「三百年前なんて、ウソでしょう⁉」 ~魔王のいる三百年前に突然飛ばされた、ドスコイ村娘の大冒険!~   作:細矢ひろゆき

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第102話 『花束と沈黙⁉』

 それから三日が過ぎた――

 

「あら、もう行かれるのですか?」

「うん――」と、スペスが長老に答える。

 

「タッシェに見つかると、ついていくって駄々をこねそうだから、朝のうちに行ってくるよ」

「あと、途中でイオキアさんのところにも、寄っていこうと思うんです」

 アルマも言う。

 

「そうですか、お気をつけていってらっしゃい」

 長老は微笑んで、ふたりを見送った。

 

 

 修理中の長老の住居を出たふたりは、まだ多くのものが壊れたままの集落を歩いていく。

 スペスはいつものカバン、アルマも来たときから持っているカゴを背負っていた。

 

「よう、行ってくるのか?」

 途中でメイランと出会う。

 

「うん、手もだいぶ良くなってきたし、早く帰る方法を見つけないとだからね」

 そう言って見せたスペスの左手は包帯が巻かれ、肩から吊られていた。

 

「そうか……。まぁ、アタシは、もうしばらくはココにいる。街にも連絡を出したし、もし帰れるようなら、さっさと帰っちまいな」

 メイランはそう言って、行けとばかりにヒラヒラと手をふった。

 

「うん、わかった」

「行ってきます」

 と、ふたりはまた歩きだし、集落を出て丘をのぼる。

 空は今日もすっきりと良く晴れていた。

 

 スペスとアルマは、歩きながら道の途中に咲いている花を摘んでゆき、ひとつに束ねていく。

 頂上の手前まで登ったふたりは、そこで、横に道をそれた。

 

 とても日当たりが良く、下にアールヴの集落がよく見える場所だった。

 あたりの草は刈られ、むき出しの土でいくつもの〝山〟が作られていた。

 

「スペス……」

 アルマが、スペスの服をひっぱる。

 その視線の先――

 ひとつの土山のまえに、女隊長が力なく座りこんでいた。

 

 その肩が、遠目にも震えているのがわかった。

 すすり泣く声が、ふたりのところまで聞こえてくる。

 

「ボクらは、あとにしようか」

 スペスがそっと言った。

 

 ふたりは花束を持ったまま道へもどり、また丘をのぼっていく。

 頂上の神殿は、あい変わらずの姿でそこにあり、丘を上ってきた風が、ふたりを出迎えるように身体をなでていった。

 

 すぐにスペスが神殿を調べはじめ、アルマは花束をおいて、あたりの見回りをする。

 

「いいお天気ね」

 ひととおり周囲を見てきたアルマが、近くの石に腰かけた。

「そうだね」とスペスが答えた。

 

「いい風……」

 アルマは目を閉じ、短くなった髪が風にゆさぶられるのを感じた。

「そうだね」とまたスペスが答える。

 

「静かね……。ここはなにも変わってないみたい。なにも起きなかったんじゃないかって、そう思いたくなるくらいに――」

「そうだね」

 

「なによ、さっきから『そうだね』ばっかりじゃない。わたしの話ちゃんと聞いてるの?」

「きいてるよ」とスペスは答える。

 

 アルマは、しばらく黙ってから、また口を開いた。

 

「もう、アールヴのひと達は大丈夫よね? きっと三百年後にもいるのよね?」

「たぶんね」とスペスは答える。

「……しばらくは、メイランさんもいてくれるみたいだし、少なくとも当分は平気さ」

 

「もし無事に帰れたら、みんな、また会えるのかな? だってあのひと達、すごく長生きなんでしょ。タッシェも大きくなってるのかな?」

 

「きっとそうだよ。楽しみにしておこう」

「うんっ!」

 とアルマは、満足そうにうなずいた。

 

 

「それでどうなの……? なにか、手がかりはあった?」

「いいや、なにも」とスペスは首を振る。

 

「あのときと同じ〝ナニカ〟が原因だとは思うんだけど、それが何なのかがよく分からなくて――」

「うーん、あの時と同じねぇ……」アルマは考える。

 

「ねぇ……あのときに、なにがあったか思い出してみない?」

「そうだねぇ」とスペスも腕を組む。

 

「えっと、たしか……スペスが実験をするって言って、芋をおいて石が光ったんだけど、なにも起きなかったのよね」

 

「そうそう、それでアルマが芋を取りにいって、あとからボクも行った」

「それでわたしが、スペスに芋を渡そうとしたのよね」

「なんか芋のことばっかりだね」スペスが笑う。

 

「わかった! 芋よ! やっぱり、芋がなにかしてるんだわ」

「それはないと思うよ――それに、あの芋は食べちゃったんだってば」

「じゃあ、帰れないじゃない!」

 

「まぁ……芋は一回置いておこうよ。他には何かあった?」

「他に?」とアルマは考え込む。

 

「わたしが芋を渡そうとして転びそうになって、スペスに抱きしめられて、そのあとキ……」

 言いかけて、アルマはその言葉を飲みこんだ。

 

「そうか……」

 隣のスペスは、あごに手を当てて、なにかを考えている。

 

 そうやって考えて込んだ時のスペスは、どこか色気がある表情をしている気がして、なんとなくアルマは、そんなスペスの口元を盗み見た。

 

「ねえアルマ?」

 ふいにスペスが顔をあげる。

 

「な、なに?」

 とアルマは、あわてて目をそらした。

 

「キス――してみようか」




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それでは次回、
第103話 『そんなことでえぇぇぇぇぇ⁉』
で、お会いしましょう!

なにこのサブタイ……。
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