第二章前半ラスト。
「…………っ、は、はっ!」
痛む頭を抑え、荒い息を繰り返す。
意図的に能力を何度も暴走させた代償。
しかし、そうでもしなければ第一位に勝利する事などできなかった。
「さて、ここからどうしようか……」
『当然、逃走一択ではないか?』
首にかかった十字架から声がする。
アウレオルス=ダミーはこの場から去る事を勧めていた。もちろん、僕もそうしたい所なのだけど──
「──この子を置いて行けない」
『唖然、このお人好しが……』
路上に
この子は確かに罪を犯したけれど、それは周囲の大人の責任なんだ。だから
まずは『実験』の関係者を潰す。
この子を犯罪に巻き込もうなんて二度と思わないよう、徹底的に潰す。
「……まずは山川くんを呼んで、この子をお医者さんの所に預けよう。脳震盪を起こして倒れてるんだから一度診察してもらった方が良い。そして彼がこの子を守ってくれている間に、僕らで『実験』を──」
「──
「ッ⁉︎」
音も気配もなく。
頭に火傷を負った白髪の高齢男性。
白衣を纏った研究者と思わしき老人。
──それは、
「
「おや、僕の名前を知っているんだねぇ。アレイスター君から聞いたのかな?」
一目見ただけで分かった。
木原を騙り、『暗部』に潜入してまで子供を助けようとしたドレンチャー=木原=レパトリとは真逆。
『暗部』でしか許容されない根っからの木原、自分の研究のためならばいくらでも子供を犠牲にできる最低最悪の研究者。
「
「……
明らかに
既にこの事件は、学園都市統括理事長でさえ制御のできない領域に入っている。
「……やっぱり君がアレイスター君に指示をしていたようだねぇ。全く、参ったよ。これじゃ僕の『実験』が台無しだ」
「初めっから子供を犠牲にする計画を立てていた時点で破綻していたさ。履き違えるなよ、科学者。『科学』なんてのはさ、人間の未来を豊かにするための道具でしかないんだ。その『科学』を発展させるために子供の未来を犠牲にするなんて、本末転倒にも程があるだろう?」
「君は何を言っているのかな? 『科学』の発展のために犠牲はつきものだよ? 『科学』の礎になるなんて、僕は子供の未来を誰よりも有効活用しているじゃないか」
「
「
互いにその精神を見抜く。
話し合うほど、相容れないと再認識する。
「でもねぇ、僕は君に感謝しているんだよ?」
「は?」
「僕の提唱した『実験』は台無しになった。だけどねぇ、
「…………ッ‼︎」
もっと良い。
あるいは、もっと悪い計画。
『
「二万体をチマチマ殺して経験値を貯めるのなんて面倒だろう? 君という存在を知って思ったんだよ。
「………………何を、言っている……?」
「木山君の
つまり。
つまり。
つまり。
「
それが新しい『実験』。
『
「一八〇万人の学生の経験値をたった一人に集約し、概念上の
「分かっているのか⁉︎ 木山くんが作った
「学生は全員廃人になるだろうねぇ。……
「…………ッ‼︎」
本気だ。
この男ッ、本気で自らの研究のために一八〇万人の学生を犠牲にしようとしている……ッ⁉︎
「楽しみだねぇ。
「させるか‼︎」
自分の頭に指を突き付け、『
『
そして、再び光の屈折が僕の幻影を生み出し──
──轟‼︎‼︎‼︎ と。
渦巻く暴風が空気中の水分を吹き飛ばす。
「なッ」
「ああ、そっちの
一瞬だった。
空気の弾丸が塩を丸ごと吹き飛ばした。
「『
つまり、この外道は珍しい能力を持った子供を拉致して、強制的に自分と同じ脳波に調律した。そうして、木原幻生が子供の能力を使えるように子供の方を改造したのだ。
「ああ、心配せずとも君を殺しはしない。アレイスター君も注目する君の特異体質‼︎ そして魂という『科学』では説明できない概念を証明するその希少性ッ! 君の事は手持ちの機器と分析系能力者を総動員して丸裸にするッッ‼︎‼︎」
木原幻生が掌をかざす。
ただそれだけで、息が出来なくなる。
恐らく、空気を操って酸素を無くしたのだろう。
「っっっ‼︎」
(ま、ずい……意識が、薄れ──)
──そして、僕は木原幻生の『手』に堕ちた。
「さて、必要なモノは揃ったねぇ」
『
『進化体質』の所有者──
『
もはや
あと少しで、木原幻生は
「さぁ、始めようか。
「ハイハーイ。用意はしてるけど、本当にやっちゃってイイの〜〜?」
それは、人の形をした液体金属。
ホラーにでも登場しそうな怪物が、木原幻生の協力者だった。
「構わないよ。今まで行っていた『実験』に関する情報封鎖を全て解いて、一連の情報を全て『暗部』に流すんだ」
「マーマー、最近は少しずつ情報を流してはいたけど、そんな事したらお邪魔虫がいっぱい現れない?」
「僕が求めているのはそれさ。
「カイツちゃんとかを見逃したのはそのため?」
「カイツ君はきっと
そして、その情報に『暗部』が震撼した。
統括理事長相手に交渉を成功させた『功績』。
それら全てが真実であると知り、いずれかの存在を求め、あるいは殺すために『暗部』の猛者達が木原幻生の下に引き寄せられる。
いいや、『暗部』だけではない。それはこの街に存在する者全てを引き寄せるだけの価値があった。
「…………なん、ですって?」
「もう一度説明しましょうカ?」
──それは例えば、自らのクローンを探していた学園都市第五位の
「製薬会社からの依頼〜〜? それってウチの管轄じゃなくない? アンタ断れないの?」
『こいつときたら! 断れる程度のランクの依頼なら既に断ってるっつーの!』
──それは例えば、『暗部』から依頼を受けた学園都市第四位の
「オリジナル……ですって?」
「関わらない方がいいわ。because、あなたに止める術などないのだから」
──それは例えば、自らのクローンの存在を知った学園都市第三位の
「あら、あなたもこの騒動に参加するつもり?」
「
──それは例えば、
そして、動くのは
普段は『暗部』に息を潜め、黙々と悲劇を量産する大人さえも、いずれかの『賞品』を狙って騒動に参加する。
──それは例えば、学園都市統括理事長を殺害しようと画策する暗部組織。
──それは例えば、革新的なネットワークを分析して再生産しようと企む企業家。
──それは例えば、一万回近い『死』の記憶を採集しようと目論む死霊術師。
全てが木原幻生の掌の上。
望んだ通りに、経験値が一点へと集約されていく。
しかし。
その老人にとっての
まぁ、簡単に言えば。
「──
継雲雷糸の体は木原幻生に拉致された。
それは間違いではない。
しかし、お忘れではないだろうか?
僕は元々、この体に憑依しているだけの幽霊。
「
『ひとまず憑依するための
アウレオルス=ダミーが作成した人形に憑依する。
継雲雷糸の身体が使えない今、この身体が僕の生命線と言えるだろう。
「よし、ダミー君は引き続き僕の本体の警護を頼む」
『どうするつもりだ?』
「なぁに、心配はいらないよ。子供同士の喧嘩ならまだしも、相手は大人だ。
『表』には出せない『暗部』の闘争?
知るかクソが。全部暴いて、陽の下に罪を晒してやる!
身を潜めていたコインパーキングから飛び出し、近くにあった公衆電話に電話番号を打ち込む。
助けを求める。しかし、その相手は
「さぁ、反撃開始だ」
一一〇番。
『表』を見下す『暗部』の老害。
秩序を司る大人の力を見せてやるよ。
第二章後半は年内投稿予定ですが、卒論の関係で年明けになる可能性大です。
《原作キャラ紹介コーナー》
▽
初出:とある科学の超電磁砲7話
白衣を着た女性。大脳生理学専門チームに属しており、主にAIM拡散力場を専攻している。
『暴走能力の法則解析用誘爆実験』で傷つけた子供を救う手段を見つけるため、演算装置を求めて『
▽
初出:とある科学の超電磁砲51話
かつて霧ヶ丘付属中学に所属していた中学三年生だった一五歳の少女。紫がかった黒髪のロングヘアをツインテールにまとめている。暗部組織『メンバー』の指令役に成り代わるため、桃色のコスプレナース服のような衣装を着ている。
『
かつて『
▽電話の女
初出:とある魔術の禁書目録15巻
暗部組織『アイテム』の指令役。二〇代後半の亜麻色セミロングの女性。
暗部組織に命令を出す、学園都市上層部の『電話の声』の一人。指紋や歯形や眼球、血液型や体臭すらターゲットと同一化できる変装技術を持った潜入の専門家であり、かつては
▽
初出:とある魔術の禁書目録15巻
暗部組織『アイテム』のリーダー。スラリとした長身にふわふわした茶髪で、モデルのようなプロポーションを持つ女性。
学園都市第四位の
▽
初出:とある魔術の禁書目録15巻
暗部組織『スクール』の構成員。一四歳ほどの少女。金髪に小柄で華奢な体つき。ホステスのような背中の開いた丈の短いドレスを身に纏う。
▽
初出:とある魔術の禁書目録15巻
暗部組織『スクール』のリーダー。一八〇センチを超える長身の少年。茶髪で顔が整っており、着用しているスーツと合わせてホストのように見える。
学園都市第二位の
アレイスターとの直接交渉権を手に入れるため、