やはり流れが変わったのはイルファング・ザ・コボルドロードのHPが4段目……つまりは最後の段に突入した時だった。事前情報ではボスの武器が片手斧と盾から曲刀に切り替わり暴走状態で高威力の縦斬りブンブン丸に退化するとされている。なんで退化なのかと言えば縦斬りが非常に避けやすいからである。横ステで回避できる攻撃をいくらブンブンしても怖くない。むしろラッシュのチャンスが増えるというものだ。退化してしまったコボルドロードなど突進しかしてこない白銀ライネルのようなもの……まあそれは当たったら死ぬということなのだが、それでも全員で囲んで殴れるようになるから格段に戦いやすくなることに間違いはない。
そのような理由で原作を知る私と、あとボスの武器に違和感を覚えているキリト以外の誰もがあとはこの暴走状態を乗り越えれば……!と希望を抱いていたことだろう。コボルドロードが無敵時間に突入すると同時にHPが削れていた数人が交代し、ディアベル隊の面々が一斉にボスを取り囲んだ。
ディアベル隊に取り囲まれたイルファング・ザ・コボルドロードは両手の武器を投げ捨て、腰に下げた
こと序盤ではモンスター専用スキルとまで思われていたこのスキルは終盤に入手するスキルにふさわしい性能をしている。その威力は現在最前線に位置するプレイヤーであるディアベルはんのHPをたった一度の薙ぎ払いと空中コンボで削りきってしまうほどだ。βテストからの変更点が鬼畜すぎる……。と、コボルドロードがスラリと抜き放った刀をぼけーっと眺めていた私の視界に映ったのはさっきHPを回復しに一度下がったはずのプレイヤー。どうやらコボルドロードが移動して壁際に下がったそいつの方に近づいていたみたい……。ん……?え?待って?ダメダメ!アカン!
「ああ……待て、ダメだ。やめろ!下がれ!全力で後ろに跳べ───ッ!」
と叫ぶキリトもどうやら奴の武器が曲刀ではないことに気がついたらしいが残念ながら今の私は下がることが出来ない。全力で前に前に走るしかない。SAOの回復ポーションの仕様は大体が私の大嫌いな継続回復タイプだ。ジワジワHPが回復する奴。この世界では即時回復は回復結晶の特権だからかと思っていたがよく考えればそっちの方が自然だ。ポーションぶっかければニョキーンと腕が生えてくるのは異世界あるあるのチートポーション『エリクサー』くらいのものだし。薬草を煎じて作りました!自然治癒力を増強してくれるんですよ!みたいな方がよっぽど多いだろう。したがって設定的に──SAOには魔法が存在しない──も素材的にもこの序盤での主な回復手段はクソザコ回復ポーション。1分かけて数百HPを回復してくれるが正直言って回復力はゴミカス。あのプレイヤーが回復しに行ってからまだ1分も経っちゃいない。つまりはHPが削れた状態だ。そしてこれからコボルドロードが発動しようとしているソードスキルは周囲を囲まれた状態で発動する範囲重攻撃スキル『
Q:つまりどういうことだってばよ?
A:助けないとあいつ死ぬ!
「──────ッ!」
大きく息を吸い込み、全力で全身を駆動させて駆け続ける。マズイ。奴がモーションに入った。ダメだ。間に合わない。この程度の距離、
◇◇◇
ガチン!と金属同士がぶつかり合う音が響く。そして始まったソードスキルと通常攻撃の鍔競り合い。本来、ソードスキルと打ち合えるのはソードスキルだけだ。それにはシステム的な理由がある。ソードスキルとは一連の決まった動作をなぞる強力な必殺技だ。システムによってアシストされるその動作が終了した時。あるいは軌道が大きく外れ、ソードスキルが中断した時、コンマ数秒ほどの、しかし戦いの中では大きな隙を強制的に晒すことになってしまう。故に通常攻撃で小突かれたくらいで中断しないようにソードスキルにはシステムによる強力な推進力がかかっている。それを止められるのは同様にシステムにアシストされたソードスキルだけ。ソードスキルと通常攻撃が打ち合えばその推進力に打ち負け、必ず弾かれてしまうはずだ。
「(だったら、これは何なんだ!)」
イルファング・ザ・コボルドロードの持つ刀、野太刀の放ったソードスキル『
「ディアベルさん!スタン解けたら下がって回復してください!キリトさん!こいつの、武器!何か分かりますか!?」
「あ、ああ。刀だ!」
「まあ、そうですよ、ねっ!」
半ば無意識に答えたそれに返答したヒビキはふっ、と息を吐いて────
「どっせええぇい!!!!」
ボスを────弾き飛ばしたのだった。ドロップキックで。
◇◇◇
思えばヒビキとの付き合いはそれほど長いものでは無い。彼女と最初に出会ったのはSAOサービス開始初日。デスゲームになる前の平和なSAOでだ。かなり遠くにいたにも関わらず指導している様子が見えただの聞こえただのと言っていた。その時は気にも留めなかったが後から考えてみればあれはシステム的にありえない距離だった。
2度目に会ったときにはデスゲーム開始から約1ヶ月が経過していた。一度も連絡を取らないまま、初心者である彼女を置いていったのはまずかったかと考えた。しかもクラインのように知り合いがいるかも分からず俺以外に頼れるフレンドがいるかもわからない彼女にそれでもメッセージを送らなかった理由が忘れていたからなどというあまりにも失礼すぎる理由だったから尚更顔を合わせづらい。
気まずい空気になるかと思いきや俺が風呂付きの豪華な部屋を借りていると知るや否や泊めてくれと言い出す始末。その後なし崩しに──「ソロはマジで危ないですから!私も何度もひやっとしましたから!私を助けると思って!」などと言われパーティーを組み、その日の狩りを終えた後。誓って故意ではないのだがうっかり事故で風呂場に入ってしまった時、仮想の体を1発殴られただけで一時的に記憶を失うという冷静に考えればありえないことが起きた。
そして今、俺の目の前でイルファング・ザ・コボルドロードの巨体が宙を舞っているのもさっきの通常攻撃も要するにこれまでのことを顧みれば彼女の異常性の一部でしか無い。総評、色々おかしな奴だが悪い奴ではない──はずだ。
「(戻ったら絶対問い詰める!)」
「キリト!アスナ!カバー行くよっ!」
ユウキの言葉に、ああ!と応じた俺たちはたった一人で未知のボスに立ち向かう危なっかしいパーティーメンバーの元へ向かうのだった。
アニメと言えば私は「
ソードスキルがゲシュタルト崩壊してきた……
アルゴルート希望、と送ってもらったので「ほう、いいではないか」って妄想してみたけどアルゴがオリ主ちゃんといちゃついている姿が全く浮かんでこなかった。妄想力 が 足りないようだ。修行不足ですまぬ……。ゲームのアルゴデートイベント動画で見てくるわ……。
キリトくんがオリ主ちゃんを忘却してたのはオリ主ちゃんが今会いたくないって思ってたからですね(原作通りに進行させるためという名のガバ設定)。
いや〜やっぱ原作キャラ視点ってサブイボが……