「三百年前なんて、ウソでしょう⁉」 ~魔王のいる三百年前に突然飛ばされた、ドスコイ村娘の大冒険!~   作:細矢ひろゆき

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第101話 『静寂のなかで⁉』

「まだやるかい?」

 メイランがまた()に手を当てた。

 

「もう勝負は付いたろう、見逃してやるからもう行けよ――お前、なんか面倒だし」

 

「このアチシをどコまでもバカにシて……ぐぬぬ」

 くやしそうに言ったアブタノの姿が、ぼやけはじめる。

 

「お前っ、次はこうはイかないカらな! 覚えテいるのダわ!」

 捨て台詞をのこし、アブタノは完全に姿を消した。

 

「イヤなこった――」

 メイランがそう吐き捨てると、戦場となった集落に、静寂が訪れた。

 

 

「終わったの?」

 アルマが不安そうに訊く。

 

「ああ――ボクらの勝ちだよ」

 スペスが、寂しそうに笑った。

 

「こんなのが終わり……なんて――」

 と、アルマは辺りを見回す。

 

 月あかりに照らされた森の集落には、あちこちに動かない(むくろ)が転がっていた。

 トロルが、オーガが、ゴブリンが、アールヴが。

 どれもみな、二度と動くことはなかった。

 

 ずっと麻痺していた嗅覚に、いまさら血と臓物の臭いを感じて、アルマは込み上げてくる吐き気をこらえる。

 それでもアルマは、戦場の悲惨さから目を背けることが出来なかった。

 

 きっと――アールヴは滅びを免れただろう。

 それは、もちろん良い事だとアルマは思う――

 

 一方で、悪魔と呼ばれる者たちが(たお)れ、それはまたどこかで別の悲しみを生み出したのかもしれなかった。

 自分たちが三百年前(ここ)に来た意味――そんなものが、もしあるのなら……

 

「わたし達には……できる事があったのかな……」

 ぽつりと呟く。

 

「わからないよ。でも――」

 静かにスペスが言った。

「ボクらは、ボクらにできることをやった。それだけは確かだよ」

 

「うん……そうだよね」

 うなずいてアルマは、ふっと息をはいた。

 

 凄惨な地上とは対照的に――

 夜の空は晴れわたり、きらきらと星が輝いている。

 

 その光景の中でふたりが黙りこんでいると、メイランが戻ってきた。

 

 

「どうだ?」と一番に訊ねる。

「あ、はい――ある程度は大丈夫になったと思います」

 そう答えるアルマの顔は暗い。

 

「ただ、わたしの力ではこれ以上は……。完全に元通りにはならないかも知れません……」

「そうか……」とメイランも難しい顔をする。

「アタシもある程度までは治せるが、高度なものは無理だしな……」

 

「まぁ、しかたないよ」

 スペスだけがどこか気楽そうに言った。

 

「そんな簡単に言わないでよ! これから先、ずっと手が使えなくなるかもしれないのよ!」

 アルマは真剣に言ったが、スペスは気にする様子もない。

 

「利き手じゃないんだし、ちょっとくらい平気さ」

「そんな簡単な話じゃないの! もっと、きちんと考えないといけない事よ!」

 

「まあまあ……落ち着けって」

 とメイランが割って入った。

 

「欠損しても治せるような腕のいい治癒師だって稀にいる。一生つかえないと決まったわけじゃないぜ?」

 

「そんなすごい人に頼むお金なんて持ってないですよ……」

 アルマが拗ねたように言う。

 

「まぁ、そのへんはアタシも伝手(つて)を当たってみるよ。まずは今できることからだな」

「はい、わかりました……」

 とアルマは悔しそうに答えた。

 

 

「そういえばさ――」と、スペスがまた軽い声を出す。

 

「メイランさんは、どうしてこんなに早く来れたの? まだ手紙がついたくらいだと思うんだけど」

 

「――手紙?」

 メイランが妙な顔をする。

 

「あれ……? メイランさんに助けて欲しいっていう手紙を書いたんだけど、届いてない?」

 

「いや……、アタシは朝から出てたからな……。行き違ったんじゃないか?」

「えっ? それならどうしてココに来れたんです?」とアルマが訊く。

 

「あーっと、それはだなぁ……」

 とたんにメイランが口ごもった。

 

「……そ、そうだな、散歩……散歩だ。このあたりを散歩してたらなんか音がしたんで、ちょーっと見に来たら、お前たちがいたんだよ。いやぁ……〝偶然〟だったよな!」

 

「「いや、ウソ下手か!」」

 

 スペスとアルマの声がかぶった。

 

「そんな完全武装で散歩するひとが、どこにいるんだよ」スペスが言った。

「心配して見に来たのなら、そう言えばいいのにね」とアルマも言った。

 

「べっ、べつにいいだろ……アタシが何処をどんな格好で散歩しようが、アタシの自由だ!」

 メイランが、きまり悪そうにそっぽを向く。

 

 そんなメイランを笑ったふたりの声が、重苦しい静寂をやぶって広がった。




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ようやく戦いは終わり、あとは帰る方法を見つけるだけ……。

それでは次回、
第102話 『花束と沈黙⁉』
で、お会いしましょう!
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