「おはようございますイルマ様!」
「おはようイルマち!」
「おっ、おはようアズ君、クララ」
増えとる。
「こっちはクララ。昨日仲良くなったんだ」
「よろしくねー!」
「こっちはリィン。僕の妹だよ」
「よろしくですぞ!……ところで兄貴下僕作るの早くなき?」
「下僕じゃないよ!?」
今日の午後はクラス分けだ。午前中は割と暇そうなので食堂の方に向かった。
ウァラク・クララ、という緑の髪をした子供っぽい女の子が増えいる。私が昨日使い魔召喚の補習をしている間に一体何が……。
「下僕否定?なれば友達?」
「お、お友達、でいいのかな……!」
キラキラと目を輝かせている。
そういえば
「イルマ様、オトモダチ、というのは一体なんですか?」
「おもち?」
「oh……カルチャー……」
どうやら悪魔にはオトモダチという文化が無いらしい。もしくはかなりマイナーな文化なのかのどっちか。
「友達って言うのは一緒に遊んだり、ご飯食べたりする大切な相手……かな?」
「「おお〜!」」
じゃあ私はオトモダチですね!?と、ふたりが盛り上がっている。
イルマ軍オトモダチ1号と2号だ。
「じゃあリンリン!」
「りんりん?」
「リンリンもイルマちのオトモダチ?」
「お友達じゃなきですぞ」
「そうだねぇ、リィンは妹だから」
「なぜリィン様はそのような不気味な口調なのでしょうか。語彙を理解するのに時間がかかる……」
アリス君が頭を抱えている。よし、無視しよ。
「妹はオトモダチになれないの?」
「そうだよ」
「妹は妹でしか無きですよ。唯一無二で揺るぎなきですぞり」
「イルマ様!私たちのオトモダチも揺るぎないですよね!?」
「アリス君声量大きぞ!」
耳が、耳がキーンって。
この野郎、兄貴しか見てない上に私を敵視してるから容赦もない。
「あ、いたいた。リィンちゃーん!」
遠くで、おーいと手を振ってる人が居た。
「ロビン先生!」
「ちょっと使い魔の件で話いいかな?と言っても会議があるから早めに解散するけど」
ちょうどいいタイミングで呼び出されたので、兄貴に行ってくると言った後、ロビン先生の元へ駆けつけた。
「ごめんごめん。話してるところだったのに呼び出して」
「いえ、大丈夫ですぞり。大事なる話故に、優先度はこちらの方が上昇ぞ」
「……なんて?」
「優先度、高き!です!」
なんで兄貴は普通に喋れて私の方は普通に喋れないんだろう。
魔界って文字も言葉も違うから、おじいちゃんが翻訳魔術みたいな感じのをかけてくれていたりするんだけど、私は翻訳先の母国語がそもそも上手く習得出来てないので魔界でも上手く喋れない。
気持ち的には、帰国子女が日本語を喋れなくなるやつ。イントネーションとか語彙が海外よりになって、母国語から見ると違和感の塊。私は端的に言うとそんな感じだ。
「使い魔の期間なんだけど、カルエゴ先生と一緒に確認したら1年ガッツリ契約結んでるから無理に解約出来ないんだって」
「にゃるほど」
「カルエゴ先生の方はそっちでなんとかするらしいし、僕らの方もルールでも決めとこうか」
ニッコリ。人の良さそう……悪魔らしくない好かれそうな笑顔を浮かべていた。
「まず最初に授業の事なんだけど、僕が使い魔になっちゃったら授業を教えられないから、見学って形でリィンちゃんには参加して欲しい。その代わり、実践は授業の終わりに補習って形でやろうかなって。どう思う?」
「私もそれが良きと思うです。実践はお互いコミュニケーションぞ取れますし、ほかより進みが早きと思う故……。お手数ですけどある程度すっ飛ばすしたりすてもいいでしょうか?」
「えっと、授業のショートカットって、言いたいのかな?」
「はいです」
「そうだね、お互い確認しあえるし。交流とかはわざわざ授業で枠取らなくても良さそうだね」
絆を深めよう!とかって授業があったら意味ないよ。それより人型の時に交流した方がよっぽど正確だし。
「……問題は喋れる状態でのコミュニケーションだなぁ」
小さくボソッと呟いた言葉が聞こえてきた。おかしいな、コミュニケーションを取れるからと思って言った提案にコミュニケーションと言う壁が存在する。おかしいな。
「使い魔を呼び出すタイミングなんだけど、ふざけてはダメだよ」
「はぁい」
「でも危険があったら躊躇いなく呼んで欲しい。例えそれが夜中でも授業中でも、分かったね?」
「は、はい」
え、危険なことが起こる前提ですか?
「それで1年後は解約して、ちゃんとした使い魔を得ることだね」
「……ロビン先生、疑問なのですが、召喚って誰がどのようなものを呼び出せるですか」
授業としても気になって聞いてみた。カルエゴ先生が軽く説明はしていたけども。
「えーっと。召喚陣を用いて悪魔が魔獣を呼び出すのが召喚だよ。魔獣は召喚陣を用いても何も召喚出来ないのが、300年くらい前に論文で発表されたって言ってたかな。古い文献ではあの人間がかつて魔王サタンを召喚したことがあるとか不思議な事が事が起こったけど」
「へぇ?」
人間が、魔王サタン。
聞いたことあるな。
「魔王って何です?」
「えっ、魔王のこと知らないの!?」
「世間知らず故に」
「えー、簡単に言うと──全ての悪魔の頂点に立つもの」
悪魔にはランクがあるらしい。
十(ヨド)
九(テト)
八(ケト)
七(ザイン)
六(ヴァウ)
五(ヘー)
四(ダレス)
三(ギメル)
二(ベト)
一(アレフ)
「
あ、とロビン先生は何かを思い出した。
「13冠と言えばここの理事長もそうなんだ。しかも、その中でも偉い魔界三傑に入るすごい悪魔なんだよ。そう言えばさっき話してたイルマくん、特待生って理事長の孫って言ってたでしょ?」
私もです。
「凄きですね。ロビン先生は
「
「わぁ!!すごい!」
ロビン先生は中々に鈍い悪魔らしい。
悪魔を召喚できた人間がいると言う前例を知っているのに目の前に転がっている自分が使い魔になったという謎を解明しきれないんだから。
「でしょでしょ〜!……と言っても教師の最低ランクだから
教師陣、思ってたより優秀だな。
「ロビン先生もすごきですぞ!私、将来ロビン先生みたいになりたきです!あこがれ!尊敬!大統領!」
秘技、よいしょ。
1年間お世話になるのは確定してるからちゃんと持ち上げておきましょうね!
今までの人生で培ってきた生きる術を余すことなく発揮させてもらおう。
「えへへへ、っと、そろそろ時間だ。じゃあまた今度ね!」
「はーい!」
私もクラス分けが発表された頃だろうし、ぼちぼち向かおうかな。
==========
「まことに、ここ?」
1-危。
そう書かれたボロボロの扉の前で思わず立ち尽くす。
私は
「えっと、おりょばす、おろばしゅ、くん」
「オロバス・ココだ。言いにくければココでいい」
「ココ君!案内ありがとうです」
実は教室の場所が全然分からなくて、迷子になっていたとこを親切な悪魔に案内してもらっていたのだ。
「ここまで遠いとなると流石に不安になる」
「道、合うすてるか本当に不安で」
遠いよ。息切れしてるもん。
「では私はこれで。もう迷わないな?」
「はい!」
ありがとう親切な悪魔。
彼は私を一瞥すると羽を広げて飛び立った。……悪魔って羽があるんだ。
「──そして私はイルマ様のオトモダチだ!」
「……。」
中からアリス君の叫び声が聞こえた気がする。そっか、アリス君も同じクラスか。
「オトモダチとは共に時をすごし苦楽を分かち、そして!その方の為ならば命を賭す血の盟約なのだ!」
「なんかすごい脚色ぞされてる……」
「何をやってるんだあのアホどもは……」
あっ、カルエゴ先生。
教室の外で入るのを躊躇っていたら横に呆れ顔の先生が並んだ。
「喧しいぞ貴様ら!外まで丸聞こえだ!もっと粛に出来んのか」
「カルエゴ先生…!」
「エギー先生が担任なの!?」
「会議のタイミングで濡れ衣に捕まって……不在のあいだに貴様らの担任を押し付けられたのだ……ッ!」
兄貴が死にそうな顔してる。
カルエゴ先生に鬱陶しいくらいまとわりついているクララちゃんを片手でべりっと剥がしたカルエゴ先生は『外に出ろ!』と言い放った。
クラスを見渡してみる。
兄貴とアリス君とクララちゃんはもちろんだけど、使い魔召喚の授業で話しかけた2人もいた。
「リィンちゃん!」
「リィンさん」
「えり、じゃべった、えり、んんんっ、口が回らぬぅぅ」
「ふふっ、好きに呼んで〜?」
「姐さん」
「……それは予想してなかった」
「姐さんとケロリちゃん!こないだぶりですぞ」
「聞いたよ、イルマ君に続き貴女まで教師を使い魔にしたって。それが原因でこのクラスなんでしょ?」
「ふふー、ひむちゅ!」
人間だってのがバレてるからカルエゴ先生達の独断だろう。教師陣トップ3だろうからね。
いやー、私の勘もすごいね。なんというか、画質が違う。解像度が。
「もう1人の
やっほー、とぷかぷか浮かぶ金髪の男の子が元気に語りかけてきた。
「先生来ちゃったから武器仕掛けられなかったのが残念だったけど、女の子傷付けないで良かった〜」
「武器です?」
「入る時に武器けしかけて何発当たるか賭けてんの」
物騒なことをしてるわ。
兄貴なら無傷だっただろうな。
「ところでさあ」
ぐいーっと肩を組まれる。
「姐さんって言ってた悪魔と、仲、いい?」
「2度目ますてぞ?」
「そっか〜。仲良くなったらでいいから僕も誘って!あ、僕はシャックス・リードだよ。よろしくぅ!」
「ひゃっくしゅ、しゃっくしゅん、っ、あー、リード君と呼ぶしても?」
「……?いいけど、もしかして発音できない?」
「はいです。発音苦手ぞ」
「どんな秘境から来てんの???」
国境どころじゃないのは確かだよ。
「リィンです、よろしくござります!」
「よろしく、でいいんだよ」
「よろしくで!」
「ふっはは、どんなやり取りだよ」
別のクラスメイトが声をかける。
黒髪でタレ目の男の子だ。
「俺はアンドロ・M・ジャズだよ。よろしく」
「はぁい、リィンです、よろしくで」
「よろしく、な?」
「よろしくな!」
「アッハッハッハッハッ!」
ポンポンと大爆笑したながら背中をバシバシ叩かれる。痛いなぁ!?
「──そこ!うるさい!粛にせんか!」
「「「はーいごめんなさい!」」」
カルエゴ先生に起こられてしまった。
問題児って言うくらいだから殺伐としてるのかと思ったら、フレンドリーな人たちが多そうだ。向かっている一同、1番最後に入ってきた私とはまだ会話が出来てないから手を振ったりしている。
12、3、クラスは私の他に12か13名。疲れているのか目が霞むので大体そんなとこだろう。
そんなクラスメイト、1部は眠ってたりするけどやはり概ね好感度が高い様に見える。
ただ単にコミュニケーション能力が高いっていうのもあるけど……。
「……もしかして、私が、ベリーキュートな顔故に?」
──スパァン!
ハリセンを常備しないで頂けますか、先生。
ノリがいいキャラはツッコミ役として積極的に出していきたい。