頂けます?

 

 今後2人きりになるのが難しくなるでしょ!

 

「──そういえば入学祝いがあるんだ〜!」

 

 食卓について朝ごはんを食べているとおじいちゃんが兄貴用と私用で別々の入学祝いを取り出した。

 

「見て見て!奮発しちゃった!」

 

 あ、兄貴がプレッシャーで胃がはち切れそうな顔してる。

 大丈夫だって兄貴。この悪魔は可愛い孫でいる限り牙を向かないタイプだからそんなに警戒しなくても。

 

 それより私は教師陣の方が怖いよ。

 

「「はぁ……」」

 

 奇しくも同じタイミングでため息を吐いた私と兄貴は、とぼとぼ学校に向かうことになったのだった。

 

 

 ==========

 

 

「イルマ様!おはようこざいます!」

 

 速報。兄貴、舎弟を作る。

 

「舎弟じゃないからね!?」

「嘘ぞり。その顔が舎弟じゃなき理由が他に存在する?否!しかも首席じゃなきですか」

「決闘見てないのによく覚えてるよね」

 

 そりゃ媚び売りセンサー発動してますから。

 

「貴様……イルマ様になんと無礼な……っ!イルマ様、このアスモデウス・アリスが手を下して」

「わ〜〜〜〜!ストップストップ!妹!妹なんだ!僕の!」

「妹?」

「妹。」

「ぞ!」

「これは大変失礼しました。妹君」

 

 恭しく頭を下げられる。

 ん?お?

 

「初めますて、リィンです。あしゅもで、あす、あすもどぅ、んんっ、あーー。うん、無理、よろしく首席さん」

 

 私はこう見えて純日本人なので、アスモデウスなんて言葉は発音できません。

 それが分かっているので兄貴は軽く笑った。

 

「ごめんアスモデウス君。リィン、発音が苦手でさ。コミュニケーションはちゃんと取れるんだけど、色々な言語覚えたせいで母国語ですら危うくて」

 

 母国語に横文字の名前が出てたまるか!

 

「アズでいいですよイルマ様。妹君も呼びにくければアズで」

「リィン」

「……は」

「リィン。ほら」

「リィン……様」

「よろしきぞ」

 

 妹と呼ばれるのは好きじゃない。なんでって、兄貴に巻き込まれるのが確定してるから。

 

 ……まぁ私は入間のこと兄貴って呼ぶけどね。

 

 昔は兄貴のこと名前で呼んでたんだけど、あるとき私の方がメインで厄介事に巻き込まれたりする回数が多くなった時、兄貴を道連れにする為に『アニキ!』って呼び始めたんだ。

 

「あじゅ、あーこれもダメぞ。ファーストネームで呼ぶぞり、アリス君」

 

 アリス君は眉をひそめた。

 

「よ、よし!じゃあ2人とも行こうか!」

 

 周辺からヒソヒソと『特待生が首席を従えてる』とか『特待生のやつもうイロが出来てる』とか囃し立てる声が聞こえてきた。

 噂話の話題に立てられるのが苦手な兄貴はそさくさと校舎に向かおうとする。

 

 誰が情婦(イロ)だ。顔覚えたからな。

 

「……。」

「…………。」

 

 兄貴の後ろでアリス君と私が無言で見つめ合う。

 

「あくまでも私はイルマ様に従っている。思い上がるなよ……──イルマ様!カバンをお持ちしましょうか?」

「えっ、いやいやいいよカバンくらい自分で持つって!」

 

「……兄貴、クソ生意気なる舎弟ぞ作るの早き」

 

 兄貴に味方が出来たことに、少し安堵の息を吐きながら、2人の後ろを歩いた。

 

 

 

 今日は使い魔召喚というレクリエーションがあるらしい。伝統行事で、召喚した使い魔の質で生徒の位階(ランク)を計るってクラス分けをするというのが主な趣旨だ。

 

 皆使い魔が楽しみなのか緊張しているのか分からないがザワザワとしている。

 

「ね、リィン。使い魔に食べられたりとかしないかな?」

「主従を結ぶ限り大丈夫なのではと思うですけど……。あ、私兄貴と一緒に目立ちたくなき故に離れるぞり」

「へあ!?う、裏切り者!」

 

 別に裏切っては無い。兄貴の悲鳴を聞き流して適当な悪魔に話し掛ける事にした。

 

「おはよう」

「あら、おはよう」

「お、おはようございます」

「2人とも美人故に思わず声ぞかけるしてしまったです」

 

 別名ナンパです。

 えへへ、と笑いかけると、露出度の高い金髪の悪魔とメガネをかけた綺麗な髪をした悪魔が返事をしてくれた。

 

「はじめますて、リィンです。使い魔召喚、とっても緊張するですね」

 

 媚びの特売セールである。勘に引っかかっても引っかからなくても、愛想良くして愛嬌振りまいて恩を売っておくに限る。そんで後ほど回収するのだ。金貸しと同じ原理ね。

 

「ベリーキュート!可愛い!」

「ご存知済み!」

「随分、その、不思議な喋り方ね。節々分からないんだけど」

「色々言語ぞ学習すたらわかんなくなっちゃったです」

「わかんなくなっちゃったのね」

「わかんなくなっちゃったのなら仕方ない……?わね」

 

 多分半分くらい聞き取れなかったのだろう。首を傾げてお互い顔を見合せている。

 

「イクス・エリザベッタよ、よろしくねリィンちゃん」

「私はクロケル・ケロリよ……。うん、よろしくお願いします」

 

 ちなみに、割と順当に友達を作るのは初めてだったりする。

 友達(カモ)なら作るのとくいなんだけどなぁ。

 

 

 

「──粛に。監督官のナベリウス・カルエゴである」

 

 大広間で行われるその行事を取り仕切るのは我らがカルエゴ先生だった。

 

 やっほーカルエゴ先生〜!

 

 手をフリフリしたら死ぬほど嫌そうな顔で睨まれた。げせぬ。

 

「……この行事は常に私の担当だ、なぜか?私が常に厳粛であるからだ。貴様らが使えるゴミか使えないゴミかを判断する」

 

 名声を瓶の中に詰め、栄光を醸造し、死にすら蓋をする、とかって気取ったセリフを言いそうな悪魔だなこいつ。

 偏頭痛持ちのキレ芸先生だと思ってたけど、色々と苦労しそうな男だ。

 

「粛に、全員並べ。これより召喚を始める」

 

 カルエゴ先生の整列で皆が次々と召喚し始める。

 アリス君は白い蛇を、ケロリちゃんは氷の狼?みたいなのを召喚した。

 

 私は人間だから魔力もないからどう影響が出るんだろうか。

 ……、うん、兄貴に先にやってもらおう! 

 

「お願いお兄ちゃん、先よろしくぞ」

「こういう時に限って可愛こぶるんだから」

 

 生贄ゲフンゲフン、ジェントルファーストだ。

 

 

「(入学式の騒ぎもあったが、その後のリィンの騒動で全てどうでも良くなってきた。さっきも私を見つけたからとヘラヘラ笑いおって……。本当に養子か?やかましく、節度がなく、マイペース。私の三大嫌悪を凝縮したあのMr.適当、アホ理事長にそっくりなんだが……っ!)」

 

 

 カルエゴ先生が何か私を睨みつけながらぼやっとしていた時だ。

 

「(待てよ、入学式……。確かこの特待生は理事長の孫とか言っていたな……。ギリの孫の人間(リィン)だけではなくこいつ、も)」

 

 

──ずるるっ

 

「「「!?」」」

 

 兄貴の召喚陣の中からカルエゴ先生の上半身が出てきた。

 

「はあああああああああ!?」

「アッハッハッハッハッ!!!」

 

 これはカルエゴ先生の大絶叫と私の大爆笑である。

 

「なんだこれは貴様は何をした!?」

「いやっ、僕にもさっぱりで……!」

「アーーーッハッハッハッハッ!!!」

 

 混乱した2人。カルエゴ先生は押せと言う。そして兄貴は、下から上に押し上げてしまった。

 

「なんでだーーーーーーーッッッ!!!!」

「アッハッハッハッゲホゲホウェ…ッハッハッハッハッ最高!ッ、ゲボ、っぐぇ」

 

 笑い過ぎて地面に崩れ落ちた。酸素をください。使い魔召喚は監督官の体調不良により中断された。

 

 

 ==========

 

 

 

 ──翌日。

 

「聞いてないが?」

「知りませぬが!?」

 

 恐らくだけど、『兄が人間であるということ』も聞いてないのうちに含まれてると思う。

 

 私(人間)+兄(X)=人間

 X=人間

 と言う方程式が成り立ったカルエゴ先生は遠慮なく容赦なく私に鬱憤をぶつけてきた。

 

 復活が早いねカルエゴ先生。もうちょっと沈んでても良かったのに。

 

「聞いてないが!?」

 

 彼はそれにプラス『人間なら魔力が無いから召喚出来ないだろうとタカをくくって居たのに何故か自分が召喚されているのは聞いてないし想定してないんだが!?』って感情も含まれているんだろう。

 知らんがな。お前の傲慢が招いた結果だろ。

 

「コホン、とにかく妹の方。お前には後日となっていた召喚をしてもらう。だが、あいにく私は体調が万全ではなくてな……というわけで召喚術の先生に来てもらった」

 

 色々な感情を一気に飲み込んだカルエゴ先生は説明口調で後ろに目を向けた。

 そこには緑の切りっぱなしヘアの男の悪魔がいた。

 

「よろしくね!最初の君たちの授業ではカルエゴ先生だったけど、本来の使い魔学教師のバルス・ロビン先生だよ」

「バルス……。目が……」

「め?」

「あ、いや、こほん。どうも、はじめますてロビン先生!リィンですぞ!」

「ぞ?」

「失礼しますた、言語が少々残念なる存在ですて」

「少々(笑)」

「カルエゴ先生ぇ???」

 

 鼻で笑われた。くやちい。

 

「こいつは新任教師だ。とてもやかましい。貴様の様な(笑)アホには(笑)話が合うことだろう(笑)」

「誰がアホですぞりんちょ!?」

「……貴様の語彙はどこからくるんだ?」

 

 兄貴が標準語で喋ってるからか疑問に思ったらしい。私も知りたい。

 

「えっと、よく分からないけど元気だね!おっけーおっけー、そういうことならリィンちゃんの召喚に早速行っちゃおう」

 

 どうやら私は今から使い魔を召喚できるらしい。せいぜいやった事にしてやれなくなるものだとばかり思ってたんだけど。

 

「説明は聞いていると思うからかっ飛ばすね!あ、召喚はこの紙を扱ってね〜れ僕お手製だけどカルエゴ先生の監修付だから安心して」

「は、はぁい」

「ではでは〜レッツエンジョイ召喚ライフ☆」

 

 チラリとカルエゴ先生に視線を向けた。

 

「( 殺 れ )」

「(……い、イエッサー)」

 

 兄貴がカルエゴ先生を召喚した。ということは同じ人間で妹の私がどうなるかって言うと……。

 

「なんでなんだよーーっっっ!!」

 

 召喚されたロビン先生はモフモフの姿になって膝から崩れ落ちていた。

 

 うん、ドンマイ。こき使うつもりなのでよろしくね!

 

「せめて、せめてかっこいい姿であって欲しかった」

「先生って実はすごいですぞね」

 

 ロビン先生に言われたのがこのセリフだった。

 寝込んだカルエゴ先生とはメンタルが違うや。

 

──スパァン

 

 これはハリセンで頭を叩かれた音。




早く推しのプルソン・ソイを出したいがすぎる……っ!
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