ちょっと遅くなりましたが一応一周年です。
今年度もよろしくお願いします。
「やあ。僕を呼んだって?」
「元気そうだねぇ、
面会室の分厚い防弾ガラス越しに目が合う。
暗闇の重鎮、
そこは第一〇学区にある社会人向けの刑務所。
AIサポートを受けたスピード裁判の結果、一ヶ月も経たずに老人は狭い刑務所にブチ込まれていた。
「『
「…………」
相変わらず耳が良い。
あらゆる技術を削ぎ落として刑務所に封じ込めたはずだが、どこからそんな話を聞きつけたのか。
チラリ、と近くの看守に目をやるが、看守もまた慌てて首を振る。少なくとも、この刑務所自体が情報を漏洩している訳ではなさそうだ。
「でも、上手くいってないでしょ?」
「……何が言いたい?」
ニタニタ、と老人は嗤う。
学園都市の闇を煮詰めたような
「
木原幻生。
学園都市の底の底。
「手錠? 刑務所の塀? 僕を誰だと思ってるのかな? 『木原』にこんなものが通用する訳ないでしょ」
ガン! と木原幻生は分厚い防弾ガラスに自らの額を擦り付ける。
まるで自分と継雲雷糸の間を遮るそれを馬鹿にするみたいに。
「僕はこの街の有力者とどれだけ繋がっていると思う? 僕が何の抵抗もなく捕まったから安心したでしょ。違うよ、わざわざ抵抗する必要もなかっただけ。僕の人脈を使えば刑務所だって一流ホテル並みの待遇になるんだからさ!」
「…………」
「ヒヒヒヒッ、ヒャハ! 君は間違えた! 僕を捕まえるべきじゃなかった! 君のおかげで僕はただ一人、安全圏からこの街を引っ掻き回す事ができる‼︎ 僕は悠々自適に手札を一つ一つ見せびらかすだけでいい。それだけで、君の守ろうとしたモノは全て台無しになる‼︎」
勝利宣言。
木原幻生にとって収監は敗北ではない。
これから破滅が撒き散らされる街からの一抜け、勝利と言っても過言ではない。
継雲雷糸を呼び出したのはそのため。
自分に対して勝ち誇った
そして、木原幻生は。
分厚い防弾ガラス越しに、その顔を見た。
「────
「………………は?」
「『
「な、にを……何を言っている⁉︎」
「お前のお陰だよ、木原幻生。本来は散発的な抵抗を一つずつ処理していくつもりだったんだけど、お前が『
「…………っ⁉︎」
そして、一番初めに木原幻生という大物が倒された事で、大半の『暗部』の者達は手を出せずに足踏みをしている。
あの木原幻生を超える実力者でもなければ、手を出しても返り討ちに合うという証明になっているのだ。
「そして、気づいているかな?」
「な、んの話かな……?」
「お前に手を貸していた
「なっ、ば……っ⁉︎」
「そりゃそうだよ。お前は信頼関係を築かず、恐怖と利益だけで人を支配した。でも、今のお前にそれがあるか? ちっぽけな少女に倒されて手も足も出せないお前のどこに恐れる点があるんだ?」
「そんな訳がない! 僕の築いた立場は盤石だ! たった一度の失敗で壊れる程度の恐怖じゃない! これまで僕がどれだけの根回しをしてきたと思っている⁉︎」
「残念だけど、そこは僕の得意分野だ」
木原幻生は勘違いをしている。
目の前にいるのはただの善人ではない。
だから、この街の有力者は木原幻生を見捨てた。
一流ホテル並みの待遇も、安全圏から一方的に口を出せる立場ももはや存在しない。
何もできずに牢屋の中で立ち尽くす一人の老人が刑務所にいるだけだ。
「勝利宣言だよ、木原幻生。お前はそこで死ぬまで反省していると良いさ」
刑務所に絶叫が響く。
ありふれた老人の、どうしようもない結末だった。
ある研究所の跡地。
大破したスポーツカーの中にその男は取り残されていた。
白衣を着た二十代後半の研究者。
冷房の効きすぎた車内で、その男はダラダラと大量の汗を流す。
(くそっ、くそっ! 何で‼︎)
彼は
だが、
そこで天井を拾ってくれたのが
しかし、それも上手くはいかなかった。木原幻生に乗っ取られ、天井の作った
これでは借金は返せない。
居場所のない学園都市の中で、莫大な借金だけが残った。
だから、天井亜雄は生きるために借金を踏み倒して逃げるしかなかった。そのために、天井は学園都市の敵対勢力と手を組んだ。
(なのに! くそっ、そうだというのに‼︎
「動くとバラバラになるぞ、天井亜雄。私達の主は君を無傷で捕獲する事を望んでいるようだがね。
目の前には白衣の中年男性。
『
そして、彼が捕獲していた
「えっ、M000! 応答しろ! おい! どうして何も返事しないっ、『
「無駄な足掻きだ。聞こえるだろう? 私が平伏す学園都市の長の力が」
無線機からの応答はない。
だが、何の音もしない訳ではない。
ひぃ、と情けない男の悲鳴が響いた。
それは天井亜雄が取引した組織の長だったはずの男の声だ。
つまり。
つまり、だ。
冷徹な声で博士は告げた。
「
ゴッッッ‼︎‼︎‼︎ と。
爆破の衝撃で建物が吹き飛ぶ。
伝播する方向を調整された衝撃が、『
「……今回の仕事が気に入ったみてえだな、
「ああ、君の言う通り。久しぶりに、気分良く仕事ができる。やはり、あの少女に味方して、正解だったな」
暗部組織の一つ、『ブロック』。
この場の制圧を任されたのは彼らだった。
元より、『ブロック』の主な任務は学園都市の外部協力機関との連携を監視する事。
外部協力機関に潜んだ
無論、
だが、一人の少女からのお願いがあった。それだけで、『ブロック』は動いた。彼らが長と仰いだ者のために。
「アンタはいいのかよ、
「何がだ」
「俺や手塩はともかく、
『ブロック』は様々な理由で『暗部』に落ち、アレイスターへの反逆を決意した組織だ。
それはつまり、それぞれが学園都市と敵対するに足る
今ここにはいない
だが、他の三人は違う。手塩はアレイスターにとある事を尋ねるために、
手塩はいい。これから、アレイスターと交渉する機会は多い。その時にいくらでも尋ねる事ができる。
山手はいい。彼はあの少女の下についた時点で既に目的を達成している。アレイスターの命令から逃れられる立場を手に入れた時点で、彼は満足した。
しかし、佐久の願いだけは叶わない。あの少女が配下に人殺しを許すとは思えない。
だが、
「────構わない」
佐久は他の三人とは違って、何か理由があって『暗部』に落ちた人間ではない。元から『暗部』の生き方が適していた悪人だった。
暴力が愉しい。人を甚振る事に悦びを覚える。そういった種類の変態が佐久であり、『暗部』に落ちるのも当然の人間性だった。
だから、佐久の周囲には彼を恐れる人間と彼を恨む人間の二通りしかいなかった。佐久は暴力でしか人と繋がる術を知らなかった。
だが、ある時、そんな生き方に疑問を覚えた。
それは、とある金髪の少女が『暗部』に落ちた時だった。彼女は妹を守るため、犯罪に手を染めて『暗部』に落ちた。
一目見た時から分かった。
彼女は自分と同類──
なのに、少女と佐久には異なる点があった。
佐久とは違って、彼女の周りにはたくさんの人がいた。
それを見て、何を思ったのか。嫉妬か、羨望か、それとも別の感情か。だが、何にせよそれを見た瞬間、佐久は少女に接触する事を決めた。
『暗部』のイロハも知らず、
爆弾の作り方、爆弾の使い方、その他諸々の『暗部』での生き方など。その暴力性を開花させるために。
そして、その目論みはほとんど達成された。
金髪の少女は彼の予想すら超えて『暗部』に適応した。その善悪を超越した暴力性を発揮する形で。
ただし、一点だけ予想外の事があった。
才能は開花した。怪物は目覚めた。
人殺しを愉しめる感性を持ちながら、少女の周りにはたくさんの人がいた。
家族が、友人が、知人が、無数の身内が彼女を取り巻いていた。師匠である佐久もその一部だった。
その時に、佐久はようやく気付いた。
(
爆弾だって使いようで害にも益にもなる。人に使えば殺人道具でも、建物に使えば立派な解体用具。そして、人に使ったとしても衝撃の方向さえ制御すれば、一切の人死を出さずに相手を昏倒させる事だってできる。
暴力性だって同じなのだ。振り回すだけならば害だが、それを使う方向や場面を見極めれば、それは誰かの役に立つ。
今更遅いのかもしれない。
佐久は何の言い訳もできない程どうしようもない悪人で、人殺しに悦楽を覚える最低で最悪なクズ野郎だ。
でも、それでも、もしかしたらこんな自分でも、誰かと肩を並べる事が出来るのかもしれない。
そんな時に出会ったのが手塩と山手だった。
彼らの話を聞いて、佐久は思ったのだ。
自分の暴力を使うべき場面、放つべき方向はここなんだと。
だから、嘘をついた。アレイスターに恨みがあると言って、彼を殺したいから協力すると言った。
本当は何だって良かった。
誰かのために暴力を使う場面があるのなら、殺す相手が誰だとしても構わなかった。
結局、佐久辰彦は何も変わらない。
『ブロック』が結成しても、とある少女の配下になっても、彼は最低なクズのままだ。
でも、それでも。
「あの
仲間と肩を並べ、人殺し以外に暴力を振るう。
それも不思議と悪くないと思うのだ。
佐久は無数の爆弾を放り投げる。
衝撃の方向を操って、敵だけを昏倒させる形で。
「楽しませろよ、『
やはり爆弾は良い、と佐久は笑みを浮かべる。
破壊と殺戮が詰まった最悪の暴力装置でも、使い方次第で誰かのヒーローになれるのだから。
「あら、わたしも殺されるのかしら」
貸し倉庫のような巨大な
その真ん中で、テーブルに座った女は軽々しくそう笑った。
二〇代後半にも
「……なぜ、そう思う?」
「天井亜雄を殺したキミたちなら知ってるでしょう? わたしも彼と同じ、
「一つ訂正するならば、彼は死んでいないそうだ」
「そう。なら、獄中死かしらね」
「残念ながら私達にお前を死なせている余裕はない」
「……?」
不可解な言い方に芳川は眉をひそめる。
その男は面倒臭そうな顔で、一枚の資料を投げた。
「その病院に行け」
「ここは確か、あの医者の……」
「ただでさえ一万人を超える患者がいるんだ。それに加えて、ウイルスを打ち込まれた幼い子供もな。いくら分散させた所で手が足りん。薬学や遺伝子工学──それもクローン技術に特化した知識を持つお前を遊ばせておく気はない」
「…………まさか、」
「
その男──
彼が経営するジェネラルエピテックス社は元から医療分野に足を踏み入れていた。そのツテを使って、彼はとある医者に二万人分の調整機材を売り付けていたのだ。
「バイオポッドなど、必要な機材は我が社が用意する。どうせ研究所の他には仕事もないのだろう? 悪い条件ではないと思うが」
「…………」
「それに、お前の事はよく調べている。教師になりたかったのだろう? 彼女達の情操教育を行う事はお前の夢に繋がると思うが」
「……ダメよ。優しくない……『甘い』だけのわたしではあの子達の助けにはなれない。わたしなんかじゃ悪影響にしかならない」
「そうか」
桜坂征人は芳川の表情を見て、まるで懐かしむかのように笑った。
「お前は完璧主義なんだな? 私も似たようなものだから強くは言えんが、一つだけお前の間違いを指摘してやろう」
「?」
「子供を甘く見過ぎだ。お前が子供に悪い影響を与える? 子供に影響を与えられたお前が、今以上に優しくなるのがオチだと思うが」
黒い清掃車だった。
銀の髪に端正な顔立ちの青年は、車内に横たわっていた。
「目は覚めたか、
「…………、」
異型の
そんな彼が、剥き出しの生身のまま捕縛されていた。
ただし、手足を縛る枷はない。
それは慢心や情けではなく、シルバークロースの目の前にいる男の余裕の現れなのだろう。
目の前の男が武器を持たないのもまた、こちらを安心させるためのパフォーマンスではなく、この至近距離では武器など必要ないという自信の表れだ。
サングラスをかけた無愛想なスーツの男。
明らかに『暗部』の人間がシルバークロースを見下ろしていた。
「お前は……」
「
「何だと?」
「気付かないか? 学園都市中の注目がお前に集中している。この私の上──
「な、に……ッ⁉︎」
学園都市統括理事。
この街に一二人しかいない、『暗部』に君臨する王。
そんな彼らがシルバークロース=アルファを探すためだけに私財を注ぎ込んでいる。
「当然だろう。お前の偉業に気付いていないのはお前だけだ、シルバークロース=アルファ。意識を失う前、お前は誰と戦った?」
「ま、さか。お前達が狙っているのは……‼︎」
「
継雲雷糸の勢力拡大は学園都市に一二人しかいない統括理事さえもが危険視するほどの脅威。
実際、既に複数人の統括理事が彼女に刺客を差し向け、
だからこそ、杉谷の裏にいる統括理事──
あの継雲雷糸を追い詰め、生還した者として。
「お前も恨んでいるのだろう? たった一度の敗北。それだけでお前の地位は奪われ、自慢の『コレクション』も失った。やり返したいとは思わないか?」
「……フン」
「お前から得た戦闘データとこちらで用意できる戦力をかき集め、あの子供を学園都市から排除する。手を貸せ、シルバークロース=アルファ。
シルバークロース=アルファは端正な顔立ちを歪めた。
見えない統括理事はこう言っているのだ。学園都市の学区一つを手放したとしても、継雲雷糸一人を排除した方がまだ傷が浅い、と。
「一つ訊かせろ」
「質問に制限はかけない。いくらでも」
「何のためにヤツの命を狙う。金か、利権か、それともプライドか?」
「……さて、な。潮岸の考えなど、手駒に過ぎん私では分からない。だから、その質問には私が返そう」
杉谷は信念の籠った真っ直ぐな目で応える。
甲賀の末裔。正義を名乗って暗躍を続けてきた卑怯者の集団の末として。
「善のためだ。権力者に媚びてでも成し遂げなければならない事がある。卑怯者の世界に生きながらも善であろうと抗い続けるには、地球上の問題全てと常に向き合い続けるには、多少の悲劇は見過ごすしかない」
「そうか」
その答えを聞いて。
シルバークロース=アルファは目の前の男を
「──
ゆっくりと、シルバークロースは起き上がる。
まるで、話はこれで終いだとでも言うように。
「…………………………は?」
「美しくない。善を語るお前の顔は酷く歪んでいる。そんな男を使わせた統括理事とやらの顔も醜いのだろうな。誰がそんな者に従う? 私の美しさにお前達は必要ない」
「本気で言っているのか? お前はそんな理由で我々の要請を断ると」
「ああ、断る。多少の悲劇は仕方がない? 少女一人が死ぬ悲劇を多少と言っている時点で、お前の善とやらはホンモノではない」
「ホンモノだと?」
杉谷の眉が動く。
「お前のような悪党が、ホンモノの善人を知っているとでも言うのか?」
「勿論。私は知っているぞ、本物の善人の顔というヤツを。幼く、儚く、何よりも美しい彼女の顔を! 私はそれを手に入れなければならない‼︎ 顔に滲み出る美しい心というヤツを‼︎」
「そうか。だが、お前がその善人と会う事はもうない。……
突如、二人を乗せた車が急停止する。
慣性の法則に従って体勢を崩したシルバークロースに向かって、杉谷の拳銃が突きつけられる。
武器を持たない余裕ある姿はフェイク。方法は分からないが、見えないように拳銃を隠し持つ事がほんの一瞬の油断を生み出す。卑怯者の一手は正面からの暗殺さえ可能にする。
直後、大きな金属音が車内に響いた。
「いいや、私はもう一度彼女に会う。今度こそ、私のホンモノの顔を取り戻して」
「なん、だと」
「
「『
超音波伸縮性の軍用特殊テーピング、『
生身に直接装着する形で使用し、身体の各所に貼り付ける事で運動機能を飛躍的に上昇させるアイテム。
ただし、シルバークロースは『
「だが、それでも足りん。甲賀の末裔、卑怯な暗殺を極めたこの私の動きに、
「何を驚いている。私はシルバークロース=アルファ。あらゆる異型の
狭い車内で二人の暴力が交錯する。
躍動する肉体と宙に描かれる銀の髪の軌跡。
極限まで実用性を磨いた刃物がある種の美しさを纏うように、シルバークロース=アルファの動きにもまた尋常ならざる美しさが宿っていた。
「ふざけるんじゃない。お前のような悪がやっているのは、善が取りこぼした食べ残しを漁っているだけだ。二、三の悲劇を食い止めた所で善人になれるでも思っているのか、偽善者」
「偽善、大いに結構!
シルバークロース=アルファ。
彼はたった一人で、この街の一二分の一を支配する者に宣戦布告する。
「来い、統括理事。来い、正義を騙る者達。お前が有する戦力、権力、財力、何もかもッ! その全てを迎え撃つ‼︎」
学園都市には今日も暴力が溢れる。
子供を弄ぶ大人の世界、騒がしい夜の街。
深夜。
とある
『
あり得ない現象。
あり得てはならない脱獄。
しかし、その異常を引き起こした理屈は明白。
刑務所の中にいた木原幻生とは別人。
物質的に肉体が存在する木原幻生ではない。
木原幻生と同じ精神を持ったAIM思念体。
即ち、
『殴られた程度で僕が霧散したと思ったのかな、継雲くぅん。まさか。
老人の足元では、一人の少女が
彼女は元々、
去澤はアリスを
その装置こそ、
本来の
しかし、アレイスターが継雲雷糸というAIM拡散力場を支配できる可能性を持つ存在を知ったことで、その装置の作成時期は早まり、結果として木原幻生がそれを手に入れた。
木原幻生はヒューズ=カザキリの情報を保管するはずのバックアップに自らの情報を植え付けた上で、装置を小型化して須加井アリスの体内に仕込んでいた。
しかし、須加井アリスを軸に再構築されたのだ。
『ヒヒヒヒッ、ヒャハ! 僕の勝ちだッ、継雲雷糸‼︎ 子供を弄んで利用する! 大人っていうのは、こうでなくっちゃねぇ‼︎』
継雲雷糸の予想外。
アレイスターの大失態。
木原幻生のニセモノは整えられた盤上を掻き乱す。
AIM拡散力場に刻まれた老人の妄執。
それはもはや、科学の産物では収まらない。
『始めようか、継雲くん。僕と君、二人の大人で子供の街をぐちゃぐちゃに掻き回そう』
悪霊は醜く顔を歪ませる。
まるで学園都市の未来を指し示すかのように。
そして。
そして。
そして。
そして。
『
『────────
『なッ、ごっ、ばあ⁉︎』
AIM拡散力場で構成された悪霊にとって、肉体の破裂程度は大したダメージではない。
だから、本当に致命的だったのは別のこと。
他人からは見られる事も触れられる事もない。
なのに、一方的に害を与えられるという理不尽。
まさに幽霊。それがAIM思念体の強みだったはずだ。
(例外は継雲くんが使ったこの街の外の
その時、悪霊はもう一つの例外を思い出す。
悪霊の視界にその
そう、そもそもの話。成功しかけた木原幻生の『実験』が失敗したのは何故だった?
『フリルサンド#G──
フリルサンド#G。
彼女はハイボルテージ=カッティング法によって作り出された幽霊。その正体は高エネルギーの塊である。
その性質上、幽霊は微弱な力の集合体であるAIM拡散力場と相反する。
(なんっ、何だ⁉︎ 再構築が────ッ⁉︎)
「
カツン、と。
青年の靴が地面を叩く。
半袖短パンのサファリジャケットにラッシュガードの組み合わせ。古い探検家のような服装と、頭の横につけたwebカメラが特徴的な優男。
側に侍るのは、金髪のツインテールにぴったりとした薄い青のドレスの上から薄布のロングスカートを大きく膨らませた人工幽霊。
ドレンチャー=木原=レパトリ。
フリルサンド#Gの生みの親。
木原の名を騙る
「彼女にはお世話になってばかりです。結局、私が守るべきだった子供達も昏倒に巻き込まれ、彼らを助けたのもまたあの子でした。だから、後始末くらいは大人の手で片付けなくちゃいけないんですよ」
『っっっ‼︎』
「分かりますか、木原幻生。これが大人です。子供を助けるだなんて本当に当たり前の事を積み重ねるのが私達です。そんな簡単な事も理解できないようなあなたは大人じゃない。大きな声で喚くだけのクソガキです」
学園都市を裏から牛耳る『木原』の重鎮に向かって、『木原』の名を騙るだけのありふれた青年はこう言い放った。
「大した事はありませんね、ホンモノの木原も」
『こんのッ、木原のニセモノがァァアアアああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ‼︎‼︎‼︎』
直後。
誰にも語られない学園都市の裏側で、霊と霊の激突があった。
《原作キャラ紹介コーナー》
▽
初出:とある魔術の禁書目録5巻
白衣を着た男性研究者。二〇代後半。
元々は
▽M000
初出:とある魔術の禁書目録8巻(名前のみ)
本名不明。『
▽
初出:とある魔術の禁書目録5巻
女性研究者。顔には化粧がなく、色の抜けた古いジーンズと洗濯を繰り返して擦り切れたTシャツ、その上から新品のような白衣を羽織っている。二〇代後半。
常にリスクとチャンスを秤にかける思考パターンを持つ。元々は学校の先生になりたかったが、甘いだけで優しくはない人格の持ち主が何かを教える立場に立ってはいけないと断念した。
▽
初出:とある魔術の禁書目録19巻
短く刈り込んだ頭にスーツと薄い色のサングラスを着用した男。三〇代くらい。
▽
初出:とある魔術の禁書目録19巻
学園都市統括理事の一人。軍事、兵器関連に強い影響力を持つ。身の安全に気を使う用心深い性格。