システム外スキルだよ……「月歩」   作:ナナの四六三

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ゆっくりしていってね!こっちもゆっくり進むから


全て()の始まりの日

 そう、あれは2年前のこと……

 

◇◇◇

 

 白い光がだんだんと弱くなり、消えていく。目を開くと俺の前にはあの始まりの街が広がっていた。ふおおおおおお!アニメで見たまんまだ!グラフィックは段違いだけど!めっちゃリアル!すごい!

 

 あ、どうも皆さんこんにちは。SAO(本物)を始めました。SAO世界TSチート系転生者のヒビキです。あ、そうだ原作キャラと関わるにあたってオレっ娘だと面倒なので一人称を私に変更しますね、あしからず。ではやっていこう!SAOの初期スキルスロットは二つ!今回メインスキルに選択したのはサイス!やっぱり死神系幼女っていいと思うの!武器被りキャラもいないしね!*1扱いが難しそうだけどチートさんのおかげで十二分に扱える……はずだ!

 

「んじゃ、早速レベル上げに行きますか〜」

 

 おいおい何を呑気なことを……と思うかも知れませぬがキリト君も召集が始まるまでは普通にゲームを遊んでただけだし!今のうちに私がまともに戦えるかを確かめなければいけないだろう。リアルなら紛争地帯での戦闘経験がいくらかあるのだけどねえ、リアルの体より圧倒的にスペックの低いこの体でどこまでできるのかということですよ。

 

 え?具体的に言うと?まず攻撃力だけどリアルならこのアインクラッドも手刀で半分までは綺麗に切れるだろう。*2でもここでは建物に傷一つつけられない。次に防御力。リアルなら溶岩風呂もできるし、銃弾は何億発打ち込まれても弾き返す、なのにここでは目の前にいるフレンジーボアの攻撃を十数回喰らえば死ぬ。そして機動力はリアルでなら水面を走っても空を飛んでも一時間程度で日本からニューヨークに行けるくらいのスピードが出るのにここでは陸上オリンピック選手が関の山だ。まあこれらに関してはどうにかなる予感がするけど今試してはβテストを見送った意味がない。

 

 おもむろに突進してくるフレンジーボアを紙一重で回避する。というと危なかったように聞こえるかも知れないが実際は逆。あまりにも遅すぎる。だからこそこんなにギリギリでも避けられる。やべぇ、チートすげぇ。急に感覚の変わった身体(アバター)でも完璧に制御できている証拠だ。素晴らしい。では次は攻撃を試してみよう。戦おうと考えた瞬間、身体は自然に動き、ガチャリと鎌を構えていた。構え方も知らなかったのに。そこはアニメ的にジャキンじゃねーのかよとか、鎌だけにとか余計な思考とは裏腹に私の神経は研ぎ澄まされていく。その次の瞬間、私の持つ初期武器「スモールサイス」が回転し、瞬く間にフレンジーボアを3回ほど、尋常じゃないスピードで切り刻んでいた。……レベル1のキャラクターが出していい剣速、いや鎌速かこれ?……デスゲーム開始まではセーブして戦うか。グリッチ判定が怖い。

 

 実のところ、私がβテストに参加しなかったのもこれが理由だ。チート能力所持によるBAN、まあ別に機械をいじったりしてるわけではないから心配しすぎなのかもしれないが、気合いでゲームシステムを破壊できるのは間違いない。原作キリトくんのラストアタックもそんな感じだったし。デスゲーム化して、茅場さんやカーディナルがBANという措置が取れなくなってから参加したかったのだ。

 

 そういえばだが、この調子なら死ぬ心配はしなくても良さそうなのだが一つ気がついたことがある。先ほど私の命を十数発で削り切る、と言ったフレンジーボアだが、訂正しなくてはなるまい。正しくはHPをゼロに減らす、であった。ナーブギアの電子レンジでは私の命に到底届きうるものではないということだ。仮にHPがゼロになってもリアルの命は失わないだろう。だいぶ安心したけど、死んだら戻ってこれないのでやっぱり死ぬわけにはいかないのであった。

 

 というわけでこの後はソードスキルだけで戦った。鎌のソードスキルの名前がわからんのでカットである。どうせこの後は使うこともなかったし!*3そんでもって人の多い場所を避けるように移動していくと遠くの方から聞き覚えのある声とセリフが聞こえてきた。*4

 

「そうじゃないよクライン……」

 

 どうも1話冒頭のところをやっているようだ。かなり遠くでフレンジーボアと戯れるキリトとクラインを発見した。せや、今のうちにフレンド申請しておこう。と、近づいたところで足が止まった。

 

 ヒビキ は どうやら コミュ力 が 足りないようだ。

 

 落ち着け、今の私は超絶美少女、会話補正がある。でも今はキャラクリしたアバターだと思われるだろうから役に立たねー。チートさんは精神は補強してくれるし、交渉の役にも立つが、コミュニケーションはとりなしてくれない。まあそこまでやったらもはやチートの奴隷だからしょうがないけど!頭が真っ白になって立ち尽くす私の目の前にクラインの追いかけるフレンジーボアが突進してきていた。

 

「おいっ!嬢ちゃん!あぶねェぞ!」

 

 そんなクラインの声で我に帰った私は無意識の内に鎌を引き抜き、フレンジーボアをソードスキルで粉砕していたことに気がついた。おっふ、人の獲物を奪ってしまったぜ。まじすまねぇ。とすました内心とは裏腹に表ではめちゃくちゃ焦りまくっていた。

 

「あわわわ、ごめんなさい!獲物を奪っちゃって!」

「お、おう。それは問題ねーけどよ。すげーんだな嬢ちゃん、ベータテスターか?」

「あ、いえ違います。あれは、その体を動かすのが得意なので、すぐ慣れたんです」

 

 お?なんとか受け答えできてるぞ?やればできるやん私。と自信を持ち直していたところ。やっぱすげーや、と呟くクラインの後ろから我らが主人公キリト君が駆け足で現れた。やっぱアバター姿だとピンとこない顔つきしてるなキリト君。

 

「おい、クライン。人にモンスターを向かわせるのはマナー違反だぞ。すいません、連れが迷惑をかけて」

「い、いや。ボーッとしてた私も悪いので。あの、ちょっと見てたんですけどもしかしてベータテスターですか?」

「ああ、そうだけど……」

「やっぱり!あの、MMOって実際にやるのは初めてで!よかったら色々教えてもらえませんか!?あとフレンド登録もしてくれませんか!?」

 

 と言った感じでもちろんいいとも、とのお言葉をいただき、二人とフレンド登録をすることに成功したのだった。クックック。我ながら完璧なコミュニケーションだったぜ……うん。そういうことにしておこう。と、いっても私自身戦闘に関してはチート能力でなんとかなっているのでむしろ私がいたせいで失敗したソードスキルのやり方を教える側に回ることになったのだが。

 

「ある程度構えていたらこう、ググって軽く腕が引っ張られるでしょう?そしたら腕にあまり力は入れすぎないように、体をアシストに任せてぶった斬るのです。勝手に手が動かされるのに逆らわないのが大事ですよ」

「お?おお!できた!すげーぜヒビキ!キリの字より教えるのうめーよ!あいつ天才型だからさぁ。なんかフワッとしてて困ってたんだよ」

「おいコラ」

「まあまあ、キリトさんに教わっててもすぐできましたよ、クラインさんは飲み込みが早いですからね」

 

 などと話していると、陽光が赤く染まってきていることに気がついた。もういい頃合いだろうか

 

「あ、私そろそろ落ちますね!今日の晩御飯はピザなので急がないとです!」

「おう、またな……はて、ピザ?」

 

 と頭を捻っているクラインを尻目に、流れるようにメニュー、システム、と開いていき一番下へ指を滑らせる。さて、果たしてログアウトボタンは消滅しているのか否か。もしも消滅していなかったらここが自分の知るSAO世界であるという前提を疑わなくてはいけなくなる。頼むからなくなっていてくれ、などと考えている自分に気がつき、これではデスゲームの開始を望んでいる性根の悪いやつみたいではないかと自嘲する。いや、実際望んではいるけど。実はこの力はSAOと何か別作品とのクロスオーバー前提の力なのかも……と全てを疑い出したらキリがないからやめただろ!と自分に言い聞かせ、ログアウトボタンがあるであろう場所を凝視する。

 

「……ない」

 

 ログアウトボタンは、消滅していた。SAO事件は無事に始まったようだ。原作知識が通用した!と喜ぶと同時に無事、などと考えた自分に(以下略)。あーもう!考えないの!そんなこと!チート転生者な私はチート転生者らしくむちゃくちゃやって生きるんだ!そう決めた!ウジウジしない!攻略の最前線を突っ走る!そんな感じでイクゾー!

*1
オリ主は映画プログレッシブの存在を知らない。ミトさんも出てこない

*2
もう半分も切れはするけど断面が歪むという意味

*3
なんて作者に都合のいい設定なんだ……

*4
転生者特有の超聴力




大鎌のソードスキルはラスリコで登場してますが、オリ主はソードスキル使わないのがアイデンティティなので。あといちいち確認するのめんどくせぇ(小声)オリ主のチートパワーは見た目を女神のわがままで変えさせてもらったお礼の特典です。元の能力は超器用です。なんでも上手に扱えるようになります。そのおかげで体をうまく操って幸運を呼び寄せることができます。例えばPCを用意すればそれでハッキングしてSAO事件を止めることができましたがおまけが本体だと思っている主人公は気がつきません。特に転生理由に深いものはありません。使命とかないです。強いていうなら作者がそう望んだので転生しました。
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