食蜂操祈のニセモノ   作:大根ハツカ

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序 章 ただ光の射す方へ Nameless_Story.
第〇話 亡霊と少女の話 Curtain_Call.


 

 

 繋がった。

 そう、感じた。

 

 

『君は……』

「……誰だ、オマエ? どっから入ってきた? いや、そもそも……オ(・)マ(・)エ(・)の(・)そ(・)の(・)体(・)は(・)、何(・)だ(・)?」

『……僕(・)が(・)、見(・)え(・)る(・)の(・)か(・)い(・)?』

 

 

 男性のような粗野な話し方をする少女の声も、今の僕の耳には入らない。

 既視感のある少女の顔と、彼女を取り囲む違和感のある部屋が僕の脳を回転させる。

 

 それは質素な一室だった。

 簡単なベッドと、必要最低限のものしかない。一見すると、ミニマリストの寝室にも思えるかもしれない。

 だ(・)が(・)、違(・)う(・)。窓(・)に(・)取(・)り(・)付(・)け(・)ら(・)れ(・)た(・)鉄(・)格(・)子(・)が(・)、こ(・)れ(・)が(・)住(・)人(・)を(・)閉(・)じ(・)込(・)め(・)る(・)た(・)め(・)の(・)部(・)屋(・)だ(・)と(・)知(・)ら(・)せ(・)る(・)。

 

 極め付けは、そこにいた少女の服装だった。

 若い女の子が好むようなオシャレの欠片もない。しかし、単なる白シャツなどでもない。そんな性格と断ずるには、その服装はあまりにも特徴的だった。

 

 

『……そ(・)れ(・)っ(・)て(・)、囚(・)人(・)服(・)?』

「は?」

 

 

 少女は怪訝な顔つきだった。

 見当外れな事を言っている……というよりも、ど(・)う(・)し(・)て(・)今(・)更(・)そ(・)ん(・)な(・)分(・)か(・)り(・)き(・)っ(・)た(・)事(・)を(・)尋(・)ね(・)る(・)の(・)か(・)意(・)味(・)が(・)分(・)か(・)ら(・)な(・)い(・)と(・)で(・)も(・)言(・)い(・)た(・)げ(・)な(・)顔(・)。

 

「……ここが少(・)年(・)院(・)って事も知らねーなら、オレ狙いって訳でもなさそうだな」

『え?』

「いや、何でもない。つーか、マジでその体はどうなってんだ? 光学系能力で作った立体映像……いや、だけどAIMジャマーがあるから能力は使えないはずだ」

『この半透明な肉体の事かな? 超能力による幽体離脱……だ(・)と(・)思(・)う(・)ん(・)だ(・)け(・)ど(・)ね(・)』

「なんでオマエもよく分かってねーんだよ」

 

 僕にもよく分からないのだから仕方ない。

 超能力についての知識はある。体(・)に(・)備(・)わ(・)っ(・)た(・)意(・)味(・)記(・)憶(・)と(・)、僕(・)自(・)身(・)の(・)エ(・)ピ(・)ソ(・)ー(・)ド(・)記(・)憶(・)の(・)両(・)方(・)が(・)。

 だけど、それも完璧ではない。ま(・)し(・)て(・)や(・)、こ(・)の(・)能(・)力(・)は(・)僕(・)の(・)も(・)の(・)で(・)は(・)な(・)い(・)の(・)だ(・)か(・)ら(・)。

 

「マジで、オマエは何の目的でここに来たんだ?」

『特に何も? ふらふらと歩き回っていたらここに辿り着いたんだ』

「ただの迷子かよ……。だったら、さっさと立ち去れ。看守に見つかったら怒られるだけじゃ済まねーぞ」

『…………君は?』

「あ?」

『君は、どうしてここに?』

 

 話を聞く限り、ここは少年院だ。

 ならば、少女だって好んでここに来たわけではないだろう。

 

「……それを、オマエに言う必要があるか?」

『ないね。だけど、言って減るものでもない。言いたくないなら言わなくていいけれど、誰かに自分の話を聞いてもらうっていうのは案外心が軽くなるものだよ?』

「………………、別に。大した理由じゃねーよ」

 

 そう言って、少女は口を噤(つぐ)む。

 言いたくないのならば仕方がない。僕も少女の口を無理やり開かせる趣味はない。

 そ(・)れ(・)に(・)、そ(・)ん(・)な(・)時(・)間(・)も(・)残(・)さ(・)れ(・)て(・)は(・)い(・)な(・)い(・)だ(・)ろ(・)う(・)し(・)。

 

『ちなみに、君って霊感とかあったりする?』

「生まれてこの方、一度も見たことねーよ」

『そっか…………何か、条件があるのかな』

「?」

『何でもない。これ以上君に迷惑をかけることはできないし、ここらでお暇(いとま)するよ』

「じゃあな。二度と来るんじゃねーぞ」

 

 僕には時間がない。

 僕(・)の(・)事(・)が(・)見(・)え(・)た(・)初(・)め(・)て(・)の(・)人(・)を逃すのは惜しいけれど、自分の事で精一杯な子供に負担をかけるわけにはいかない。

 来た時と同じように壁をすり抜け、少年院を去る──

 

 

 

 ────こ(・)と(・)が(・)で(・)き(・)な(・)か(・)っ(・)た(・)。

 

 

 ぐ(・)い(・)っ(・)、と(・)。

 ま(・)る(・)で(・)背(・)中(・)を(・)糸(・)で(・)引(・)っ(・)張(・)ら(・)れ(・)る(・)よ(・)う(・)な(・)感(・)覚(・)。

 後(・)ろ(・)を(・)振(・)り(・)返(・)る(・)と(・)、僕(・)と(・)少(・)女(・)が(・)銀(・)色(・)の(・)糸(・)で(・)結(・)ば(・)れ(・)て(・)い(・)た(・)。

 

『え?』

「は?」

 

 繋(・)が(・)っ(・)た(・)。

 糸(・)を(・)通(・)し(・)て(・)、少(・)女(・)の(・)記(・)憶(・)が(・)流(・)れ(・)込(・)む(・)。

 

 

『春暖(しゅんだん)、嬉美(きみ)……?』

「…………っ!」

 

 

 既視感のある名前だった。

 聞いた事のある……見た事のある名前だった。

 

「どうして……その名を知ってる? それは、看守でも知らねーはずだ」

『……そっ、か。春暖嬉美(しゅんだんきみ)か、道理(どうり)で。僕(・)が(・)君(・)の(・)も(・)と(・)へ(・)引(・)き(・)寄(・)せ(・)ら(・)れ(・)た(・)わ(・)け(・)だ(・)』

「何わけ分かんねー事を言ってやがる! テメェまさか、読心能力者(サイコメトラー)かっ⁉︎」

『確かに能力は精神系だけど……』

 

 どうやら、記憶の流入は一方通行のようだった。

 突然、隠していた本名を当てられたのだ。これでは警戒されても仕方ない。

 どうにかして信頼を得なければ。僕(・)の(・)目(・)的(・)を(・)果(・)た(・)す(・)た(・)め(・)に(・)は(・)、彼(・)女(・)の(・)手(・)助(・)け(・)が(・)必(・)要(・)な(・)の(・)だ(・)か(・)ら(・)。

 

『信用してくれ。僕は君を狙ってここに来たわけじゃない』

「その証拠は何処にある」

『それは……難しいね。僕には証拠どころか、差し出せるものは何もない。まずは……そうだね、自己紹介から始めようか』

 

 とは言っても、自己紹介できる事もそう多くはないのだけど。

 僕は大した特徴のない、何処にでもいるありふれた人間……だ(・)っ(・)た(・)。少(・)な(・)く(・)と(・)も(・)、転(・)生(・)な(・)ん(・)て(・)も(・)の(・)が(・)起(・)き(・)る(・)ま(・)で(・)は(・)。

 

『僕の名前は……無(・)い(・)』

「……秘密って事か?」

『いいや。名前を言えないんじゃなくて、この世界で言える名前が無い。少なくともこの世界では、僕はまだ名前を得ていない』

「そんなヤツのことを信用できるとでも?」

『──だけど、この体の名前なら知っている』

 

 僕の肉体は特徴的だ。

 きっと、その子の名前を知らない人でも、その子の見た目は見覚えがあるなんて人は多いんじゃないだろうか。

 

 蜂蜜色の長い髪に、人形のように整った顔立ち。

 『中学生とは思えない』との評価を受けるそのスタイル──は(・)、残(・)念(・)な(・)が(・)ら(・)ま(・)だ(・)無(・)い(・)け(・)れ(・)ど(・)。発(・)育(・)途(・)上(・)の(・)小(・)柄(・)で(・)華(・)奢(・)な(・)少(・)女(・)に(・)も(・)、将(・)来(・)の(・)艶(・)か(・)し(・)い(・)魅(・)力(・)と(・)は(・)ま(・)た(・)違(・)っ(・)た(・)方(・)向(・)性(・)の(・)魅(・)力(・)が(・)あ(・)る(・)。

 

 

『僕は食(・)蜂(・)操(・)祈(・)。学園都市第五位の超能力者(レベル5)にして、精神系においては最強の「心理掌握(メンタルアウト)」の能力者、食蜂操祈(しょくほうみさき)────に(・)取(・)り(・)憑(・)い(・)た(・)ニ(・)セ(・)モ(・)ノ(・)だ(・)よ(・)』

 

 

 食蜂操祈(しょくほうみさき)に取り憑いた亡霊(オカルト)。

 少年院に収監された能力者(サイエンス)。

 本来なら相入れるはずのない二つが交差した時、物語は始まった。

 

 






《原作キャラ紹介コーナー》

▽春暖嬉美(しゅんだんきみ)
初出:とある科学の超電磁砲105話
ウェーブがかかった長い空色の髪と、ギザギザの歯が特徴の少女。一六歳。
『宇宙の何処かにブラックホールを生み出す能力』の持ち主。それは現在のエネルギー問題を解決する可能性があるが、制御が困難であるため太陽系にブラックホールを発生させる危険性も持つ。新たな超能力者(レベル5)になる素質がある。
様々な組織から身柄を狙われており、それらから逃れるために『白絹仄火(しらきぬほのか)』という名前で少年院に入所した。


▽食蜂操祈(しょくほうみさき)
初出:とある科学の超電磁砲41話
常盤台中学に所属する中学二年生。蜂蜜色の長い髪に、人形のように整った顔立ちの少女。中学生離れしたスタイルをしている。
学園都市第五位の超能力者(レベル5)であり、その能力は精神系最強の『心理掌握(メンタルアウト)』。精神に関する事なら何でもできる十徳ナイフのような能力。
中学一年生の時に精神的な自殺を試みたが、ギリギリの所で物語の主人公である上条当麻(かみじょうとうま)と出会った。

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