4度目の人生は悪魔学校で   作:恋音

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第8話 初心者には魔術の使い方から教えろ

 

 

 前回までのあらすじ。

 

「これで魔術が……!使える…………っ!」

 

 今朝、おじいちゃんに駄々を捏ねて使えるようにしてもらった青いリボンをウッキウキで身にまとった。

 

 オペラさんが魔力を注いでリボンに収納させている間、兄貴は生徒会長とやらに呼び出されていたのだけど。

 まさか兄貴がアシスタントしていた漫画の初恋メモリーがあるとは思ってもみなかった。私はアシスタントしてないよ。絵のセンスがなかったのよ。

 

 『日本語読めたから人間ってバレたかと思ってヒヤヒヤしたけど、誤魔化せたみたい』とは本人談。

 

 ……いやこれワンチャンバレてるな?

 

 生徒会長はアザゼル・アメリさんだったっけ。アザゼルの名前もそうだけど、サリバンやアスモデウスなど人間界に伝わっている悪魔の名前がメジャーに存在している。

 

 兄貴が勝手に人間バレしようがしまいが、クララちゃんが痺れを切らすまで何度も生徒会室で漫画を音読しに行っているのなら関係性としては問題ない。

 

 あ、そういえば。

 兄貴と私って双子だし潜った修羅場の数が桁違いだから『超共依存!絶対仲良し!磁石みたいにピッタリで運命共同体!』みたいに仲良くなった人からは勘違いされがちなんだけど、実際ちょっと違っていて。

 お互い『自立(意訳)』させられたから1人でも生きていかなきゃって言う生存本能が強いし、なんならお互いを厄介事に巻き込むことでトラブル2倍生贄上等って感じで生きてきたんだ。

 だから感情としては『私だけが困るのは不本意!双子だろ?運命共同体だよネ?助け合おうね???(圧)』って感じだ。

 

 大事に思っているし理解者だとは思うんだけど、いかんせんお互い巻き込まれ体質過ぎて。お互いが逃げ延びるのだけは癪に障るというか。不愉快というか。

 

 なんでこんなことを考えているのかと言うとだ。

 

「──イルマ様に変わり、貴様に魔術を徹底的に叩き込むことになった。覚悟しろ!」

 

 殺る気満々のアスモデウス・アリスが目の前にいるからなのであった。

 くそっ、巻き込まれろよ兄貴!

 

 

「アリス君、お手柔らかに願うぞり」

「フン!誰が貴様の言うことを聞くものか。イルマ様にお願いされなければ貴様などにわざわざ時間を割くなど!」

 

 私がリボンを経由して魔法を使えるようになったのは記憶に新しいが、問題がひとつ。上手く魔法を使えないということ。

 今まで肉体と知識と口八丁だけで生きてきたのでオカルトチックなことは憧れだけど苦手なのよ。

 

 さてさて、本来であればオペラさんに教えてもらおうと思っていたけれど、現在は処刑砲台というドッジボール大会で兄貴を鍛えるために本腰を入れてくれている。

 先輩との伝手もなく、教師陣は時間が取れない。

 

 と、なれば。

 1学年の首席様のお出ましである。

 

 兄貴余計な真似を。

 

「まぁまぁ、それで魔術はどう使用ぞすれば」

 

 ピュンッ

 

「うおおおお!?」

 

 私の真横を炎が飛んで行った。というか私目掛けて飛んできたので全力で避けた。

 

「何ぞする!?」

「実践編だ」

「何段すっ飛ばすすたです!?完全に殺意を注入ぞすてる!」

 

 私兄貴と違って回避性能そこまで高くないんだけど!!!

 悲鳴をあげる私のことなど気にも止めず、アリス君はお得意の炎の魔術で狙ってくる。

 

 兄貴は助けてくれない状況だし、人が居ない事は事前に確認済み。あーこれはつんだね。

 唯一の希望は青いリボンに魔力があるから、上手く使いこなせればなんとかなる可能性があるってだけ。どうやれと。そのやり方が分からないから教えてもらおうとしてたのに。

 

「アリス君さあ!弱っちい女の子いじめるすて楽しい!?」

「あぁ!もちろんだ!」

「性格終了すてた!クソッタレ!兄貴の右腕名乗るなれば正々堂々すたらどうぞり!?」

「これが正々堂々でなれけばなんなのだ?」

「うぎゃっ!」

 

 攻撃手段を持たない人間相手にする仕打ちじゃないって!

 そもそも口頭魔術が意味わからないし、口で言って影響がある魔術って何!?

 

「アリス君どうやって魔術ぞ使うすてる!?」

「子供の頃に一つや二つ使ったことがあるだろ!それの応用だ」

「分かるかボケー!!」

 

 使ったことないから困ってるんでしょうが!

 

 ガクッと足が崩れ落ちた。

 足元を見ると火傷を負っていた。顔を狙っていた炎に紛れ、小さな炎を気づかれないように忍ばせていたのだろう。

 分かるよ、機動力を持っている敵には一撃で仕留めるより機動力削ぐ方が現実的だよね、私もやるもん。

 

「逃げられないな?」

 

 アリス君は特大の炎を拳から浮かび上がらせた。

 

「やばっ」

「くたばれ!」

 

 ふと脳裏におじいちゃんの言葉が浮かんだ。

 

『これ、魔術かかってるよ』

『魔術って言うか、守護?このリボンがちぎれたりほつれたりしてない理由ってそれだと思う。しかも、割と何重に』

 

 私が魔術を使えなくてもいい。

 魔術を利用してやればいいんだ。

 

 髪の毛からリボンを解いた私は、鞭を振るうように思いっきりリボンで炎を殴った。

 

 果たして殴るという表現で合ってるのか分からないけど、目論見通りアリス君の炎は私から逸れて背後へ飛んで行った。

 

「なっ!」

「壊れぬリボン、割と頑丈。なるほど、燃えやしないと」

 

 意外と使えるなぁ、これ。

 

 もしかしてリボンに人間の血を注ぐと魔術と変な共鳴起こしたりしないだろうか。それとも発動に合わせないといけないのだろうか。

 教師陣と要検証かな。

 

「あしゅもでうす、アリス!」

「アスモデウス、だ!」

「歯ァ、食いしばれ!!!」

 

 腰の入った本格的な拳は中々食らったことが無いだろう。こちとら武力行使には慣れてるんだ。いっぱい教わったことあるもんで。

 

 ゴッ、という重い音と共に拳にじんわりと痛みが響く。

 アリス君の体が少し吹っ飛んだ。

 

「アリス君は、兄貴(イルマ)のことをなんっっも分かるすちゃいない!理解解釈不足!」

「なんっ、だと!?」

「兄貴は他者を傷付ける行為を割と許容しないです!──誰が傷つけたか丸わかりの行動をヨシとするわけないでしょう?やるならバレぬ様に殺れ。暗殺や暗躍で誤魔化せ。心労ぞかけるか馬鹿が」

 

 ここで私が大怪我したり死んだら兄貴絶対アリス君と距離を置く。

 個人的に兄貴のことを信頼して任せられる狂信者だから、兄貴の周りを固める悪魔が減るのは宜しくないんだよね。

 

「私は……イルマ様を一番に思っている!貴様などに負けるか!」

「ばーかばーか!私が一番の理解者ぞ!兄貴の好きな食べ物ご存知?」

「ぐっ、い、イルマ様はなんでも美味しそうに召し上がる!可愛い!」

「分かる。あいつなんでも好き……」

 

 好きな食べ物って食べられるものだからね、兄貴。

 でも最近オペラさんの作る料理が一番お気に入りみたいだよ。

 

「誕生日は?」

「うぐっ!」

「ほぉら、私ぞ軍杯」

「なっ、ならば!貴様に対する不満をイルマ様が言っていたが、その内容は分かるのか!?」

「えっ、なんだろ。…………兄貴と呼ぶすて巻き込むこと?」

「なんで分かるんだ!」

 

 私がされて嫌な事だからだよ。

 双子舐めんな。お互いの嫌なとこをつつきあって生き延びて来たんだ。

 

「あのさ、何を焦るすてるか知りませぬが」

 

 ぼうっと膨らんだ炎をふたたび殴り飛ばしてアリス君の胸元を掴んだ。

 

「私は、兄貴の友達にはなれぬのですぞ!?」

「オ、トモダチ、に……?」

「私は兄貴の傍には居れぬの!私は今、危なき橋を渡るすてるから、巻き込み防止!」

 

 人間だってバラしてる最中だからね。

 理想のストーリーはサリバンの実孫と養子の人間だから。だから私とイルマは義理の兄妹だと周囲に思わせたいんだ。

 

「私は、兄貴の後ろでいい。守られながら、兄貴を陰ながら支えるの。右腕とか、要らぬです」

「……!」

「そして同時に、兄貴を魔王にする」

 

 アリス君の目が見開いた。

 土埃や汗を拭って、目線をしっかり合わせる。

 

「私達、いい理解者になれると思わぬ!?」

 

 兄貴を一緒に魔王まで押し上げよう。

 私にとってすごく都合がいいし、アリス君も望んでいることだと思う。

 

 私は兄貴にとって血縁で知識も記憶も一緒の部分が多いし助け合って生きてきた。絶対的な信頼感が違う。

 でもそろそろ兄離れの時期かなって。

 

「アリス君が兄貴の隣で、右腕として居てくれると。私は……すごく安心する。兄貴のそばを離れて無茶できる」

 

 私の訴えにアリス君はキョトンとした後、私をぶん殴った。

 

 え、女の子をぶったの!?

 親父にもぶたれたことないのに!

 

「抜かせ!イルマ様が貴様を逃すと思うなよ。何勝手に離れた気になっているんだ、孤独のふりをするのも大概にしろ」

 

 あまりの笑劇に尻もちを付いていると、起き上がって土埃を払ったアリス君が手を差し出した。

 

「リィン様」

「!!??!!??!?」

「私は、貴女を尊敬すると同時に羨ましく思う。しかし、イルマ様を魔王にすると貴女が宣言して下さるのなら──心強いことこの上ない」

 

 微妙に腑に落ちない感じがするけど、差し出された手に掴まって起き上がる。

 

「ふふ、ははは。ボロボロですね、お互い」

「敬語、やめませぬ?私喧嘩したの生まれて初めて」

「ん、そうだな。私も喧嘩は初めてだ。いつも一方的な虐殺になるから、ここまで耐えられたのはイルマ様以来だ」

「じゃあ様付けもやめてくれませぬ?」

「それは……敬愛するイルマ様の妹君だからダメだ。敵でない以上ご家族は重鎮も同然」

「…………(うわめんどくさっ)」

「うわ面倒臭い、といいたげな顔をやめろ」

 

 軽く小突かれて、私は──どつき倒した。

 

「おんぶ!」

「は……」

「足!動けぬ!おんぶ!」

 

 こちとら火傷がものすごく痛いんだよ。

 

 

 

 

 

 

「…………なんで二人共そんなにボロボロに?」

 

 兄貴、端的に言えばお前のせい。




お久しぶりです
ちゃんと学生してるなぁ。
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