「と、言うわけで来ますた人間界!」
「不正渡航不正渡航不正渡航不正渡航」
「別に不正では無きですぞ?」
先生はね。先生は。
学校が始まり初の休日。兄貴が寝てる間に私はカルエゴ先生と待ち合わせをして人間界に舞い戻ってきていた。
最近高ランク悪魔の不正渡航が目立っているらしいので、先生には行政にしっかり報告してもらったよ。んで、ここからが問題。
人間界渡航って高ランク悪魔にしか出来ないんだよね、秩序とかいうの問題で。
私のランクは、兄貴の後だったから正しく測れず。職員会議で再検査を検討されたけど人間だから『イルマと同じようになるんだろうな』ってか考えたカルエゴ先生シチロウ先生ダリ先生に全力阻止されたらしい。
よって、ランクは1だ。ランク上げなきゃなぁ……。
まぁ何が言いたいか、と言うと。
低ランクだから人間界渡航なんて出来ません!ってわけだ。
「まさかリュックに入るとは思わなかった」
「魔力がなき故に私はお肉ですぞ」
人間界渡航の検問。空港を思い浮かべて頂こう。
金属探知機があるように、魔力探知機があった。カルエゴ先生は手続きをふんだので問題ないのだが私は大問題。
ただし、魔力が無いので検問には引っかかりませんでした。私はただの荷物です。
「悪魔界の法律は、所詮悪魔の為のもの。魔力無き人間には関係なきです」
「それはそうだが」
「人間の渡航を禁止する!などという法律は存在せぬです、どやぁ!」
「ドヤるな」
「法の穴をほじくるです」
「ほじるな」
はぁ、とため息を吐いたカルエゴ先生。
彼の服は薄手のタートルネックとトレンチコート、細身のジーパンにハンチングという帽子を被っていた。
帽子によって押さえられた髪の毛で先の尖った耳も隠れている。まぁ耳が見えたとしても吸血鬼みたいな見た目だし別におかしくないだろう。そもそも黒髪だけど外国人っぽいし。トレンチコートとハンチングの組み合わせがイギリスっぽいし。
「それで、何をするのだ」
「ひとまず実の両親が現在居ない時間だと思う故に、自宅に向かうです。身、ひとつで来るしますたし」
「……身、ひとつで?」
「着の身着のまま売られるすたです。荷物ぞ取れば本屋に寄るするです」
さぁてサクサクやって行くぞ。おー!
家に到着した私は庭にある石をひっくり返してそこから鍵を取り出した。
「なんでそんなところにあるんだ」
「古き良き悪しき日本の何コレ案件です」
場合によっちゃ便利なんだよね。
鍵を空けて家の中に入ると、私と兄貴の部屋に向かう。
他のところに私物は置いてないから、大事なものは全てここにある。
「あ、先生肩車ぞすて」
「なぜ私が」
「魔術、使えぬのですぞね?天井に用があるです」
魔術で浮かばせてくれるならいいんだけど、人間界では非常時以外は使わないように、使う場合報告をってあったから使わない方がいいだろう。
カルエゴ先生は数秒躊躇ったが、小さく舌打ちをして肩車をした。
「このっ、天井の、裏……っ、よっと」
押し入れには点検口という穴がある。私と兄貴の部屋にも漏れなくあり、私はそこに現金や高価な指輪などを溜め込んでいた。
兄貴とやる時は、椅子の上に兄貴が立って私が肩車の上、という形だ。兄貴はこう見えてバランス力も優れてるのです。
「あったぁ♡」
「なんなのだそれは」
「この国の貨幣です。それと、まあまあ詳細除くべき人達に媚びぞ売却した際に?貰うすた?指輪とかアクセサリー」
危ない人達はアクセサリーも高価だからね。
「売るのか?」
「ランクの低き物のみ売るです」
「残りは、まさかとは思うが持って帰って……」
持って『行く』ではなく持って『帰って』という言葉が自然と出たことに驚いたものの、カルエゴ先生相手だと指摘するのは難しい。まだ素直になれないお年頃だろうしね。
とにかく宝石の使い道は、持って帰って人脈を築く為に使う。悪魔にも宝石などの収集癖持ちもいるだろうし。あとは人間界の、って付加価値はあると思う。
「あとは連絡先一覧や携帯や、おっと、サバイバル用品!向こうに、存在するです?」
「似たようなものならあるが、このロープと金属は無いな」
「あぁ崖の昇り降り」
これは必要だな。
悪魔は羽があるから移動に関してはなんの問題もいらないのだろう。
「では居るものはポシェットレベルですぞね」
さて、それではこの小さな私物のほとんどない部屋とはこれで一生お別れだ。
さようなら我が家!もう二度と来ることがありませんように!
「鈴音ちゃん……?」
「おばさん?」
「やっぱり鈴音ちゃんだ!あんたァ一体どこに行ってたんだい!?またあのクソ両親に!?」
「うん、そうなの」
「そんで後ろの男は……?」
向かいの家の蓮田おばさんがちょうど家から出てきた。
「先生!私ぞ保護すてくれた方です」
「まぁ……」
怪しい見た目してるけど怪しい人じゃないよー。ただの悪魔だよー。
「またヤクザだったりマフィアだったりしない、よね?」
「うん!大丈夫、本当に公共施設の学校の先生ぞ。厳しきだけど好かれる人」
ガヤガヤしていたからか、近所から井戸端会議ズおば様達が出てきた。
「んまぁ鈴音ちゃん!」
「入間くんはどうしたの?」
「元気してた?家にまた逃げてきてもいいのよ」
「ありがとうです!」
私はね、両親はクソだから避難所を沢山作ってたんだ。法的に措置はしてなかったから……。
でも、もう手遅れだ。
「私達、あの両親に売られるしますた!」
おばさん達が目を見開く。
「それで悪魔みたいな人と両親が取り引きすて、それで私と兄貴が売られたです。信じてたのに……親は親だって……ぐすん」
「鈴音ちゃん……」
「両親と電話する機会ぞ1回作るすてくれました。ドンペリ?って声が聞こえた気が。多分ドンペリって場所にいる可能性が高きです」
ドンペリはお酒の名前だ。しかもクラブとかの高級なお酒。そんじょそこらの会社員では手が出せない物。
それを知ってる近所のおばさん達から表情が抜け落ちた。
「へぇ……?子供を売った金で、ドンペリねぇ?」
「いつもながらのやり方で奴隷商から解放すてもらい、そこを保護してくれたがこの!カルエゴ先生なのです!」
「「「おお〜!」」」
「イケメンでしょう?」
そう問いかけると近所のおばさん達はジロジロ眺めたあと、同意の言葉を口した。
「……確かにイケメンね」
「しかも先生らしいわよ」
「やだまぁ、おばちゃんがあと10歳若けりゃ」
イケメンって好感度高いからいいよね。ほんと。これおじいちゃんなら無理だったよ。
「おばさん。揃えてた証拠、あるですよね」
私が日本に帰ってきた最大の目的。
「警察に提出すていただいてもよろしきですか?」
──あの両親を地獄に叩き潰すことだ!
えぇ、小さい頃からの拙い日記、証言、ボイスレコーダー(借り物)、近所の目。全て収めてきた。弁護士費用はないけど、育児放棄で捕まったらいいんだ。
「私たちの事は、死んだと、思うすて欲しいです」
「……まさか入間くんは」
「(とても儚い笑顔)」
売られた子供が海外で行方不明、とかになったらもう全国ニュースだよ。
私の名前を知ってる全国のお偉いさんたちはびっくりするだろうなぁ。そして納得することだろう。遂にか、って。
「……鈴音ちゃん、折れずに生きるんだよっ!」
「おばさん、ありがとう」
「なんかあったらすぐにこっちに来な!部屋は空けてるから」
「うんっ!」
つまり今回の避難先でもなにかあったら逃げ帰ってこい、ですね。ありがとうおばさん、持つべきものは人脈もとい頼りになる大人だね。
……だって、おばさん達今か今かと話したくてうずうずしてるじゃん?鈴木家は娯楽だもんねぇ。
そしておばさん達は正義の味方になれるわけだ。そのちんけな正義感で、どうぞ悪を粛清してくださいな。
「じゃあ私行くますね!先生、おまたせしますた!」
カルエゴ先生と共に換金場所まで言って丁寧に説明した。
「これで両親は警察……治安維持組織に追うされて溜め込んだ証拠により世間に知らしめられるでしょう。そして私の名前をご存知の方々に連れ去られて死ぬより厳しい目にあうか、まぁ、神のみぞ知るですね」
「……悪魔より悪魔らしいな」
ドン引きである。
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魔界に戻ってきた。
今回の人間界渡航の目的は、『バラム・シチロウに頼まれて人間界の素材などを集めること』である。
なので、貯めたお金と手に入れたお金で色々と買ってきた。
大本命は、本である。
「先生ここは?」
「酒場だ。ここにいる悪魔に用があるのでな、少し待ってろ」
カルエゴ先生は適当なソファに私を放置してバックヤードの方へ行った。まぁ先生の休暇を丸一日潰したようなものだし、本来休日にやるべきものに巻き込まれても仕方ないよな。
適当なソファに座って買った本を開く。
原則、悪魔は人間の文字を読めない。これはシチロウ先生と検証した。特に日本語は超難解な言語なのだろう。試しに英語、フランス語、中国語、などなど、オーソドックスな言語も書いてみたけどそれらも理解出来なかった。
『……キミ、そんなに複数の言語を操れるのに母国語もソレなの?(意訳:発音ダメじゃん)』
全部の言語を100パーセント操るんじゃなくて70パーセントでなんとかやりくりしてたら母国語ですら怪しくなった私の話は置いておき。
さてさて、今回購入した本はソロモン王や悪魔関連の本。ソロモンの指輪……旧約聖書…サタン伝説……などなど、気になるところを片っ端から買ってみた。
悪魔界と人間界がどれくらい密接に関係してるのか分からないけど、調べられるだけ調べる。人間界に伝わっている悪魔は、ルーツを辿れば悪魔界です、なんてこと沢山ありそうだし。
「──悪い子みーっけ」
英語の本を手に取り1ページ目を開いた途端、ソファに持たれかけた悪魔がいた。
黒系統のスーツに紫のシャツを着た、目の下に星のホクロがある金髪の男だ。
「んえ?」
「みーちゃったみーちゃった。君、ここどこか分かってる?」
「んー、女の人が居らぬので色恋絡む場所ではなきかと」
ちらりと周囲を見渡す。
ボーイはいる。お酒もある。ところどころにある遊戯盤。客の身なりは高級そう。総合して。
「──ぼられりゃ負けの賭博酒場?」
「……まじかー。分かってんのね」
純粋無垢そうな顔して、という男。私のお腹が小さく空腹を訴えた。
カルエゴ先生が飲食拒否だったからご飯食べれなかったんだよなぁ。よし、媚び売りしよう。私は絡んできた悪魔にしなだれかかった。
「リー、ナッツほしきなぁ」
「おっと。これは手に負えないもの釣り上げたかもしれないな」
男はコインをひとつ取り出して笑顔で言った。
「このコイン、表が出たら俺が君に奢ろう。そして裏が出たら、君は俺に何をしてくれるかな?」
「うーん、お酌でもしましょうぞり」
「いいね!」
男はコインをピンッとはねさせた。先にどちらが表か裏を決めているから、手の甲で受け取って隠して、なんてことは無い。コツンと机の上に落ちていく。
あぁ神様。私、この悪魔にお酌がしたくてたまらないんです。それで情報を抜き取ってやりたいなぁ。
──カラカラ……コトン
「嘘、だろ?」
「あらら、アンラッキー」
残念。裏が出てしまいました。つまり私の勝ちです。
男がガタリと立ち上がったせいでザワザワと周辺が注目する。
「どうやった!?」
「んー、秘密」
種明かしをしよう。これはイカサマではなく、正真正銘の……──不運!
私ね、こういう勝負時って運が悪すぎて悪すぎて。イカサマしないと勝てないんだよね。運任せ?1番嫌いな言葉ですね。だから知略をめぐらせて立ち回らなきゃ生きて行けなくなったんだよ。
その点兄貴は運がいい、えぇ、勘もいいし運もいい。ついでに人もいい。
あ、あとね。これは裏技なんだけど、裏が出ても表が出ても起こりうる利益を考えていると、どっちが出ても当たり。
目論見通りだぜへっへっへっ、て強い顔できる。つまりはったりだ。
「もう1回。……次は本気でやる」
2回目?うん。普通に負けました。運勝負に本気とかある????
同じように負けることを祈ってたんだけどな。
「貴様は本当に目を離せば何をするか分からんな」
「「カルエゴ先生!」」
先生がようやく戻ってきた。
と、声をかけた瞬間。私と目の前の男が同時に声を上げた。
「なんだ、居たのか」
「カルエゴ先生つれないですよ。休日に生徒振り回して〜。俺との遊びは付き合ってくれないに」
「お前のは遊びじゃなくて仕事だろ」
「んまぁ、俺が担当ですしね。こういう、来ちゃダメなところにきた生徒を、捕まえるの」
んん?
「それにどちらかと言うと振り回された側だ」
随分、知り合いみたいな反応をするな。
「せ、せんせ???」
「なんだ」
「どうしたんだい?」
カルエゴ先生に声をかけたつもりが、2人分の返事が返ってきた。
「先生?(意訳:もしかしてこっちも先生なの?)」
にっこり笑った悪魔が自己紹介をした。
「ピッカピカの新任の、オリアス・オズワルド先生です。
「おず、バト……なんて???」
「混乱してるな」
悪魔界の!常識を!早く身につけたいです!教師が賭博すんな!!!!!
完全休日。リィンがメインで絡む先生は新任3人組がいいな。ロビン先生は使い魔、オリアス先生ギャンブル、まーくん先生は拷問学。楽しい。
次からそろそろ青いリボンの話ぼちぼちやっていこうかと。
あと章管理どうしたらいいと思う????