小さな小さな子供の頃。アマゾンの奥地へと赴いた時の話。
「ふんぬぁぷぎゃうぬるん!!!(約:あのクソ母親どこ行きやがった!)」
『あっちに珍味レーダーが反応するわ!』とか言いながらよちよち歩きもままならない子供を置いて行った母親。
昔は何かの手違いで死んでくれないかなって心から願った。今?私が直々に冥土にお送りします。一人旅は寂しいでしょうから、父親も一緒にお送りますね。
「──なんだ?おい、小さいのがいんぞ」
「ありゃりゃ、ほんまや」
アマゾンの奥地だというのに、何故か日本語で聞こえた明らかに日本人では無い風貌の男が2人。現代日本転生(ハードモード)だと思っていたのに、突然の情報量に驚いた。
だって金髪にガタイのいい男と緑髪のうっさんくさ少年だよ?突然のアマゾンってだけでも混乱してたのに。
「レディ。こんなところに迷い込んで、どうしたってんだ」
「あばー、っだりゅん(訳:親とはぐれたの)」
「うーん。分からん。翻訳魔術も幼児言語は無理か。……おい、ここは人間のガキがくるはずねぇ場所だろ?」
「せやねぇ兄さん。猛獣も現れるさかい。原住民なら決して来ぃひんって、聞いとったんやけど」
「なら迷子か……。あぁ可愛そうに。こんな悪魔だらけの場所で、親とはぐれたのか?」
金髪の大男は私の頭に手を添えてニッコリ微笑んだ。
「迷子の迷子の小さな人間。さーて、どうやって食っちまおうか?」
……そういう類いの変態?
「…………べんちゃい(訳:ロリコン的な)」
「……なんかすごい腹が立ったな」
「いややわ兄さん、こんなガリガリで食いでのない人間、食うたって腹は膨れんで」
緑髪の少年がそう言うと、金髪の大男は顎に手を当て少し思案していた。
今考えると、何を呑気にしてるんだ私。さっさと逃げろよ。
「ふむ、それもそうだな。レディ、歳はいくつだ?」
「へい!(訳:0歳と5ヶ月!)」
「ぐー?ってことは0歳ってことか?まぁ、この小ささを考えりゃ妥当だな。悪運が強いなぁレディ?」
「あんぎゃぶ(訳:頭をわしゃわしゃするな)」
「16になったら、お前を食ってやるよ」
「いい考えやな、兄さん。人間食うたこと無いから、僕にも分けてな」
「俺だって無い」
「あぁでも、お腹のすく匂いやなあ」
金髪の大男は服の装飾品をしゅるしゅると外した。元々が三つ編みの装飾だったので、男はそのまま私の首に巻き付ける。
「レディにこのリボンをやろう。しっかり食べて、大きくなる様に、
当時は淡いブルーのリボン。今でこそ瞳と同じ紫に近い濃い青になったけれど。
「それまで、食べられるんじゃないぞ?」
忘れられない出来事のように思えたその邂逅は、その後次々と訪れる命の危機を前に薄れていった。
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私の名前はリィン・サリバン。もとい、鈴木鈴音。鈴に鈴をつけるキラキラネームからリ○ンリ○ンを付けるキラキラネームへと進化した人間である。
私の暮らしている場所は魔界で、魔界には悪魔がおり、魔術がある。
私は、そして兄貴は人間。魔術なんて使えない。
──魔術授業
「この特殊な苗に手をかざして『クワンックワンッ』」
魔生物担当のストラス・スージー先生の授業。魔術をとなえたスージー先生の鉢から、綺麗な花が咲いた。
「自分の魔力を形として見る!コツは完成系を頭に思い浮かべることでぇす、がんばってね!」
ゆるふわな笑顔でそうおっしゃった。
「……クワンックワンッ」
私の苗からはうんともすんとも言わなかった。ですよね。
いつもなら兄貴に先にやってもらうんだけど、魔法っぽいものはちょっと試してみたかった。
……憧れじゃん!いいじゃん別に!魔法少女になってみたかったよ!!!(ヘドバン)
だってだって、異世界転生じゃないけど異界に来てファンタジーで、今までのクソみたいな生活からおさらばして、俺TUEEEEとかやってみたいじゃん!小手先のイカサマではなくて!!
「もし、そこの淑女。どうしたでござるか?」
「もっぷおばけ……」
「モップお化け!?」
クラスメイトのモップお化けが話しかけてくれた。ごめん、名前知らない。
「ガープ・ゴエモンでござる。リィン殿とお呼びしてもいいでござるか?」
「頭が高き!姫とお呼び!」
「ははーっ、姫ーっ!って何させるでござるか!?」
「アッハッハッハッハッ!」
ゴエモン君がノリノリで遊んでくれる。魔術が使えないんじゃどうせこの授業暇だもんね。
「ゴエモン君は、咲かせるすたです?」
「あっちのイルマ軍らが騒いでいるのを聞いていたら忘れていて、今からするところでござるよ」
「イルマ軍……。またまた摩訶不思議なる言い方ぞ付きますたね」
「……なんて言ったでござるか」
「あっぱらぴー!」
このござる口調の侍もどきめが!私の口調が悪いって?うん、それはそう。
「さてさて拙者も、『クワンックワンッ』」
ガープ君が花を咲かせる。皆問題なく咲かせられるみたいだ。だよねー。うん、だよね。
だからもう、このクラスで出来ないのは私と兄貴の2人──
──バキバキ
急に、影が私に覆いかぶさった。
──メキメキ
なんか、植物に近いような音が聞こえる。
「あの、ゴエみょん、ごえ、ゴエモン君」
「………………なんでござるか」
「私の後ろ、どうなるすてる?」
「木が、」
木が。
「──迫ってきてんだよこのノロマ共!」
罵倒と共にクラスメイトが私とゴエモン君をクッションの上に拾い上げた。
オレンジ髪でアイマスク。あー。よく寝てる悪魔だ。
「おーい現実逃避すんな!とりあえず窓割れ!脱出すんぞ!」
「ぴぎゃあああああん!!!!!!」
こんな惨劇起こせる存在、ひとりしか居ないよ!この裏切り者!!!!
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魔界に咲いた桜はとても綺麗だったので皆でお花見をしました。完。
「やだやだやだやだやだやだ!!!!」
……と、完結できる訳もなく。
私は家に帰って盛大に駄々を捏ねていた。
「私も魔術ぞ使用可能求むーーーーーっ!!」
そう、全力で、パーフェクトに駄々を捏ねまくっていた。
地面に寝っ転がって手足をバタバタさせるという小技付きだ。もうこれをパーフェクトと言わずに何をパーフェクトというのか。
「何故兄貴だけ魔術行使可能ぞり!?人間やめるすた!?やだぁ!私も魔術ぞ使いたいぞり〜ぅうううう!!!」
「リィン……そんな子供っぽいこと言う子だったっけ?」
「──護身も兼ねてるんだよ兄貴」
「あ、はい」
「やだやだやだやだやだやだぞりぃーーーー!」
私も魔術欲しい!攻撃手段が物理だけだなんて耐えられない!高いところから落ちたらどうするの?うわぁーん!欲しい欲しい欲しいー!トンチキな世界に生身一つだけとか無理ゲーだもんー!!!
私のパーフェクトな駄々こねに、おじいちゃんとオペラさんが顔を見合せた。
「孫のわがままを聞いてあげるのも僕の役目だよね。ってことでリィンちゃん。普段身につけれる物ってある?」
「んんーっと」
私物は元々少ないし、アクセサリーも換金用に持ってきたアクセサリーくらいしか……。あ。
「ある」
ドタバタと部屋まで戻って、この前の休みで取りに行った自分の私物の中からずるる、とリボンを取り出した。
「おじいちゃん!これ!」
「えっなにこれ」
取り出したのは青いリボンだ。小さい頃から身につけていた唯一のアクセサリーで、新しいものを買っても良かったけど、なんだかんだこっちにまで持ってきてしまったのだった。
元々リボンは三つ編みだったので三本。
普段はカバンに1本、髪の毛をツインテールにしてアクセサリーとして2本。いつものやり方だ。あと止血に役に立つ。
「あれ、リィンそれ持ってきてたっけ」
「うん。そうぞり」
嘘です。ついこの前持ってきました。
「気付けば昔っから付けてるよね」
「そりゃそうぞり。兄貴がまだ自立すてなき時に貰うすたもん!」
「へー、知らなかったや。頑丈だよね」
「ねぇ」
「いやいやいやいや、ちょっと待ってね2人とも」
おじいちゃんはずいっと顔を近付けて、青いリボンを指さした。
「これ、魔術かかってるよ」
「「えっ」」
2人同時に驚愕の声をあげる。
「魔術って言うか、守護?このリボンがちぎれたりほつれたりしてない理由ってそれだと思う。しかも、割と何重に」
「「えっ」」
それって、いくら怪我してもリボンだけは破けなかったり、時々面白そうにリボンを触る兄ちゃん姉ちゃんがいたり、色褪せるどころか色が濃くなってるのって……。
「まぁ害をなす物じゃ無さそうだし、これに魔術が使えるように改造しておくね。オペラ〜、魔力貸して。一旦君の魔力メインにするから」
「分かりました」
あれ、これもしかして。不正渡航して会ったことのある悪魔が私のリボンを見たら、私が人間ってことすぐに分かるんじゃ……。
「兄貴!胃痛!おやすみ!」
「OKおやすみ!」
リィン14歳。何度目かの胃痛で気絶します!倒れる私も介抱する兄貴も慣れたもんよ!ぐすん。泣いてないです。
一体どこの金髪と緑髪なんでしょね。
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